31話 禁術
シグマとの戦いが終わりカリキの街で休んでいた俺達の前に、魔王の兄弟ヨラム・キングスターが現れる。
訳も分からず姿を消されたスネ夫、俺とカレンはヨラムと一緒にクラリスの休む部屋へと足を運ぶ…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スタスタ…と、まるで我が家のように廊下を闊歩するヨラム…
そもそもクラリスのいる部屋分かってんのかよ…
と、俺の心配を余所に真っ直ぐクラリス休んでいた部屋へと辿り着くヨラム。
その後にカレンをおんぶしながら到着する俺…
コンコン、ガチャ
と軽く扉をノックし、中からクラリスの返事も待たず扉を開く無神経なヨラム。
「邪魔するぜー。」
「おい、ヨラム…クラリスの着替えイベントとかやめろよ?」
そう言いながらヨラムの後を付いて部屋に入る。
…
「うぇぇぇ!!??」
と部屋に入った瞬間見えたのは、ヨラムの首筋目掛けて剣を構えたパジャマ姿のクラリスだった。
「無礼者が!何者だ!名を名乗れ!」
「お、おいクラリス落ち着け、急に入ってきたのは悪かったけどよ…」
「ん?ユウ…とカレン?」
殺人犯のような鋭い眼光も俺とカレンを確認するなり、普段の鋭い眼に戻る。
というか常に鋭い眼だからなクラリスは…
「ふっはっはー!やっぱり面白いなぁここは!」
と未だに剣を向けられている無礼者ヨラム…
「おい…お前クラリスと面識無かったのかよ?」
「ユウ…この男は何者だ!この気配!ただ者ではないぞ!」
「おう!クラリスさん!初めましてだな、その前にこの物騒なもんを下げてくれるかい?」
「質問しているのは私だ!貴様は何者だ!」
「はぁー。」
っと頭をポリポリ掻きながら皆にも聞こえるため息を一つ吐き、トン…っと耳に僅かに聞こえるくらいの音で足を鳴らす…
その時…
世界から色が消えた様な感覚があった…
まるで全ての時が止まった様に俺もカレンもクラリスも停止していた。
唯一、ヨラムを除いて部屋の全てが止まって見えた…
ゆっくり構えられた剣を指でつまみ、床に剣先を置くヨラム。
そして元の位置に戻るとまた足を鳴らす…
「なっ!?」
「えっ!?」
「うぉっ!?」
っと急に世界観が元に戻り思わず声をあげてしまう…
「はっはっはー!驚いたかよ?闘女神」
「なっ!何をした!?」
すかさず床に置かれた剣を取るクラリス…
「おっ!まだ元気だなぁ…」
「おい!おまえら止めろ!何してんだ、さっきから!クラリスも落ち着け!」
「クラちゃん、この人いいひとだから大丈夫だよ?」
「ユウ…カレン…いや、しかし…」
「悪い悪い、少し調子に乗っちまった、改めて初めましてだクラリス、俺はヨラム・キングスター現魔王の兄弟って言えば分かるかな?」
「な!?え!お前…いや、貴方が!あのヨラム様ですか!?」
と驚きながら剣を収め、片膝を付くクラリス…
「ありゃりゃ、そう畏まらないでくれっと助かるんだけどな…ほら後ろの2人を見てくれよ。」
「た、大変無礼をヨラム様!おい、ユウ!カレン!お前達も頭を下げろ!」
なんか手のひら返したくらい媚びてるけど、クラリスがここまでするんだから、相当偉いのか?
「あぁ、いいよいいよ楽にしてくれ、まぁマガミとカレンの反応には驚いたけど俺は気にしてねぇ、だからクラリスも固くならずに、な?」
「だとよ?クラリス…気にしてねぇって言ってるし楽にしようぜ。」
「ねぇーごはんはー?」
「お前達…は…!」
「はっはっはっは!そうそう!それくらいが丁度良いぜ!ともかく飯でも食って話でもしようか3人共。」
睨む様な目つきで、俺とカレンを見ているクラリス…
まぁ、俺やカレンに目上の人間なんて関係ないしな…気にしないのが一番楽だぜ。
「は!有難き御言葉!
おい!誰か!誰かいないか!?」
部屋内に響き渡るクラリスの一声に給仕の人が現れる、クラリスはすぐさま食事の用意を申し付け俺達3人を部屋内の椅子に座らせる。
…
「んで?ヨラムはクラリスに何の用なんだ?」
「わ、私に御用でしたら、こちらからお伺いしたものを…」
「いやいや、ちっとばかし身内の関係で今朝ここに着いてな…その時オルタナに話を聞いたんだが…」
身内の関係…プレーリーか…
まだ生きてるけど、そうそう長くないって話だ…
「クラリス…お前さん『滅剣』を使ったんだって?」
「あ、いえ…その…はい…未熟故に戦線離脱してしまいましたが…」
「ふん、さすが天才か…だが分かったろ?アレはアイツ以外使っちゃイケねぇ技なんだ。」
ん?滅剣て…たしか…
「なぁ2人共、滅剣ってのは、ソイツ以外使えないもんなのか?」
「ん?そうだな…厳密に言うと、ライデンとその剣を受けて生き残ったクラリスだけだな。」
出た!ライデン!
そういやこの屋敷の地下に居るんだよな…
後で顔出してやろう。
って…
「ん?受けて生き残ったって言ったか?」
「そういう事なんだろ?クラリスよ?」
「…。」
なんだ?どういうことだ?
「…確かに世界大戦中ライデンの放った『滅剣』を受けた事はあります。」
「んで、闘女神の持つ特殊能力で覚えた…ってとこかな?」
「特殊能力など!ただ私は幼い頃から受けた剣や技は真似る様な事をしていましたが…」
「そいつぁ、十分特殊能力と呼ばれるモノだ、お前さんにしか出来ない芸当だなクラリス。
だがな、アレは2度と使うな…ヤツみたくなりたくないだろ?」
ライデンの事だな…何したか知らんけど牢屋に居るんだから何かしらの理由があるんだろうと思っていたが、滅剣ってのが原因なのか?
「はい、私も2度とあの技は使いません。」
「そっか…なら俺はクラリスに危害は加えねぇよ。」
危害だって?どういうことだ?
「おい!ヨラム…お前偉いのかなんなのか知らねえけどよ、今のはどういう意味だよ?」
「ん?どうしたマガミ?聞いた通りだぜ?滅剣をこの先使う様な危険な奴は、技を使えないようにするか、どこかに閉じこめるか、または殺すかだろ?」
「てめぇ!ふざけんのも大概にしろよ!」
ガタッ
っと立ち上がりヨラムを見下ろすように隣に立つ…
「いやな、クラリスは今後あの技を使わないって言ってんだから、俺もマガミも熱くなる事は無いだろ?」
「お前…何しに来たんだよ、プレーリーの様子見に来たんだろ!こっちに構ってねえで、そっち行って付いててやれよ!」
「プレーリー…」
そうボソッと呟いた瞬間部屋の空気が変わる…
バンッ!
っと音を立てカレンが机を蹴飛ばし、俺の前に立つ…
世界が歪んだような感覚…自然に身体が硬直する、意図せず吹き出す汗、目の前の男の感情の変化を俺は本能で悟った…
「プレーリーを…あんな風にした奴等は許さねぇ…」
ヨラムの放った一言。
その声からは燃えたぎる熱と凍える様な冷たさがあった…
俺の前に立つカレンもヨラムの変化に気付いてかは分からないが小刻みに身体を震わせている。
「っと!イケねえ!警戒させちまったな。」
部屋の歪んだ空気が元に戻る…。
「ぷはぁっ!」
いつの間にか息を止めていてしまった事に気付き、一息漏らす…
ヨラムが普通に戻ったからか、それとも止めていた呼吸を再開したからか分からないが今は物凄い安堵感だ…
「すまねえな、んじゃ本題だ、今俺がここに居る理由なんだがな…」
「お、おう。」
スッと立ち上がり、俺達3人をジーっと見つめるヨラム…
「ちょっと失礼するぜ…」
そう言いながら右手の指先を立てる。
指先に漆黒のエナがじんわりと湧き出てくるのが見える…
「お、おい、ヨラム何する気だ!?」
「ん?あぁマガミ…お前には見えてるのか…なに別に痛くも痒くもねぇよ。」
何気ない顔で話すヨラム、エナを纏った指先が俺の身体へ伸びてくる…
トン…
と肩に触れる、俺の身体に触れた指先からは熱も何も感じない、ただ指が身体に当たっているだけの感触…
「ふーん…なんかよく分からねぇな、マガミは少し後で実証するとして、次クラリスな。」
そう言いながら俺から指を離しクラリスの肩に指を乗せる…
「クラリスは…。
はぁ…やっぱりそうかい…次カレン。」
そして同じようにカレンの肩に指を乗せ、何か思い詰めるように口を開く…
「カレン…んん?なんだコレは?……まぁいいや大方検討はついた…」
「あ、あのヨラム様…いったい何を?」
「そうだよ!一人で納得してねぇでこっちにも教えろ!」
なにやら一人で解決していくヨラムにクラリスと俺が口を挟む…
「ん?あぁスマンね。
んと、そうだな…口で説明するより、体感したほうが早いかもな…」
「体感?」
「えっと、カレン、エナの剣を精製してみてくれ。」
「どれくらい?」
「限界まで伸ばしてみろ。」
ちょっ!カレンの剣は限界まで伸ばしたらマズいだろ!
チラッとカレンの方を見ると右手に紫のエナがジワジワと湧き出てきているのが見える…徐々にそのエナは手のひらから伸びて…
「あれ?」
首を傾げながら右手を突き出したままのカレン。
「どうしたカレン、まだ精製されていないぞ?」
ヨラムの一言に少しムッとした表情で、また右手に意識を集中させるカレン。
「んーむむむ…」
しかし、手のひらから伸びたエナは形にならずユラユラと布の様に空中を漂うだけだ…
「もーだめー!」
そう言った途端にカレンの手からエナの光が消える…
「おいカレン、どうしたんだよ?」
「わかんないけど、なんか上手く術がつかえない…」
術が使えない?いったいどうなってんだ?
「さて、次はクラリスお前だ…そうだな…この清石を発動してみせろ。」
と黄色い綺麗な石をクラリスに渡す…
「これは?普通の光の清石?ですか?」
「あぁ、廊下にあった物だ、誰でも使える普通の石だぞ?」
「では、失礼して…」
いまいち状況を理解していない様な顔で石を握るクラリス。
「な!なに!?」
石を握った自分の手を見ながら驚きの声をあげる…
「どういう事だ!エナの流れ…いや…コレは…」
「よし!もう良いぞクラリス。」
なんだ?2人ともどうしたんだ?
クラリスは何か気付いた様な感じだけど…
「んじゃ、マガミ…お前には水の術を展開してもらおうかな?」
「ん?術?俺使えないぞ?」
「おっ!?察しが良いね、まぁやる前から出来ないってのを理解するのも大事なんだがよ、一応どういう風に使えないのか、試してみても良いんじゃないか?」
「じゃなくて、俺一度も術なんて使った事無いんだよ。」
「なに?んじゃクラリスと同じく石で…」
「石もクリスタルも使えねぇよ?」
あー懐かしいな、クラリスと砂漠を旅してる時を思い出すぜ…
「水のクリスタルなんて子供でも使えるんだぞ?なんでお前は使えないんだ?」
「それ、全く同じことクラリスに言われたよ…そもそも自身のエナってのが俺には分からねぇんだ…」
俺の言葉を聞き、ヨラムの顔つきが少し変わる…
「…マガミ…お前何者だ?」
「ルビィや、この2人には話してるけど、俺は元々この世界の人間じゃないんだ。」
「この世界じゃない?そいつはどこにあるんだ?」
「さぁな、ここではないどこかじゃねぇの?知ってたら帰るための手掛かり探しの旅なんてしてねぇよ。」
もともと砂漠を越えてきたのは、ケアルランドにメンテナンスってのを調べる為だしな…
「エナや魔力を必要とせず生きていけるなんて、昔話の聖人みてぇだな…」
「聖人ね、前にルビィの意識通信でも同じ事言われた気がするわ…」
「ん、そうか、水聖ルビィの意識通信があったな…ならマガミはある程度安心か…」
「なんでそうなるんだよ?」
「あの水聖ルビィが危険性のある輩を、野に放つ訳ねぇからなぁ…」
クククと小さく笑いながら、なにやら一人で納得するヨラム…
「あの…ヨラム様…カレンや私のエナの流れがおかしいのはどういう事なのですか?いえ、コレは流れというよりは調整が出来ない感覚なのですが…」
話が脱線しかけた時にクラリスが確信めいた言葉をヨラムに投げ掛ける…
「さすが天才だなクラリス、その通りだ、今のお前達は自身のエナをコントロール出来ない状態にある、厳密に言えばエナを外に出せない…世界に干渉出来ない状態だな。」
世界に干渉?
「えーこまるー。」
「そんな、私のエナが…いや確かに…」
「えっと、3人共ちょっといいか?」
「マガミ…どうした?」
「世界に干渉出来ない状態ってのが分からねぇんだが…」
俺の言葉に目を見開きながら動きを止める3人…
「ユウちゃん?ほんき?」
「ユウ…何を言ってるのか分かってるのか?」
「こりゃ、本当に別の世界から来たとしか考えられないな…」
出たよ、常識外れの事を言うと皆こんな感じだよな…もう慣れたけど…。
「マガミ、普通生物ってのは身体にエナを宿してるんだ、こんなのは誰でも知ってる事なんだがな?」
「はぁ…それで?」
「んで、身体以外、即ち空気中や物質中にもエナは存在しているんだ、勿論この空間にもエナは満ちているんだ。」
エナが空気中にも満ちている?
「なぁ…俺にはエナの色が見える不思議な力があるんだが、今現在何も見えないぞ?」
「あぁ、オルタナから聞いてるぜ?魔眼だっけか?マガミ、お前が見ているのは自然なエナの色じゃなくて、干渉された後のエナの色だ。」
干渉された?エナ?
「知ってるのか知らないのか分からないが、空気中には様々なエナが流れてる…一言で空気って言っても、水や光、風や魔力、そいつらを上手く干渉させるのが術だ。」
科学みたいなもんか?
空気中の水素だけをかき集めて、水の術みたいな?
「ユウちゃん、ホントに何もしらないんだねー?」
「悪かったな!」
「まぁ、要はさっきも言ったがお前等3人とも術を使えない状態だ、コレはシグマの奴等が仕掛けた厄介な呪いみたいなもんだな…。」
「呪い?」
術とかエナとかで訳分かんねえのに、今度は呪いかよ…勘弁してくれ、素直に頭に入っていかないぜ…。
「私はエナ切れの為宿舎で休んでいただけですが…シグマの兵と術を、受けるような接触は無かったはず…」
「いや、クラリス、お前を宿舎まで運んだのはビシャスだ…その後グレンと2人でお前に例の術とかなんとかも言ってたのを聞いたぜ…。」
ビシャスがクラリスを宿舎に運び、俺達が再び合流するまで時間はあった、何かしらの呪いや術を掛けるには十分なはずだ…
「そうか…話には聞いていたが、本当に兄様がシグマに居たんだな…」
「あぁ…正直驚いたけどな…」
そしてカレンはグレンの一撃か?それくらいしかタイミングは無いんだよな…
「なぁヨラム…その呪いだか術ってのは結構使われるもんなのか?」
「いや、禁術だ、まず使える者はメル以外に俺は知らない…」
「少なくとも俺やカレンは、ビシャスに術を受けてない、どっちかって言われると艦内に居たグレンの方が有力なんだがな…」
「使える者は居なくとも、使う方法はある…」
ヨラムの表情がグッと引き締まり、声のトーンが下がる…
そんなヨラムを見ながら恐る恐るクラリスが口を開く…
「ま、まさか…ネオ…クリスタル…」
「間違いないだろうな…」
ネオクリスタル…
オルタナも言っていたな、1つの術式を組み込めるクリスタルと違って、幾つもの術式を組み込めるネオクリスタル…
コレは以前ルビィにチラッと聞いた事があるけど、封印の地以外にまだ残っているネオクリスタルなんて希少だったはず…
「なんで、ネオクリスタルなんだ?空のクリスタルに呪いの術式を組み込めば出来る事だろ?」
「ん?そうだな…空のクリスタルなんて物が有るなら、その方法でも可能だ…だが2つの理由でそれは無いな…」
指を2本立てながら俺の目をジッと見つめながら話すヨラム…
「まず1つ、空のクリスタルに禁術の術式を組み込める奴、即ち術を使える奴がメルカイザーしか現存していないということ、奴がわざわざそんな術式を組み込むとは思えない、むしろ戦力の低下を狙うなら、もっと危険な術式にするだろう。」
ま、確かにそうだよな…
この世界の全ての術を使えるってんだから、そんな面倒くさい術式組み込む意味が無いな…
「そして、2つ目、空っぽのクリスタル自体存在が怪しい、そんなレア物…俺も永いこと生きてるが、見たことすらねえ伝説級のクリスタルだ、それをシグマの奴等が複数持っているなんてのも考えられないな…」
ヨラムのその言葉に3人とも固まる…。
「ん?どうしたお前達?」
「いえ、そのヨラム様…あのですね?」
「ヨラム…実はな?」
「えーっとね…」
どうしたもんかね…数は覚えてないけど、まだ結構あった気がするんだよなー、それに封印の地に戻れば山のように転がってるし…。
「ヨラム…その、コレ…なんだが…」
とポケットに入っていた空のクリスタルをヨラムに見せる…。
「んん?コレはっ!?まさか!?」
バッ!っと俺の出したクリスタルを手にし、震えるようにクリスタルを凝視するヨラム…
「お、お前、コレをどこで…」
「えっと、ルビィからの餞別なんだが…」
「っかぁーっ!またアイツか!謎が多すぎにも程があるぜ!」
手で顔を覆いながら天を仰ぐヨラム…
昔ルビィに何かされたのか?
「んまぁ、とにかくだ、ルビィ以外にも持ってるとも思えないし、レア物には変わりないんだろ?ヨラム…」
「まぁそうだがな…こう実物を出されちゃぁなぁ…」
「空のクリスタルは置いといて、話進めろよ、ネオクリスタルがなんだってんだ?」
うっかり脱線させちまった、俺的にはネオクリスタルの方が興味あるからな…詳しく聞いておきたいところだ…。
「そうだな話を戻そうか…前にお前等3人魔族に襲われたって聞いたんだが…」
「はい、確かに襲撃はありました、今考えるとビシャスの手引きとはっきり分かりますが…」
「その時の魔族達の消え方が、一瞬にして跡形も無く消えたってのも本当か?」
オルタナも同じ事聞いてたな、確かに一瞬辺りが光って、カレンが光を切り裂いて、視界が戻ったろ頃には綺麗サッパリだったな…。
「うん、いきなり何もなくなったよ?」
「あぁ…分かった、これで納得だ、シグマはネオクリスタルを持っている、しかもかなりのところまで解析してるな…」
ん?ネオクリスタルって賢者ってのが居なくなってから見つかったから解析が困難だとかルビィが言ってたような?記憶違いか?
「やはり、新たな術を乱用しているのでしょうか?」
「いや、一瞬にして消えたのは論理的には可能だな、それを行うにはネオクリスタルってのが絶対条件なだけだ…。」
なんだかややこしい話になってきたな…
と俺が思っていたら、カレンが近づいて来て俺に話しかける…。
「結局どーゆーことー??」
「俺もサッパリわかんねえ、とりあえずクラリスとヨラムの話聞こうぜ?」
「魔族の上位種ならば、転移術は使える者も居る、その転移術をあらかじめ一定の時間が来ると発動する様に仲間内全員に掛けておく、すると一瞬にして消えるように居なくなる事が可能だ。」
「確かに、それならば可能ではありますが…そんな事まで出来るものなのですか?」
「時の術の研究は知っているだろクラリス…。」
時の術だって?
グレンが言ってた言葉を思い出す。
唯一平等な時すらイグザは…
って、んじゃマジで連合国は時の流れをどうにかしようとしてるのか!?
「なぁ、ちょっと良いか?」
ヨラムとクラリスの会話を遮るように割って入る。
「どうした?マガミ目つきが悪いぞ?」
「生憎目つきは生まれつきだよ、そんなことより2人に聞きたい…。
連合国は未だに他の国を攻めているのか?」
もし、本当なら俺は…
「いや、私はそんな話は聞いたことないな、我が隊はあくまでも自衛だ、攻めて来る者に容赦は無いが、このイグザ以外への侵攻を指揮した記憶は私が隊を率いてから一度も無い!」
「そうだな…魔大陸も連合国も充分な土地や生活環境が整っている、わざわざ危険を冒してまで攻めたりはしないな…。」
「そ、そうか、すまねぇ変なこと聞いて…。」
やっぱり適当な事言ってたのかグレン…
俺はこっちを信じるぜ。
「で?聞きたい事はそれだけか?」
「割って入って悪かったよ、クラリス…続けてくれ。」
そう言い残し2人と少し離れたところでカレンと食べ物をつまむ…
「ユウちゃん言ってたのって…」
「ん、あぁ…カレンあの時まだ意識あったもんな…そう、グレンの言ってた事が気になってな…」
「アイツ間違ってないよ?」
「はぁ!?何言ってんだ?カレン!?お前酷い目に、あったんだぞ!?」
「うん、でもアイツは変なこと言ってなかった…。」
どうしたカレン?グレンが間違ってない…
「でもね、ユウちゃん…」
「おあ?」
「アイツが間違ってなくても、カレンはルビィちゃんやユウちゃんの味方だよ?」
「へっ、そうだな…」
グレンの言葉を思い出す…
確かにアイツはアイツなりの正義を貫いているだけかもしれない…
何か理由があってシグマに居るかもしれない…
けどやり方が気に食わねえ…
俺がグレンを受け入れられないのは多分そういう個人的な感情なんだよな…。
…
「さて、待たせたなマガミ、カレン。」
クラリスに色々と話をしていたヨラムがこちらを向いて声を上げる…。
「んで?結局禁術くらった俺達はどうすりゃ良いんだ?」
「そうだな…結果から話すと、解術をメルカイザーか他の奴に頼む、又はゆっくりと自身に取り込むかどちらかだな。」
取り込む?
「メルカイザーってのに逢うのは多少抵抗あるな…もう1個の取り込むってのは、どういう事だ?」
「簡単な事だ、お前ら3人共この先2ヶ月はエナを外に出すのを禁止してくれ。」
「2ヶ月かぁ…がんばる。」
「また厳しい期間ですな…。」
「俺に関しちゃ使った事も無いんだし、余裕だけど…そんなにキツいのか?」
「マガミは別として、この2人は連合国軍の兵士だからな…いざ戦闘が始まれば闘わない訳にはいかないさ…だがその時もエナを使う事は禁止だ。」
「カレンとクラリスってエナ使わなきゃ普通の女だろ?」
「おい、ユウ!取り消せ!私を誰だと思っている?」
「ユウちゃん…今のはひどいよ?」
「ええ??悪い、別に怒らせるつもりじゃねえんだけど、ホントに大丈夫なのか?なんかお前等の戦いってなんか光ったり飛んだり、とんでもないからよ…」
「ふん、貴様に心配されずとも我が剣技で何とでもなる!」
「カレンも別にへいきだよー。」
なんだよ…今の今まで
厳しいですな…
とか言ってたのに…
「何か言ったか?」
「何も言ってませんよ!」
こうして、シグマの連中に禁術を受けたクラリスとカレンはエナを使う事を禁止された…。
元々エナを使う事無い俺にはあまり良く分からないが、とりあえず2ヶ月間クラリスとカレンの戦力低下なのは間違いない…。




