30話 勇敢なる者達の休息
真っ白な空間…
誰かの話す声が聞こえる…
「で?ヒデ、このデカいのが何よ?」
「へっ驚くなよ!?俺とマザーで作り上げた最高の一品だぜ!」
「勿体振ってないで早く教えなさいよ…。」
「焦んなよナミ、これは俺達の肉体情報を基に新しい人種を生み出す凄いモノなんだぜ?」
「はぁ…アンタ本気でこの世界の創造主にでもなるつもりなの?私は何度も言うけど早く帰りたいのよ…」
「そういう訳じゃねぇけど、何も無い世界で過ごすよりは楽しいと思うぜ?それにな!このマザーの術式が凄くてな!」
「全く、ホントにヲタクね…そんなんだから彼女の一つも出来ないのよ。」
「てめぇ!それとこれとは関係ねぇだろ!おい、お前も黙って聞いてないで何か言ってくれよ!」
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ん?
夢?か……
どこだ?ここは?
眼を開け、眼前に映るのは見慣れない天井…
「おはよ?」
と、俺の横から聞き覚えのある声が聞こえる…
その方向を振り向き確認すると、これまた見覚えのある顔が……
「どぉぅええええええ!!!」
「え?どうしたのユウちゃん?」
「ちょっ!お前!なんで俺の横で寝てるんだよ!」
何故か俺と同じ布団の中に寝ている少女…いつも縛っている緑色の髪の毛を降ろし、寝間着姿の無防備な格好「首斬り」カレン。
「え?目が覚めたらユウちゃんが椅子で寝てたから、こっちに寝かせたんだよ?」
「ちょ!おまっ!まじ!っててて……」
あまりの展開に思わずベッドから跳び起きる…
「ん…あーよく寝たよぉ…」
と身体を伸ばしながら、無防備なカレン。
そう…
先日カリキを襲ったシグマと魔族。
なんとか撃退に成功した俺達は街へ戻り、各々の治療、療養の為、ここマナミ屋敷で休んでいたのだ…。
特にエナ切れを起こしたクラリスや、その寸前まで戦っていたカレンの看病をしていたんだが、どうやら俺はカレンの寝ている部屋の椅子で疲れて眠ってしまったらしい…。
んで、そんな俺をベッドへ引き込み一緒に寝ていたという少女…まったくけしからん!
「まぁ俺もしばらく寝てなかったしな…久しぶりにゆっくり寝た気がするよ。」
「あれ?ユウちゃん…カレンそんなに寝てたの?」
「あぁ帰ってきたのが夕方で、そこから丸一日…っとそういや…カレン?身体はどうだ?もう大丈夫なのか?」
「うーん、まだ本調子じゃないけど、ある程度はげんきになったよ。」
「そっか…そいつは良かった、まったくホントに無茶苦茶やりやがって…」
「ユウちゃんも結構むちゃしてたよー?」
「違ぇねぇな…」
ポン
っとカレンの頭に手を乗せ、お互い顔を見合わせて笑う。
コンコン…
と部屋の扉をノックする音が聞こえる…
「はいどうぞー!」
とカレンが返事すると、給仕の人と一緒にスネ夫が入ってくる。
「よう!カレン!元気そうだなって!ボンズ何してんだ!お前ぇ!」
「ん?あぁ昨夜看病したまま寝てしまってな…」
「ユウちゃんと一緒に寝てたんだよー」
「はぁ!?ボンズ盛り過ぎだろ!少し休ませてやれよ、相手は怪我人だぞ?」
「ちょっと待て、大変な誤解があるぞ…」
給仕の人もどう反応して良いのか分からない状況だ…
「いやボンズ、そんな格好で言われても説得力ねぇよ…」
あ、そうか、俺治療すらそっちのけで、皆の看病してたからな…
上半身裸で胸と腕に包帯巻いたままの格好だったのを忘れてたぜ…。
「ん、まぁ気にすんな、やましいことは何も無ぇよ。」
「ったく、寝ぼすけカレンの具合はどうだい?」
「だいぶげんきだよー」
「そうかい、そりゃ何よりだ。」
「んでスネ夫はどうした?何か用か?」
「お前な、用が無きゃ俺がここに来ちゃダメな言い方すんなよ…。
ったく、クラリス様も朝方目ぇ覚ましたからカレンもそろそろかなと思ってな…」
「クラちゃん起きたの-?」
「そうか、クラリスも起きたか!よしっ!ちょっと様子見てくるかね…」
と俺とカレンがベッドから降りようとすると…
「ちょい待ち!」
両手を広げながら俺達の道を塞ぐスネ夫。
「なんだよ?何してんだ?」
「ファルぅ!じゃまぁー。」
「だから、ちょっと待てって、クラリス様は今少し立て込んでてな…」
「あ?着替え中か?」
「違ぇよ!それならそういうよ!」
「ごはん?」
「あのな、まず落ち着け…そして一度座ってくれ。」
何やら良く分からないが、今クラリスの所へは行けない流れみたいだな…。
仕方なくカレンも俺もベッドに腰を降ろし、給仕の人が持ってきた簡易的な料理をつまみながら茶を啜る事に…
……
「ぱぁーうまい。んで?クラリスは今どういう状況なんだ?意識はあるんだよな?」
「おう!クラリス様は元気そうだったよ、まぁ立て込んでてってのは…クラリス様の体調とかじゃなくてな…」
「なんだよ、結構濁すじゃねぇか?」
どうにも歯切れの悪い回答をするスネ夫。
意識が戻って、元気そうなら問題無いじゃねぇか?
「おかわりー。」
「は!はい、少々お待ち下さい!直ぐご用意します!」
カレンの声に直ぐさま反応する優秀な給仕人…
相変わらずここの人達はカレンにビクビクしてるな…。
「まぁ後でオルタナ様から聞かされるとは思うが、今回の件で少し軍の上の方がゴタゴタしちまってな…」
「はあ…良く分からないけど大変そうだな…。」
「いやボンズ、軽く考えてるみたいだけど俺達も無関係じゃねぇからな?」
「え?なんで?」
俺達も?ってなんだ?連合国軍の問題だろ?第三部隊のスネ夫達は分かるけど、俺は関係ないんじゃねぇか?
「そこからは余が説明しようか…」
と扉の方からいきなり現れるオルタナ。
「お、オルタナ様!わざわざお越し頂かなくともボンズとカレンは後ほどそちらに…」
「よいファルコ、怪我人をわざわざ連れ回す程、余の性根は腐っておらんわ。」
急に現れたオルタナに膝を付き頭を下げるスネ夫と給仕人。
「いよぅ!オルタナ!」
「マガミ、カレンの具合はどうだ?」
「見ての通り腹ペコだとよ。」
「おかわりまだー?」
「は、はい!ただいま!あ、いえ、その…」
「そうか、元気そうで何よりだ。
そこの者、余の事は良い…カレンとマガミに何か食事を用意してやれ…」
「は!かしこまりました!」
「んで?なんかよく分からないけど、何かあったのか?」
「まぁ少々厄介な事になってな…」
厄介な事?
「今回のシグマと魔族の一件に我が国の兵が一枚噛んでいたのは、マガミお前も身をもって知っているな?」
「……ぁ、あぁ。」
護衛隊ベルンと取り巻きの連中もそうだし、ビシャスさんも…。
「早い話が、ビシャスと行動を共にしていたザンザス、ファルコ、カレン、そしてマガミ、全員にスパイ容疑が掛かっている…」
「は?」
「そして、7日後ケアルランドにて評議会と軍の定例会があるので、そこにクラリスを始めとする貴様ら5人を召喚尋問する事になった。」
「スマン、話が早すぎて理解出来ないのは俺だけか?」
どういう事だ?俺達も怪しいから尋問?おかしい話だぜ、クラリスもカレンもスネ夫もオヤジも傷つきながらシグマと戦ったのに…
「おい、オルタナ!お前何とか出来ないのかよ!」
「余に出来る事なら協力はするつもりだが、果たしてどこまで効果があるのやら…。」
「むぇ-?くぇあうあんどいうのー?」
緊張感の無い声で俺達の会話に割って入るカレン…給仕の人からもらったパンを頬張りながら話してるので、正直何言ってるか分からないが…
「まず、飲み込め!オルタナの話聞く限りだと俺達呼ばれてるみたいだぜ?」
「カレンいかなーい!」
「はあ?いや、行かなーい!じゃなくてな?」
「あそこ嫌い!いきたくない!」
急にワガママを言い出すカレン。
そっぽを向いて、目の前の食事をまた食べ始める…。
まぁワガママなのは今に始まった事じゃないが、どうしたんだ?何か理由でもあるのか?
「とにかくだ、7日後の評議会に間に合う様に、こちらでは準備を進めているのだが……」
「だが?」
「いや、お前達はまず体調を整える事に専念してもらおう、いずれにせよ本日直ぐという話では無いからな…。」
「…まぁ、なにやらゴタゴタしてるのは理解したよ、んで?クラリスも目覚めて早々にゴタゴタに巻き込まれてるってとこか?」
「相変わらず厳しいなマガミよ…クラリスには先ほど詳細を話した、今はまだ部屋で休んでいるだろう…後で顔を出してやると良い。」
「そっか、んじゃ後で御見舞いにでも行くかな…。」
コンコン…
と俺達の会話を割く様に、入り口からノックの音が響く…
「オルタナ様、少々よろしいでしょうか?」
と護衛隊のカステル隊長と食事を持ってきた給仕の人が顔を出す…。
「お!カステルさん!」
「これはマガミ殿、カレン殿もお目覚めで何より…。」
カレンと俺を見て微笑むカステルさん…。
給仕の人は、そそくさとカレンに食事を提供する…
カレンはチラッとカステルさんの方を向いて、また食事再開だ。
「オルタナ、とりあえずの事は分かったからそっち行ってやれよ、お前も仕事いっぱいなんだろ?」
「御配慮感謝いたします、マガミ殿。」
「そうだな、では邪魔をした…ゆっくり休むがよい…。
それとマガミよ、後で余の部屋に顔を出せ…話がある。」
「お?あぁ了解。」
話?ここじゃ出来ない話か…?
って、あぁ…なるほどね。
そう言って部屋を出て行くオルタナとカステルさん、スネ夫と給仕人の緊張が解けたのが目に見えて分かる…。
「おい、ボンズ!オルタナ様に向かってあの態度って……いや、もう言うのも疲れたわ。」
「そんな緊張すんなよ?王様っていっても同じ人間だろ?」
「あーはいはい、それで良いよ。
まぁ、大体はオルタナ様が言った通りだ、そんな訳でクラリス様も立て込んでたって事よ…。」
「まぁ、事情は分かったような、分からんようなだけど、もうクラリスんとこ行っても良いんだよな?行こうぜカレン。」
「ほーい、これ食べてからいくー。」
「まだ食うか、お前は…」
テーブルの上に乗せられていた食事、果物や菓子まで全て平らげるカレン…
……
「おまたせっ!クラちゃんのとこいこー!」
「腹出てるぞ、ったく大食いも程々にしておけよ?」
「だいじょうぶだよーカレン太らないしー。」
そんな軽口を叩きながら、スネ夫と一緒に3人でクラリスの休んでいる部屋へと向かう…。
「あれ?そういやオヤジは?」
「ん?あぁ多分地下だな…あのオッサンも回復早いからよ、早速昨日から働いてるぜ?」
「うぇ!?オヤジって意外と働き者なの!?」
「まぁあの身なりで信じられねぇかもしれないけどな…せっかくの待遇受けずに働くなんて、どうかしてるぜ…」
「ファルはもーすこし働いたほーがいーよ?」
満腹なのか眠そうな声でカレンが口を開く。
カレンの言うとおりだぜ、まったく…オヤジも軽いとはいえ怪我してたんだ、スネ夫は……
ん?
「おい!スネ夫、お前やっぱり働いてこいよ。」
「おいおい、なんだよいきなり2人して…。」
「よくよく考えたらお前、最後はオルタナ呼びに行って居なかったし、怪我もしてないし、戦闘にもあまり参加してないじゃねぇかよ。」
「いやいや!そりゃぁ酷いぜ?ロレース相手に結構頑張ってたんだぜ!なぁカレン?」
「あーそーかもー。」
そう言われると、そうか?
「ん、まぁ言い過ぎた感はあるけど働け!」
「マジかよ…これじゃ第三にいた頃よりキツイぜ…」
「ファル第三のときいつも寝てたよー?」
「うえ!?カレン!お前っなんで知ってんだよ!?」
平然と嘘吐きやがるコイツ…ある意味スパイ容疑かけられるのも分かるわ…。
「まぁ、もう面倒くさいから、やめやめ!
それよりスネ夫に聞きたかったんだけどよ、ロレース相手してた時の魔力結界とか、血の更新とか色々話してたじゃねぇか?あれってなんなんだよ?」
「ん……?……そっか、聞かれてたかよ…まぁ、秘密っちゃ秘密だったんだけどな…。」
「秘密?なんでだ?同じ魔族なら知ってて当たり前の事なんだろ?」
「ん?あぁ…更新の事か…もちろん、そっちは別に秘密でも何でもねえさ、そうだな…魔族ってのは少し他の種族と違ってよ…ってか他の種族も結構違うから一概にも言えねえか。」
「むずかしい話-?」
「難しい話だな…」
「いやいや、えっとな…基本的に魔族ってのは王様在りきの存在なんだよ。」
ん?元居た世界のゲームや漫画みたいなもんか?魔王が死ぬとモンスターは大人しくなる…みたいな?
「まぁ簡単に説明すると、魔大陸に居る魔族達は、魔王様に何かあると魔王様の契約した力が使えなくなるんだ。」
「ほほうー…って全然わかんねえよ!ってかスネ夫は純血種じゃないのに関係あるのか?」
「ったく、ボンズは世間知らずだな、前にも話したが俺達亜人種は親の能力の大きさに寄って種族分けされるの!魔人種の能力が濃い俺は魔族ってことな?」
「あーなんか聴いたかも?」
うん。
確かに最近聞かされたばかりだな…
「んで、今の魔王様は俺が生まれる前から長いこと生きてるわけ、確かそれまでの特性として風の術の無効化とかだったはずだぜ?」
「無効化?術の?」
「そうそう、今の魔王様の前はエナの無効化とか、眠らないとか無茶苦茶やってたみたいだけどな…」
おいおい魔族ってヤバいって認識あったけど、間違ってねぇよ…最初から特殊能力持ちとか危険過ぎだろ…
「でもなんで風の術なのー?」
不思議そうにカレンがスネ夫に質問する。
確かに、魔族特有の術なんだよな、風って。
「ん?そりゃぁ仲間内で傷付け合わない為だろうな、今の魔王様は過去最大級の平和主義だと俺は思ってるぜ?なんせ、攻めるとか守る能力じゃなくて、身内で喧嘩しない特性だからな!」
「確かにな、勿体ない気もするけど、どうせ理由があるんだろ?」
「あぁ…もちろん!まず、新しく魔王になった方は自身の眷属に力をゴッソリ持っていかれるんだ、勿論眷属達が魔王様を超えることはないけどな!」
「ほぇー。」
「はぁー凄えな。」
「んで、もう一つ血の更新だ、今まで特性を持っていた眷属や他の魔族は新しく魔王になった方の契約した能力に書き換えられるんだ、それが血の更新。」
「ふむふむ。」
「んで、凄えのが一世代で3回更新したのが今の魔王様よ!魔大陸中に居る魔族は皆驚いたなー、なんせ自分が生きてる間に血の更新に立ち会えるんだからよ!」
「スネ夫がそこまで言うって事は簡単に更新とかは出来ないんだよな?」
「当たり前だぜボンズ!眷属全てに自身の魔力を持っていかれるんだ、純血種の正統継承権持ちなんて限られてるけど、準継承権持ちとかは馬鹿みたいにいるからな…」
「なんか、万とか億とか言ってたやつだろ?」
船の上で話してた様な記憶があるな…
「ひゃは!そんな多くは無いけどな!まぁとんでもない数の眷属が居るのは間違いないぜ?
んで、今の魔王様はその眷属全てと魔大陸中の魔族全てに血の更新をしたって訳よ…」
「その更新内容が魔力の無効化って事か?」
「んー厳密には違うな、魔力攻撃の無力化だ、魔力自体を無力化すると、自分でも魔力を使えなくなっちまうからな!」
なるほどね…それで当時魔大陸に居なかったロレースは魔力攻撃が効かなかった事に驚いてたって訳か…
「ちなみに魔王が世界大戦末期に更新した意図はなんなのか聞いても良いか?」
「詳しい事は分かんねぇ…けど、過激派が出てきたってのが有力だと俺は思うがね…」
そっか、ネオンの保護をルビィに任せたり、プレーリーを捜索したりって事か…
「とにかく魔大陸ってとこに居なきゃ更新はされないんだよな?」
「ん?まぁ例外はあるけどな、継承権持ちとかは関係無しに更新されちまうしな…」
「なんか難しくてよく分かんねぇけど、おかげでロレース戦は助かったって事だな。」
スネ夫なんて、ただのやられ役だと思ってたけどロレース相手に結構頑張ってたしな…
いや、ロレース自体ザコだった可能性も否めないぞ…
「ねーファルーあの結界はー?」
「あ…えっと、アレはだな…その秘密ってかなんと言うか…」
頬をポリポリ指で掻きながら、なにやら口篭もるスネ夫…
「あれすごかったよー、カレンの剣じゃ全然切れなかったもん。」
「そ、そうだろ!?魔力結界ってのは、極めれば最強の防御にもなるんだ。」
「んで?何がそんな秘密なんだよ?」
「いや、な…俺の師匠ってか、今の魔王様の兄弟に当たる人なんだけどよ、中々難しい人でな……俺に術や技を教えてはくれるんだが、俺が使う事とか、話す事を嫌ってな…」
「使う事も嫌で、誰かに話す事も嫌って、めちゃくちゃ面倒くせぇな!」
どういうことだよ、んじゃ教えんなよ!ってなっちまうけど、どうなんだ?
「まぁ、俺も正直最初は意味分かんねえって思ってたけどさ、こう、色んな奴等見てると思うところも在るわけよ…」
「ユウちゃん…なんか眠い…おんぶー」
「ったく、子供かよ…怪我治ったらこんなことしないからな!っほら…」
「おーい!話してる最中なんだけど!」
「よいっしょっと…悪ぃ!んで?なんだっけ?」
カレンを背中に乗せ、スネ夫の話の続きを聞くことに…。
「はぁ…こっちの台詞だぜ、だからよ俺の師匠が面倒くさいって話だよ!」
『すまねぇな…年を取ると、どうにも変な言葉が聞こえてくるもんでな…ファルコ、もう一度言ってくれ…』
ん?
誰だ?
突如俺の背中から男の声がする…
「だぁかぁらぁ!……っ!???」
前を歩いていたスネ夫が苛つき混じりの表情で振り返るが、一瞬にしてその表情は変わる…
「ファルコぉ…誰が面倒くさいって?おぅ?」
「しっ!!!!師匠ぉぉっ!!!???」
え?師匠?
スネ夫の反応を眺めた後、ゆっくりと後ろを振り返ると、その男は居た。
全身を黒のマントで覆い隠す様な出で立ち。
ネオンやプレーリーと同じ色の純白の髪。
ウエーブのかかった長い髪の毛を無造作に下ろし、もみ上げと髭は一体化している。
俺の知っているサンタクロースみたいだ。
たが、ネオンの父ちゃんの兄弟って事は叔父って事か?
それにしちゃぁ若く見える…。
目の前の男はどう見ても30代、いや髭無ければ20代でも通用する。
「んで?ファルコ?何か俺に言うことはないのか?おう?」
「ななななんで、師匠が!ここにぃ!!???」
「はっはっは、最後に言い残す言葉はそれで良いのか?おう?」
と冗談めいたように笑いながら、右足をトンっと踏みならす…
次の瞬間
「……っ!!ぼぉっ!!!」
と奇声を発したスネ夫が視界から消えた…
「え?あれ?」
「ファル消えちゃった…」
嘘だろ?今の今までそこに居たのに、天井も床も壁も何一つ変化が無い…
スネ夫自体が、この場から消えた…
「ふぁっはっはー!魔力結界を云々人に話す前にテメェの防御をどうにかしろってんだ!」
陽気に笑いながら、俺とカレンの元へゆっくりと近づいてくるサンタクロースもどき。
「ユウちゃん…」
ギュッと俺の肩を掴みながら背中におぶられたままのカレン…
「おう!兄ちゃん、それに首斬りの嬢ちゃん!驚かせて悪かったな!俺の名前はヨラム・キングスター、魔王フェンネルの弟だ、宜しくな!」
スネ夫の反応見る限りそうだと思ったけど、魔王の弟ってことは、ネオンの叔父にあたるのか…
そんな大物がなんでここに居るんだ?
って…んな解りきった事…
やっぱりプレーリー絡みだろうな。
「あ、俺は真上悠だ、んで知ってると思うけど背中のはカレン…宜しくな、ヨラム。」
と手を差し出す。
そんな俺の反応にキョトンと眼を丸くしながら固まるヨラム。
「……っふ、ふぁっはっはー!!こりゃ!ホントにオルタナが言ってた通りだ!!」
「うぉう!」
急に笑い出すヨラムに思わずビクッとしてしまう。
こっちの世界の人達は急にスイッチ入るからな…
「いやぁ、すまんすまん!そうかそうかマガミユウか、こちらこそ宜しくだ!」
そう言って俺の手をガシッと握る。
「……!?」
握手した瞬間、俺の手を不可解な顔で見つめるヨラム…ゆっくりと俺の顔を見て、また握手した俺の手に視線を落とす。
ん?なんだ?
「あの?ヨラム…?どうかしたか?」
「っ!?いや、すまねぇ!何でもない、少し色々あってな、俺も過敏になっちまってるみたいだ…」
「???」
なんだか良く分からないが、まぁ問題ないなら気にする必要もないか…
「ところで話は変わるがよ…カレンさんや、おめぇ目覚めてから術を使ってみたかい?」
「ふぇ?」
突然背中のカレンに話しかけるヨラム…
「まだだよ?今起きたばっかりだもん。」
「おお!なんだ、目覚めたばったかりかよ、んじゃ今から飯でも一緒にどうだ?」
「ごはんだべる!」
「おい!さっきまで食ってただろ!
ヨラム、悪いんだけど今からクラリスんとこ行くんだ、また後でも良いか?」
「あー、クラリスか…そうだな、まぁこの際一緒に診てやるか…」
ん?一緒にみるって?なんだ?
「まぁいいや、んじゃ行こうぜマガミユウ。」
そう言ってツカツカと歩き出すヨラム…
「あ、いや、ちょっと、スネ夫はどこ行ったんだよ!」
「スネ…?あぁファルか?多分庭の池で水浴びでもしてるぜ?まぁ気にすんな!」
庭?
廊下の窓をのぞき込むが、眼下に池なんて見えない…
「なんか話がサッパリだけど、とりあえずクラリスんとこ行くか?」
「うん、あの人いい人だよ?ごはん!ごはん!」
「お前さっきまで警戒してたろ、あっさり餌付けされてんじゃねぇよ。」
出会い頭の警戒モードを一切感じさせないカレン…
ヨラムに敵意が無いからか、それとも…
「おーい、マガミ、カレン、置いて行くぞぉ!」
噂をすればなんとやら、スネ夫の師匠ってのはとんでもない奴みたいだな…




