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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
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47話 憎しみを越えて…

 


 ある日、そう何でも無いいつもの日常。

 そんな俺に訪れた不可思議な現象。


 その現象によって異世界に飛ばされた俺は、元の世界へ帰るための手掛かりを探し求めて奔走していた。



 様々な人達との出会いと別れ、そしてようやく手掛かりともいえる人物、マナに出会った俺は元の世界での話をするが、マナは俺の求める答えを用意してくれなかった。


 しかし小さな手掛かりでも良いと食い下がり、マナ自身の情報を集めている最中に不可解な現象が俺達を襲う。


 そんな俺達が問題解決に走るが、その先に待っていたのは手掛かり以上の事実を持った人物、タカユキだった。



 タカユキは俺やマナと同じように元の世界から、こっちの世界へ飛ばされた1人だった、そしてタカユキの話では、過去に俺がこの世界に居たという衝撃の内容を口にしたのだった。








 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※







「さてユウさん…気分はどうですか?」

「最悪極まりないな、お前の冗談にいつまでも付き合ってられねぇ…俺はお前の言う俺とは別人だ、それは俺が分かってる。」


「ふぅ、やれやれ相変わらずだね貴方は。まぁいいさ、過去の事を今ここで言っても仕方ない、それよりも僕にはやることがあるからさ…ねぇ、マナさん?」




 そう言いながらマナに手を伸ばすタカユキ。

 ネオクリスタルの破片を渡せという素振りだ。


 このままマナがネオクリスタルを渡してしまえば、タカユキのやることは俺とカレン…そしてマナをシグマへ連れて行くだけ。



「マナ…よく考えろ、ソイツを渡した後どうなるかを…」


「貴方は少し黙っていてもらえますか?僕は今マナさんと話しているんです。」

「タカユキ…もう一度聞くわ、ネオクリスタルの破片を集めてゲートシステムの完成に向ける、そう言ったわね。」

「そうだよマナさん。ショウヘイさんも元通り目覚めるし、マナさんの記憶だって元に戻る!そして、また皆であの頃のように…」



「お断りよ!!」






 え!?

 まさかのマナの回答だ、いったいどうして…





「え?マナ…さん?何を言ってるのか分からないけど…?」

「ふっ、アンタこそどうして私が言うことを聞くと思ったの?」

「いやいや、マナさん、何度も言うように、皆を元に戻してまた昔みたいに…」

「じゃぁなんで、キョウコを殺したのよっ!!!」

「そ、それはさっきも言ったじゃないか、完全に考え方が間違ってたんだよキョウコは、何を言っても駄目だったんだよ。」



 予想外のマナからの返答に若干しどろもどろって感じだなタカユキは…



「キョウコは何もおかしくなかった、それでアンタと意見が合わなかったんなら、私も同じよ!キョウコと同じように協力はしない!それが例えどんなに辛くても…でも、私はキョウコを信じる!あの子は不思議と何でも分かっていた…だからアンタに殺されるかもしれないっていうのも分かってたんだと思う。けど、それでも、アンタを説得しに行った!違う!?それなのに、キョウコを…アンタはキョウコを殺した!」



 そうだよな、昔みたいにとか言ってるくせに、その仲間を手にかけたのは事実だ。

 それだけでタカユキは信用に値しない…そんなマナの気持ちは俺でも分かるぜ。




「マナさん、何故なんだ?その思想は駄目だよ。貴女までそんな事を言うのかい?僕はどうすれば良いんだ…」

「どうもしなくて良いわ、アンタに代わって私が皆を救う!今日この場でアンタと話して確信が持てたわ。私でも皆を救えるってね!」

「な、何を言ってるんだよ、そんなこと不可能さ…」

「残念ね、タカユキ…ネオクリスタルの破片を集めてたみたいだけど、1番欲しかった情報…いえ、元々ゲートシステムに使用していた本体のネオクリスタル、その情報がある場所に行けば私でも出来るのよ!」

「ははっ無駄だよ、そこにはもう行けないんだ!封印してあるからね!僕達魔眼の持ち主は皆入れないのさ!勿論ヒデトさんの持っていた解除クリスタルは全て使用出来なくなる瞬間を僕が見ている、マナさんにも、僕にも、誰にも立ち入る事は出来ないよ。」



 ん?本体のネオクリスタル…?

 封印?魔眼の持ち主は入れない?

 え?それって…



「そうね、だけど純血種のみに結界を張ったのは間違いだったみたいね…。」



 チラッと俺の方に視線を向けるマナ。

 言わんとしてることは、なんとなく伝わったけども…

 肝心のマナが結界を通り抜け出来ないならどうしようもないんじゃねぇのか??




「マナさんが何を言いたいのか分からない…けど、僕と敵対する気なのは少し伝わるよ…。」

「はあ?アンタ馬鹿なの?思いっきり敵対してるのよっ!賢い振りしても結局足りてないわね、もう一度言うわよ?私はアンタとは絶対に組まないわ!わかった?絶対によ!」




 うわー、言い切ったよマナのやつ。

 散々言ってたタカユキが少し可哀想だと思えるくらいの言い草だったな…






「ふ、ふふ、そ、そうか…マナさんも僕を否定するのか…」

「やっと理解出来たみたいね、私は私のやり方でシステムの復旧をするわ!アンタは自分の部屋にでも帰って、不毛な研究でも続けていなさいっ!」


「…残念だ、非常に残念だ。せっかく逢えたのにこんな事になるなんて…。」





 俯いたまま、ボソボソと話すタカユキ。


 なんだか不穏な空気じゃねぇか?これ。

 よくあるパターンを想像すると、この後の行動ってだいたい相場が決まってる。




「おい!タカユキ!」

「ん?なんだい?ユウさん…」

「1つだけ教えてくれ、なんで俺、いや、魔眼使いとカレンを必要としていたんだ…。」



「…!?……。ふふふ…必要…ね…ははっ!はははっ!」





 俺の言葉に突然笑い出すタカユキ。





「何がおかしいんだよ、現にカリキじゃぁそれが目的だったんじゃねえのか!」

「ははは、ユウさん、なにを言ってるんだ?必要なんじゃない!絶対に始末しなきゃいけないから捜してたんだよ。」

「なっ!?」


「魔眼使いなら、現存しているのは当時のレプリカなんかじゃない僕達だけ、それなのにマナさん以外にもう1人存在するなんて知った時は驚いたなぁ、、、たまに居るんだよレプリカかの子孫に遺伝するのがね。でも当の魔眼使いが、まさかユウさんだったなんて思ってもみなかった…ははは。」

「なるほどね、だから俺を狙ってた奴等の変な行動も理解できたぜ。」





 あの時グレンは俺を殺そうとしてたっぽいしな。

 もしも必要ならカレンを相手にした後、さっさと俺とカレンを一緒にシグマへ連れて行ったはず…




「あぁグレンの事?全く、彼もなんだかんだ言って甘いんだよね…まぁ、そこが彼の良いところでもあるんだけど、、、、そういえば妹も大事にしてるみたいだし、今回リタイヤさせたのも、そういうことだと思うけどね…。」


「へっ、そうかよ。今となってはグレンの恩情に少しだけ感謝しちまいそうだ…」

「そしてもう1人、、そこの首斬りカレンは僕が是非とも研究したくてね。」

「はぁ!?研究だと!」


 カレンを研究って、どういう事だ…。



「今展開しているの術の中で動けるのはシングルだけ、それはユウさんも気付いているんだよね?」

「まぁ、俺達も動けてるけどな。」

「ははっ、そうそう!シングルってね、僕達元の世界の人間の遺伝子が組み込まれてるんだよ!」



 なっ!んだって!?

 どういう事だ?俺達元の世界の人間の遺伝子って…。




「長いことこっちに居るとさ、こっちの世界での生活に慣れちゃう、いや、慣れすぎてしまうんだろうね…。最初はヒデトさんだったな、彼の子供達がまた子孫を増やしてさ…。」

「お、お前の言ってる事はデタラメだ!!」

「何を言ってるんだい?全ての始まりから今の今まで全部覚えてるよ、僕は。」



 ヒデトってのが誰のことを言ってるのか分からないけど、俺だってこの世界でルビィやネオンと共に過ごしたいと思ってしまった。


 だけど生まれてくる子供達は皆シングルって…





「だから、そこの首斬りは少し興味があってね。シングルの遺伝子を持ち強靱なエナを保有、更には長寿人種の血を引く亜人種なんてね…。ふふふっ両親がとても優秀だったのかな?」



 確かにカレンの強さは尋常じゃない…。

 でもカレンの両親は、どっちも普通だって前に聞いた事がある。



「カレン、あの野郎あんな事言ってるけど気にするなよ。」

「うん、なんかよく分からないけど、アイツの言ってることは気にしない。」



「ははっ!ねぇ!首斬りカレン、両親はどんな人だったんだい?教えておくれよ。」

「お父さんもお母さんも普通だよ!」

「普通か、尚更興味がわいてきたな、遠い遺伝子がここで覚醒するなんて…でもね、その遺伝子は危険なんだよ。現存する長寿人種の血は僕が完全に断たなきゃね。」





 長寿人種の血…。

 キョウコの造った種族。

 何がそんなに危険なのか知らないけど、罪もない人を簡単に殺そうなんて許される事じゃない!



「おい!タカユキ!なんでそこまで長寿人種にこだわる!純血種はお前が滅ぼしたんだろ!!子孫にまで手を出すんじゃねぇよ!」


「まったく、ユウさんだけには言われたくないなぁ…」


「あん?どういう事だよ…?」



「ユウさんは全部忘れている、だからと言って何を言っても許される訳じゃないんだ、僕だってそこまで出来た人間じゃないよ…」

「何度も言うが俺はずっと元の世界で暮らしてきたんだ、その時の記憶もあるし、こっちに飛ばされた記憶もある!今までの人生で記憶が抜けてるところなんて1個もねぇよ!」


「真実を認めないのは昔からだね、全く、何で大人しく消滅してくれなかったのかなぁ、これじゃぁ皆が目覚めた後何て言えば良いか…。」




 くっ、俺の知らない事をグチグチ言いやがって、まったくもって噛み合わないとはこの事だぜ…



「そうだなぁ、ユウさん。例えばの話なんだけど、貴方も種族を造った1人だとしようか、、、」

「は!?俺が!?」

「ふふふ、例えばの話さ、ユウさんは今残ってる種族、そのどれを造ったと思う??」



 種族…

 えっと、まてよ、たしか、

 魔、長寿、獣、木、命、空、海、竜、だっけか?

 この中なら??俺ならやっぱりアレだよな。



「竜とか獣あたりか?」

「残念、不正解。」

「例え話に不正解持ち込んでんじゃねぇよ。何が言いたいんだお前は!」




「マナさん?ここ数年仲良くしてる人がいるね…たしか海人種の王ライナスだっけ?」

「なんでもお見通しって事?別に隠す必要もないし、その通りよ?」



 海人王ってマジかよ、ちょっと有名どころじゃねぇな…。

 連合国に賛同してないのは何か理由でもあるのか??




「マナさんは海人種を造ったんだよ…さすが自身の情報を組み込んである訳だね、記憶を失った今でも自然に惹かれ合うなんて。」

「わ、私が!?海人種?を?」




「マナが海人種を造ったんなら、キョウコみたいに他の人達も種族を造ったって話は本当なのか??」

「だから、そう言ってるだろ?あの頃の皆はこの世界の発展の為、そして元の世界へ帰るために必死だったんだ。」




 タカユキの昔話。

 多分それなりに信憑性はあるが、ぶっちゃけ俺やマナが遥か昔からこの世界に関係してたなんて信じられない…

 隣にいるマナも同じ顔してるぜ。





「詭弁ね、アンタが何を言おうとキョウコを裏切ったのよ。」


「くどいなぁマナさん、本当にキョウコは駄目だったんだ。」

「だから、何が駄目だったのよっ!」

「そこの男の思想に取り憑かれてたんだよ。」





 と俺を指さすタカユキ…





「え?俺?」

「いやぁ、本当に忘れているなんて腹立たしい事この上ないけどね…。ユウさん、貴方は僕達全員を不幸に、いや、そんな簡単なものじゃない、もっと凄まじい事態になる。貴方はそれを普通にやる男さ…。」


「ちょっと待て!!勝手に決め付けんなっ!」

「決め付けも何も、貴方のせいで何人が苦しめられたと思ってるんだよ?」





 何言ってるんだ…

 タカユキの知る俺は、いったいどんな悪党だったんだよ。





「ユウ、落ち着いて。」




 そっと俺の肩に手を乗せながら、宥めてくれるマナ…

 そんな何気ない仕草1つだけど、ゴチャゴチャしてた頭の中が、少しだけ冷静さをとりもどす。



「あぁ、大丈夫って言い切れない自分が少し嫌になるけどな、平常心は失わず頭の中がグルグルだ…。」


「ふふ、余裕あるじゃないの…確かに私も頭の中はグチャグチャよ、、1度冷静に整理したいけど、、、」



「……だな、あの野郎と他の奴等が邪魔って感じだな。」

「そうね、カレン1人だと何とか互角ってくらいかしら?」

「互角ね、まぁ本気モードのカレンなら、なんとかしてくれそうな感じはあるけど、どっちにしろカレンを置いて逃げるのは無しだな。それこそ海人王ライナスってのは、呼べないのか?」


「まだ寝てると思うけど、一応呼んでみたいと思うわ。その間少しだけ時間を稼いでもらえないかしら?」

「時間を?どれくらいだよ。」

「一分もいらないわ、どっかで寝てるライナスにネオクリスタルから強制的にエナを送り込むだけだもの。」



 サラッと、おっかねぇ事言ってるけど大丈夫なのかそれ?

 まぁ、言っても王様ならイケるか……多分。



「まぁ、一分くらいなら、急に向こうが暴れても何とかなりそうな感じだけど、俺その海人王って知らないんだが、どんな奴なんだよ?」

「うーん、頑固者?基本的には海人種以外に我関せずって感じね。」

「まぁ、連合国入りしてないってだけで多少なり予想してたけどな…」






 ……





「ねぇ?ユウさん、僕の話の途中でマナさんと話すなんて、そんなにつまらなかったかな?」

「あぁ?マナと話すのは当たり前だろ?お前の話なんて何一つ面白くねえんだよ!もっと面白い話しろよ!」



 無茶苦茶な挑発をタカユキにぶつけてみるが、さてどうでるかね?




「ふふふふふふふ…相変わらず、相変わらずだ貴方は、昔も今も、1度全てを終わらせたのに、またこんな処まで僕の邪魔をしに来るなんて…」

「おいおい、昔の俺はお前の邪魔をしてたのかよ?だったら少しはお前の話も、信じてやるよ…なんせ昔の俺は今の俺と気が合いそうだからな。」


「そうやって馬鹿にしてさ、変わらない!変わらないね!ユウさん!貴方は何がしたいんだよっ!昔も!今も!僕の邪魔をするのかっ!!!!」



 激しく捲し立てるように俺に感情を向けるタカユキ…

 正直昔の事を言われてもサッパリなんだが、こんな性格の野郎が居たなら多分だけど相性は悪かったろうな…。



「けっ、昔からとかなんとか、うるせぇんだよ!そんなに昔の事懺悔させたいなら今すぐにでも俺の失ってる記憶を元に戻してみろよ!あん?」



「……ッ!?

 ユウさん…男に二言は無いよ?」



「はっ!お前の知ってる俺はそんな女々しい奴か!?生憎今現在お前の前に立ってる俺はな!有言実行って信念持ってんだ!」

「オッケー、オッケー分かったよ、そこまで言うならまずはユウさん貴方からだ!後悔しないでよね、、、、」



 ニヤリと不気味な顔をしながら、ボロボロのマントの中で何やらゴソゴソと動くタカユキ…


 ハッタリにしちゃぁリアリティある行動だな、まさか、ここで俺の失ってる記憶を?


 いや、惑わされるな…

 集中だ、何があっても集中するんだ。




 …





 バギィッッッィン!!!






 と激しい音が響いたと思ったら、タカユキと俺の間で火花が散る。





 うっお!なんだいきなり!?





 眼前には見慣れた色の緑の髪の毛、カレンが後ろ向きに立っている。

 そんなカレンと対峙するように剣聖アクアが持ち前の武器をカレンに向けて構えている光景がある。










「いきなりユウちゃんを襲うなんてね…」


「くっ!ふふふ、先ほどとは動きが、まるで違いますわね…っ!」

「これ以上何かするなら、容赦しないよっ!」




 そう力強く言いながら、放つカレンの一撃。


 不意を突かれたのか、咄嗟に剣でカードするも全身を洞穴の壁に叩きつけられるアクア…




「がはっ!ぁぁっ!!!」



 激しい爆音と共に、岩壁に思い切り叩き付けられ飛ばされたアクアは、血混じりの唾を撒き散らしながらその場に崩れ落ちる。



「た、助かったぜ、カレン…いきなりの事でビックリしちまったぜ。」


「ユウちゃんを見ながら辺りを警戒してたんだけど、いきなりアイツがユウちゃん目掛けて斬り込んできたからつい……」

「ったく、本当にカレンの『つい』は危険極まりないぜ、ったく。」



 そんなこんなの言い草だが、正直感謝の気持ちいっぱいなのは、後程カレンに伝えてやろう。




「ふふふ、なんとまぁ恐ろしい一撃…ゴホッ!」

「無理しないで、今の一撃でその剣は使い物にならないよ。」



 そう言うカレンの言葉に、自身の剣を確かめるように見るアクア。


 刀身にヒビが入っているのが、遠目に見ても分かる。

 あれじゃ戦闘を続けるのは難しいだろうな…




「あぁ…これ?ご心配ありがとう首斬り、でもね私には関係ないのよ?」

「え???」



 そう言うなり、自らの腕に剣を当て軽く刃を引く。

 ヒビが入っていても鋭い刃はアクアの腕に一本の切り傷を作り出す。



 うぇ!?アイツ!自分の腕を斬りやがった…見てるこっちが痛いぜ。



「さぁ、食事の時間よ?」



 腕から流れ落ちる血液を自らの剣に滴らせるアクア…

 そんな彼女の不可解な行動に共鳴する剣は、みるみるうちにヒビが修復していく。


 直ってる、血を吸ってるのか!?

 俗に言う魔剣みたいなアレか!?



「気持ち悪いね、その剣。」

「あらあら、この剣の素晴らしさが分からないのかしら?」

「ふぅーっ…ユウちゃん…少し無茶するよ。」


 小さく息を吐きながらボソリと呟くカレン。


「こんな状況だ、もう止めねぇよ、ぶちかませ!カレン!」

「ありがと…」



 そう言って目の前から姿を消すカレン。

 消えた次の瞬間には、アクア目掛けて持ち前のエナの剣を叩き込む。


「せっかちねぇ…」

「本気でいくよっ!」




 右手に握ったエナの剣をアクアに叩きつけるように上から振り下ろす、が、アクアもそれをしっかりと剣で受け止める。


 次の瞬間カレンの左手から見えないエナの剣を展開させる。


 勿論アクアは気付いていない。





 よし!もらった!





「アクア、見えない剣が来るよ。」






 タカユキの一言により、カレンを蹴飛ばして距離を取るアクア…

 不意討ちが失敗に終わったカレンは少しだけ不機嫌な顔をしている。



「ありがとうございますタカユキ様。」

「あんまり暴れちゃ駄目だよ?この洞穴って頑丈そうに見えるけど、君達クラスが本気出したらすぐに崩れてしまうじゃないか。」

「これは…また…首斬り相手に本気になれないとは…」




 タカユキの言葉に苦悶の表情浮かべながらカレンと対峙するアクア…


 正直助かったぜ、これでアクアは本気を出せない状態でカレンの相手だな、まぁカレンはそんなのお構いなく暴れるだろうけど。


 しかし、カレンのエナの剣を見えるのは俺だけだと勝手に勘違いしてたけど、マナもタカユキも干渉されたエナは見えるんだよな…




「んで?お前は何かしてくれるんじゃなかったのか?」

「そうだったね、少し邪魔が入ったけど…」




 先ほどと同様にマントの中でゴソゴソと妙な動きを見せるタカユキ…


 ん?なんだ!?

 ボンヤリと光って…



「完全とはいかないけど、まぁこんなものかな??」



 そう言いながら握り拳を高々と突き上げるタカユキ…

 その拳に握られた小さなクリスタルからは優しい光が溢れている。


「ネオクリスタル…の輝き…なのか!?」

「正解…と言ってもこの術はゲートシステムと、また根本的に違うアプローチなんだけどね。」

「何を言ってるのか分かんねぇよ!」



 アイツには解説付きじゃないと会話が成り立たないぜ…ったく。



「まぁ、簡単に言うとね。身体の1部を過去に巻き戻すのさ。」

「身体の1部を?過去に?」

「人の身体っていうのは不思議でね…様々な情報を蓄積している、そしてその情報は決して失われない、それこそ肉体が消滅でもしない限りね。」



 肉体が情報を蓄積だと?

 その1部を巻き戻すって事は、まさか!?



「気付いてくれたかな?ユウさん、そうさ例え頭が忘れていても蓄積された情報を元に記憶を瞬間的に復元させるのさ!!」

「そんな事が可能なのか!」

「まぁ効果は一瞬だから実用レベルじゃないんだけどね。すぐに忘れてしまう…けど、一瞬にして過去の記憶を取り戻すんだ!それによって頭がパンクしても僕は知らないよ!本来記憶はゆっくりと取り戻すべきだからね!」



 え!?ちょ!それヤバくね!?

 大容量がいきなり頭に詰め込まれたらパンクするのは素人でも分かる…


 もし俺が本当に過去の記憶を失っているんだとしたら、タカユキの術を受けた瞬間俺の頭はパンクする…



「さぁ!覚悟は良いかい!?そして、後ろでコソコソやってるマナさんもね!」

「げっ!気付いてた!」


 マズい!完全にマナは無警戒じゃねぇか!

 てか、警戒してどうにかなるレベルでもないかもしれないけど。




「マナ!気を付けろ!タカユキから術が来るぞ!」

「えぇっ!?いきなり何よ!それ!?」








「ははっ!もう遅いよっ!!!!!!!!」






 タカユキの手が開かれ、真っ白な光が俺とマナに向けて放たれる。



 カレンはタカユキの向こう側でアクアを追いつめてる、マナは突然の事により、固まってるように見える。

 タカユキの野郎の勝ち誇ったあの面気に食わねぇ…


 全てがスローモーションのように、ゆっくりと流れて行くようだ。






 そして…








 真っ白な光がゆっくりと俺を包み込む。























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