45話 理由無き…
「さてと…。何から話そうかな?」
パンパンと手を叩きながら、目の前の黒ずくめの人物に話しかける。
カレンはエナの術を解除し、今は見えない剣を片手に展開しながらマント野郎の後ろで立っている。
まぁ、何もしないと思うけど、念のためだな。
「貴様…は…何故動ける、先ほどの術の緩和があったとしても早過ぎる。」
「ん?緩和されたって事に気付いてるって事は、お前も多少なり術の効果が出てるのか!?」
「…ッ…!!」
完全に口が滑ったみたいだな。
言葉に詰まってる…。
コイツは術の効果があったとされる、シングル達の様子から術の緩和があった事なんて分かる訳ないし、コイツは何かしらの手で術の効果に対応してるみたいだな…。
「さて…シングル達を使って、動けない王族やお偉いさんを暗殺しようとしてるのは誰が見てもバレバレだ。この状況になって、お前はどうするつもりなんだ?」
「……くっ!貴様、一緒にいるのは首斬りだな。」
「そのとおり、お前の後ろで首を狙ってるのはカレンだぜ?だからあんまり刺激してくれるなよ?」
とか言っても、カレンは脅すよりも即斬る子だからな。
そんな俺の言葉に少しピクッと反応を示す目の前の人物…。
「聞いていた話では、首斬りは術が使えないはず…そんな脅しでどうにかなるとでも思っているのか?」
「へぇ?その口ぶりだと自分がシグマ側だって認めた事になるけど?開き直っちゃったか?」
命の危機でも感じたのか、急に自身が不利になる事を口にする。
まぁさっきの会話や状況から見てコイツが怪しいのは間違いないんだけどな…。
「首斬りと魔眼使い…か…。さすがに勝てる見込みも無い、そして今後の身の保証も無い…ならば話すしかなかろう。」
そう言うと本当に観念したのか、抵抗する素振りすら見せない人物。
「まずは、その被り物を取って顔でも見せてもらおうか?」
声を聞いた感じだと完全に男だけどな、もしかしたら女だったー!とかあるかも…
そんな下らないことを考えていると、目の前の人物は素顔を晒す。
…
白髪混じりの初老の男。
顔の半分以上は火傷のような後で醜く爛れている。
「ふん、醜いか…」
「あ、、悪い、人のコンプレックスをジロジロ見るような真似しちまった、、、その顔どうしたんだ?」
「私も先ほどの子供同様『シングル』なのだ、この火傷は中央大陸に居た頃負ったもの…。」
「お前も『シングル』だって?」
そうか、この術の中で動けるんだ、まずそれを疑うべきだよな…。
「生まれてからずっと虐げられて生きてきた、それこそ奴隷のような生活だ、、、同じ亜人なのにな。」
「下らねえ差別だ、中央大陸ってのはそんなに酷いのかよ。」
「中央大陸だけではない、東聖大陸も変わらんさ…。だが、ネオシグマ帝国は違う…あそこは『シングル』だろうが名家だろうが関係なく受け入れてくれる。人族最後の楽園よ。」
シグマ…が…楽園…
確かにグレンはクラリスと一緒で名家だし、この男もシングル。
見たところイグザ連合国のような扱いは受けていないみたいだし…
「けどよ、同じシングルの子達に、お前は人殺しをさせようとしてたんだぜ?」
「我等シングルにとっては大義ではないのか?」
「あのな、俺はシングルじゃねぇし、ましてやこの世界の人間でも無い。けどな、人を殺してまで何かを成し遂げたいなんて一度も思った事はねぇよ、だからお前の言ってる大義ってのが分からねぇな…」
「そうか、魔眼使い…貴様はシングルでは無いのか…では話すだけ無駄だな…」
「そうじゃねぇだろ!話す相手が違うんだよ!」
「なに?」
「お前が今さっき狙ってたお偉いさんに言えば良いだろがっ!」
「ふ…馬鹿な、連合国のトップだぞ?私のような者の話など聞く耳持たぬわ…。」
コイツの言ってる事も分からなくはない…現にケアルランド国内でもシングルの扱いは酷かったし、さっき会ったアイリーンなんかに話をしても無駄な気がしてきた。
かと言って、ソレを認めちまったらコイツは…
「どうした?魔眼使い…。」
「んなら、俺が言ってやるよ、だからもう人殺しなんて止めろ。」
「なんだと?ふざけた事を言うな!貴様に何の権限がある!!」
「権限なんて無ぇよ…けど、生憎王様方とは話せる立場でな、直ぐに処遇を何とか出来る訳じゃないと思うが、それでもシングルの扱いに関しては俺も言いたい事はあるんだ。
だから、お前のその想いは俺が伝えてやる!それでどうだ!?」
「……。」
男はジッと俺の顔を見つめたまま何かを考えている。
「魔眼使い…貴様はあの方と同じ雰囲気を持つのだな。」
「あの方?」
「いや、別人、しかしどこか同じ人種のような…」
「おい!あの方って何だよ!シグマの奴か!?」
同じ人種って、まさか…
「お前は、あの方って奴に言われてこんな事してんのか?」
「少し違うな、私はシングルを解放したい…ただそれだけだ。あの方は私の声を聞き入れて手伝ってくれたまで。」
「ソイツは今近くに…?いや、来ているんだろ?」
「何故知っているのだ、魔眼使い…」
マナが探していた人物。
今回のこの一連のゴタゴタを引き起こした張本人、ソイツに間違いない。
「何かと縁のある奴みたいでな…お前さえ良ければ、ソイツの所に連れて行ってくれないか?」
「……断れば…?」
「別に何もしねぇよ。」
「???私をこのまま見逃すというのか?」
俺の発言に目を丸くして尋ねる男。
「まぁ、普通なら軍に引き渡して後は宜しくって感じなんだが、皆寝てるしな。」
「魔眼使い…お前…」
「ま、冗談はさておき、お前はシングルの解放を考えての行動を起こしただけなんだろ?人殺しっていう選択が気にくわないけど、考えは間違ってないと思うぜ?人種差別なんてクソだ!」
この男をここで解放しても、捕まえても、この後シングル達が人殺しに手を染める事は無いだろうし…
それに、今この男が捕まってしまうことにより、シングルの立場が危うくなる事だってありそうだしな。
「って感じで良いかな?カレン。」
「カレンは何でもいいよー。」
「何でもって、もう少し考えろよ…。」
「私は…どうすれば良いのか分からなくなってきた…死は覚悟してここまで来たのだ、それを…。」
「は?何言ってんだよ、シングル達を解放したいんだろ?また頑張れよ!今回みたいな事じゃなくさ、もっと良いやり方あるんじゃねぇの?救いたい人達がいるなら、命が無駄になるようなやり方じゃ駄目だろ?何も変えられねぇよ!」
俺の言葉を聞く男は、何も言わず下を向きながら沈黙してしまう。
なんか偉そうな事言ってしまったけど、少しは反省してくれたかな?
さて、コイツが親玉のとこまで案内してくれたら楽なんだけど、そうも行かないみたいだしな…
とりあえず今日はお偉いさん達の暗殺は阻止出来たみたいだし、この後の作戦をそろそろ始めるかね…
「おいカレン。さっき話してたアレは、いけそうか?」
「うん、もう少し調子見たかったけど、大丈夫だと思うよ。」
「りょーかい!
んじゃ俺達はもう行くぜ?もう暗殺とかすんなよ!次は本当に知らないからな!」
大きな部屋にへたり込む男を後目に、俺とカレンは部屋を出る。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……
……
「さて、本来なら他の王様の安否確認もしたいとこだけどな、アイリーンも言ってたし大丈夫だろ。」
「もうお城は良いの?」
「とりあえず最悪の事態は免れたし、あの男がこの後捕まっても逃げても暗殺はもう無いだろ。」
なんだか分からないって顔してるなカレン。
間者なんてぶった斬るってのが元々の本分だもんな、本当に変わってきたのか?この爆弾娘は。
「なにジロジロみてるの?」
「いや、別に?」
「変なユウちゃん。」
変なユウちゃん…か…
まぁ、俺も変わったかもな。
さて、そろそろマナを迎えに行くか…
すぐに戻るなんて言っちまったしな、今頃一人で寂しがってるかもしれない…うん。
……それは無いな。
来た道を戻るのは容易く、俺とカレンは城の外、マナの隠れているであろう所まで戻ってきた。
……
「おーい、マナ-!いないのかー?」
相変わらず人気の無い外の状況に、俺の声は響き渡る。
「あれ?ここら辺だったような気がするけど、間違えたか?」
「間違ってないよー、ほら、あっちから歩いてくるのマナだよ。」
とカレンの指さす方から、マナが歩いてくる。
「よう、無事だったか!」
「こっちのセリフよ、、、お生憎様、外は静か過ぎるくらいだったわ。」
「とりあえず最悪の事態は防げたぜ、王様も一人だけ意識を保ってる奴が居たしな。」
「そう、なら良かったわ。それと、さっきはゴメンなさい、少し考えがゴチャゴチャして…。」
「まぁ仕方ないさ、んでもこの後は付いてきてくれるのか?」
「えぇ、勿論よ。ある程度の準備も出来たし、本格的に私も協力するわ。」
準備?
なんだか協力的だな。まぁ、あんな静かなとこに一人でジッとしてたら、頭も冷静になるってもんか。
「まって!」
突然カレンが口を開く。
敵か?
慌てて辺りを見渡すが人の姿は見えない。
「どうしたカレンいったい何が?」
「あそこ……さっきの人だよ。」
ん?どこだ?
カレンの視線の先、遥か奥の方に動く黒い影…。
「あそこか…アイツ諦めてくれたんだな。」
「ちょっと、なんであんな怪しい奴放っておいてるのよ。」
「まぁ、色々あってな。もう今日は目的達成も出来ないし見逃してやったんだよ。」
「ふーん、意外と恩情的なのね。
で?あの怪しい奴はどこに向かうのかしら?」
どこって、そりゃぁ…元居た所に帰るから…
「あ…そうか。」
「何?」
「思わぬラッキーだぜマナ!アイツはシグマから来たんだ。そして、マナが探していた男と接触もあるはずだ」
「どういうこと?」
「最初から話すと長くなるから、要所だけ言うけどな…」
……
「なるほどね『あの方』ね…そんな風に呼ばれてるなんて、アイツらしいわ。」
慎重に、男の後を付けながらマナと先ほどあった件を話す。
「まぁ、最初はピンと来なかったけど、同じ人種みたいって言われてな…。」
「間違いないわね、やっぱり来ていたのね。」
「なぁ、マナ…。ソイツの事聞いても良いかな?少なからず俺達と同じ元の世界の人間だったんだろ?」
「そうね…いざという時にアイツの口車に乗せられないように、先に話しておくわね。」
口車ときましたか。
まぁ、この世界のデタラメな能力者達を相手にするなら、口の上手さも有効な武器になるな。
「アイツの名前は『タカユキ』私よりもずっと前から、この世界に居たのよ。」
「タカユキ…ね。クラスに1人は居そうな名前だな、まぁこの世界じゃ珍しいだろうがな。」
「続けるわよ?」
「あぁ、悪い脱線しかけたぜ。」
「初めて逢ったのは、そうね、ショウヘイやキョウコと一緒に居た頃だったかしら…。」
「随分前って事な…」
「アイツは何かの目的を持っていたわ、それが何かは分からないけど、キョウコは苦手だったみたい。」
「目的…か。」
マナが初めて逢ったのはキョウコやショウヘイがまだ居た頃か…
そもそもなんでショウヘイやキョウコは居なくなったんだ?
「いつも不思議な研究をしていたの、そしてある日アイツはソレを完成させたわ。」
「完成?」
「ゲートシステムよ。」
「なっ!?」
ゲートシステム!?
ってかゲートって…俺がこの世界に飛ばされたアレだよな!?
「酒場でユウが言ってたわね、元の世界の私がそう言ってたって…。」
「あぁ…間違いない、俺の知ってるマナが『ゲート』って確かに言っていた。」
「間違いないわね、異なる空間を移動出来るシステム『ゲートシステム』私はそのゲートを使えば元の世界に帰れる…そう思っていたわ。」
「思っていた?いやいや、おかしいだろ、俺はゲートってのを通ってこの世界に来たんだぜ?」
あの夜のことは覚えてる。
普通の人には見えなかった違和感、マナが『ゲート』と言っていたものが、急に俺の身体を支配して…そして気づいたら東聖大陸封印の地だ。
「ユウ…確かに貴方はゲートを通ってこっちに来た、それは多分間違いないわ。でも、行きは大丈夫でも帰りは?」
「え!?まさかとは思うけど…。」
「タカユキの見解ではゲートシステムは私達がこの世界に来たのとは別物…異なる空間を移動出来るシステムは不完全だったのよ…。」
「不完全…?……なんで、不完全って分かるんだよ、元の世界に帰れたかもしれないじゃねぇか!」
いや、まてよ、元の世界に帰れるかもしれないゲートシステム、失敗したらどうなるんだ?
「……皆試してみたけど、駄目だったの…。」
「どういうことだ?」
「ゲートに弾かれた人間には障害が出るのよ…。」
「障害…」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ショウさんに障害が出た…。
もう俺一人しかまともなのは居ない…。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
砂漠の結界柱で見た日記…。
確かにそう書かれてた。
「マナ…ちょっと待て、俺が見た日記では『ショウさんに障害が出た』そう書かれてた。って事は…。」
「日記…封印の地で見たのよね?」
「そ、そうだ!そして、お前の名前もあった!おかしいだろ!?だってお前は俺以外に3人しか逢ってないって言ってたし、それに…」
それに?
いや、違う…日記の主は確かサトル、アヤノ、マナの3人の名前、そしてショウヘイ、キョウコを入れても5人とマナは面識がある事になる、、、じゃぁなんでマナは俺以外は3人しか逢ってない、なんて言ったんだ…。
答えは簡単だ、マナにも障害ってヤツが出たって事じゃないのか?
「その顔を見るからに気づいたみたいね?」
「マナ…お前の障害って何なんだよ…。」
歩きながらマナは赤く染まった空を見上げ、フーッと少しだけ息を吐く…。
「私がこっちの世界に来てから、ショウヘイとキョウコの元で目覚めるまでの記憶。
ユウが見たであろう日記に書かれてた事、封印の地での事が私の記憶に無いの…
それが私がゲートを使った事による障害よ。」
「……ッ!!!」
マナはゲートを、使っていた…。
だけど何らかの理由により失敗…そして障害が。
それが記憶喪失だってのか!?
「じゃ、じゃぁ!他の、例えばサトルって奴とか、アヤノって奴は!?」
「存在は聞いた事がある…けど…見た事は無いわ…。」
「なんっ…だよ、それ…。」
「だから私は長い間アイツを、タカユキを捜していたの。」
元の世界に帰れる手掛かりが、こんな形で俺に突き刺さるなんて想像してなかったぜ…チクショウ。
「なるほどね、そりゃぁ俺でも死に物狂いで捜すわ。けどよ、ゲートってヤツを開発したのがタカユキなら、なんでマナはタカユキと一緒に居なかったんだ?」
「そうよね、誰が考えてもその答えになるわよね…」
「まぁな、障害が出たとかなんとか言ってもよ、元の世界に帰れるかもしれないんだ、皆で色々研究を積み重ねるのがセオリーじゃねぇのか?」
「私も協力してたのよ、ショウヘイも、キョウコも、でも…あの日…」
そう言葉を詰まらせながら、下唇を強く噛み締めるマナ…
「キョウコが居なくなったあの日さえ無ければ…」
「ナガイキョウコが居なくなった!?」
「詳しい事は分からないわ…でも、キョウコはあの日タカユキの研究を手伝うって言って姿を消したの。
おかしいのよ!それまでは、この世界の人達と仲良く暮らしていたり充実している風に見えてたのに、突然タカユキの所に行くなんて…」
ナガイキョウコが突然タカユキの元へ?
多分その日の前までは、ライデンとかの集落に居たって事だよな…。
そして何かをライデンに託してタカユキの研究を手伝いに……
「ユウ、なぜ私がタカユキを捜していたか、分かってもらえた?」
「あぁ…痛いくらいに分かっちまったよ…少なくともナガイキョウコが居なくなった原因は、タカユキにあるって事だよな…。」
「そうよ、そしてその後ショウヘイもタカユキの元へ行って…そして…」
それ以上は何も語らないマナ…
多分口にしたくないんだろう、ショウヘイの障害がどんなものか分からないけど、それを今マナから聞くのは酷だって事くらいは俺でもわかる。
……
……
なんだか、気分が落ち込んでしまったように見えるマナ…
逢った時は気丈に振る舞っていたけど、随分と重いものを背負ってんだな…。
それにしても、タカユキって奴は何を考えてんだ?それこそキョウコが居なくなったってのは100年くらい前の話だってマナは言っていた、ならその間何をしていた?
マナが捜していたって言ってたくらいだし、マナから見つからないように逃げていたってのが一番しっくりくる。
じゃぁなんで逃げていたのか…。
そして、何故このタイミングでマナに気付かれるような事をしてるのか…。
まったくもって謎だらけだ、だけど、今俺とマナ、そしてカレンが付けている男の先には、タカユキって奴が居るはず。
本人に逢ったら色々と話がしてぇもんだな…。
「ユウちゃんアイツ、ケアルランドから出るよ。」
「もう境まで来ていたのね。」
「ていうか、2人ともタフだな、俺結構歩き疲れたんだけど…。」
城の北の森の中をずっと歩いていたが、森を抜けた先の岩壁が姿を現す。
いつの間にか、ケアルランドの外れまで来ていたみたいだ。
敵がシグマなら、首都の外れから仕掛けてくるって予想してたけど、ホントに首都の外れまで来ちまったし…。
「んで?あの男はどこ行った?」
「シッ…!静かに。」
下らない事を口走る俺をマナが制止する。
カレンとマナの視線の先を辿るように、その方向を見ると、男は何やらキョロキョロしながら変哲も無い岩へ向かいなにやらブツブツと言葉を放っている。
「カレン、アイツなんて言ってるか聞こえるか?」
「うーん、ちょっと聞こえないかも…。」
「2人とも静かに!何か動いてるわ!」
そう言うマナの言葉につられ、前を見ると、岩壁の一部がゆっくりと横にズレ始める。
「ほぇー。なんか童話でもありそうな仕掛けだな。」
「ひらけゴマ!みたいなアレね。ユウの言わんとしてることは分かるけど、ここは自重してくれるかしら?少し緊張感を持ちましょう…。」
「ユウちゃん怒られた。」
「うっせカレン、悪いなマナ…ここからは引き締めて行くからよ、、、、」
「頼むわよ…。」
俺達がそんな問答をしている間に、岩壁に現れた洞窟に身を消す男。
辺りを警戒しながら、俺達3人はその後を追う…
……
……
「まっくらだね。」
「まぁ、まったく見えないって訳じゃないのが救いだな。」
「2人とも、もう少し静かに。」
ヒソヒソと声を抑えながら、薄暗い洞穴を進む…。
術のせいか、辺りの音が一切聞こえない状況故に、どんなに小さく話しても聞こえてしまう、なんとも言えない現象に少しジレンマを感じてしまう…。
「灯りだ…。」
緩やかなカーブが続いていた洞穴の奥から灯りが漏れ出す。
勿論そこには人が居るはず。
問題は術の効果が有るか無いかなのだが、多分まだここは範囲内だと勝手に予想。
というか願望だけどな。
「カレン、向こうの人数とか分かるか?」
「気配は4人…くらいかな。」
「マジかよ、んじゃ術の範囲外か?」
「ユウ…そのうち1人はアイツよ、タカユキが居るわ…」
「え?なんで?」
「さっき言いそびれたけど、私の眼はユウの眼より色々と視えるのよ…。」
「ん?メモリーってやつか?」
「あら、覚えてたのね、でもメモリーとは違うわ、けどここまで近づけば視るのも容易よ…。」
はぁ、なんかよく分からないけど、魔眼には色々あるんですねぇ…。
ん?ちょっと待てよ?
ここまで近づけば視るのも容易って?
んじゃ向こうからも視えてんじゃね?
「な、なぁ、マナ…」
と言い掛けた時だった…。
ズゴォォォッッッン!!!!
という爆音と共に、俺の目の前にカレンが吹き飛んできた。
「ちょ!?え!?」
「なっ!!!!!」
あまりの突然の事に身体が硬直してしまう、俺とマナ。
『おやおや、ふふふっ、こんな所にネズミがいるとは思っていませんでしたが、蓋を開けて見れば、まさか魔眼使いと首斬りとはねぇ…ふふふっ。』
と、不気味な声を洩らしながら、ヒタヒタと歩いて来る人物…
生気を失ったような白い肌に、シグマの鎧を身に纏い、兜からはみ出す金髪を靡かせ、片手には使い込んでいると思われる不気味な装飾の施された剣を握り、こちらに不気味な笑顔を見せる女。
「ようこそ、新世界へ。
お初にお目に掛かります、私『シグマ帝国四聖将』剣聖アクアと申します。」
とサラリと発する女に俺は戦慄を覚えた…。




