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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
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44話 木人族女王アイリーン

 

 突如ケアルランドを襲った謎の術の前に、国中の人々は意識を失う。

 何故か平気なカレン…

 そして、なんとか意識を保てた俺とマナ。


 マナの持つネオクリスタルの力によって、謎の術の効果は緩和され、俺達は事態の究明に走る。


 静寂に包まれた国、俺達は国のシンボルでもある、城内へと足を運ぶが、そこには術の効果を一切受けない人『シングル』が居た。


 マナの話からシグマ絡みの案件だと踏んだ俺は様々な事を考え、今回の一連の現象は評議会を狙った暗殺まで推理。


 だがマナは土壇場にて、偶然に継ぐ偶然の現象に少しナーバスになってしまった。


 仕方なく俺はマナを外に置いて城内へと足を運ぶ…。









 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※










 …。








 想像通りの静な空間。

 壁や天井、床に至るまで、豪華な装飾が施された廊下を、カレンと2人歩く。



「んで、カレン…ちなみに、お偉いさん達が居るような所なんて分かるか?」

「覚えてなーい。」

「そんな気はしたわ…まぁ、デカい部屋か、上の部屋だろ基本。」



 俺の知ってる異世界系の城内には、大体そんな感じで居るのが基本だな。

 まぁ、確証なんてないが、目的がある方が迷うよりマシか…




「さて、デカい部屋、デカい部屋っと、デカい扉でもいいぞーっと。」



 そもそも歩いてる廊下がデカいから、見る扉全てデカいイメージ…

 カリキの屋敷でも、オルタナがふんぞり返ってた部屋はかなりのデカい扉だったし、あんな感じの扉があれば一発なんだけどなぁ…


 と、暗殺を阻止しようと躍起になってた、数分前の俺は何処へ行ったのか…


 不思議と豪華な装飾に囲まれると、緊張にも似た感じで、先程の焦った気分が何処かへ飛んでいってしまった。


「なんだか観光にでも来た気分になっちまうぜ…」

「カレンお城嫌ーい。」

「まぁ、俺も城みたいなキラキラした豪華なとこは好きじゃねぇな…」


ははっと、軽く笑いながらカレンと廊下を見渡す…

肝心のデカい扉や、お偉いさんが居る部屋は未だに見つかっていない。


しかしこうも煌びやかな所だと本当に落ち着かねぇな…

なんか、大広間みたいな所で王様達と兵士達が固まってくれてりゃ見つけやすいんだけど、そんなタイミング良く集会なんてしてないしなぁ…


それにこの静まりかえった空間もなんだか身体の調子が悪いというか、なんというか。











「ねぇ、ユウちゃん聞いてる?」

「ん?悪い、考え事してた…どうかしたか?」


カレンの声を聞き、改めて辺りを確認する、、

俺に何かを伝えようとしたカレンにソレを聞くまでも無く、見上げればそこには他とは違う大きな扉があった。





「ここだよな…普通に考えて。」

「うん。でも中からは人の気配がしないよ?」

「気配が無い?」



この扉の向こう側にお偉いさん達が気を失って倒れてるんなら、それを狙ってた奴等が何もしないわけは無い…


まさか、もう手遅れ!?



嫌な予感に身を包まれながら、俺は目の前の大きな扉をゆっくりと開く…。


さすが首都の城だけあって扉は物音一つ立てずスーッと開いていく。






「…ぇ!?」





扉を開いた先の光景は俺の想像していたものとは違い、拍子抜けのような声が漏れる。



豪華な部屋の中には20人は座れるんじゃないかと思われるテーブルが中央にドカッと1つ置かれ、そのテーブルには3人の人物が腰掛けていた。

1人は仰向け状態で天井を見上げながら気を失っている。

もう2人はテーブルに倒れ込むようにうつ伏せだ。

部屋の脇には要人を警護していたとされる兵士が数人その場に倒れ込んでいる。


多分ここが俺の探していた部屋で間違いないと思う。


となると、テーブルで気を失ってる3人が今回の定例会に来た王様なのか?

さすがの王様達もネオクリスタルの前では形無しって訳か…




「なぁカレン…このテーブルの3人って王様なんだよな?見たことあるか?」

「うーん、どうだろ?」


予想通りカレンはお偉いさん達の顔すら覚えてないみたいだ…。

まぁなんにせよ無事でなによりだ、一応声だけ掛けておくか…

どうせ起きないだろうけど…



そう思いながら、手前のうつ伏せの人物に手をかけようとした時…









 ーーーヒュバッ!!ーーー






っと、何とも言えない音が俺の頭の後ろを掠める。



「なっ!?」



と声を上げた時には、片手を背中で組まれ、首筋にヒヤリとした感覚…


いったい何が!?

ていうか誰だ?


様々な疑問が頭の中を駆けめぐるが、まずは状況確認。

と言っても動かせるのは首から上なので見える範囲を視認する。





「えっ!?これは!?」


声に出す訳じゃなかったが、思わず口にしてしまう。


先ほどまで見えていた部屋の様子とは打って変わり、目の前のテーブルで気絶していた3人は姿を消し、部屋の隅で倒れていた兵士の姿すら見当たらない。



『さて、最後に言い残す言葉はあるか?』



そんな混乱中の俺の背中から物騒な発言をする人物。声からして男、というか背中に組まれた手を徐々に締めていく感じからして、俺の事を完全に敵扱いだなこれは…


「ちょっ…と…話を聞いてもらえると助かるんだけど…って痛ててててて!!」



完全に話をする気が無いのかギリギリと腕の締め付けを強める男…


くっそ!何だってんだ!?


と思った矢先、目の前にエナの剣を伸ばしたカレンが現れる。



「ユウちゃんから離れて…」


そう言いながら俺の後ろの人物に剣を向けているようだ…

なんせ後ろを確認出来ないからイマイチ状況が分からんが、俺の腕の痛みと、カレンの言動からすると俺の動きを封じてる人物は未だ健在ってことか……



「悪いなカレン…助かったぜ。」


俺のその言葉を聞くと男は驚いたように声を上げる。


「カレンだと!?貴様『首斬り』か!?」

「だったらなに?早くユウちゃんを解放して!」

「しかし…。」


どうやら俺を解放する気が無いのか、手を引かない男…

このままの流れだとカレンちゃんがエナの剣を伸ばして、得意の首斬りを披露する未来しか見えねえな。


カレンの姿を見て、ある程度安心したのか俺も冷静になってくる。


そもそも俺を俗だと思ってるなら物言わず斬り伏せるって事も可能なのに、こうやって拘束するって事は何かしらの目的があるって事だよな…まぁ、せいぜい情報を吐かせようって魂胆だろうけど、その点カレンは敵だと見たら即斬りだから質が悪い。


そんな下らない事を考えていると、どこからか声が響く。




『よい、ルーメイ。その者を解放せよ。』




ん?女の声?



「あ、アイリーン様!よろしいのですか!?」

『構わぬ。それにこのままだと其方の首が飛ぶぞ?』



おいおい…

たしかアイリーンってのは、俺の記憶が正しければ、木人族の王様で俺達を狙ったヤツだよな?スネ夫が頭抱えてた姿が記憶に新しいわ…。



「…妙な真似はするな…」


ボソリと呟き俺を解放する男…

プチストレスから解放された俺は、掴まれていた腕をクルクルと回しながら、後ろを振り返る。



長めの剣を片手に構え、褐色の肌に茶色い瞳、茶色の長髪を一纏めに編み込み肩から垂らす、ルーメイと呼ばれていた男は、先日俺達を襲ってきた連中と同じ甲冑を着込み未だに俺とカレンを警戒しながら立ち塞がっている。




そしてその後ろ…

先程の声の主。

褐色の肌に茶色い瞳、煌びやかな装飾の施された髪飾りが綺麗な真紅のロングヘアーによく似合う、白のシルクのような綺麗な布を身体に纏う見るからに偉そうな女。

間違いなく、噂のアイリーン女王様だな。



「そこの人族の男よ…貴様何故に『首斬り』とおるのだ?」

「え?俺?何でって言われても、いつも一緒に行動してるからなぁ。」

「ほぅ…ならば貴様はこの度召集令に上がっていた件の者と…」



口元がニヤリとしたように見えたが、それよりも女王様の右手に凄い勢いでエナが集まっていくのが見える。


「ちょっ、ちょっ!?何ぶっ放す気だよ!」

「ほぅ…?よく見抜いたものだな。流石は先日我が兵達を退けただけの事はあるとみえる。」



こいつ…俺が見えてたから良いものを、完全に俺達に攻撃する気だったじゃねかよ。




俺の横でカレンは未だに警戒を解いて無いし、俺もこの状況が一向に訳が分からない、いったいどうして女王が無事なんだ?それに他の王様らしき人物も急に消えたままだし…




「なぁ!ちょっと聞きたいんだけど、いいか?」

「特別に発言を許可しよう。」


イラッ…


っと。

ふぅ…いかんいかん、相手が偉いのは仕方ないから、そんな事で苛ついても話が進まねぇ…。


「まずは状況確認なんだが、何でアンタ等2人は無事なんだ?街の様子を見てきたが、術の効果はまだ続いてると思うんだが。」

「ふん、何を抜かすかと思えば…知れたこと、妾に術の類は無駄な事よ。」


「ほえ?術の無効化の能力でもあんのか?」

「貴様……口を慎め!」




と、物凄い偉そうな女王様相手に舐めた口を聞いてる俺を睨むルーメイ…。

コイツも未だに俺達を警戒してるな…。


というか女王様がリラックスし過ぎ感はあるんだが…。

って、ん?なんだ?

なんか髪飾りからエナがジワジワと…。



「よい、ルーメイ。

それにしても無効化とは…確かにそうとも言えるか…成る程な…凡人と話してみるのもまた一興とは…」


クスクス笑いながら俺へと適当な返しをする女王様。



「それとも、その髪飾りが関係してんのか?」


その言葉にアイリーンとルーメイの表情が変わる。


「ほぅ?妾のクリスタルを知っていたのか?

……いや違うのぅ…貴様只の凡人と思っていたが非凡なる能力(ちから)を持っているとみえる。」


クリスタル?あの髪飾りがか?

でもクリスタルからエナが見える事なんて今まで無かった…。

俺の魔眼は干渉されたエナを視ることが出来るってヨラムが言ってたし、クリスタル自体からエナが見えるなんて…。


「アイリーン様!やはりこの者達はシグマの…」

「まぁ待てルーメイ、それを見定めるには早々よ。しかし何故ここに貴様等が現れた、その説明だけは聞かせて貰おうか?」



おいおい、襲撃まで仕掛けておいて早々は無ぇだろが…。

まぁ良い、誤解を解いて更に現状報告もしておかなきゃだし、何より他の王様達も気になるところだ。


「何から話せば良いかな、とりあえず今ケアルランドで起きてる現象はシグマの仕業ってのが有力だ。」

「ほぅ?貴様がそれを言う事によって、自身の立場が悪くなるとまで考えて発言しているのだろうな?」


「そこは別に構わねえよ、スパイ容疑だろうが何だろうが関係ねぇ、今はそんな事より、アンタ等お偉いさんが死んじまう事の方がマズいってもんだ。」

「ふん、何を抜かすかと思えば…妾の命を狙うにしても粗末な事この上ない。この部屋に現れたのも貴様等2人以外誰もおらんのだからな…。」



最初の光から随分時間は経っている、シングル達の中に間者が居たんなら、既に行動していてもおかしくない…

確かに女王様の言うとおり初めて現れたのが俺達2人ってんなら怪しい事に変わりは無いな…


「何事も無かったんならそれは良い事だ、ただ今回のシグマの放った術は暗殺目的もそうだが、ネオクリスタルの試用目的って線もあるんだ。」

「ほぅ、ネオクリスタルとはまた大層な代物。そんな中この城に忍び込んできた貴様等2人は関与していないとでも言うつもりか?」


完全に疑ってるなこりゃ…。

このままじゃ足踏み状態だ、さてどうしたもんかね。


「なぁ女王様。」

「なんだ。」

「他の王様達はどこに居るか知ってるか?俺がこの部屋に入った時は後2人座ってるように見えたんだが…。」



俺の言葉を聞くと、アイリーンは中央のテーブルへ歩いて行き、おむもろに引っ張り出した椅子にドカッと腰掛ける。


ルーメイも俺達の警戒しながらアイリーンの近くまで後ずさる。


「貴様…名をなんという。」

「ユウ、マガミユウだ。」

「マガミユウ、貴様は自身の立場というものが分かっていないのか?シグマと通じてる者に連合国の5王の居所を妾が言うと本気で思っておるのか?」




下手な事言わずにストレートに行ったらコレだよ。

正論過ぎて、ぐうの音も出ねぇな…。



「あー別に王様達をどうこうしようってんじゃねぇんだ、ただ無事なら問題は無い。」


そんな俺にルーメイが口を挟む。


「いい加減にしろ!貴様をここで屍に変える事も出来るのだぞ!他の王達も無事だろう!さぁ!!貴様等がこの場に留まる事も無い!!さっさと出て行け!!」

「おいおい…なんだよ、いきなり…そりゃアンタ等が無事なら出て行くさ、それに俺達はまだやる事もあるしな。」


そう言って俺が部屋を出ようと後ろを向いた時…アイリーンが口を開く。


「待て。マガミユウ貴様はこの後、やる事があると申したか?」

「……あぁ。まぁ王様達が無事なのを確かめるのが一番だったんだが、それが分かった今は、次の事をやらなきゃだ。」

「ふむ…。」




そう言って、少し考えるような素振りを見せるアイリーン。



「先程の質問に答えようマガミユウ。貴様が見たという部屋の様子は妾の結界術の1つだ。」

「結界術?アンタも結界術を使えるのか?それになんだっていきなりそんなこと…」


「ふふ、まずは結界術について語ろうか、貴様も先程申した、この髪飾りの能力(ちから)によるもの、この能力(ちから)を知っている者は我が木人族の中でも一握り…ましてやシグマの密偵等には知られる事も無い事実。

だが貴様はこの能力(ちから)を髪飾りのモノだと見抜いた…その理由(わけ)を聞きたくなってのう。」

「多少なり俺達がシグマの手の者じゃないって思ってる…そういうことか?」

「慌てるな、妾は、疑わしき者は排除するが、そうでない者に手を掛ける程、野蛮では無いという事よ。」



アイリーンの言ってる事はイマイチ伝わらないけど、今現在俺達はシグマのスパイ容疑は薄れてるって捉えて良い感じだな…それにしても、何でまた急に…。


「確かにさっきアンタが言った通り、俺には不思議な眼の力がある。そのおかげで髪飾りから溢れるエナを見える事が出来たんだ。」

「ほう?なかなか興味深い…続けよ。」

「いや、、続けたいのは山々なんだが、本当に干渉されたエナを見る事。コレだけなんだ。」



椅子に座ったまま、ジッと俺の眼を見つめるアイリーン…俺の話から何かを探っているのか…。


「ふんっ…なるほどのぅ、妾の力が見抜かれた訳は理解したわ…。さて、マガミユウよ。この後やる事があると言っていたが、貴様は何をする気なのだ?」

「アンタ等木人族程じゃないが、俺もシグマの連中には因縁があってな…とりあえずこの術を仕掛けた野郎に物申しに行ってくる……予定だ。」



そんな俺の言葉にアイリーンとルーメイは目を丸くする。

そしてアイリーンはその表情をみるみる崩しながら笑い出す。




「くっ、ははは!ははははっ!そうか!それは良い!貴様なかなか面白いぞ!ははははは!!」



何がツボにはまったのか分からないが、女王様の大ウケをもらえたぜ!

まぁ、どうでも良いけどな…。




「ふふふ、なかなか楽しませて貰った。マガミユウよ、そういうことなら貴様をここで拘束する必要も無いのぅ…さっさとシグマの阿呆の処へ行くがよい。」

「言われなくても行ってくるよ、だけど他の王様達も気になるところなんだが…」

「ふん、それはこちらでやっておこう。ルーメイ!お主は城内を回り命人王と獣人王の確認をしてまいれ!」

「はっ!しかしここの護衛は…」

「1人で構わん、お主は妾の力を誰よりも知っておろう?」

「はっ!大変失礼致しました。」


そう言い残し姿を消すルーメイ。


なんかとんとん拍子で物事が運んでるけど、どうなったんだ?


「アイツ外に出ても大丈夫なのか?」

「妾の結界のクリスタルを1つ持たせておる、心配はあるまい。」


結界のクリスタルか…クラリスも持ってたな。

術が発動してるって認識出来ていれば予め結界で防ぐ事も可能ってか…

まぁ今回の襲撃は突然過ぎたしな、持っていても対処出来ない人が多かっただろ。


「なぁ、結局他の王様達がどうなってるのか分かってなかったのか?」

「何をゴチャゴチャと…今の妾の会話を聞いていたのであろう?それが答えじゃ、これ以上の説明を貴様相手にするのも体力の無駄、故に語るのを控えさせて貰うぞ。」



あーなんか苛つくな…この女王様キャラを素で行くのがキツい…俺とは相性最悪だな、間違いない。

でもまぁ、一応他の王様達の安否確認はしてくれるみたいだし、そろそろ本格的に対シグマの作戦実行にうつりますかね…。


「んじゃ、女王様!俺達は行くぜ?色々ありがとな!」

「……。」


椅子に腰掛けながら軽く手を上げるアイリーン。


ホントに口を開かないのか。


「よし、行くぞカレン。」

「うん、なんかよく分かんなかったけど?」

「正直言うと俺もだ…。」



そんな事を口走りながら、部屋を出る俺とカレン。

入って来た時と同じように、ゆっくりと大きな扉は音も無く閉ざされる。






……





「ふん。アレが『魔眼使い』か…。なかなか面白い男ではないか…あ奴が気に入る理由(わけ)も少しは理解出来るというものよ…

しかし、マガミユウ……マガミ…何故だか懐かしい響きだが……


ふふ…思い出せぬとは…妾も耄碌したものよ…。」







……







「さて、カレン!本当にこっちで合ってるんだよな?」

「北でしょ?こっちだよ?」

「え!?お前さっきこっちって言ってたろ!」



そんな問答を繰り返しながら俺とカレンは城内を北へ向かう。

正確には北へ向かうため、1番北にある城内出口を目指して走る。


「しっかし、広い…ってか広すぎだろ!」

「ユウちゃん!こっち!ここを抜けるとすぐだよ!」


珍しくカレンのナビに従い、進んでいくと、まるでだだっ広いグラウンドのような大広間に出る。

そこには数十人の兵士達が横たわり、なんとも言えない不思議な光景だ。



「すげぇな、こんな広い所で何するんだ?」

「ここはルビィちゃんとクラちゃんとかと集まって訓練してた場合。」

「演習場みたいな感じか…」


闘技場って言ってもおかしくない広さだ、演習にはもってこいだな…。

てか、どんだけの規模だよこの城は…カリキの屋敷が城って呼ばれない訳が少しだけ分かった気がするぜ…。









演習場を抜け、廊下を進むとやけに静けさが増す感覚に陥る。

空気も澄んできた気もするし、この先には何が…



その時…先導していたカレンが扉の前で止まり無言で俺に手を向ける。

『待て』の合図だ。



「どうした?」


出来るだけ声を抑えながらカレンに尋ねる。


「3人…かな…中で動いてる。」

「!?」


動いてるって事は、術の効果が無いって事。アイリーンみたく結界術で守られていたなら、気配は感じられない…

なら扉の向こうに居るのは『シングル』達か?でも行方不明の子達はたしか2人だったはず…。


「ユウちゃん、どうするの?」

「カレン…予定より1人多い、もしかしたら敵かもしれねぇ。慎重に行くぞ、油断するなよ!」

「りょーかい。」




ゆっくりと扉を開き、中の様子を探る。


扉を開いた先は、4~5人くらい腰掛けられる椅子が均等に幾つも並び、奥には何かの像が飾られている。

俗に言う礼拝堂みたいな所だろう。


そして、壇上の隅には見たことのあるボロボロの衣服を纏った子供達が2人、黒いマントを頭からスッポリ覆い被さった人物が1人、なにやら話している様子だ。


あれは?シングル達と…誰だ?見るからに怪しいけど、何をやってるんだ?


何を話してるか遠すぎて聞こえないので、そーっと礼拝堂内へ入る俺とカレン。

椅子の間を上手く使いながら、彼等との距離を縮めていく。



「わかったかね?」

「でも…私達にそんなこと…」

「僕、やっぱり…」


なにやら話し声が聞こえてくる…

ん?少しもめてるのか?



「怖いかもしれないけど、これは君達『シングル』達の為なのだよ、他の仲間の為にも君達は戦わなければならないのだ。この国の5王さえ倒せば君達は自由になれるかもしれないんだよ。」

「でも…」

「他の皆の幸せの為、そう言っていただろう?この機会を逃せば君達シングルは永遠に虐げられたままだ、それでも良いのかね?」


黒マントの人物が、子供達を納得させるように優しい物腰で話しかけてる。

だが、実際に手を下すのは子供達…もし失敗しても当の本人は知らぬ存ぜぬで逃げる算段か…。


「ザイル、私はやるよ!他の子達は私が守る!」

「ケミー…やっぱり危ないよ、皆のところに戻ったほうが良いよ。」

「アンタ男でしょ!?いい加減覚悟決めなさいよ!」


シングルの2人は案の定、先程会った少年が探していた2人に間違いないようだ。

それにしても女の子の方は、やる気満々なのに、男の子の方は土壇場でヘタレてるなぁ…。

男ってのは、ここ1番での気持ちが大事なんだぜ坊や…まぁ今回に限っては少年の判断が正しいな。


さて、そろそろ盗み聞きにも飽きてきたし、他に敵も居なさそうだな。


「カレン、準備は良いか?」

「いつでも大丈夫だよ。」



このまま見ててもザイルとケミーが暗殺に加担する流れにしかならないしな。今はルーメイが城内をウロウロしてる頃だし、見つかったら危険極まりない、アイツは危険だ。


スッと立ち上がり、3人が居る場所へ堂々と向かう俺とカレン。

もちろん隠れる気などさらさら無いので、足音ですぐに気付かれる。



「誰だっ!?」


黒マントの人物が咄嗟の声を上げる、子供達もそれにつられて俺達を確認する。



「誰と言われてもね…とりあえず今話してた計画は中止だ。」

「なっ!だ!何のことだ!」

「テンパるなよ、お前には聞きたい事がある、少しそこで大人しくしててくれ。」


3人に近づく俺を警戒する黒マントの人物。

マントの中へエナが流れこんで行くのが見える。



「カレン、術が来るぞ!」



と俺が声を上げた時には、黒マントの背後からエナの剣を首筋に立てるカレンの姿があった。



「なっ!?いつの間にっ!?」

「術…止めてね。」


その一言で、マントの中へと流れていたエナが消える。



 誰も怪我無く無事に事態の収集に成功した俺とカレン。

目の前には王様達の暗殺を企んでいた謎の人物、そしてその計画に利用されようとしていた『シングル』の2人。


ケアルランドを襲った術は止まらないが、なんとか王様達の暗殺は未然に防げたみたいだな。


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