48話 来年の事を言うと誰かが笑う。
……
……
真っ白だ。
真っ白な光に包まれた感覚。
いや、この感覚を知ってる。
いつも見る不思議な夢。
ここにあるのは意識だけ。
そして、いつものように誰かの声が聞こえてくるんだ。
……
最大限の物だと、この世界丸ごと吹き飛ばす事になるんだぞ!
……
謝って済むと思ってんのかよっ!!テメェのせいで滅茶苦茶だっ!!
……
いつか僕が正しかったって証明してみせますよ、それまで休んでいて下さい。
……
今何が正しいのか分からないけど、目的を忘れては駄目だよ、僕達全員の目的を。
……
ねぇ、本当に行くの?貴方のしたことは許せないけど、何か理由があったなら皆に言うべきよ。
……
元の世界に帰る方法も、皆で協力すれば解決出来るよ、だから一人で考え込まないで。
……
こんな何もない世界に人々が溢れるなんて、夢のようじゃない?
……
どんなに世界が変わっても、私は皆を信じる。
……
なんだ?ここは?
真っ白な空間のまま様々な声が聞こえてくる。
誰かの声が聞こえる。
複数の男の声か?
「マズいな、このままだと確実に被害は広がる一方だ、早く手を打たなきゃ。」
「ショウさん…俺に任せてもらえないっすか…」
「ヒデト…何かあるのか?」
「東の大陸におびき寄せ、ネオクリスタルで囲むように結界を張るってのはどうっすか!?」
「そうか…一纏めにしてしまえば結界で閉じ込める事も可能だな。だが大陸のどこにおびき寄せる?」
「大砂漠とか…って考えてたんですけど…」
「大砂漠か、あそこはマナミの管轄地域だからな、勝手に行動する前に一言断っておかなければ後々怖いぞ。」
「ちょっ!ショウさん!マジで怖いから、マナミ相手に物言えるのショウさんかユウくらいじゃないっすか?」
「はははっ、そんな事は無いさ、、
お?丁度良かった、ユウ!お前に頼みがあるんだが…」
……
ぐっ!ぁっ…
頭が割れそうだ!
なんだこの音声は!これが失ってた記憶なのか!?
……
「ねぇ、機嫌直しなよー。」
「はぁ!?アヤノが後押しするから、アタシの呼び方がナミなっちゃったじゃないのよ!」
「まぁまぁ、落ち着いて、はいコレクッキーだよ?」
「あのねぇ…こんなお菓子でアタシが……っもご…」
「美味しい?」
「っぷぁ、、アヤノ!アンタいきなり人の口にクッキー詰め込むなんて何考えてんのよ!ったく!」
「ごめんね、でも美味しかったでしょ?」
「確かに味は…うん、美味しかったわ。」
「イライラも無くなった?」
「はぁー、さすがのアタシもアンタには勝てないわ。」
「ふふっ、あ!ユウもクッキー食べる?」
……
もう止めてくれっ…
懐かしさなんて1つも無い音声に頭がこんがらがる。
……
「マナさんはどうするんですか?」
「どうもこうも無いわよ!完全に私達を裏切ってたのよ!」
「でも他に方法も無かったのは事実ですし。」
「タカユキ!アンタも利用されていたのよっ!」
「そうですけど、マナさんがそこまで怒るのは、今回と違う理由があるんじゃないですか?」
「なっ!何を馬鹿な事!」
「だって、いつものマナさんだったら皆の事をもう少し考えてあげられると…」
「……っ、確かに私情もあるけど、でもね、それでも私は最後まで信じてたのに、なのに…」
「あ…ユウ…さん…今は少しマズいかも…」
……
マナとタカユキの声だ。
俺も居たのか?
どうなってる、本当に覚えていない…
記憶が戻るというよりも、何か無理やり聞かされているような妙な感覚だ…
……
「へへっ!ようやくユウさんに勝てたぁ…」
「お疲れさまサトル、凄いねユウに勝てるなんて。」
「キョウコが上手いこと助太刀してくれたから。」
「まぁ、たまにはね、でも本当に眼の使い方上達したよねサトル。」
「ユウさんくらい使いこなせたら良いんだけど、、、それにキョウコも凄いじゃないか、さっきのアレなんて初めて見たよ。」
「一応これでも勉強家なので!!」
「痛ててて、、、早く皆みたいになれるように頑張らなきゃ、」
「サトルは誰よりも優しいから、、私達みたいな仕事は向いてないかもね…」
「そうなの?ねぇユウさん!僕にもいつか出来るよね?」
……
まだ終わらないのか、この無意味な時間…
いや、時の流れすら曖昧なこの空間はいったい…
……
「よし!知的生命が居ないなら造れば良いんだ!」
「はぁ?何言ってるのよヒデ…」
「俺達が無意味に時間を浪費しても、やれることは限られてる。なら、マザーの力を使って今現存する種族に人間の知識を与えるってのはどうだ?」
「面白い考えだが、9人全員で行動しても途方も無い年月が必要だぞ?」
「それが、そうでも無いんだよショウさん、タカユキの組み込んだクリスタルを使えば一眠りして目覚めたら100年後なんて普通に可能さ!」
「危険性は無いのか?」
「もちろん、全員同時に眠れないっていう難点があるけど、そこはローテーションで上手いこと回していけば問題ないと思うよ。」
「えー、私どんな子達にしようかなー?」
「アヤノ…意外と乗り気ね。」
「ねぇ、ヒデトさん、情報を組み込むって事は、また血とか髪の毛とか使うのかな?」
「まぁ、どっちでも良いけど、出来れば血液の方が早いから助かるな。」
「ねぇユウ?新しい人種だって!?どんなのが出来るのかな??」
「キョウコ、少し落ち着きなさい。」
「マナはもう少しハシャぎなさい。」
……
なんだよこれ。
こんな普通の感じで皆過ごしていたのか?
俺は何を言っていたんだ、何をしていたんだ。
……
「アヤノ!アヤノ!しっかりして!私の声が聞こえてないの!?」
「ナミ、、、やめろ、アヤノにはもう声は届かない…」
「そんな!なんでよ、なんでアヤノがこんな目に……」
「ナミ、コレ使って…」
「コレは?」
「私の力を組み込んだの、これでアヤノにナミの声が届くよ。」
「ありがとう…キョウコ…」
「アヤノ…耳、聞こえなくなっちゃったんだね。」
……
「完成したよ、ヒデトさん。これでアイツ等を…」
「ありがとうタカユキ!後は任せろ、俺が奴等をぶっ殺してやる!あのクソ共がっ!」
「ヒデトさん、、サトルとアヤノも連れて行ってくれないかな、ここよりは安全だし、ヒデトさん1人じゃ流石に辛いよ。」
「そう、だな。いつ終わるか分からない戦いだ、魔眼が使える人間は多い方が良いな…。でもこっちは大丈夫なのか?」
「キョウコやナミさんがいるから大丈夫さ、、、僕も出来る限りはするけど、、、」
「無茶するなよタカユキ…」
……
「で?そんなボロボロの身体になるまで、ゲートを使って何をしてたの?そして今まで皆に黙ってたのは、どういう事かしら?」
「ナミの言うとおりだよ、答えてよ!なんでいつも1人でやろうとするんだよ!」
……
「まさか、こんな結末なんて…。」
「サトル…情は捨てろ、アレはもう僕達の知っている人じゃない!」
「そうみたいだね。残念だよ、本当に…」
……
「僕達9人の血の情報から人族を造ってみたんだ、この人族がこの先この世界を動かして行くメインの人種、そして皆が造った種族と交わったらまた新しい種族が生まれる。純血性は失われるけど、元の世界みたいに人がこの世界をより良くしていく手助けなんて、どうかな?」
「じゃぁ、1番最初の人は聖なる人種って事だな。」
「ふふふ、そんな事言ったら私達皆聖なる人種じゃないのよ。」
「ありゃりゃ?そう言われりゃそうか、んでも、タカユキはまだ種族造ってないんだよな?なら、人族代表として聖なる人種を造ってくれよ。」
「え?僕が?いいのかなぁ、そんな大それた事。」
「さしずめ聖人種ってとこかな?上手いこと皆の種族を纏めてくれるようなリーダー性が欲しいもんだけどな。」
……
「1年置きに一人ずつ9年眠るよりさ、3人くらい残してもう少し長く寝た方が寂しくないんじゃねぇの?」
「でも、充分種族は発展してるし、私はあの子達と居られるなら1年くらい独りでも大丈夫だよ?」
「キョウコ…ヒデはさ、ほら人と付き合うのが苦手だから。」
「おい!ナミ!お前聞こえてんぞ!誰がコミュ障だ!」
「あら?アンタにはそう聞こえたのー?」
「ちょっと、2人とも止めなよ-。」
「ヒデトがうるさいけど、私は賛成よ。」
「ちっ、小局様の一言で決まりそうじゃねぇかよ…」
「アンタ…燃やすわよ?」
「うぇっ!?い、今のはアレだ!元の世界からの毒電波がががががが……って!うぉーい!アチチチチッ!!」
……
苦しい…
頭が割れそうだ……。
話の内容を吟味すれば、色々分かるんだろうけど、今の俺にそんな余裕が無い…
……
「おはよ?久しぶりだね、ねぇ起きたばかりで申し訳ないんだけど、お願いがあるんだ。」
「ーーーーーーー」
「でも、順番的に1年しか眠らなかったんだから仕方ないじゃん!」
「ーーーーーーー」
「うん、、えっと…その…ね?…もう半年だけで良いから私を眠らせるのを待ってもらえないかな?」
「ーーーーーーー」
「えっ!?違うよ、なんていうかさ、まだ約束…さ。」
「ーーーーーーー」
「もう!忘れたの!?サイテー!!」
「ーーーーーーー」
「うわー!ホントに忘れてるし、、、女の子から言わせるとか…」
「ーーーーーーー」
「何も言ってませんよー! てか……っートする約束…。」
「ーーーーーーー」
「デートの約束!!」
「ーーーーーーー」
「したっ!したよ!去年の春!」
「ーーーーーーー」
「いいの!!もう一回眠ったら9年後になっちゃうでしょ!」
「ーーーーーーー」
「私は…皆と過ごすのも好きだけど、2人で居る時間も好き…だよ…。」
「ーーーーーーー」
「ちっ!違うから!違わないけど…いや!今の無し!え!?何言ってんの私!?」
「ーーーーーーー」
「じゃなくてっ!するの!?しないの!?私とデート!!」
「ーーーーーーー」
「ふふふ。やっぱりそう言ってくれると思ってた。」
「ーーーーーーー」
「もうっ!そうやっていつもはぐらかすんだから!」
「ーーーーーーー」
「でもさ、もう少し話しようよ。」
……
ぐぁっ!あぁぁぁっ!
これっ……は……!
……
「久しぶりだなぁ、こうやって皆が揃うのも。」
「ヒデトさん、変わらないですね…」
「お前もなサトル…」
「ヒデは成長しないのよ、色々と…」
「よーし!ナミ!戦争だ!戦争だぞ!」
「止めなさい2人とも。」
「マナさんも、そんな物騒な術を展開しないで下さいよ、暑くて適いません…」
「タカユキ…お仕事お疲れ様です。」
「アヤノにはあれが仕事に見えてるのか?」
「ショウさんにもそう見えてるでしょ?」
「ははっ、違いないな。タカユキは昔からあんな感じだな。」
「ふふっ、そうですよ。」
「ねぇ?止めなくて良いの?マナはともかく、ヒデトとマナミはいつも喧嘩してるし、、、」
「キョウコっ!私とヒデがいつ仲良くしてるって!?」
「えぇっ!?言ってないよ、そんな事!!」
……
あぁ…
意識が遠退く…
いや違うな、頭が考えるのを止めたがってるんだ。
いったいいつまでこんな訳の分からない物語を…
……
「ねぇ、貴方もしかして私達4人の中で誰かを異性として意識したことあるんじゃない?」
「ーーーーーーー」
「はぁ!?別に意味なんて無いけど、ヒデトとか?なんか見る目がそういう感じなところもあるし?一応聞いてみただけよ…。」
「ーーーーーーー」
「ちょっと、誰がツンデレよ!いつ?どこで?デレデレしましたか?」
「ーーーーーーー」
「こっちこそよ、、、ふん、無駄に時間を浪費したわ。」
「ーーーーーーー」
「くっ、ホントに腹立たしいわね。 ……ねぇ、最近キョウコと仲良いの?」
「ーーーーーーー」
「そ、そう、よね?別に?意味なんて無いわよ?」
「ーーーーーーー」
「私だって意味の無いこと連呼する日だってあるゎょ…」
「ーーーーーーー」
「なんでもない!!ばか!!」
「ーーーーーーー」
「あーっ!!もうっ!!!!」
……
まだ……
つづく……の……か……
これいじょうは……げ……んか………い……………だ。
……
「私達って結局この世界の何なのかな…歳も取らないし、かと言ってモチベーションも下がる訳でもない不思議な感じ。」
「ーーーーーーー」
「ふと、考えるのね。」
「ーーーーーーー」
「また明日は何をしてるのだろうって…来週は?来月は?来年は?っていつもいつも考えてしまうの。」
「ーーーーーーー」
「でもさ、時間って大事だと思える気持ちは無くしたくないよ。」
「ーーーーーーー」
「うん、ありがとう。」
「ーーーーーーー」
「えぇ??いきなりだね、でもそれを言ったら来年じゃなく9年後だよ?」
「ーーーーーーー」
「そっか…もうそんな時期なんだね、元の世界が懐かしいなぁ。」
「ーーーーーーー」
「うん、いつか…ね…」
「ーーーーーーー」
「最近は急がない事にしたの『いつか』が私の中で残ってれば大丈夫だよ。」
「ーーーーーーー」
「ふふふっ、来年の事を話すと鬼が笑うみたいなやつだよ、それ、ずるいなぁ……。」
「ーーーーーーー」
「うん、また、ね。」
……
ぅ…。
もぅ…
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
身体全体に重みが還ってきた感じが…。
なんだ…
また次の記憶なのか?
長い夢…
夢みたいな…現実…
「ふふっ、さすがのユウさんでも、頭に情報を一気に詰め込んだんだ、動けないのは当然か…」
「ユウちゃん!!起きてっ!!」
「あらあら、貴女の相手は私ですわ?余所見は良くなくてよ。」
「邪!魔!だよっ!!!!!」
ガキンッ!バキンッ!
と鈍い音が頭に響く…。
「本気で遣り合えないのが悔やまれますわ…」
「お前っは!どけっ!!」
まだ夢の続き……なのか?
「返せっ!ユウちゃんをっ返せよぉっっ!!!!」
「僕はユウさんの手助けをしただけだよ?首斬りカレン…。こっちに戻ってくるかは本人次第さ…まぁ、無理だと思うけどね。」
「ふーっ!ふーっ!許さないんだからっ!」
「やれやれ、後少しすれば現実も見えて来るさ。」
「さて、続きですわよ?」
「あぁぁぁっ!!!!!」
ズズゥン!!
と身体全体が揺れるような衝撃。
これは?現実…か?
「……ッン!」
駄目だっ、上手く声が出せない…。
身体も自由が利かないみたいだし、どうなってる?
大容量の記憶を頭に突っ込まれた後遺症なのか?
意識がしっかりしてきたのが唯一の救い…か…。
「さてと、ユウさんは廃人確定として、マナさんはどうかな?」
誰が廃人だ馬鹿野郎!
訳の分からない音声くらいじゃ廃人コースにはならなかったぜ、、、だが、動けないのは事実か…。
「どれ? ……あぁ、マナさん、貴女も駄目でしたか…やはりゲートの障害はゆっくりと治して行かなきゃですね、貴重な実験台になってくれて感謝ですよ。」
マナ!?
あの野郎言いたい放題言いやがって!!
マナ!起きろ!起きてなんでも良いからタカユキに痛い目見せてやれ!!
くそっ、声に出来ないもどかしさが余計に惨めだ。
……
「……そ、そんな馬鹿なっ!」
ん?タカユキが何か狼狽えてる…のか?
「な、なんで平気なんだよ、、、」
「邪魔よタカユキ…」
「おい!アクア!こっちに来い!」
「はっ!ただいまっ!」
「行かせないっ!!!」
「小娘ぇぇっ!!!」
「部下は来てくれないようね…」
「マナさん…確かに今まで…。」
「ありがとうタカユキ、おかげで少し、ほんの少し記憶を取り戻したわ。」
マナが記憶を?
「ま、マナさん!ユウさんはもう廃人だよ、何をするつもりだい!?」
「……廃人?この状態が?」
そう言いながら、俺に優しく触れるマナ。
マナの触れた部分からジンワリと温かい不思議な感覚が全身に流れて行くみたいだ…。
「っ!…っは!」
「動ける?」
「あ、あぁ…助かった…けど、これは治癒とはまた違う…のか?」
「少しコレの使い方を思い出したのよ。」
自身の手足を確認しながら、不自由な所を探す。
頭がまだガンガンするけど、特に異常は無い感じだな。
「そんな、馬鹿な…2人ともなんで無事なんだ!?」
「残念ながら、お前の思い通りにはならなかったぜ、なぁマナ…」
とマナの方を振り返る。
「マナ?」
立ち竦むその後ろ姿はあまりにも生気の抜けた姿だった…
側頭部に、じんわりと滲んでいる血を俺は見逃さなかった。
「おい!お前っ怪我して?」
「大丈夫よ…」
「でもちょっと休んでろよ!」
心配する俺を余所にマナはタカユキの方を見据えて動こうとしない。
「さ、さすがのマナさんでも無傷って訳じゃなかったみたいだね、でも本当に驚いたよ、一瞬とはいえ膨大な情報を頭に詰め込んで満足に立っているなんてね…。」
「おい、お前は完全に俺達に殺意を持ってやったって事だな。」
「とらえ方次第さ、ユウさん。」
「今からお前は完璧に敵だよタカユキ…」
「今更何を言ってるんだいユウさ……ッん!?」
ツカツカと近づきタカユキの胸ぐらを掴む。
「離してくれないかな?」
「断る、まずは一発殴らせてもらうぜ。」
「暴力的だなぁ…」
と話の途中だが、タカユキの顔面に拳を叩き込む。
ズシンと自らの拳に殴った衝撃が伝わる…
殴られたタカユキは後ろに吹き飛ぶように倒れ込み、蹲っている。
「ユウちゃんっ!!!!」
と、突然目の前に叫びながらカレンが飛んでくる。
「いよぅ、カレン…」
「ばか!無事だった!」
「一言多いよ、無事なのはマナのおかげさ、カレン…マナに治癒を頼む。」
「うん。」
そう言うとマナの元へ走って行くカレン…
さっきまでカレンの相手をしていたアクアは、倒れたタカユキの介抱をしている、、、
「マナ……大丈夫??」
「ありがとうカレン…楽になってきたわ。」
「こちらこそ、どういたしましてだよ。」
さて、マナは復活したみたいだし、タカユキのふざけた術も思い通りには行ってない。
まだまだコイツには聞き出したい事が多いが、それはマナが先程話してた記憶を取り戻す方法、それの方が安全だろう。
ならば、後はここでやらなきゃいけない事は…
「いつまで寝てるんだよ、タカユキ…」
「ふふふ、久しぶりだなぁ誰かに殴られるなんて…。すっかり忘れてたよ……痛みなんてね。」
「物足りないなら言ってくれ、俺の方はまだまだイケるぜ?」
そんな下らない事を口走る俺に鋭い目付きで睨むアクア…
「お前の相手は俺じゃねぇよアクア。」
「アイツはカレンに任せて。」
「くっ!いちいち苛つきますわね、貴方達は…。」
「落ち着きなよアクア…」
「タカユキ様!?しかし!?」
ユラリとアクアの元から立ち上がるタカユキ…
「どうした?もう一発欲しくなったか?」
「いや、遠慮しておこう。それにしてもこの場を制圧出来なかったのが悔やまれるなぁ…。」
「タカユキ様!私にお任せ頂ければ直ぐにでも!」
「いや、場所が悪いよアクア…君の力は充分過ぎるんだけど、それを出せないんじゃぁね…。」
「お言葉ですが、タカユキ様…」
「いいよ、いいよ、今日はこっちの負けさ、それで良いよね?ユウさん、マナさん?それとも全滅覚悟で皆が本気出してみるかい?」
引く…のか…。
いやに素直なのが逆に不安だが、、、、
「マナ、ああ言ってるけどどうなんだ?」
「アイツは昔からあんな感じよ、素直に従いましょう。」
「ありがとう2人とも、また遊びに来るからさ、その時は覚悟しておいてね?」
「おい!何か忘れてねぇか?」
「ん?なんだい?まだ何かあるのかい?正直気分が悪いんだ、早く帰って休みたい気分さ…」
「ケアルランドの術を解けよ、いつまで寝かせておくつもりだ!王様の暗殺は失敗したんだから、関係無い人達を早く解放してやれよ!」
元々はこんなふざけた術を展開したコイツに一言物申すのが目的だったんだ。
「うん、そうだね、まぁ今回はシングル達の解放を手伝っていただけだしね、、、」
「解放してどうするんだよ、また一纏めにして滅ぼすつもりか?」
「やだなぁ、考え方が物騒だよ、僕達の子孫だよ?大切に見守ろうよユウさん。」
「けっ、どうせ数が集まればシングル達には効果の無い術とかまた展開してくれるんだろう?」
「あぁ、その手があったね、さすがユウさん参考にするよ。」
食えねぇ野郎だぜ、これ以上話すのは無駄だな。
「おら、さっさと解除しろ!んでもって消えろ!」
「久しぶりの再会だってのに、随分嫌われたものだね…。」
「お前が無駄な発言ばかりしてなかったら、ここまで嫌いになってねぇよ!」
「……。」
「あん?なんだよ…。」
一瞬タカユキの眼が優しく見えたような…
「ふふっ、いや、なんでもないよユウさん…さぁ、行くよ皆。」
アクアはともかく、後ろに居た兵士とシングルの男は完全に空気だったな。
「待って、タカユキ…」
今にも撤収開始のタカユキをマナが止める。
「なんだい?マナさん、もう今日は良いじゃないか…。」
「勘違いしないで、アンタと話すことは無いわ、だけど今からこの洞穴を出るのは私達が先よ。」
ん?なんだってそんな事、、、いや、そうか、タカユキは俺達を洞穴ごと潰しかねないって疑ってるのか…。
さすが、マナだな、抜け目が無いというか、疑り深いというか…。
「相変わらずの徹底ぶりだね、いいよ、3人が出て行くまでこのまま動かないさ、それで良いかな?」
「そして、最後にもう1つ!」
「なんだい?まだ何か?」
「アンタは嘘を吐いてる、自覚症状があるのか無いのか知らないけどね。」
タカユキの嘘?自覚症状?
「それだけよ、じゃぁね、、、行くわよユウ、カレン…」
と言うなり、プイッと後ろを向いてツカツカと歩き出すマナ…
「おい、待てよ!ったく……」
チラッとタカユキを見ると待ってたかのように手を振る…
ちっ、見て損した気分だな。
早歩き気味にカレンと2人でマナを追いかける…
来た時よりも慣れたのか、洞穴の中は以外と視界良好だった。
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「嘘…ね、さすがマナさんってところかな…」
「本当に良かったのですか?」
「うん、結局魔眼使いの正体がユウさんだって分かったのが、一番の収穫だったなぁ…。」
「あの男はタカユキ様にとっていったい…」
「家族であり、親友であり、師であり、そして昔から今までずーっと敵だよ…。」
「複雑ですわね?」
「まぁ、アクアみたく強くないとさ、色んなものに頼りたくなる時もあったんだよ、それを共にしたり、支えてくれてた、そんな存在さ。」
「後は、マザーの回収さえ出来れば計画の大半は終わるんだけどね…」
「タカユキ様の言う人物が本当に?」
「あぁ、あの………が………のさ。」
薄暗い洞穴で2人の会話だけが響いていた…。




