41話 世間話と襲撃と…
マナは語る…
自身の記憶の物語を…。
「そんなこんなで、ナガイキョウコと、トダショウヘイと出会った私は、ゆっくりとこの世界を知っていったわ…。
えっと、ユウ?ここまでの私の話理解出来てる?」
「正直言わせてもらうと結構ハードな内容に頭が追いついていかなくなりそうってのが本音だな…。」
ナガイキョウコ…
ライデンが探していた、謎の人物。
正直マナが言い出さなくとも俺から、その名前は聞く予定だったが、、
やはり、マナはナガイキョウコと面識があったのか…
そしてもう1人、トダショウヘイ…
多分うろ覚えだけど、日記にあったあの『ショウさん』というのは間違いなく同一人物だろう。
マナの話で、俺の知たい事も幾つか分かりそうだが、マナはどこまで知っているんだ?
それにしても目覚めたら異世界か…いや、彼等の台詞を借りるなら『別世界』か…。
「まぁ、そうね…。私も貴方と同じ状況なら困惑すると思うし…それに、私は元々大学院では似たような研究もしていたから、理解が早かったのかもね…」
「お前なぁ…軽く高卒ディスってんじゃねぇよ。ったく、でもまぁ頭の造りは違うんだろうな…」
ぶっちゃけ、この世界に飛ばされた後ルビィに話を聞いていた時は、そこまで混乱しなかったけどな、軽く中二病入ってたから異世界なんてのも受け入れちまったしな。
だけど、それを踏まえてもマナの話は正直頭が追いつかない…。
ゆっくり整理すると。
ある日目覚めたマナは頭に怪我を負っていた…
それを介抱していたのが、ショウヘイとキョウコ…
んで、俺がメンテナンスなるものを受ける必要は無い、何故かは分からないがマナはそう言ってる。
元の世界から来た、マナ、ショウヘイ、キョウコ、そしてもう1人は純血種であり、何故だか俺だけ亜人種…か…
「ちょっと、ホントに大丈夫?」
「ん?え?」
「凄い顔してるわよ?怖い目つきで…」
「目つき悪いのは生まれつきだ。まぁ、今ちょっと頭の中整理してたとこだ、続き……聞かせてくれよ。」
「……ふふっそうね、じゃぁ先ずは順を追って2人の事から話すわね。」
さて、心して聞くとするか、ショウヘイとキョウコ…
って、そうだ!その前に!
「マナ!そういやキョウコ…ナガイキョウコは今どこに居るんだ!?」
「え?」
「ナガイキョウコを待ってるやつがいるんだ、いや、正式にはナガイキョウコが使った術が未だに有効化してる。お前さっき、俺達は術を使えないって言ってたよな??それはどういうことなんだ!?」
「キョウコの術?って、あぁ…多分それは術とは少し違うモノね。」
「術とは違う??」
「そうね、貴方の…というか私達の眼の力みたいなモノよ。
それがキョウコとどういう関係が?」
「南部の街『カリキ』でナガイキョウコからの伝言を託された奴が、死んだ今でもそこに居るんだ…せめて何とかナガイキョウコの情報を伝えてやりたい。」
ライデンは干渉されたエナ。
それはナガイキョウコによって使われた術の一種だと思っていたが、そうじゃ無いのか…
「伝言…?あの娘いったい…」
神妙な面持ちで考え込むマナ…。
「な、なぁなんでも良いから教えてくれないか?顔見知り以上の関係なんだろ?」
これ以上ライデンをあの場所に縛り付けるのは何だか可哀想だ…。
今回のマナの情報でアイツが解放されるとは思わないけど、ナガイキョウコの情報を持って帰って少しは楽にしてやりたい。
「キョウコ…は……」
「ああ。」
……
…
「キョウコはもう、いないわ。」
「へ?」
「キョウコは、もういないわ。
随分前…そうね…かれこれ100年くらいかしら…。」
!?
なん!だって!?
ひゃ!100年!?じゃ、じゃぁライデンが最後に見たのが100年前だから、それからナガイキョウコは…
「な、なぁマナ…その、マナは、いや、お前達はいったい何年この世界に……」
そんな俺の当たり前の素朴な疑問。
封印の地の結界柱の事も大昔と言い捨てたマナ…
ライデンの話とマナの話から100年は生きているマナ…
まさか不老…
本当にそんなものが存在するのか?
しかし目の前の女の話を信じ、幽霊となったライデンの話、遥か昔に建てられたという結界柱の日記も含めると真実味が増してくる。
「私は……この……」
マナが消えそうな声で呟いた時だった…
ドォォォォォンッッッ!!!!!
「なんだ!?今の音は!?」
突然の爆音に部屋内にいた5人は窓の方を見る。
「近いぞ!?」
「おい!ボンズ、それに嬢ちゃん!話は後だ!何かヤベエぞっ!!!」
なんだ!?
外からの爆音…何かがぶつかった音というよりは破裂したような…
「おい、マナ…何か心当たりは無いのか?」
「失礼ね、いくら私でも、ここまで派手な挨拶されるほど、恨みは買ってないわよ!」
ホントに、なんなんだ!?
いったい外で何が起こってる?
とりあえず状況確認が先決だ。
「よし、一先ず状況確認しよう!スネ夫!オヤジ!マナを頼む!
カレン!悪いけど付いてきてくれ!」
「はーい!」
「おう、それが無難だな。」
「嬢ちゃんは任せろ!」
「ね、ねぇユウ…」
「悪いなマナ…後でもう一度ゆっくり話しようぜ、とりあえずの状況だけでも把握してくるから少し待っててくれ。」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「ご心配ありがとよ!正直言って、俺オンリーなら不安要素しかないけどさ、このカレンちゃんは俺が知るこの世界じゃ、5本の指に入る実力者なんだぜ!?」
ポンっとカレンの頭に手を乗せながら、マナにそう言い捨て部屋を出る俺とカレン。
正直外の状況がどうなってるかなんて分からないが、部屋の中にいても状況は一転しない。
なにより、昼間の特隊の連中絡みならマナに迷惑が掛かってしまう、出来るだけ今外で何が起こってるのかを把握しつつ、対策を練らなきゃ今後の行動も厳しくなるな……
そんな事を考えつつカレンと宿を出る。
……
…
宿から出た俺達2人は、すぐさま音のした方角を見る……
すると街の人達も外に出て、一方を指さし、なにやらザワめいている。
「ユウちゃん…」
「あ、あぁ…。なんだ、あれは…」
「真っ赤……だね。」
ケアルランド中央地区の人達が揃って見上げる方向にソレは見えた。
昼間の青空も夜の星空でも無いソレは、形容のし難い色で、俺の目に映る全てを、そう、この世界を赤く染めていた。
ここを中央地区ど真ん中だとして、俺達が来た方向は南。
そして、今現在赤い光に包まれているのは北側だ。
北側が赤く、そう赤光に輝いている。
「なっ!?おい、カレン!コレはどういう事なんだ!?」
「うーん。なんか見たことあるような-?ないようなー?」
カレンの記憶は結構曖昧だからな、期待はしてなかったけど、こういう回答が多いなコイツは…。
しかし、この妙な光と、先程の爆音…
ただごとじゃないのは俺だって分かる。
「よし、一先ず宿に戻るぞ!」
「うん…なんか嫌な感じだね…」
嫌な感じ…
その通りだ。
花火やなにかなら催し物として楽しめるが、誰もが予想外、まさに不意打ちのようなこの演出…悪趣味にも程があるぜ。
さっきの特隊…
いや、あいつらはこんな派手な事してまで俺達に執着していなかった、それこそ本気を出せばすぐに見つけられるはずだったのに、それをしなかったんだ、今更こんな派手な真似をするわけない…。
じゃぁ、いったい誰が……なんの為に…この首都を…
そんな当たり前の思考が、嫌な予感が、チクリと背中を刺す。
まさか……。
……
…
「オヤジ!スネ夫!マナ!悪いけど少しきてくれ!外が変なんだ!」
バタバタと部屋に戻るなり3人に声を掛ける俺は、何やら嫌な予感を拭えずにいた故の焦りだったかもしれない。
「一体全体なんだってんだ!?今の音と関係あるのか!?」
「分からねぇ!けど、黙ってられるような事態じゃねぇってのは世間知らずの俺でも分かるぜ!とにかく外が変なんだ!」
身体中の至る所がゾワゾワするこの感じ…
言い表せないもどかしい感じ…
ただひとつ言えるのが、これが俺にとって良い事じゃないのは、なんとなくだが想像出来る。
くそ!マナの話の途中だってのに、なんだってんだ!
「マナ…ちょっと緊急事態かもしれねぇ、お前の同行者ってのはいつ頃合流するんだ?」
「あら?心配してくれてるの?ありがと、多分だけどそろそろ中央地区に入って来ると思うんだけど…ちょっとのんびりと待ってる状況でも無さそうね…。」
「おい、ボンズ!嬢ちゃん!先出てるぜ!」
そう言ってスネ夫とオヤジは先に部屋を出る…
そこにポツンと残るカレン…
「ん?カレン?待っててくれてるのか?」
「なんかね、外のアレ嫌な予感するんだ…」
なにやら浮かない顔でそう呟くカレン。
「あぁ…確かに同感だ。けど、部屋内に居るのも落ち着かねえし、俺達も早く外に出よう。」
「…そ、そうだね、いそごう!」
なにやらカレンも嫌な予感がするみたいだし、早く状況確認しなきゃだな。
「マナ、話は腐るほどあるけど、一先ず外に出よう。」
「そうね、一応何かあった時の為にユウの事はメモリーしておいたわ。これで、もしはぐれても私が探しに行けるから安心して。」
「メモリー??」
「まぁ、詳しい話は後よ、急ぎましょう!」
そう言いながらそそくさと、部屋を出て行くマナ。
そんなマナの後ろ姿に、何故か緊張感は感じられなかった気がした…
…
…
…
不気味な色に染まる街中…
多分まだ外は夕飯時で賑わっててもおかしくないはずなのに、往来する人々は、その場に立ち止まり北の方角を見つめている。
「全くもって、妙な空だ…おい、オッサン何か分かったかい?」
「いや、特にこれと言った情報は無いな…ちっ、こんな事なら早く東に移動しておくんだった…。」
オヤジとスネ夫は近くの人達から情報を集めていたみたいだが、聞いてる限りだと大して詳しい事も分からなかったみたいだな。
さてと、マナは何か分かるかねえ?
と、マナの方を振り返る。
マナも辺りの人達と同じ様に北の方角を眺めている…
この様子だと、やっぱマナも思い当たる事無しかな…
…
「見つけた…」
ボソリと呟き空を見上げるマナの表情は、今の今まで見ていたそれとは違う、様々な感情が入り交じったような…そんな顔をしている。
「おい、マナ?」
「ユウ、ごめんなさいね、少し急用が出来たみたい…」
俺に気付いたマナがそう言って何処かへ行こうとする。
「は?何言ってんだ、待てよ、急用って何だよ!もし、この現象と関係あるなら少しくらいは説明していけよ!」
「ふーっ………。
そうね、何の説明も無しというのは酷よね。私…がずっと捜してる人物がこの現象に関与してる可能性…いえ、関与してるわ。」
ずっと捜してる?
先程の話から推察するに、100年以上前に生きていたキョウコと対話をしていることから、マナも100年以上は生きているんだよな…
そんなマナがずっと捜してるってことは…?
「なぁ!マナ!お前が捜してるのって、俺達と同じ世界からこっちに来てしまった奴なのか?」
「半分正解で半分間違いね。」
「どういうことだ。」
「アイツはずっと居たのよ、私よりも遙か昔からね。」
アイツ?
アイツってのは誰だ?
ショウヘイや、キョウコ以外のもう1人の事か?
そんな事を考えていると…
突然、空気が震える様な音が街中に響く。
ヒィィィィィィィン!!!!
「…っぐぁ!?何だこりゃ!?」
「コレは!?…なんだかマズいわね…」
マナがそう呟く声はハッキリと聞こえる、だがこの不快な音は、まるで別方向から、そう直接頭に流れるようだ。
急に頭の中が震える様な音に、立っていることさえままならない、堪らずその場に蹲ってしまう。
「おいっ……!?皆…大丈夫か……っ!?」
そう言いながら辺りを見ると、街中の人達は皆同じ様に、頭を押さえながら地面に倒れていく…
その異様な光景に思わず息をのむ…
バタバタと倒れていく人々…そして訪れる静寂…
そこは誰1人として声を上げる事の無い静けさがこの場を支配していた。
なっ!?
なんだこれは!皆倒れて、いや気絶してるのか?
カレン、オヤジ、スネ夫は?
3人の居た方を見ると、オヤジもスネ夫も地面に伏せ動かない。
皆と同じ様に頭を押さえながら…
カレン?アイツが居ない…一体何処に…
それよりも、この状況は洒落になんねぇぞこりゃ、一体何が…
「ユウ…?大…丈夫?」
そんな俺に声を掛ける人物、マナ。
「マ…ナか、大丈夫とは言い難い…けど、皆みたく気絶するほど…キツくはないぜ……。」
そうだ、カレンはどこだ…
アイツならもしかして無事かも…
「カレン…どこだ!無事なのか!?」
それ程大きな声では無いが、俺の声は遠くまで響き渡る。
辺りの人達は皆気絶してしまった故の静寂だ。
「ユウちゃん?」
どこか、抜けた声でテクテク何事も無かったかの様に歩いてくるカレン…
「お、おぉ、無事だったのか…てか、何ともないのか?」
「え??なにが???」
「この変な音のせいで…皆倒れちまった。カレンは何か不調なとことか…ないのか?」
平然とした顔で俺や辺りの様子を見るカレン…。
この様子だとホントに何ともないみたいだけど…
「皆いきなり倒れてビックリしたけど、カレンはだいじょうぶだよ。ユウちゃんは平気?」
「あ、あぁ……最初よりは楽…というか慣れてきたけど、他の皆はダメみたいだな、動く気配すら無い…
なんでまたカレンだけ大丈夫なのか謎だけど、無事で…なによりだ。
しかしこの事態はどうしたもんかね…。なぁ…マナ、心当たりあるんだろ、教えてくれよ。」
そう言いながらマナを見る。
俺と同じように慣れてきたのか、先程よりは表情が和らいでいる、しかし未だに調子が取り戻せないのか、片手を頭に当てながら深く息を吐く…
「ふーっ。この光は、ある特殊な石の発光が原因ね。
そして、皆が倒れたのは、その石の力の1つだと思うわ。」
特殊な石?
ってアレか!?
「聖真水晶体か!?」
「あぁ…そっか、ユウは封印の地に居たのよね。
そうよ、ネオクリスタル。私が捜してる人物が持っている物よ。」
マナの捜してる人物が持っているネオクリスタル…
それの力が今現在の現状を引き起こしているのか!?
でも皆を行動不能にして一体何を…
「この状況がネオクリスタルの術ってのは理解したけど、誰が何の目的での行動なんだと思う?」
「貴方達がさっき言ってた『シグマ』の関係だと私は思うけど。」
シグマ!?
「なんだってこのタイミングでシグマだよ!根拠はあるのか?」
「さっきユウから聞いた話を、私なりに纏めてみたけど『アイツ』がシグマに居るなら全て繋がるわ。眼の力を欲しがっていたことも、この術で平気な、そのカレンを欲しがっていたこともね。」
訳が分からねぇ…
だがマナには何か確信があるようだし…それにカレンだけ無事なのも確かに気になるよな。
「カレン…お前本当に何ともないのか?」
「うん。全然へいきだよ?」
キョトンとした顔でそう応えるカレン、街中の人達もそうだし、オヤジやスネ夫も倒れているのに…
「とにかく、どうすりゃいいんだ?このまま皆を寝かせておく訳にもいかねぇし、かといって現状を打開する方法なんてあるのか?」
「そうね…どこまで準備してるか分からないけど、このままで終わるって事は無いし、、、でも…」
「でも?」
「私が思うに、この音も光も耐性がある人間には効果が無いと思うの。そこのカレンが良い例ね…。」
「耐性?」
「そっ、耐性。軍に従事する人達も動けない程の術なのよ?もし敵が攻めて来ていたとしても耐性が無ければ、ここの人達と一緒…動けないはずよ。」
淡々と説明するマナ。
俺にはサッパリ分からない事だらけなのを、当たり前のように言われてもなぁ…
「なあ、マナ、向こう…いや、もし本当にこれが敵による術でケアルランドを襲撃するつもりなら、ある程度の攻略を考えて来てるんじゃないのか?」
「……そうね、普通の戦略なら私もそうするわ…。」
「じゃぁやっぱり、もうすぐ敵が来るって考えて行動しなきゃ!!」
マズイぞ、こっちの被害は目に見えるだけで甚大だ…この様子だと他の地区も似たようなもんだし…
「ユウ…落ち着いて、大丈夫よ。」
「えっ!?」
俺の心配を余所にマナは自信満々に俺に告げる。
「いや、だからカレンや俺達みたく動ける奴等を集めて襲撃してくる可能性だってあるんだろ?そんな悠長に構えてらんねぇよ!」
「話を聞いて。」
先程までのマナとは思えないくらい表情も声のトーンも変わる。
思わずその一声で俺は引いてしまう。
「いい?この術に耐性のある人間は、そうそう居ないわ…そして、打開出来る人間も居ないわ。もし居たとしてもシグマという国が、その人間を、意のままに操り兵士や戦士として手駒にしているとは考えにくいわね。」
「何でか…って聞いても良いか?」
「まず、多くの人達が倒れてるけども、例外もある、それは目の前のカレンを見れば分かるわよね?それだけの事柄を見ても、この術はロッドに関係するものだと思うの…
まだ完全に解析出来て無いみたいだけどね…カレンのように特殊なロッドを持つ人間には意味が無いってところかしら…まぁ、私もユウも影響が出るくらいだし、アイツ本人も手に余る術ってところね…
次にこの術を打開出来る人間…私の知る限り、そう多く無いわ…高度な結界術の使い手ならなんとかなるかもしれないけど、それこそこの世界の一握りの人間よ。
よって導き出される答えは、本格的な襲撃というよりはネオクリスタルの様子見が目的というところかしらね…私はそう思うわ。」
様子見…だ……?
人の意識を奪うような危険な術を様子見だって?ふざけるなよ!
「なぁ!マナ!おおよそで良い!教えてくれ!」
「何?」
「この術は、どれくらいの時間発動するんだ?」
「それは私にも分からないわ…いったい何をするつもり?」
「何をって?決まってんだろ!マナの言う『アイツ』って奴に物申すだけだ!」
正直シグマのやり方には頭にきてたけど…。
黒幕が同郷とはな…
とりあえず一言だけでも文句言わなきゃ気が済まねえ!
「ユウ…貴方本気で言ってるの?ファルも言っていたじゃない、眼の力を欲しがってるのよ?そこにわざわざ行くつもり?」
「じゃぁ、このまま術の発動が収まるまで大人しくしてろって言うのかよ!もしかしたらこれ以上の被害が出るかもしれないだろ?」
「確かに…それもそうね。
でもこの術は、間違いなくケアルランドの外から発動しているわ、この術が発動している間は敵も攻めて来られないし、もう少し策を練るのが妥当性が高いと思わない?」
「くっ…、、皆が、無事な保障は…」
「このまま発動が続いて、倒れた人達がどうなるかは正直分からない、でもこのケアルランドから出れば間違いなくユウは無事では済まないわ。」
マナの言いたい事は分かる。
分かるけど…
俺1人が何出来るって訳でも無い…
例え、カレンとマナを連れて行って、向こうにシグマの精鋭が居たとすると、状況は更に絶望的だ…。
「クソッ!どうすれば…」
頭をガシガシと掻きむしりながら、何かないかと脳をフル回転させる…
考えろ…考えろ…
何かある!何かあるはず!
そういえば、今現在俺が居る中央地区、見渡す限り人が倒れてるが…他の地区はどうなってるんだ?
赤い光が届いてない場所も、もしかしたらあるのか?
「な、なぁマナ…この光って窓の無い建物や地下でも有効だと思うか?」
「はっきり断定は出来ないけど、多分効果有りね。ネオクリスタルとは、それくらい規格外よ…」
「そ、そうか…。
地下ならって考えたんだがな。とりあえずケアルランド全域の人達は今、機能していないって事なのか…?」
安易な考えなら、光を浴びてる人達だけに効果があるものだと思ってたんだが…どうにもそうじゃないみたいだな…。
「このケアルランドの誰が『特別なロッド』なんて分からないけど、殆どの人達は駄目だと思った方が良いわね…」
「だよな…。さて、どうしたもんか、敵にも効果があるのなら、この術が機能している間は攻めて来ないとしてもだ、いつまでもここでジッとしてるのもどうかと思うぜ?」
ホントにただ気絶してるだけなら良い、だけど、エナや、生命力みたいなモノがどんどん低下しているなら洒落にならない。
早く皆を何とかしないと、、
やっぱりそのためには、この術を止めるしか…
「ユウ…人王はケアルランドに来ていないの?」
「ん?なんだよ?いきなり、オルタナならまだ到着してないと思うぜ?俺達は先にカリキを出て来たからな…俺達の翌日出たとしても、到着は明日だぜ?」
「そう…人王なら、何とか出来たかもしれないけど、明日まで黙って待つのも厳しいわね…。」
今のマナの言い分だと、オルタナなら何とかなるって事は、それ以外のヤツだと何ともならないって事じゃねぇか…。
本当にこの光で住民全てが気を失っているなら、とんでもない事態だ。くそっ、打つ手無しか…。
そんな無力な自分を恨む俺の横で、何かを諦めたようにマナが口を開く…
「はぁ…結局私がやるしかないみたいね…」
「え!?」
そう言ったマナは自身の荷物から、布に包まれたこぶしくらいの大きさの物体を取り出す。
「少し離れてて…」
「お、おい、マナ、それは…」
「ホントはあまり乱用したくないんだけどね…」
そう言いながら目を閉じ、なにかを念じるように手に持っていた物体の布をゆっくりと解いていく。
なんだ?うっすら光っ…て。
布が解け、隠されていた全容が姿を見せる…
「光る石?まさかクリスタルか!?」
「そうよ、でもユウは身をもって知ってるわよね、ただのクリスタルは私達に使えない事…」
「って事は…そのクリスタルは…」
そう、俺はエナに関する流れも調整も、からっきしだ、先程マナが話していた事も含めて、この世界の人間以外には術は疎か、クリスタルさえ使えない…
だがマナが手に持つソレは、術を使えない者でも使用可能なクリスタル。
「私のとっておき、ネオクリスタルよ…。」
そう言いながら掲げたクリスタルから溢れるように拡がる柔らかい光が俺達を包み込んでいった……。




