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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
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42話 能力と脳力

 東聖大陸イグザ連合国

 様々な国や街村などが1つの意思の元、世界大戦を終わらせた後に出来た国。


 大陸の半分以上を共存地帯と定め、各亜人種族が差別無く過ごせる国。

 そんな大きな連合国を纏めあげるのは、5人の王。


 人族

 オルタナ・クードーシャンス

 木人族

 アイリーン・ペルシア

 命人族

 ルミナス・ベルジャン

 獣人族

 ライザック・ビースト

 魔人族

 フェンネル・キングスター






 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 













 マナの持つネオクリスタルから放たれるその光は、何色かと言われると表し難い、柔らかな光、ただただ立ち尽くす事しか出来ない俺を包んでいった…






 ……






 うーん、目が開けられないって程の眩しさでも無いんだが、何故だか条件反射のように目を瞑ってしまうのは如何なもんか…


 ただ本能的に分かる…

 これが俺の身体に害が無いことを……。








 ……







 ……






「ふぅ……こんなもんかしらね。」



 そう言いながら、手に持っていたネオクリスタルに再び布を掛けバッグに収めるマナ。



「こ、こんなもんかしらねって、いったい何を……」



 そんな俺の疑問もすぐに晴れる…。

 今の今まで赤い光に包まれていた街は、柔らかい光へと色を変え、心なしか先程まで鳴り響いていた音も緩和された気がする。


「マナ…これは…」


 ネオクリスタルの力…

 街中の人々を一気に気絶させるような恐ろしい力を持ったクリスタル。

 同じ物をマナが使ったって事は、やはりそれなりの力が作用しているんだろう。



「簡単に説明すると、これは発動中の術の効力を緩和するモノよ。」

「発動中の術の緩和??」

「まぁ細かく言えば違うし、話せば長くなるんだけど、今この場…そうね、私から半径100㎞くらいは展開したかしら…」


 ひゃ!?100㎞!?

 相変わらずぶっ飛んだ単位で物を言うぜ…

 でも、それが本当ならケアルランド外からの攻撃者にも効果有りって事か…。


「なぁ、マナ…そんなに広く展開させたら、お前の言う『アイツ』って奴にも気付かれたんじゃないのか!?」

「……間違いなく気付いてるわね。

 でも気にしないで、アイツがネオシグマ帝国に居るっていうのが分かったもの、それだけで充分満足よ。」



 この世界の広さなんて分からないけど、マナは長いこと探してきたんだよな…

 本当は俺達なんか構わず、因縁のあるソイツの所に行きたかったんじゃないのか…


「なんか、すまねえな。」

「なによ?今さら遅いわよ、それにこんな状態いつまでも放っておけないでしょ?

 ついでに言うと、私がこの国に居るということを知らせて、この後アイツがどう動くかにも興味あったのよね…。」


 意地悪そうな顔でクスクス笑うマナ。


 確かに、マナの言うとおり敵の動きは気になるところだ、先程より術の効果が緩和されたとはいえ、未だに誰1人動き出してはいない…。






 ……






 …






 さてと、結構時間が過ぎた気がするけど、皆まだ動けないみたいだな…。


「正直外の明るさが、曖昧だから時間の感覚が無くて困るぜ…。」

「そうは言ってもまだ30分も経ってないわよ?」

「え?もう小一時間くらい経ってる気がしたぜ…。」



 そんな俺とマナのやりとりにカレンが口を開く。



「ねぇ、ユウちゃん…誰か来る……。」

「えっ!?」



 カレンの一言に、俺の身体は一気に緊張状態になる。

 先程まで物音1つしなかった街…

 人の気配なんて分からないが、確かに耳をすませば聞こえてくる足音…



「1人?いや、2人?」



 これだけの静寂空間で薄ら響く足音…

 その足音の主とどれだけ距離があるのか分からないが、その音はだんだんと近づいて来ているような気がする。


「誰かしら?もう動けるなんて…」

「あぁ…確かに、ここいらの人達は未だに身動き1つ取れてないしな…だけどこっちから聞こえるってことは…」



 足音のする方向。


 そう、赤い光が上がった方向と反対側、南側から聞こえてくる…

 シグマの連中かと思ったけど、奴等は北から仕掛けて来たはず、ならば南側から現れるのはいったい…。


「さて、どうする?まだ距離もありそうだし少し隠れて様子見って事も出来そうだが…」

「それが正しいかもしれないわね、敵か味方か分からないのもそうだし、何より動けるようになるのが早すぎるわ。」

「同感だ…カレン、1度身を隠すぞ!」


 小さく頷いて、俺の後を付いてくるカレン、マナは少し辺りを見渡した後に、ホテルの部屋を無言で指さす…


 その案に無言で了承の意を伝え、3人はホテルの元いた部屋へと戻る。




 ……





 …






 よし、ここなら通りも見える。

 いざって時にはカレンが上から仕掛けるのも有りだな…


 そんな事を考えながら、窓から外の状況を確認する。


 通りには未だに動かない人達が散乱している。








 ……







 コツコツコツ…







 と未だに静かな街中に2人分の足音はどんどん大きくなって来る。






 だんだんと近づいて来る足音に、俺達3人は息を殺しながら部屋で外の気配を探る…

 次第に近づいて来た足音は止み、なにやらボソボソッ…っと外から話し声が聞こえる…



「近くで止まったぞ…どういう事だ?」

「分からないわ…でも、もしかしたら今発動中の術の中心地を見に来たのかもしれないわね…。」

「そ、そんな事が可能なのかよ!」

「しっ!声が大きい!」

「す、すまん。」


 咄嗟に声のトーンが上がってしまう。

 術の中心地を察知するなんて事が出来るなんて思ってもみなかった、いや、むしろ、そんな事をする必要が無かったと言うべきか…


「厳密に言うと、術の展開された後では、何処が中心とか誰が放ったなんて事は分からないはずよ…それこそ特殊な人間じゃなければね…」

「普通は分からないって事か…

 んじゃ逆に言うなれば、今ここに来てる2人は普通じゃねぇって事になるけど…」

「間違いなく、常人とは異なる存在よ。」


 マジっすか…

 なんだかんだピンチを切り抜けたと思っても、次から次へとトラブル発生とかやってらんねぇぜ…

 とりあえず外で何かを探ってる2人の確認と、これからの方針を考えなきゃ、いつまで経っても動けやしねぇ…。


「おい、カレン…外の奴等見えるか?」

「……。」

「どうした?」


 窓の近くで警戒態勢をとりながら、立っているカレン…

 その表情はいつも見る脳天気なものとは違い、緊張気味でまだ見えぬ外の人物達を警戒しているようにも見える。


「ここからはまだ見えない。けど…相当強いと思うよ…」


 そう俺に一言だけ呟き、腰の剣に手を掛けながら、窓から足音の主の出現を待つカレン…


 カレンが弱気な発言をするのは、シグマ艦内でグレンに遭遇した時くらいだ…。

 それ相応の実力、またはそれ以上の実力の持ち主が近づいているって事なのか?


「マナ…お前攻撃とかそういうクリスタルは持ってないのか?」

「…無い、事も無いけど、あまり使いたくないわね、特にこんな人の密集している所では…。」

「そうか…なんとなく分かった、さて、どうするかね。黙ってやり過ごせる相手なら助かるんだけどな…。」


 多分マナの使う術は広範囲攻撃か何かだろう、近くの人を巻き込むような危険な術…そんなところか…。


「どっちにしろ、今来た人物達の目的が分からない以上、ここで大人しく隠れているのが得策だと思うわ…。」

「確かにな、俺もそう思っていた、そもそも何でわざわざここに来たんだ?やはり術の中心地で使用者を狙う輩って線が妥当かね?」

「その意見は有力ね、ただ、向かってきた方向が妙よね、ネオシグマ帝国から反対側よ?」

「あぁ、奴等が戦力を国外に待機させておいたとしてもマナが術を発動してから直ぐの出来事だ、それこそ瞬間移動でも使わなきゃここまで来られないぜ…。」



 完全に停止状態にあった国内…見渡す限り人は倒れて静寂空間だった。


 そして、術の緩和をしたのが今さっきだ。もしもそこから直ぐに、動けるようになったとしても、この場所まで普通に歩いて来るなんて、いくらなんでも早すぎる。


「カレンのような特殊な人間が他にも居たのか?」

「その可能性は高いわね…だけど、それならもっと早く手を打ってるはずよ。」

「まぁ、言われてみればそうか…カレンも警戒するくらいの相手ってのも気になるしな…。

 なあ、カレン…そっちはどうだ?何か動きあったか?」


 窓の近くで立ち外を監視しているカレン…先ほどと同じように、余裕など見せない険しい表情で外を見ている。


「動きは……ないけど、なにか話してる。」

「内容は聞こえるか?」

「駄目、遠すぎて…分からないよ。」


 特別目が良いとか耳が良いとか、って訳でもないからな…カレンは……

 にしても、動きが無いってのも些か気になるところだ…





「まって!」




 突如カレンが声を上げる…


「どうした!?」

「いなくなった。」

「は!?」


 居なくなったって言ったのか?

 それって、いったいどういう?


「ちょっ?何?居なくなったって?どういうことだ?」

「消えたよ…多分2人だった。急に消えた。」



 恐る恐る、カレンの横から窓に近づき、外の様子を見る……

 先ほどまでと、なんら変わりない街並みは静寂に包まれている。


 確かに、人の気配は無いが、急に消えたのか?何か目的があってここまで来たと予想していたのに違った?





「なぁ、カレンからは、その2人見えなかったのか?」

「うん。遠すぎて…」

「そうか、いったい何をしに来たんだろうな…。」

「なんかカレンも本調子じゃないのもあるんだけど、もしかしたら…」

「ん?もしかしたら?」


 戸惑ったような顔で何かを言い掛け、そこから先は黙るカレン…。




 カリキでの1戦でクラリスとカレンは上手くエナに干渉出来ない状況なんだよな…

 あ、俺もか。

 そんな事もあって、感覚が鈍ってるのか?









 ……







「さて、そろそろ外に戻るか?それとももう少しここで待機するか?」

「謎の人物達が消えたって言うのなら隠れてる必要は無いわね、ただ…」


「なんだよ、マナも、カレンも、濁すように会話止めんなよ、ハッキリいこうぜ!ハッキリ!」

「そ、そうね、特に意味あって区切った訳じゃないんだけど、、ただ…

 また戻って来る可能性もあるかと少し思っただけよ…。」


「ん、そうだな。何かしらの訳あって戻って来る可能性ってのは確かにあるよな、んじゃここで大人しく待機してるか?生憎スネ夫とオヤジの姿も確認出来るし、って言っちゃぁ申し訳ねぇけどな…」


 へへっと軽口を叩きながらカレン居る窓の方へ向かい、身を乗り出しながら、外の様子を覗う…。


「さっきのままよりは、心身共に悪影響は出ないはずよ…。まぁそれも永久って訳じゃないから、早く街の皆には目覚めて欲しいところなんだけどね。」



 緩和か…。

 無効化じゃないからな、そこは仕方ないって感じだな。

 どっちにしろオヤジとスネ夫が目覚めてくれなきゃだな、さすがに引きずって移動ってのも骨だしな。




「ねぇ、ユウちゃん…」

「ん?どした?」



 ボーッと窓の外を眺めていると、横のカレンが何やら重苦しいトーンで俺に話し掛ける。



「カレン…弱くなってく…」

「はぁ?何言ってんだ?」

「昨日よりも、なんか変なの…明日はもっと変になるよ、その次の日も、もっと変になる…」


 カレン的には、日に日に弱っていく…って言いたいんだろうな…。

 まぁ、正直俺みたいな一般人からするとカレンやクラリスみたいな危ない輩の不調時ですら脅威的なんだから、カレンが以前より弱くなった…なんて言われてもピンと来ないんだけどなぁ。


 少し思い詰めたようにも見える、見た目少女の頭にポンと手を乗せ、笑顔で応える。






「んじゃ、カレンが本当にどうしようもなくなったら、俺が守らなきゃだな!」







「ーーーー。」

「ん?どした?俺なんか変な事言ったか?」


 まるでアホを見るように、目を丸くし、口を半開きにしながら『何言ってんだ?』と言わんばかりの顔で俺を見上げるカレン。



「いやな、毎度カレンには世話になってるし、もしカレンがピンチの時は、恩返しってか、お返しってか、そんな感じでさ、な?」



 ついつい、視線に耐えきれず、あたふたしながら次から次へとカレンへ言葉を投げ掛ける…


 あれー?俺変な事言ってないよなー?








「……ふふ。」



 っと、カレンは小さく笑い声を漏らす。


 その声を聞いて、そして、カレンの表情を見て、俺も自然に笑みがこぼれる。

 一応警戒態勢中だし、大声では笑えなかったが、それでもお互い顔を見合わせ笑った。

 そして、そんな俺達を見ていたマナ…


 どこか悲しそうな、それでいて優しい、そんな温かい眼差しで、俺を、カレンを、ゆっくりと交互に見つめる…。



「な、なんだよ、マナ…

 状況が状況なだけに不謹慎言われても仕方ないけどよ…。」


「ふふふ、ごめんなさい。

 ちょっとね、昔を思い出して…。

 今の貴方達2人を見てると、ショウヘイとキョウコを思い出すわ…。」





 ショウヘイ、キョウコ。

 さっき聞きそびれた話…


 どうする…

 ここでまた色々聞いておくべきか、、


 いや、そんな状況じゃねえのはマナも分かってる…お互いの擦り合わせは今じゃねえ…か。



「まぁ、その2人の話は後でゆっくり聞かせてくれよな…。」

「えぇ勿論。私も聞きたい事は、まだまだあるし…。」



 俺もマナもまだまだ疑問点は沢山有る…。


 だが、それ以前にこの状況を引き起こした奴、俺と同じように元の世界から来た人間…

 とは少し違うのか?

 まぁ…どっちにしろマナの顔見知り…か。


 ソイツを何とかしなきゃな、始まるものも始まらないぜ。

 さっきまで近づいて来ていた気配も気になるけど、そろそろ本格的に向こう側も動き出す頃だろう。


 さてさて、どうしたもんかね。




「なぁ、マナ…外の皆は寝てるって訳じゃないんだよな?」

「どうかしらね?普通に気絶してるだけなら水でも掛けたら目を覚ますと思うけど…試してみる??」

「サラッと言ってるあたり効果なしってのが分かるぜ…やっぱり術を何とかしなきゃ…なんだよな。」




 ガシガシ頭を掻きながら、何度も同じ考えを巡らせる。


 何かの本か、誰かの受け売りか、とにかく、昔から未だに俺が続けている悪いクセだ。



『1度考え駄目なら、もう1度考える。

 それでも駄目なら、もう1度考える。

 何度も繰り返し考える。

 自分が諦めるまで考える。』



 ま、言ってしまえば諦めの悪い頑固者なんだけど。新しい可能性を見つける為には同じ事を何度も考え、細かく突き詰めていけば、きっと何かあるはずだ、そう、自分が諦めない限り…特別な能力は無いけど、足りない脳みそ使って考える事が俺の力であって武器だ、後はそれを上手く繋げて…。



「ユウちゃん…何ぶつぶつ言ってるの?」

「ん?あぁ気にするな…独り言だ。」

「ふーん?」


 いつの間にか声に出てたみたいだな。

 カリキでは『危ない奴』認定されてもおかしくないくらい色んな人から変な目で見られてたしな…


 ここでも気を付けよぅ。






「さて、地下も駄目。かと言って主戦力のオヤジやスネ夫が目覚めるまで待ってるのも不安要素あるしな…。今のカレンだけでなんとかなるって保障も無いしな…うーん。困ったぞ…。」


「因みに、ネオクリスタルの効果範囲外に出る案は却下よ。」

「確かにな、あの頭痛は勘弁だ。んでも…本当に良かったのか?」

「何のこと?」


「さっき、マナは1人でも行こうとしてたじゃねぇかよ。」

「そうね、厳密に言えば途中で私の同行者と合流して行く予定だったわ。まぁ、あの子も今は皆と同じように無効化されて、どこかで寝てるはずよ。」


 両手をゆっくりと伸ばしながら、身体を解して行くマナ…

 同じように俺も全身をゆっくり伸ばし、頭と身体をリラックスさせる。



「んー!っと!

 一応聞いておくけど、マナの同行者って、こっちの人間なんだよな?」

「えぇ、そうよ?ちょっと有名人らしいから面倒事が多いのよね…。あの子。」

「有名人をあの子呼ばわりするなよ…ったく、俺の脳内は結構パンパンなんだから、これ以上余計なネタを仕込まないでくれると助かるぜ。」



 そもそも、有名人とか言われても俺の周りそんなんばっかりだしな…。

 しかし長年この世界に滞在しているマナのことだ…俺以外、例えばスネ夫辺りが聞いたら驚くような人物なだろうな…一応気になるし聞いておくかな…?





「なぁマナ、因みになんだが、その有名人とはいつからの付き合いなんだ?」

「んー、そうねぇ。なんだかんだで、もう5年位かしらね。」

「5年ね…なかなかの年月に感じるんだけど、マナみたく長いこと居ると慣れちまうのか?」

「……。」


 嫌味っぽい軽口を叩きながら、マナにふざけた態度をとる…

 そんな冗談めいた俺の一言は、彼女の表情を一瞬曇らせてしまう。


「あ、いや、その、悪気があって言った訳じゃねぇんだ、すまねぇ!」

「あ、私こそ、ごめんなさい、気にしてないわ、だからそんな謝らないでもらえると助かるわ…。」


「んー、今のはユウちゃんが悪いかなー?」


 そんな俺達にカレンが口を挟む。


「ちっ、カレンはこういう時厳しいよな。」

「そうかな?」

「そうなの!ったく、いつもはぽけーっとしてるクセによ!」

「そんな事ないと思うけどなぁ…」


 最近やっと大人しくなってきたけど、カレンは最初俺のこと殺すってサラリと言ってたしな…

 やっぱ自身の能力が上手く使えないからか?さっきも弱気な発言してたし、特隊相手や木人族相手にも恩情見せてたしな、なにかしらカレンは変わってきてる…


「まぁ、今のカレンの方が俺は良いと思ってるぜ。」

「なんかよく分かんないんだけど?」



 といつもの調子でカレンの頭にポンと手を乗せる…

 そんないつも通りの何気ない仕草の途中、俺はふと疑問が沸いた…。




 まてよ…そういやカレンは今…。




「マナ…1つ聞いても良いか??」

「何よ?急に深刻な顔して…。」

「顔の話は、まぁ置いといて、さっきのネオクリスタルの効果って、発動中の術の緩和みたいなものなんだよな?」

「さっきも言ったけど、細かく言えば違うんだけどね、でも解釈としては合ってるわよ?」



 解釈としては合ってる…か。

 なるほどね、まぁ俺の考えが正しいなら多少なり試してみても良いかもしれないな。


「それと、もう一つ、今展開中のネオクリスタルの術をカレンが使う事は可能か?」

「条件さえ揃えば可能よ?」

「そうか、やっぱ簡単に使えるって代物でもないみたいだな…。

 因みにだが、条件ってのは??」


「簡単よ、理解するの。」



 術を使えない人間でも、その石一つで複数の術が使える代物、聖真水晶体ネオクリスタル

 使える条件は、理解ってか?


「すまん、もっと分かり易く頼む。」


 確かに理解するって言われたらそれまでだけどよ、もう少し具体的な説明も何か欲しかったぜ。


 俺の言葉にほんの少し言葉を選ぶ様に何かを言いかけて止めるマナ。

 多分俺やカレンにも分かるように説明しようとしてくれてるんだと思う。


「えっと…そうね、何て言えば良いのかしら…。例えていうならネオクリスタルは高度な化学式が組み込まれているから、1から10まで事細かに口で言い表すのが難しいのよ…。」

「おいおい、ここで化学式とか…やけに俺達の世界よりな事言ってんな…」

「仕方ないでしょ?上手く説明するのが大変なのよ。」


 と、少し不機嫌なマナ。元々大学院まで行ってるヤツだ、さぞかし頭が良いのだろう。なのに、俺みたいな男にグタグタ言われたら怒るよなー。

 なんにせよ、一応説明は聞いておくかな。俺もカレンもネオクリスタルについて、もう少し知っておかなきゃだ。


「んじゃ、マナの使いやすい言葉で簡単に説明してくれよ、特にさっきの術の使い方。」 


「とりあえずの内容だけ話すけども、そこのカレンは大丈夫?なんだか上の空みたいだけど?」


 マナに言われ、カレンを見ると確かに覚える気が無い以前に、興味が無い素振りだ…

 まぁ正直この娘が大人しく理解出来るとは思ってなかったけどな…。


「なぁ、カレンや。俺に考えがあるんだ…少しでいいからマナの話を聞いてみないか?」

「カレン難しい話きらい…。」

「まぁまぁ、聞いてみない事には難しいかどうかなんて分からないだろ?マナだって分かり易く説明してくれるはずだ、少しだけ聞いてみようぜ?」


 軽くマナのハードルを上げつつカレンを諭す。

 俺の言葉に半分納得いったのか、はたまた何かを諦めたのか、カレンは話を聞いてくれるみたいだ。







 …







 ……






「なるほどな…。どうだ?カレン、なんとなく理解出来たか?」

「うーん、クリスタルとは別物っていうのは分かったけど…」

「元々エナという力に依存している貴方達には難しいかもしれないけど、聖真水晶体ネオクリスタルの使用は今私が説明した通りよ?」



 なんたらの法則だの、なんたらの流れだの、意味不明な言語でカレンに説明してたけど、マナは多分カレンにも分かり易い言葉を選んでいたんだろうな…時たま出る日本人特有の言い回しも、こっちの言葉で言い直してたしな…。

 それにしても、俺には理解出来なかったがな!


「で?ユウはカレンに何をさせる気なのかしら?」

「そうだった、そいつを説明せずにはいかないよな…

 いいか?まず カレンがマナと同じように、さっきの緩和効果の術を放つ。マナの使った効果がまだ残っているから、上乗せという形で効果は増すんだろ?」

「そうね、単純に2倍と言うわけでは無いけれども、今の現状よりは効果は増すわ。私も制限さえ無ければもう一度くらいは使いたかったし…。」



 よし、今よりも効果は増す。それだけでやってみる価値はありそうだな。



「オッケー!ものは試しだカレン!早速術を展開してみてくれないか?」

「ちょっと!今ここで!?なんのために建物の中に避難したと思ってるのよ。」

「確かに、さっきみたいに誰かが気付いて来るかもしれないけど、その時はまた場所を変えて隠れれば良いさ、どうやら今は辺りに人の気配は無いから直ぐに人が集まる事は無いと思うぜ。」

「いったい何を考えてるの?」


 未だに納得のいかないマナ…。

 仕方ない、簡単に説明するか、結構時間も無くなってきたしな、ここで無駄な口論してても意味が無い。


「まずカレンが術を展開することによって皆の状態回復を早めるってのが大前提なんだが、もしかしたらもう1つミラクル効果が期待出来るかもなんだ。」

「もう1つの効果?」

「カレンの復活だな。」

「????」


 術の緩和効果…

 皆が気絶する様な、危ない術すらも緩和してしまうなら、俺やカレンに掛けられた呪いみたいな術も緩和されるんじゃないか?勿論可能性でしか無いが、もし成功するならカレンの戦闘能力は爆発的に上がる。それこそある程度の敵は問題ないくらいに…。


「なぁカレン…お前今日までヨラムの言うとおりエナを使ってこなかったよな?ほんの少しで良いから術を展開してみてくれないか?」

「わかった、やってみる。」


 そう言って片手を前に出したカレン。その身体からゆっくりと紫色のエナがにじみ出る。

 ユラユラと片手に流れるエナは、手のひらから先へ、そしてゆっくりと剣の様に延びていく。


「で、出来た。」


 カレンがカリキ滞在中に何度も繰り返しエナの干渉を試みていたことは知っている、勿論それが形にならなかった事もだ。

 予想通りマナの放った術のおかげでカレンの呪いも緩和されているみたいだ。


「まだ本調子ってほどじゃ無いけど、もう1段階緩和されたならどうだ?」

「うん。かなり良い感じだと思うよ?」

「へぇ…エナの剣…綺麗ね。」

「マナも見えるのー?」

「ええ…見えてるわ。とっても素敵。」


 何かに浸るように、カレンの剣を見つめるマナ…


「さて時間も無くなってきたし、サクッとカレンちゃん復活からの奇襲作戦やっちゃいますか!」

「奇襲って、宛はあるの!?」

「まぁ、こっからは少しばかり賭けの要素がデカいんだけどな。いいか、作戦は……」






 ……







 現場で動けるのは俺達3人。

 敵の数未知数。

 味方の応援到着不明。


 誰がどう考えてもキッツい状況だが、最近色々ありすぎて慣れてきちまった。



 さてさて、こっちの反撃開始だぜ。











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