表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここではないどこかへ  作者: ししまる
第三章 異世界 ~首都~
39/78

35話 バラバラの旅立ち

 



『イグザ連合国』





 東聖大陸の南半分を締める広大な国。

 その最南端には、大砂漠が広がり、人の立ち入る隙を与えない。

 大砂漠の始まりの街とも言える港街カリキより北は、人々が住みやすい豊かな自然が広がり人種差別の無い平和な地だ。









「った、はずなんですけどぉ!!!!???」

「うるせぇな!ボンズも何か援護しろっ!」

「んな事言ってもよぉスネ夫!俺に出来るのはエナを見ることだけだっつんてんだろ!ってあぶねぇっ!!」


 ガタガタと揺れる荷台。

 俺の目の前に突き刺さる矢。

 遠方に巻き起こる砂煙から幾つもの矢が飛んでくる…。


 ちくしょう、カリキを出発してまだ半日も経ってないのに。

 そもそも、俺はこいつらと一緒に行くの嫌だったのに、何でこんな事になってんだよ…。


「おい!ガキ!ブツブツ言ってねえで敵を見てろ!何か変化はないのかっ!?」

「顔出したら頭に矢が刺さっちまうよっ!それにアイツ等ずっと離れたまま矢を放ってるだけじゃねぇか、オヤジこそなんとかしてくれよ!!」



 俺達ルビィ様親衛隊は先日のシグマ国のいざこざ関係で首都ケアルランドから呼び出しを受けていた。

 共に行動していたビシャスの裏切りにより、俺達残りのメンバーもスパイ容疑をかけられていた為だ…。



「ねぇ!ユウちゃん!クラちゃん達は大丈夫なのかなー?」

「今はそんな心配よりも、俺達の命の心配しとけ!あっちはあっちでヨラムも、オルタナも居るんだ!なんとかなってるはずだろ!」



 そんなこんなで、俺とカレン、オヤジとスネ夫の4人は、クラリス達とは別に、朝一番でカリキを立った。

 …までは良かったんだが、道中謎の集団に襲撃を受ける始末…。


「おいっ!ボンズ!馬の様子はどうだ!?いくら武装させてるとはいえ、馬が潰れたら洒落にならねえぞ!」

「だから、俺に言うなって!…っぶね!」


 次々と放たれる矢を、スネ夫やオヤジ、カレンが剣で捌いてくれているが、このままだと馬に当たるのも時間の問題だ…。

 かといって、こっちには飛び道具なんてないし、遠距離相手に有効な術を使える奴なんて…


「お、おい!スネ夫!お前風の術とか使えないのかよ!」

「ああ!?こんな時に何言ってんだ!そよ風吹かせてどうすんだよ!」

「風の魂みたいなのアイツらにぶつけられねえか?子女様はそれで化け物殲滅してたぜ!?」


 ネオンの風玉を思い出し、スネ夫に問いかける…

 が…。


「馬鹿言うなよ!ネオンディアナ様の魔力と俺の魔力なんて、泥と曇くらい違うっつーの!!それより何か他に良い考え無いのかよっ!!!!」



 キンッキンッと、器用に矢を堕としながら俺に問いかけるスネ夫…。


 ちっ!

 使えねえ、ってかネオンが異常なのか?この世界のヒエラルキーが未だによく分からないのは、初っぱなからルビィとネオン、ラスボス級の実力者2人とエンカウントしたからなんだろうな…。




「ねぇユウちゃん?」


 そんな下らない事を考えている俺にカレンが声をかける…


「なんだ!どうした!?」

「相手何人くらいかな?」

「ちょっ!ちょっと待てよ、えーと…」


 砂煙が立ち込める中、敵の数を確認する…。


 1、5、10。


「おおよそだけど、10くらいだ!」

「ありがと!んじゃいっかい馬車とめよっか。」

「は!?カレン?お前何言って?」


「ふぁるー、ざんー、ちょっと矢払っておいてー。」


 そう言いながら、突然馬車を止め、集中放火ならぬ、集中放矢を人任せにカレンは剣を両手に持ち、ゆっくりと外に出る。


 敵もそんなカレンを狙うように、矢を放つが…






 シュンッ…





 と、姿を消すカレン。

 ザシュっと、立っていた場所に矢だけが幾つも刺さる。


 次の瞬間、俺達への攻撃がピタッと止み、遠くの敵の方から混乱にも似た声が上がる…。




「あーなるほどね、最初からこうすりゃ良かったんだな。」


「まぁ、不調とはいえ良くやるよ、流石首斬りだオッサンの腕を切り落としただけあるな、ヒャハ!」

「おい!ファル!おめぇ変な事思い出してんじゃねえぞ!」


 と、安心感に包まれた俺達3人は砂煙巻き上がる敵の方を眺めながら下らない事を言っていた。

 そんな俺達の元へ、カレンが戻って来る…。






 …






 …






「おみやげー。」


 そう言って、エンブレムのような物を俺達に見せるカレン。



「おん?こりゃ…まさか?」

「おいおい、マジかよ…。」

「ん?何だ?これで敵の正体分かるのか?」


 俺にはどう見ても普通のエンブレムにしか見えないんだが、スネ夫とオヤジの反応を見る限り、どうやらただの族じゃないことは確かみたいだな。


「ねー、ざんー?コレって木人族のだよね?」

「あ、あぁ…間違いねぇ、けど、何で今更になって…。」


 木人族?

 あの格ゲーに出て来るようなヤツ?

 違うな、カレンの剣にしっかりと血の痕が残ってるとこを見ても相手は人なんだろうな…


「やれやれだなオッサン、こりゃ何だか良くない雰囲気だぜ…。なぁカレン、誰か討ち損ねて生きてる奴なんて居ないかい?まぁお前相手に生きてる奴なんて…」

「皆いきてるよー。」


「は?」

「え?」

「なっ?」


「カレン誰も殺してないよ?」


 首斬りとも呼ばれるカレンが、誰も殺さず相手を鎮圧したってのか?

 何で?どうしてまた…。


「おい、なんか悪い物でも食ったか?」

「むー!なにそれ?」

「いや、お前が、相手を殺さずに戦闘不能にするなんて思ってなかったからさ…」

「カレンはかわったのっ!!」



 腰に手を当てながらプンプンと怒った素振りを身体で表現する、見た目14歳の殺人鬼。


「うーん、まぁ生きてるなら多少話聞いてみるか?」

「いや、全員生きてるなら話は別だ、この腕章だけ有れば充分だぜボンズ…それよりも早くケアルランドに向かわなきゃ!ここを離れるのが先決だ!」

「ファルの言うとおりだ、急ぐぞガキ!夜になったら厄介だ!」



 急に神妙な面持ちで出発を急ぐオヤジとスネ夫。


 ん?何か夜になるとマズい事でもあるのか?



「おい、何でそんなに焦ってるんだ?」


「話は後だ!出発するぞ!オッサン、日が落ちるまでと、ケアルランド到着と、どっちが早いかね?」

「まぁ確実に日が落ちる方が早いだろうな…。」

「だよな…おい!ボンズ!急げ出発するぞ!」

「ったく!ちょっとは説明しろよな!」


 そう言いながら馬車に乗り込む。

 バタバタ慌ただしく、俺達は再びケアルランドへの道を進む…。





 …





 …






「んで?あの場を慌てて離れた理由を聞いても良いか?」


 ガタガタと揺れる荷台で、俺が口を開く。


「木人族の特性ってーか、能力ってか、アイツら夜目が利くんだ…。」

「んじゃ夜になったらまた襲い掛かってくるんじゃねぇのか?」

「いや、ガキは知らねえかもしんねぇが、カリキから北は様々な種族の縄張りみたいなのがあってな…この先にあるケアルランド近くの平原まで行けば木人族も手出し出来なくなるってことよ。」


 縄張りねぇ…


「それにしたって、なんでまた真っ昼間に仕掛けて来たんだろうな?」

「木人族の連中は元々東聖大陸の種族だ、連合国設立前から居たんだが、まぁアレよ…領地を奪われたってのもあって、共存はしてるが仲良しって訳じゃねぇんだ…。」

「種族差別の無い共存地帯で内乱起こしてんのか?」

「いや、こんな大それた事をするような奴等じゃねぇんだがな…今までだって大人しいもんだったぜ?」


「今まで何も無かったのになんでまた…」


「はぁ…ボンズ、オッサン、2人とも…俺達何のためにケアルランド向かってると思ってんだよ。」



 何のために?ってそりゃ、元の世界への手掛かり…

 は俺の話で、俺達4人がケアルランドへ向かってる理由?


「スパイ容疑…か?」

「ボンズ正解。」


 ピッと指を差しながらスネ夫が話を続ける。


「幾らここが共存地帯っても、北のネオシグマ帝国の脅威は皆知ってるし、ましてや先日のカリキ襲撃だってもう他に広まっててもおかしくない。」

「んじゃファルよ、アイツらはおれ達をシグマだと思って襲撃したって事か?」


「実際のとこは分かんねえけど、俺達4人を襲うように指示した奴には、そう思われてるんじゃないかね?ケアルランド到着前に疑わしきを罰せよって感じじゃねぇか?」

「はぁー、だから俺はおまえらと一緒に行くの嫌だったのに…。」

「ねぇーお腹すいたー」

「お前は少し黙ってろ!」


 ったく、緊張感のない奴だぜ…


「んで?オヤジとスネ夫は、木人族を差し向けるような奴に心当たりとかあるのか?」

「ん?おぉ…いや、まぁ…なぁ、ファル?」

「え?んー、でもなぁ…それは無いんじゃねぇかな?オッサン?」


 何やら口篭もる2人、どうやら少しばかりの心当たりはあるみたいだ。


「おい、何か知ってるなら先に言っとけよ、俺とカレンが後から問題起こしても、お前達2人共道連れだからな。」

「カレンも問題おこすの?」

「むしろ、お前が1番起こすの!」


「わかった!わかったよ!んと、オッサンから説明するか?」

「いや、ファルから頼むわ…この2人に叩き込んどけ。」

「はいよ!んじゃ、ちっと耳を拝借…っと。

 えーっと、連合国には5人の王が居るんだけどな…。」


 5王…

 元々色んな国が合わさって出来た連合国、そのトップが5人の王…

 一人はオルタナだろ?


「人王、獣王、命王、魔王、そして木王…」

「木!?」

「そ!んで、ここだけの話、人族と仲の悪い命人族と木人族、特に木人族は最後まで連合国に納得いかなかったってのも有名な話だ。」

「そんな不安材料を巻き込んだ連合国なんて、よく設立出来たな…」

「まぁ、ユウもよく知ってる人物達が暴れてくれたのもあって、渋々了解したってとこじゃねぇかな?」


 三榮傑…か。


「おい、スネ夫!ルビィを悪く言う事は許さねえから気を付けろよ!」

「ふぁる?ルビィちゃんの敵?」


「ちょちょちょ!!待て待て!カレンも剣を置け!」


 いつの間にかスネ夫に向けて剣を構えてる、根っからのルビィ脳カレン。


「言い方は悪かったけど、木人族達を抑えたのは三榮傑の力だ、まぁそのおかげで多種族間の衝突時は減ったけど、未だに根に持っている連中だっているって事だ…」

「けっ、下らねえ!昔の事をいつまでもグチグチ言ってんのか…。

 んで?今回の襲撃も木王が一枚噛んでるって事か?」


 未だに人族との確執がある木人族…か。


「俺はその可能性が高いと思ってるぜ?オッサンも多少なり感じてんだろ?」

「まぁ…でも、少し考え過ぎって気もするがな…」

「俺も少し言い過ぎってのはあるけどよぉ、国境線での戦闘見てるとネオシグマ帝国への執着とか凄かったじゃねぇか?」

「あぁ…確かにな、そう言われると少し納得しちまうな。」


 ん?って事は、オヤジ達の居た部隊と一緒に戦ってたのか?たしか、第三部隊だよな?

 辺境地帯ばかりウロウロしてる頭のネジが飛んでる問題児ばかりが集まる危険な集団…


「ユウちゃん、なんか、しつれーな事考えてない?」

「いえいえ!滅相も御座いません!決してそのような事は何一つ思っておりませんよぉ??」

「ふーん?」


 やれやれカレンは普段はポエーっとしてるけど、戦ってる時とか、今みたいに偶に勘が働くというか、まったくだぜ…。


「んで?国境線とかじゃ、木人族とは協力関係にあったのか?」

「んー?そうだな…そうであり、そうではないってとこだな。」

「オッサンの言うとおり、まさにそれだな。」

「なんか良く分からねえな、どういう事だ?」


「シグマの連中が俺達連合国軍を攻めてる時は我関せず、逆に俺達がシグマを攻めてる時は、先駆けまではしないが、援護なり露払いなりしてくれてたな…。」

「なんだそりゃ?おいしいとこ取りみたいなもんか?」

「まぁ…味方じゃねぇが、敵は同じってとこだろ、ファルも俺も連合国軍であって、シグマの服を着ていないから攻撃されなかっただけだしな…」


 敵の敵は味方とは限らない…か。

 今回の襲撃もそうだし、なにやらシグマの連中とは色々と根が深そうだな…。


「とりあえず、木人族が人族…ってかシグマ嫌いなのは分かったけどよ?俺達をスパイ認定して襲撃させたってのは、王様って事ないよな?」



「「…………。」」



 突如黙り込む2人、その仕草だけで分かってしまう、よりによって連合国の王の一人が俺達を襲撃させたかもしれないって事に…。


「え?ホントに?」

「いや、だから確証は無いけどな?」

「おれも、あの方がそこまでやるとは思えないんだが、他に思い当たる人も居ないんだよな…。」


 あの方ってのは王様か?

 どんな奴なんだよ、根っからのシグマ嫌いみたいな奴か?


「まぁ根っからのシグマ嫌いだからな。」

「そのまんまじゃねぇか!」

「あ?どした?ボンズ?」

「あ、いやすまん、思わずツッコミ入れただけだ。」



「さて…そんなこんなで一応警戒態勢でケアルランドまで向かうが、ファル今どの辺か分かるか?」


 そう言いながら、薄皮で造られた地図を渡すオヤジ…

 随分年季の入った地図、色んなシミや血の痕、ところどころ破けているが東聖大陸の殆どが書かれている物だ。


「んっと、平原に向かってるなら、この街道だろ?えっと…そろそろ、ため池辺り見えても良い頃合なんだが、オッサン何か見えるかい?」

「いや?何も見えねえな…夜までに抜けられそうか?」

「まぁ、問題ないだろうよ、後から来るオルタナ様達が心配ではあるけどな。」

「いやいやファルよ、クラリス様とヨラム様も付いているんだ何も心配ねぇさ。」


 そうなんだよなぁ…


 ったく、こんな事ならあの時待ってればよかったぜ…












 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 











「はぁ!?なんで出発しないんだよ!?」


「ふむ、どうやらオルタナ様の元に各国の状況報告が飛び込んで来たようでな、私も軍の指揮系統をもう一度見直す必要が出てきたのだ。」


 朝一番で準備を済ませ、ケアルランドへ向かおうとする俺に、クラリスが遅延を知らせる。


「んなもん、ケアルランドでも出来るんじゃねえのかよ?早く行こうぜ!」

「確かに私は首都でも問題は無いが、カリキ周辺の復興対策も兼ねて少し練りたい事案もあるのだ。

 そもそもユウは何故そんなに急いでるのだ?」


「ぐっ!それは…」


 ルビィとネオンがケアルランドで合流する。

 なんて言ったら、療養なんて関係無しに即飛び出してしまいそうだったから、クラリスに言わなかったんだけど、完全に失敗だったな…

 カレンもクラリスもルビィへの愛着というか執着が桁違いだしな。


「ふん、どうせ下らん事だろう…そんなに長くはならないから1日くらい我慢していろ。」

「いっ!1日!?馬鹿言うなよ、こっからどれだけの距離あるか知らないけど、俺は早く行きたいの!」

「何を我が儘言っている!とにかく!オルタナ様も私も今すぐ出発は無理だ!」

「ったく、んじゃぁ誰か連れてってくれる奴探して勝手に向かうわ、それなら良いだろ?」


 ただの変態だと思ってたのに、意外と頭の固い女だぜ。


「ユウ…何を焦っている?元の世界とやらの手掛かりの為か?」

「べっ別に焦ってねぇよ、ただ今日出るって言ってたのに、いきなり出発が延びて面食らってるだけだ。」 

「ほぅ?まぁ良い、とにかく今から出発というのは難しい、分かったな!」


 ちっ…これ以上クラリスに言っても無駄だな。


「わーったよ!忙しいクラリスには、もう頼まねぇよ!他の奴と先に行ってるからな!後悔すんなよ!」

「何故私が後悔するのだ?」

「へへーんだ!教えてやんねぇよー!」

「貴様は私を怒らせて楽しいのか?エナが使えなくともユウ程度、斬り捨てる事など容易いのだぞ?

 おぉ!そういえば、ルビィ様との約束はユウを無事にカリキまで連れて行く事だったな…」


 腰の剣に手をかけながら、何やら危険な微笑みを俺に向けるクラリス。


 あ、やべぇ…ちょっと挑発し過ぎたか?


「あー!そうだ!部屋に忘れ物しちゃった!急いで取りに戻らなきゃだぜ!ははははー!

 んじゃっ!」


 そう言い放ち、フルダッシュでその場を離れる…。







 ……






 …





 はぁ…

 しかし、今日行かないとなると、明日以降か?別に定例会までに向こうに着くのが確定してるから良いっちゃ良いんだけどな…





「逢いたかったな…」






 ボソリと本音が漏れる…


 封印の地で別れた2人、ルビィとネオン。


 ヨラムが定例会に呼ぶとは言ってたけど、ゆっくり話せる時間がその後あるかなんて分からない…。

 というかルビィはともかく、ネオンは今後の事も含め相当厳戒態勢になりそうだしなぁ…出来れば定例会みたいなのが始まる前に逢いたかったんだけどな…


「おいガキ!何をブツブツ言ってるんだ?」


 突如デカい影が目の前に現れる…

 が、その主も聴き慣れた声によって把握出来る…



「ん?なんだオヤジか…出発が延びたのは聞いたか?」

「あぁ聞いてるぜ?今丁度その事でクラリス様の元へ進言しようと思ってたとこだ。」

「あ?どういう事だ?」

「ちぃと、訳あってな本日中に出発したいんだわ…」


 え?オヤジも?何かあるのか?

 いや、それよりもオヤジを用心棒にケアルランドまで一緒に…

 おぉ!なんか行けそうな気がしてきたぞ!?


「あのな?オヤジ…実は俺も本日中に出発したいんだけど、その上手くいくようなら俺も一緒に連れてってくれねぇかな?」

「おん?別に良いぜ?だけどな…一応おれ達は向こうから呼ばれてる身だしな、2人だけ先に行くってのは難しいと思うぜ?」

「んじゃオヤジはクラリスに何をお願いしに行くんだよ?」

「だから、出来るならクラリス様含め、俺達5人が使者に連れて行ってもらうのが良いんだがな…」


 ん?今なんて?


「使者って言ったか?」

「あぁもう屋敷の入り口に来てるぞ?」

「マジかよ!んじゃ行こうぜ!」

「だから、それが出来るなら苦労しねぇって言ってんだよ!」


 迎えが来てるんだから、行かなきゃだろうが!って言っても向こうからしたら、連合国軍のトップ相手にそんな事言えねぇか…。



「うーん、とりあえずクラリスは説得しても無駄だったからオルタナかヨラムのとこ行こうぜ?」

「馬鹿かっ!?ガキと違って、そんな簡単に口利ける相手じゃねぇんだよ!」

「イケる!イケる!現に俺が普通に接してるだろ?」




『マガミのは無神経って言うんだぜ…』



 俺とオヤジの会話に突然入ってくる声。


 振り向くとその声の主は悠然と立っていた、魔王の兄弟、魔人種王族ヨラムだ。



「いよっ!ヨラム!丁度お前の話してたんだよ。」

「よっ!ヨラム様!」


 ザッと!膝を付きヨラム相手に頭を下げるオヤジ…正直オヤジの規則正しい作法に驚きを隠せない…。


「あー、ザンザスだっけか?顔上げてくれや、苦手なんだよ畏まられんの、マガミくらい楽にしてくれや。」

「いえ、そう言われて楽に出来るほど馬鹿ではありません、何卒このままで…」

「おいオヤジ、それだと俺が馬鹿みたいだろ?」


「はっはっは!まぁマガミは特別馬鹿だからな!それよりも使者が来てるのは本当なのか?」

「はっ!今屋敷の前に馬車を付けております。」

「おーい、軽くディスって話進めんなよ…。」

「わーったから、少し黙ってろマガミ、、そうか、迎えが来てるのか…

 よし、ちょっと待ってろ。」


 そう言った瞬間ヨラムの姿が目の前から消える。


 うぉ!?消えた!転移術か!?どこ行ったんだヨラムは?



「ぷはぁっ!ガキといると寿命が縮むぜ…」

「ははっ!長寿人族ならよかったのにな。」

「けっ、笑えねえよ、それよりもヨラム様はどこ行ったと思う?」

「んー、まぁ話の流れからすると使者のとこだろ?」

「そう…だろうな。

 やっぱり本日中に出発ってのは難しそうだな…」


 どうやらヨラムが迎えを説得しに行ったと思い込み、諦めモードのオヤジ…


 正直俺的には何やら逆の期待があるんだけどな…


 そんな事を考えてると、目の前の空間に歪みが生じる、ソレを意識したと思った瞬間ヨラムの姿が現れる。




「おし!お前等ケアルランドに先に向かえ!」


「なっ!?ヨラム様、いったいどういう!?」

「おぉ!ナイスだぜ!ヨラム!お前がそう言うならクラリスも文句ないだろ!よっしゃ

 さっさとクラリス呼んで出発しようぜ。」


「んーそれなんだが、、クラリスはもう少しここでやってもらうことがあるから、カレンとファルコと4人でケアルランドへ迎え。」



「クラリス抜きでか?」

「まぁ、そうなるな…。」


 顎に手を当てながら少し考え、俺にそう言うヨラム。



 ちょっと待てよ、冷静に考えたらオヤジとスネ夫とカレン、それに使者の人で向かうんだよな…

 あれ?なんか嫌な予感しかしねぇんだけど。



「えっとヨラム?とりあえずケアルランドに向かって良いってことだよな?」

「あぁ、クラリスは一緒じゃないが、4人でも問題ないだろ?オルタナとクラリスには、それとなく言っておくから、安心して出発して良いぞ?」

「いや、ちょっと待てよ、なんか分からんけど俺の中のなにかが危険信号を出してるんだが…。」

「ヨラム様!大変感謝致します!」

「おい!オヤジ!話の途中だろ!?」



 未だ堅苦しく、ヨラムに接するオヤジ…

 そんな姿に俺もヨラムも苦笑してしまう。


「まぁ、何か心配事があるかもしれないが、早く行きたいんだろ?マガミ。」

「ん?あぁ、それはそうだけど…」

「んじゃ!ぶつくさ言ってねぇで、さっさと支度してこい、俺はオルタナ達と話でもしてくるわ!」



 そう言うなり、姿を消すヨラム。



 なんか、トントン拍子のせいか、どうにも腑に落ちないな…



 そんな一抹の不安を抱えながら、一度部屋へ戻る。







 ……






 ……






 さてと、これで荷物は全部かな?っと。


「おい、カレン、いつまでそうやってんだ?先行くぞ?」

「いいよー、カレンは行かないから。」


 ちっ。

 ケアルランド行きが決まってから、ずっとこの調子だよ…。


「なぁ、オヤジもスネ夫も先に準備して待ってるんだ、さっさと行くぞ!」

「いーやーなーのー!!あそこは、絶対いやなの!」


 両手をブンブン振り回し、身体全体でいやいやアピール。


「だから!何がそんなに嫌なんだよ!?ちょっとで良いから教えてくれよ、なんとかなるかもしれないだろ?」

「いいたくないっ!」





 あーっ!もうっ!イラつくなぁ…

 仕方ない、奥の手を使うか。





「カレン、ルビィに逢いたいか?」


 振り回していた手をピタッと止め、目を丸くして俺の方を見るカレン。


「いまルビィちゃんの名前いったよね?」

「あぁ…ケアルランドで合流する予定だ。他の面々とか定例会とか色々と事情があって黙ってたが、ルビィもケアルランドに来るのは間違いないと思うぜ?」

「ほんと?」

「こればかりは確定事項だと俺は思ってるぜ?」


 プレーリーが封印の地へ無事にたどり着いてくれれば、その後の展開でケアルランド合流は、まず間違いないだろう。


「うーん、でもあそこは…」

「ルビィに逢いたいんだろ?」

「あいたいけど、あそこには行きたくない…」


 はぁ…またこの流れか……。

 しかしここまで頑なに拒むんだから相当な理由なんだろうな…。


「よし!カレン!お前が行きたくない理由を話したくないのは分かった…けど、どっちにしろ俺達は呼ばれている身なんだ、最悪拒否しても無理矢理連行されちまうかもしれねぇしな?」

「うー…」

「そこで暴れても結局誰かしらに迷惑掛かるかもしれねえ、もしかしたらケアルランドで待つルビィに責任が押し付けられる事だってあるかもしれないだろ?」

「それは…。」

「なら、行くだけ行ってみようぜ?何か力になれることがあるなら、俺がなんとかするからよ。」

「わかった……」


 そう一言だけ呟くカレン。

 渋々言わせた感じもするが、どっちにしろカレンを連れて行かないと定例会での話にもならないしな…


「んじゃ、そろそろ向かおう!いい加減オヤジ達も痺れを切らしちまうぜ。」




 ……





 ……





 ……




「遅い!」

「お待たせーって……ん?あれ?4人だけか?使者が来てたんじゃ?」

「色々と都合があってな、おれ達4人での出発になっちまったんだ。」


 よく分かんねえけど、出発出来るなら問題ないか…。


「んじゃ、出発しますか!?

 またオヤジとスネ夫と旅するなんて思ってなかったけどな…」

「おいおいボンズ、やめてくれよ…また魔族とかシグマとか来るんじゃねえのか?」

「けっ、ガキのお守りも継続って訳かい、まぁ行こうぜ!」

「……」


 そんな下らない事を言いながら俺達は港街を後にする…

 これから向かうは東聖大陸イグザ連合国首都ケアルランド。


 俺の旅の目的地。

 そこで待つのは一体なんだろう…

 小さな胸のモヤモヤを抑えながら、俺達は向かう…。



流行病(インフルエンザ)の為、投稿がかなり遅れてしまい大変申し訳ない気持ちです。

いつも読んでもらっている方々へ深くお詫び申し上げます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ