46話 呼んで声するその方へ
まさかの四天王的なフラグ満載なのが他にも居たなんて思わなかった訳で、、、剣聖アクアと対面してしまった俺は久しぶりに身の危険をヒシヒシと感じていた…。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
おいおい、まだこれからって時に、まさかのボスキャラ出現とか笑えねぇよ。
とか考えていると、目の前のシグマ帝国四聖将アクアが剣を構える…
いったい何を?
と思った瞬間、俺の背後から頭の上を掠めるようにカレンのエナの剣がアクアに襲い掛かる。
キィィィン!!!!
と剣と剣がぶつかるような、かん高い音を響き渡らせ、目の前のアクア目掛けてカレンが飛び込む。
「ふふふっ流石首斬り、あの一閃では倒せませんか…。」
「ちょっと油断しただけ。」
そう言いながら持ち前の剣を、目にも止まらぬ速さで振るうカレン。
しかし、そんな神懸かった速さの剣を全て受け止める剣聖アクア。
おいおいおい、状況が追い付いていかないぜ、まったく。
なんだってんだ!?シングルの男を付けてケアルランド境まで来たのに、ここでまた足止めかよ、しかもその足止めキャラが、グレンと同じように四聖将ってマジかよ…。
「ユウ…どうするの?」
「いや!?今その質問するんですか!?」
目の前で化け物級の戦いを繰り広げられてるのに、どうするもクソもあるかよ、ったく、正直動けねえってのが一番だぜ。
「ふふふっ、首斬りカレン、何故見えない剣で振るってこないのです?」
「関係無いでしょっ!!」
そうだよ、なんでわざわざ相手に見えるように実体化して剣を振るってるんだカレンは?
「あら?もしかしたら、振るえないのかしらー?」
「だから!関係無いって言ってるでしょ!!」
バキンッ!!
と鈍い音と共に力強い一閃がアクアを壁へ吹き飛ばす…。
てか、カレンはまだ本調子じゃないんだ、だから見えない状態で剣を留めるよりも、実体化して剣を振るった方がカレン的には都合が良いのか…。
ガラガラと岩壁から立ち上がるアクアに対して容赦なく剣を振るうカレン。
が、アクアはその剣閃を紙一重で躱しながらカレンへと歩み寄る。
「こんなものなの?首斬りカレンとも呼ばれた貴女の実力は?」
「うるさいっ!なぁ!」
見え見えの挑発にカレンのエナの剣は光を増し、アクア目掛けて振り下ろされる。
が、そのカレンの一撃を片手で持っていた剣で受け止めるアクア。
地面が揺れる程の衝撃だが、涼しい顔の剣聖。
「ふぅ…本当にこの程度なのね…」
落胆した声を分かりやすく発するアクア。
だが、カレンはそんな挑発にしっかりと乗ってしまう…
「ちょっとムカつくんだけど!!」
そう言うカレンの両腕から、溢れる膨大なエナ…
やべっ!
「おい!カレンッ!!落ち着け!!」
「ッ…!?」
俺の声が届いてくれたのか、溢れ出たエナはゆっくりとカレンの元へと返っていった。
カレンも分が悪いと思ったのか、一度俺の元まで戻ってくる。
「ありがとユウちゃん、少し頭にキテた。」
「あぁ、あんまり無茶すんなよ、ってか相手が悪いな。」
「うん、正直少しキツいかも…」
グレンの時以来の弱音だな。
そんだけキツい相手って事か…。
このままだと、洞穴も戦闘の衝撃に耐えきれない予感しかしない…
ここは一つ駄目もとで交渉してみっかね。
「おい!アクアとか言ったな!少し話があるんだが良いか?」
「あらあら魔眼使いの坊やから、お話とは…嬉しいわ、何かしら?」
「けっ、坊やって歳でもねぇけどよ、、、この奥にちょっと用事があるんだけどよ、通してくれねぇか?」
「ふふふっ、冗談半分だと思うけど私がそれを許可するとでも?」
「だよな…けど、タカユキって奴に話があるんだよ、ちなみにこのマナはタカユキの顔見知りだぜ?通してくれねぇかな??」
「!?」
その俺の言葉に動きが止まるアクア。
「あの方と…面識があるですって?」
「ちゃんと亜人語で話したはずなんだが通じなかったか?」
まだ若干疑ってるような顔で俺を見てるな…さて、どう出る?
「魔眼使いと首斬りは、そっちに必要なんじゃなかったか?」
「……少しお待ち頂けますでしょうか?」
そう一言だけ呟くと、スーッと姿を消すアクア。
目の前の敵が消えた事により、身体の緊張が解け脱力感が襲い掛かる。
「ぶはーっ!!なんだよ、いきなりあんなの出て来るなんて予想外だぜー。」
「ごめんユウちゃん、カレン、アイツ倒せなかった。」
「馬鹿言うなよ、アレを瞬殺出来たら逆に恐いわ!足止めしてくれてサンキューだ、カレン!」
グレン相手にした時は、身体全体が変なオーラに呑まれた感覚だったが、アクアも同じようにヤバかった…カレンが居なかったら問答無用で斬り伏せられてたと思うとゾッとする…
「なんにせよ、助かったぜカレン。」
「うん、でも…」
「ま、こっからが本番かもしれねぇ、まだ気を抜かないようにしなきゃな。」
「そうだね。次は勝つよ!」
力強い発言をするカレンの頭をポンと撫でながら、時が過ぎるのを待つ。
正直今すぐ奥へと突き進みたいところだが、返り討ちの危険の方が高い。
マナもカレンもそれを分かっているから、大人しくここで待っているのだろう…。
……
「ねぇユウ…さっきの女って何なの?」
「こっちが聞きたいくらいだぜ、まぁシグマの幹部ってくらいの事しか分からないけどよ。」
「アイツ…いったい何を考えているのかしら…。」
「さぁな…あの女以外にももう1人化け物級の奴に1度逢ってるんだが、他にもまだ2人は居そうなフラグに俺ぁ疲れちまったぜ…。」
「四聖将とか言ってたものね、質が悪いわ。」
ったく、それにしても遅いな…
こうなりゃコッソリと奥の方を覗きに行ってみるかな…
とその場を立ち上がり、ゆっくりと奥へと歩みを進めてみる。
「ちょっと、大人しく待てないの?」
「大丈夫、大丈夫、いきなり攻撃とかしてこないだろ…多分。」
うん、この発言はかなり危険な感じだ。
俺の中の何かがそう言ってる。
「まったく仕方ないわね、私も付いて行くわ。」
「お?マナも覗きに行くのか?」
「そんな趣味の悪いことしないわ、でもここで足止めされてアイツに逃げられるのも癪なのよ…。」
逃げられるか…まぁ確かにな。
『ははっ、逃げないよ。酷いなぁマナさんは…』
突然、洞穴全体に声が響き渡る。
お待ちかねの登場ってわけか、随分と待たせてくれるね…
「久しぶりね、姿を見せたらどうなのタカユキ…」
そう言いながら声の主を呼ぶマナ…
どこか嬉しさにも似た表情を浮かべているのは、多分色んな感情が混ざり合っての事だろう。
カツカツと、奥の方から足音と共に数人の影が現れる。
薄汚れたボロボロのマントを身に纏い、こちらへ歩いて来る男。
黒髪に黒目、この世界ではあまり見ない顔立ちだが、元の世界では普通に見かける顔だ。
間違いないな、あれがタカユキ…
「ははっ、やっぱりマナさんだ。」
「久しぶり、逢いたかったわ。」
シグマの幹部から『あの方』とまで呼ばれてた割には、随分普通な感じだな、なんというかオーラみたいなものが全く感じられない。
まぁ、そうは言っても、しっかり後ろには、アクアと鎧を着た兵士、それにシングルの男も一緒か…
「僕も逢いたかったよマナさん。よく分かったね、僕の居場所が。」
「長いこと捜したわ…アナタ私の知らない所で色々と無茶してたみたいじゃないの…諸々と噂はきいているわよ?」
「噂?僕は基本的に変わってない、何もしてないよ?廻りの皆が勝手にやっているだけさ…」
コイツ…のらりくらりと話しやがって、自分は関係ないとかどの口が言ってるんだ。
「おい!お前!タカユキとか言ったな!ちょっといいか!」
「んー?魔眼使いの人かな?僕に何の用……ッ!?」
と、俺の顔を見た瞬間タカユキの表情が変わる。
「ななっ!なんで、ここに!?」
「あ?何言ってんだ?」
「ま、マナさん…貴女はどうやって彼を…」
「は?何を言ってるの?」
ん?なんだ?マナも俺も、タカユキの発言の意味が分からない。
だけど、誰がどう見ても狼狽えているタカユキ…
「そんな馬鹿な…こんな所でこんな…」
「大丈夫ですか?タカユキ様。」
アクアが心配そうにタカユキの傍に近寄る。
「あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとうアクア。」
どうやら落ち着いてきたみたいだ。今のはなんだったんだ?
「マナさん、首斬りカレン、そして魔眼使い…か。マナさんの存在は薄々気づいていたけど、まさか捜していた2人にも、こんな形で逢えるなんてね…しかも魔眼使いの正体が……」
なにやらブツブツと独り言を呟いているタカユキ…
「おいマナ、アイツ大丈夫か?」
「昔からあんな感じよ…」
「そ、そうか、なんか軽い電波だから会話通じるか不安になってきたぜ。」
「マナさんが今日魔眼使いと接触したのは気付いたよ。まさか、こんな近くで反応があるなんて思ってもみなかったから、急いで飛んで来たよ。」
「はぁ?また訳分かんねえ事言ってんな、どうやって俺とマナが接触したなんて分かったんだよ。」
「ユウ、タカユキはそういう眼を持ってるのよ、私みたいに個人を特定出来ないけど、ある程度の条件を満たす人間を広範囲で感知するの。」
それで魔眼使いっていう括りで捜していたって訳か。
「はぁぁ、僕はなんて愚かな過ちを…
そうだよ、完全に消滅なんかしないって分かってたじゃないか…。だけどまさかこんな形で…。」
「やっぱ頭ヤバいだろ…。」
「油断しちゃ駄目よ、アイツのペースに巻き込まれるわ。」
あの状態がマナが警戒する口車?って訳でも無さそうだが、一応警戒は解かずにいますかね。
「おい、タカユキとか言ったな!まずお前に言いたいのは、シグマの連中を使って何がしたいんだ!関係ない人達まで巻き込みやがって!」
「なん、だと?」
俺の言葉にまたしても、態度を急変させるタカユキ…
「なんだよ、何かおかしな事言ったか?」
「あ、あ、あなたには!言われたくないっ!何も!何も知らないくせに!!!」
分かりやすく発狂するタカユキに、かなりドン引きなんだが…
「いやまてよ?そうだよ、…っはははは…。
マナさんのその態度を見る限り2人は何も知らないんだろう???」
「おいおい、話が飛びすぎだ!お前は元の世界から来た人間だろ?何でシグマの連中を誑かしてんだって聞いてるんだよ!」
「誑かす?僕が?そんなことはしないよ…皆が住み良い世界にするためのアイディアを出したまでさ、それに賛同してくれた人達を誑かすなんて言葉で纏めて欲しくないなぁ?」
はい、キタコレ、あー言えばこー言う典型的な野郎だ。
「駄目だ、マナの言うとおり話の通じる相手以前の問題だ。」
「そうね、私が代わりに聞いてあげたいところだけど、私にも聞きたい事があってね。」
そうだよな、散々捜してたんだ、マナだって聞きたいことの一つや二つあるだろうしな。
「んじゃ終わったら教えてくれ、俺あの手のタイプ苦手だわ…」
ふふっと小さく笑いながら、タカユキ方へ歩みを進めるマナ。
それに合わせてか、タカユキもこちらにゆっくりと歩き出す。
…
「ねぇ、タカユキ。私が聞きたい事分かる?」
「もちろんだよ、マナさん。大方の予想はついてるけど、そうだなぁ1番聞きたいのは『皆はどこ?』じゃないのかな?」
「まぁ、それも含めて半分正解ってとこ、もう一つはゲートシステムによる障害の取り除きと、回復よ。」
「へぇ?気づいてたんだ、さすが天才。」
「茶化さないで答えなさい!まずは皆の身体はどこ?」
「僕が管理してるよ?というか、マナさんはどこまで思い出したのかな?
いや、障害のせいで思い出せないのか…。」
マナはこっちの世界に来てからの記憶がスッポリ抜けてるんだよな…
今の2人の会話からすると、それも元通りになりそうな事言ってるけど…。
「まったく、長い間研究してきたけど、なかなか上手く行かないのは困りものだ。最後の最後まで頑張ってたヒデトさんやサトルさん、そしてアヤノさんとショウヘイさん。」
「生憎そこら辺の記憶は失われてるの…。私の記憶はショウヘイとキョウコが教えてくれたわ。勿論全部じゃないけどね。」
「で?僕を捜してた理由の1つに2人の行方かな?」
「そうよっ!あの日キョウコはアンタに逢いに行くと言っていたわ!最後に見たはずよ!キョウコだけじゃない!ショウヘイも!」
「随分昔の事を言ってるねマナさん。」
マナがずっと聞きたかった2人の行方…。
タカユキは何て言うのか…
「そうだなぁ、ショウヘイさんに関しては皆と一緒さ…。ちゃんと眠ってるよ…。」
「皆と一緒?眠ってる?」
「ん?あぁそうか、マナさんは記憶には障害が出てるんだったね、、、簡単な事さ、いつか僕がゲートシステムを完成させ皆を元に戻すんだ。そうすれば僕を認めてくれるよね?」
「くっ、相変わらずの言い回しね、皆が眠ってるというのはどういう事よ!方法は!いったい何処にいるの!」
「落ち着きなよマナさん。方法なんてネオクリスタルがあれば簡単さ、現に今展開してるだろ?」
「な!?」
なに!?今展開してるって、この術の正体は人の意識を奪うものじゃなく、100年以上も生きたまま寝かせる事が可能なのか!?
「そして場所かい?それはマナさんもよく知ってる所だよ…。」
「まさか…。」
「5人は皆当時のままさ、だけどキョウコはね、彼女だけは駄目さ。」
どこか寂しそうなタカユキの口から漏れた一言にマナは激高しながら詰め寄る。
「あの子に何したのっ!!!」
タカユキの胸ぐらを掴み上げ、今にも殺してしまいそうな表情でタカユキに食ってかかる。
「お嬢さん、それ以上タカユキ様に何かするようなら、斬り伏せますわよ?」
ニッコリ笑いながらマナの背後に立ちながら剣を向けるアクア…。
「やぁアクア…大丈夫だよ、マナさんは少し怒っているだけさ、話は聞くようだし手荒なことはしないでくれないかな?」
「ふっ、お優しいことで…。」
タカユキの一言で剣を収め、フェードアウトするアクア…
まったく一瞬のうちにマナの背後に立っていた…。
どいつもこいつも化け物じみて嫌になるぜ。
「答えなさい!タカユキ!キョウコをどうしたのっ!!」
「キョウコだけは何度言っても分からなかった…助けられるなら助けてたよ?でも、完全に洗脳状態だったのさ、僕の言うとおりにしてくれたら良かったのに…。」
「あの子は何も変じゃなかったわよ!何をしたの!」
「変じゃなかった?本当にそう言えるのかい?」
「当たり前よ、あの子が1番皆と元の世界に帰りたがってた、誰よりも皆の事を想っていたの!」
悲痛なマナの叫び声が洞穴に響く…マナの言ってる事が本当なら、キョウコはタカユキと意見が合わなかったようだけど…。
タカユキはキョウコに原因があるみたいな言い方だ…俺にはよく分からない話だが、元の世界の人達の話はしっかり聞いておかなきゃだな…。
「キョウコはね、完全に毒されていたよ。思想が全く同じさ…あのまま彼女を放置しておいたら、とんでもない事になっていたよ。」
「思想が一緒?何の話をしているか分からないけど、タカユキの研究の手伝いに行ったのよ、それを無下にしたって事はアンタは私の敵よ!!」
「やれやれ、僕の話を最後まで聞こうよ、マナさんは障害によって覚えてないみたいだけど、キョウコはね、この世界を滅ぼせる種族を造ったんだよ?」
「その話はショウヘイから聞いてるわ…私達はその昔種族を造ったって…。」
種族を!?造った??
俺と同じ元の世界の人達が、この世界の種族を!?
いったいどういう事なんだ!?
「へぇー?ショウヘイさん話してたのか…じゃぁキョウコの罪は分かるよね?」
「あの子はずっと自分の種族の面倒を見てきたのよ!でもあの日の事件を境にそれも必要なくなったけども…。」
「うんうん、キョウコは自分の罪を認めてしっかり抑制していたって事だね、勿論知ってるよ?本人がそう言ってたしね。だけど、それは絶対的じゃなかった、完全に抑えつける事が出来ないなら世界を滅ぼす種になるだろ?だからそうなる前に僕が手を打ったのさ。」
「ま、まさか!?アンタが、あの時の!」
「キョウコが種族を一纏めにしてくれていたから、すぐに終わったよ。まぁその時近くに彼女もいたような気がするけど、かれこれ随分昔の事だ、未だにキョウコを見かけないならそういう事だろうね。」
「そ…そんな…。」
タカユキの言葉を受け、膝から崩れ落ちるマナ…。
昔に何があったか分からないが、話の流れからするとタカユキがキョウコの造った種族を滅ぼしたって事か…で、その時キョウコも一緒に…。
え?ちょっと待てよ、ライデンが言っていた集落、まさか長寿人種。
だとすると、キョウコはタカユキが長寿人種を滅ぼす事を予見してライデンに伝言を預けたって事なのか?
「さて、マナさん?他に聞きたい事はないかい?無いなら今度はこっちの話を聞いてくれないかな?」
「話ですって…アンタ、キョウコを殺しておいて、よくそんな口がきけるわね!」
そんなマナのポケットからエナの光がボンヤリ見える。
「あらら?まだ持ってたのかい?それ、破片は結構回収したはずなんだけどなぁ…。」
「ショウヘイから託されたネオクリスタルよ!」
「そっか…ショウヘイさんも肝心な事はマナさんに言ってなかったみたいだね…。」
「何を言ってるのか分からないけど、アンタはこれで終わりよ!!」
そう言い放つと、目が眩むほどの青い光を放つネオクリスタルを片手に持ちタカユキの前に立つマナ…。
「おい!マナ!何しようってんだよ!」
「コイツは許せない!ここで生かしておいたら後々後悔するわ!」
完全に頭に血が上ってるのか、こんな狭い所でネオクリスタルの術を使ったら俺達まで危険だ…。
だけど、そんな危険な状況なのに当のタカユキは全くもって余裕の表情だ。
「いや、マナさん??ちょっと待ってよ、ゲートシステムにはネオクリスタルの破片が必要なんだ、だからそれ渡してくれないかな?」
「なっ!?」
「はあっ!?」
今何て言った?
ゲートシステムにはネオクリスタルの破片が必要だって?
「タカユキ…どういう事なの!」
「だから僕の話を聞いてって言ったじゃないか、とりあえずその術の展開を止めてくれないかな?こんな狭い所で暴発したら大変だ。」
「くっ…。」
悔しそうな顔で、ネオクリスタルに布を被せるマナ…激しい光はゆっくりと収束して行く。
今の今まで眩しいくらいの青い光は収まり、ゆっくりとネオクリスタルは光を失っていく…。
…
「あぁ、ありがとうマナさん。じゃぁ話をしようか?」
「言っておくけど、アンタの事を信じた訳じゃないのよ、そこんとこ覚えておきなさい。」
「分かってるよ、まず簡単に説明すると、今マナさんが持ってる破片なんだけどゲートシステムに必要な情報が入っている可能性があるんだ。」
「それは当時の『マザー』の忘れ形見ってとこかしら?」
「マナさん、僕を怒らせようと『マザー』の名前を出したようだけど無駄だよ。」
「ふん、別にそんなつもりじゃないわ!さぁ、さっさと続けなさい!」
何やら2人で訳の分からない話を始めたけど、俺にとってはタカユキの後ろに居る他の3人が気になって仕方ないぜ…。
戦力的にはやや不利だよなぁ…
アクアはカレンになんとか抑えてもらえても、もう1人の兵士が俺にとっては完全に鬼門だ…。
シングルのオッサンは、まぁ何とかなるだろうけど…
「カレン…」
「なに?」
「その、調子的なのはどうだ?さっきよりエナが戻ってるとかあるか?」
「うーん、どうだろう?あまり変わらないかも…」
緩和効果もここまでか…
さっきの小競り合いだとカレンは少し圧されていた感じだったな。
やっぱりここで正面衝突ってのは少し無理があるか…
かと言って、アイツ等とお手々繋いでシグマへゴー!って訳には行かねぇ、さてどうしたもんかね。
頼みの綱はマナの持ってるネオクリスタルだけど、あの流れからして微妙な感じだな…。
…
「確かに当時の『マザー』が現存しているなら、皆の事は元に戻せるかもしれないね…ただ、それでもゲートシステムは完成しないよ。これは本当だ。」
「完成出来なかったの間違いじゃないのかしら?」
「手厳しいなぁ…覚えてないけど、昔はマナさんとヒデトさん2人でよく研究してたんだよ。」
「覚えてないわね、でももしもアンタの今の研究が完成すれば私の記憶は戻るのかしら?」
「ははっ!勿論だよ!マナさん!!そうさ、皆を元に戻せるのは僕だけなんだよ!!」
おいおい、俺にはデカい口を敲いておいて、マナのやつすっかり口車に乗せられてるじゃねぇかよ…。
「私の記憶…」
「そうだよ、また昔のように皆で協力しようじゃないか!さぁ、分かってくれたなら、そのネオクリスタルの破片を僕に渡してくれないかな?」
マズい!
「おい!マナ!渡すなよっ!」
咄嗟に叫んでしまった俺にタカユキの矛先が変わる。
「ねぇ、ユウさん…。いい加減にしてくれないかな…。」
え?アイツ今俺の名前を呼んだ?のか?
「な!なんで俺の名前を?」
「ユウさん、ユウさん、ユウさん、マガミユウさん…貴方も覚えてないんだろ?分かってる、分かってるよ、そうさ覚えている訳がないんだ!」
な!?に!?
俺が覚えていないって、それってつまり…。
「貴方は昔からそうさ、僕の邪魔ばかり!だからあの時にっ!なのに、何で今更こんな時にっ!」
バクンバクンと心臓が音を立てて鳴っているのが分かる。
落ち着け、俺は半年前にこの世界に来たばかり。
タカユキの事なんて知らない、ましてや先程から出てきている名前の人物なんて心当たりすらない。
「て、適当な事言ってんじゃねぇっ!他人のそら似と勘違いしてんじゃねえのか!?俺はこんな世界の事なんて知らない!最近飛ばされてしまったばかりなんだ!お前が言うように俺が何か記憶を失っているなら、いや、昔この世界に居たのなら、何で俺は元の世界に居たんだ!説明してみろよっ!!」
「他人のそら似じゃないんだよユウさん。貴方もこの世界に居たさ。そして貴方が居たから皆は…。」
何言ってんだよ、チクショウ。まるで話が見えない。
「ユウ、貴方もこの世界に…?」
「マナ…俺は知らない、昔の事なんて、いや、マナと同じように記憶を失ってるなんて事は無い!本当だ!」
「止めなよ、ユウさん。僕が全部教えてあげるよ、貴方の罪を。」
「ふざけるなっ!俺が何をしたってんだ!」
「何をしたかだって???ユウさん、貴方が全ての始まりじゃないか…そう、全ての始まりだよ。」
異世界に飛ばされた俺が探し求めていた、元の世界への手掛かり、しかしその先には更なる事実が隠されていた…。




