36話 兎にも角にも
……
ガタガタ……
ガタガタ…
ガタ…
軽快に走っていた馬車がゆっくりと速度を落とし、そして止まる。
はぁ…この感じも久しぶりだな、ってもまだ1週間も経ってないか…。
色々ありすぎて感覚がおかしいぜ。
「今夜はここで野宿だな。」
「ふぃー、なんか木人族を警戒してたから身体中が硬くなっちまったぜ…。」
スタっと、地面に降り立ち慣れた手つきで野宿の準備を始める…
「しっかし、だだっ広いなぁ…」
暗がりの中目に映る景色は、一面の平原。
イグザ連合国を南から北上する形で俺達は首都へ向かっていたんだが、カリキを出てすぐに木人族の襲撃にあう。
どうやら、ここら一帯は木人族の縄張りではないらしく今夜は馬を休める為に野宿し、明日から首都へ向かう。
「さてと、飯でも作りますかね?オヤジぃ!火焚いといてくれ…」
「いや、それが火打ち石を忘れてきたみたいでな…」
「おいおいオッサン!まじかよ!カレンは持ってないのか?」
「もってないよー。」
「っかぁー!まぁ俺も持ってないから何も文句言えないけどよ、誰かしら持ってこいよな…」
ん?
あぁそうか、火打ち石無きゃ火が点けられないんだよな…
そんな事を思いながら、ポケットから100円ライターを取り出し慣れた手つきで火を点ける。
シュッ…
ボッ……
「ボッ!?ボンズ!?」
「ん?」
「ガッ!ガキ!?今のはまさか術か!?」
「術じゃねぇよ…俺の居た世界ではこういう道具が当たり前のように出回ってんの……」
石の様に固まったまま俺を指差し、小刻みに震える2人。
ルビィやクラリスでさえ驚いてたくらいだしな、今のオヤジとスネ夫の反応も容易に想像出来るってもんよ…。
「カレンもそれみた時はビックリしたなー。」
「俺から言わせれば、火の術が使えないお前等の方が驚きだったけどな…。」
と焚きつけ用の藁に火を点け薪へ放り投げる、乾ききった薪はパチパチと音を立て、次第に火を炎へと変える…。
未だに俺が使ったライターが腑に落ちないのか、どこか不信感を顕わにする2人。
まぁ特に問題もないし、放っておくか。
……
……
「ぷはぁ、お腹いっぱいぃ」
「やっぱりボンズの飯は懐かしい味がするな。」
「おれは懐かしい感じが分からねぇけど、旨い事は間違い無しだな。」
「どうでも良いけど、お前等食い過ぎだよ…2日くらいの旅だって聞いてたけど、一応多めに持ってきておいて良かったよ…。」
特にカレンとオヤジは人の4倍は食うからな…
「さて、今夜はここで良いけど、馬の調子的に明日には着きそうなのか?」
「道中さっきみたいな事がなけりゃ余裕だろな。まぁ、クラリス様やオルタナ様の最速馬車ならもっと早く着くんだがな…」
「カレン…他の村もみたかったなー。」
他の集落か…正直俺も見たかったぜ…。
「なぁ、スネ夫、地図見せてくれよ。」
「ん?ほらよ!」
丸めた地図を俺に向けて投げ渡す…
「ちょ!お前!火の上通すなよ、おっかねぇな。」
受け取った地図を開き、現在位置を確認してみる。
なになに、ここがカリキだとすると、ケアルランドまでの道中…平原っと…
あった、ここら辺か…
「ん?近くに結構集落みたいなのあるんじゃねぇのか?」
「ボンズ、因みにその1つは木人族の所な…。」
「うげ…んじゃこっちのは?」
地図を指さしながらスネ夫に尋ねる。
「あぁ…そっちは普通に亜人の集落ってか村だぜ、、まぁ立ち寄っても良いけど時間がどうかな?」
「ふーん、まぁ時間あるなら寄りたかったってのもあるけどな…」
「そういや、東の海岸も久々に見たいな。」
地図を目にしながら、ボソリとスネ夫が呟く。
「海岸?」
「あぁ、封印の地から北に伸びる山脈の終わりに海岸があるんだぜ?一応東聖大陸じゃ1番の観光地だ。」
「海は見飽きた感あるけど、観光地ってんなら行ってみたい気はするな。」
「カレンあそこのパンが好きー」
「お前は食い物しか覚えてねぇのかよっ!」
食後だというのに相変わらずブレないカレン。
「まぁ、ケアルランドでのゴタゴタが終われば、ゆっくり観光してきても良いんじゃねぇか?
そういや…ファル、東海岸の国ナエボは今どうなってんだ?」
「んあぁ…あっちは暫く行ってないけど、まぁ北東の国境線のフシコにはアレが有るから大丈夫だろ??」
ん?なんだ?東海岸の街の北の国境線?
なんだか地理がイマイチだけど、アレってなんだ?
「なぁ!その国境線ってのは第3が居たミスマって所とは違うのか?」
「やれやれ、いいか?ボンズ、今から向かうのがここ首都ケアルランドな。」
と地図上の指を、ゆっくりと動かしながら俺に説明するスネ夫。
「このケアルランドから、ずーっと東に行くと観光でも有名なナエボがある。」
「なんか随分色んな街や村をすっ飛ばして東だな…」
「そりゃ首都は西寄りだしな…大陸も広いんだ、途中に集落くらい腐るほどあるぜ?」
まぁ、最南端から1ヶ月かけてカリキだもんな…
元の世界でいうところのアメリカくらいの広さなのか?
ワシントンからニューヨークくらいの距離ってとんでもねぇな…。
「んで、この東海岸の少し北にある国境線なんだが、元々獣人種の縄張りだったんだ…」
「おぉ噂の獣人族か!三榮傑の一人もそうなんだよな!」
「ちっ、その話をする前に言ってんじゃねぇよ。まさに、今ボンズが言った三榮傑の一人アイザックがその縄張りを連合国に明け渡したんだよ。フシコは元々東聖大陸じゃ力を持ってた国だったから当時は皆連合国入りなんて信じなかったもんだぜ?」
ふーん、三榮傑の一人か…
「結局その北東の国境線も三榮傑の威厳で守られてるって感じなのか?」
「んー、まぁ似たようなもんかな。あそこは獣王様の管轄地域だし、尚且つ『獣の雄叫び』ってのが建っててな、ソレを使うと獣人の純血種が集まって来るんだよ。」
「建物?デカい犬笛みたいなもんか?
…いや、もっと凄そうだな。」
「ユウちゃん?いぬぶえってなにー?」
「ん?何でもねえよ。とにかく純血種が集まって来るなら確かに国境線は安泰っぽいな…」
「たまに連合国軍も見回りしてるし、平和で良いところだぜ??」
そもそも国境線っていうくらいだから、色々と警備とか厳しそうだし。
スネ夫やオヤジの所属する「第3部隊」は地方まわりがメインみたいな事を前に聞いたことがあるしな。
「そういやさ、お前ら第3部隊ってマルティア
に居た他にもまだどっかに滞在してるのか?」
「あぁん?そりゃそうだ、第3にも色々と所属があるんだ、ファルやおれはゴーダ副長の管轄を受け持ってたけど、他の奴等なんて未だに北のミスマで膠着状態だぜ?」
「はー、なんかゴタゴタしてそうだな。まぁ、ぶっちゃけオヤジやスネ夫みたいに実力のある人間を、親衛隊に引っこ抜いて心配なとこもあったんだけど、他にも強そうな奴等が居そうだな。」
「まぁな、自慢じゃねぇがファルもおれも、そこそこ有名ではあるけど、他にも実力者は居るからな、なんにせよクラリス様直属の隊に入れたのは幸運だったけどな。」
幸運ね…
俺としちゃ、未だにクラリスの凄さが伝わってこないから、この面子には色物扱いのイメージしかねぇんだけどな。
「てかよスネ夫とオヤジ!もう1回言っておくけど、俺達はルビィ様親衛隊だぞ!クラリス直属の隊じゃねぇからな!そこんとこ勘違いすんなよ!」
「カレンは最初からルビィちゃんの親衛隊だよー。」
「ははっ、カレンは少し落ち着きがほしいけどな。」
「へいへい、今更ウダウダ言わねえよボンズ。クラリス様が崇拝するなら俺は従うぜ?それにボンズやカレンの話聞いてると俺達の偏見も馬鹿らしくなってくるしな。」
「確かにな、今まで水聖ルビィなんてのは恐怖以外に無かったけど、最近じゃそれも違うような気がしてきたぜ。」
「…ッ…おまえら。」
たった2人だけど、ルビィの誤解が少し解けたという想いに何故だか胸が熱くなる感じがする。
「ユウちゃん?ないてるの?」
「ばっ!バカ言ってんなよ!なっ!泣いてなんかいないんだからっ!勘違いしないでよねっ!」
くそっ!思わず泣きそうになっちまったぜ…
でも…
なんか良いもんだな。
ルビィ…
お前の誤解が解けるのって結構簡単かもしれないぜ…。
…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
…
広がる大地、簡易的に舗装された道も、だんだんと立派な道へと変わって行く。
平野をひたすら進む先に見え始める小さな家や小屋、人々の生活感が次々と俺達の視界を通り過ぎる。
やがて地平線は見えなくなり、辺りは建造物に囲まれる。
パッと見た感じでは、その大きさなんて分からないが、遥か遠くに聳え立つ1つ山のような大きな城…東聖大陸首都ケアルランドの象徴が街の至る所から見える。
「かぁーっ!でっかいなぁ!」
街へ入り道のど真ん中で城を見上げながら、田舎者丸出しの俺。
「おいガキ!そんなとこ突っ立ってねぇで、さっさと歩け!」
「お、おう。悪い悪い。」
ついに東聖大陸首都ケアルランドの城下町へ辿り着いた俺達4人。
馬車を引きながらオヤジが俺を急かす…。
「さてさてさて!首都ともなると俺のグルメレーダーがビンビンきてるぜ!おっ!?旨そうな匂いが…。」
「おーい、ボンズ金持ってんのか?」
「ん?そこは、ほらお前等が…な?」
「チッ…おまえら3人共忘れてるみたいだが一応言っとくぜ、おれ達はスパイ容疑で呼び出しくらってんだ、普通に街中歩いてんのだってホントはマズいって分かってんのか?」
「そっか、そういやそんな事もあったな、流石オヤジ!よく覚えてたな。」
「いや、オッサンよ…んな事言ったらよ、カリキを俺達4人で出てきた時点でもうマズいって問題通り越してねえか?」
確かに。
スパイ容疑で首都に呼び出されてんのに、勝手にカリキから出てっちまったんだ、むしろ逃亡者扱いでもおかしくねぇな。
「まぁオヤジとスネ夫の言うとおり、どっちにしろ目立つ行動は避けるよ、、ってカレンはどこ行った?」
先ほどまで横に並んで歩いてたカレンの姿が見えない。
視界いっぱいの人混みの中から、低身長のロリカロイドを探すのは一苦労だ…。
「ほーまーはーへー。っぐんぐ。」
串焼きを頬張りながら、片手に人数分の串焼き4本と酒瓶らしきモノを持ってきたカレン。
「仕事早過ぎるだろ、そっちの飲み物は酒か??」
「ふんぐ。」
「いいよ、食ってからで。てかちゃんと人数分買ってきたと思ったら既に1本は食ってるんだな…」
「んぐっ。っぷぁー美味しかった。コレ皆にあげるね。」
そう言いながら俺達に串焼きを渡すカレン。
渡されたソレは、カリキのモノとはまた一味違った匂いだ、香辛料が効いているのか鼻の奥にツンとスパイシーな香りが食欲をそそる。
「サンキューカレン、んじゃ早速いただきまっ…」
そう言いながら口を開け、串焼きに齧り付こうとした瞬間だった。
突如グイッ!と
物凄い力が首の後ろを引く…
たまらず体制を崩しその場に倒れ込んでしまう…
突然視界は変わり、目の前のスネ夫とオヤジを置き去りに空を見上げる。
受け身!
と考える間もなく、感覚で地面が近づくのが分かる…
が、訪れたのは地面に叩きつけられる痛みでは無く優しく受け止める人の感触だ。
気づけば俺の襟首を引き寄せた張本人カレンが俺の身体を受け止める。真下から見上げるカレンの顔は、俺では無く正面を見据えている。
「ちょっ!おまっ何すんだよ!」
「ごめんきんきゅうだった。」
カレンに抱きかかえられたまま声を荒げるが、ボソリと呟くように俺に告げるカレン。
「緊急?何言ってんだよ…」
そう言いながら、ゆっくりと身体を起こすように辺りの様子を見る…
…
身体を起こした先、目に映る異常な光景。
銀一色の全身鎧姿の男達が数人、俺達を囲むように立っている、その中の一人がカレンに向かって言い放つ。
「おい!首斬り!お前ここで何してんだ?あ?」
片手には鞘から抜かれた剣をブラブラさせながら不機嫌な表情で俺達4人を威嚇しているようだ…。
「と、特隊が何で!?」
驚いたように声を出すスネ夫。
特隊だ!?
連合国軍特隊って確かクラリス直属の隊でカレンが前に居たとこだよな?
「あー?なんだ?てめぇは!?ザコは引っ込んでろや、おい!首斬り!てめぇに聞いてんだよ!何してんだ?こんなとこで?あー?」
「べつに来たくなかったけど、呼ばれたから…」
俺の体勢を直しながら、目の前の男に返答するカレン。心なしかカレンの機嫌が悪いように感じる。
「へぇ?呼ばれたねぇ?そりゃぁアレかい?シグマのスパイ容疑の関係かい?」
「ーー!!???」
「おいおい、なんだ?その顔は?あー?こちとらそれくらいの情報くらいは共有してんだよ。ったく、カリキくんだりに送った奴も使えねぇ!護送くらいしっかりやれってんだ。なぁお前等!?」
首を傾けながら取り巻きの兵に同意を求める男。
ずいぶん偉そうな態度だけど、なんなんだ?それに、なんで俺が倒され…
ってまさか!?
「カレン、ちなみにだけど、目の前の男は俺の事斬ろうとしたパターンかな?かな?」
「そうだよ、言っても間に合わなかったから引っ張っちゃったけど、アイツいきなり斬り付けてきた……」
おいおい、マジかよ…。
「あー?シグマのスパイなんだから、これくらいの攻撃避けられると思ったんだかなぁ?」
「くそっ!無茶苦茶言いやがって!おい!そこのお前ェッ……っむぐぉ」
目の前の男に威勢良く言葉を発した瞬間、バカデカい手に口を塞がれる。思わず振り返り確認すると、オヤジが額に汗を浮かべながら俺に向かって首を横に振る…。
「オッサン、良い判断だ。なぁボンズ、ここは止めとけ…相手が悪すぎる。特隊の連中はそこらの兵士とは違うんだ、関わらない方が身のためだぜ…」
俺とオヤジに近付きながら、ヒソヒソと声を抑えながら説明するスネ夫。
「おい?そこの凡人、何か言ったか?あー?」
「いえいえ!!少し倒れた時にどこかぶつけたみたいでして、それで大声を発してしまったみたいです。」
男の機嫌を損ねないように出来るだけ穏便に済まそうとしているのがバレバレのスネ夫。そこまでしなきゃいけない奴等だってのか??
「はっ!ザコは少し大人しくそこで固まってろ。さて、カレン?クラリスは来てないのか?話じゃスパイはクラリス含む5人だろ?」
「クラちゃんは一緒じゃない、エルマはカレン達を迎えにきたの?」
「ははは!!んな訳あるかよ!なんで俺様が自ら出向かなきゃならねぇんだ!?あ?バカかお前?」
「じゃぁ関係ないよね?そこ通してよ。」
カレンの声のトーンが下がる。
誰が聞いても分かるくらいに不機嫌だ、まぁこの際目の前の偉そうなエルマとか言う奴を、ぶっ飛ばして欲しいんだが、そこは少しだけ自重しよう。
「お?やる気か?こんな街中で暴れるつもりかよ?あ?」
「必要あるならカレンはやるよ…」
「へぇ…コイツは驚いた。特隊の俺様と他の兵に少しでも危害を加えるって事がどういう事か、てめぇは身をもって知ってんだろうが?」
未だに片手の剣をブラブラさせながら、余裕の表情のエルマ。
カレンが身をもって知ってる?
カレンは特隊から第3に飛ばされたんだよな?その理由って…確か…
あ!
そうだよ、上司を斬ったとか何とか言ってた!!
んじゃなにか?今ここで暴れたら、スパイ容疑に重なってそれも加わってくるのか??
おいおい、結構マズイんじゃねぇのカレン??
そんなカレンに目をやるが、一向に警戒を解かない。大事になる前にカレンに駆け寄る…
「な、なぁカレン、ここは落ち着いて、な。」
「カレンは落ち着いてる、エルマ達が邪魔してくるだけだよ!」
「なんだぁ?やらねぇのか?つまんねぇなぁ、、おい!シラけた!帰るぞお前等!」
「よろしいのですか?首斬りを放置しておいても?」
「問題無し!軍にはそう伝えておけ!どうせ数日後の評議会には裁かれるんだ、今のうち余生を楽しませてやりな!」
「「はっ!!!」」
なにやら勝手にシラけて帰ろうとするエルマ率いる特隊一行。
くっそ、なんか事情は分からねえがイライラするなぁ。
「カレン、大丈夫か?」
「ちょっと頭にきたけどね、我慢した。」
「俺もだ、頭にきてるけど、我慢してる。」
「ふふっ、ユウちゃんらしいね。」
そんな緊張感の抜けた会話に、エルマが口を挟む。
「いよぉ!そういえば!言い忘れてたぜ!今回の件でクラリスは除隊処分だ!隊長さんも帰って来る気配もねぇし、今後は俺様が特隊を仕切ってっからよぉ。まぁ宜しく頼むわ。」
その言葉を聞いて辺りの人々が口を開く…。
「な!?クラリス様が!?」
「いったい何が?」
「闘女王の称号を持つあの方に限って、そんな…」
「へっ!おい!そこいらで喚いてる愚民共よく聞け!!クラリスはシグマのスパイだ!そこの4人同様、後日裁かれる!闘女王は民を騙していたんだ!」
ッ!?
アノ野郎適当な事言いやがって!もう我慢出来ねぇ!
「おいっ待てよ!!そこのお前!!!」
「バカ!やめろ!ガキ!」
「ボンズ、落ち着け!」
「お前らこそ、何黙ってんだよ!あんな事言われてんだぞ!?何様か知らねえけど誤報で立場悪くなるクラリスが可哀想だろうが!!」
そんな俺達のやり取りに、面倒くさそうに入ってくるエルマ。
「おい、そこの…」
「なんだよ!」
「ずいぶん生意気な口を訊いてるが、何者だ?あ?」
「はっ!生意気で結構!特隊のお偉いさんだか知らねえけど、俺達5人はスパイかもしれないっていう容疑で呼ばれたんだ。スパイって確定するのはおかしくねぇか!?それとも、俺達がシグマのスパイっていう証拠でもあるのかよ!!」
そんな俺の啖呵に周囲の人達が静まり返る…。
なんだか勢いに任せて口走ったけど、この流れからすると…
「わかった、わかった、特隊に刃向かうって事なら俺達も容赦なんてする必要無いよなぁ…おい!お前等!こいつらを囲め!!」
ってなりますよねー。
あー!!ったく!バカかよ俺は!マルティアでも同じ事して、オヤジにボコられたじゃねぇか!
今回ばかりは完全に俺のミスか、オヤジとスネ夫の言うこと聞いて、黙ってたらよかったぜ…くそっ!
「ったく、やれやれだな。まぁ、ガキが言おうが言うまいが処遇は変わってなかったようなもんだ、腹括るぜッ!なぁファル!!」
「かぁーっ!首都到着早々に特隊相手に何しろってんだよ、無茶言ってくれるぜオッサン!!」
「なんか、すまねぇな2人とも…」
「けっ、今更そんなしおらしくなったって遅ぇよ!それにな…」
「それに?」
「俺もオッサンもクラリス様に敵対するような奴等とは仲良く出来そうにないしな!」
自信満々のドヤ顔で俺に向かって格好つけるスネ夫、うん。出会った当初は「ヒャハ」ってるモブキャラだったのに、いつの間にか頼もしい味方のような気がしてくるぜ…
「せっかく我慢してくれたところ悪いんだけど、こういう状況になっちまったんで、勘弁な!
んで、相手の実力の程は、どんな感じですかね?」
「ふふふっ、いいよー。ユウちゃんが我慢しないならカレンも我慢しないし、それと3人はジッとしてて大丈夫だよ。」
「へっ?いやいやカレン、いくらお前が馬鹿みたいに強いからって、特隊相手に無理があるだろ?」
カレンの余裕満々の発言にオヤジが物申すも、うすら笑顔のまま首を振る。
目の前のエルマ率いる特隊の連中は6人、大将首エルマはその奥で馬に跨がり、ニヤニヤと俺達を見下ろしている。
ゆっくり歩きながら近付く特隊の兵士。
それを道の真ん中で、棒立ちのまま迎えるカレン。
そんな後ろ姿を見ながら固まる俺達3人。
ようやく辿り着いた首都ケアルランド。
早速のトラブル、しかしこの後このいざこざすら忘れてしまうような大きな事件が起こる事を、この時の俺はまだ知らなかった…。
更新遅れて大変申し訳ございません、インフルからの合併症で少しバタバタしてましたが、入院中書き溜めてたものをチビチビと消化していきたいと思います。




