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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第二章 異世界 ~砂漠の旅~
33/78

閑話 嘘も真実も…

 


 広がる大草原。


 三方を断崖絶壁に囲まれ、一方を大砂漠が囲む地。


 海岸線、岬、山中、砂漠に巨大な柱がそびえ立つそこは封印の地と呼ばれる。




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 




「ふぅ…。」

 っと一息付く…


 家の庭に枯草を集め終わり、空を見上げる。


 別に疲れているわけではないが、ふいに漏れる吐息にも似た声…


「ふふっ、私もユウの癖が感染(うつ)ったのかな…」


 と約一月前に旅立っていった男を思い出す…

 過ごした期間は約半年間…初めて様々な感情をさらけ出してしまった、あの不思議な男…。


「無事、ケアルランドへ辿り着けてると良いが…」


 少し思った事すら口にしてしまう、以前の私なら簡単に気持ちを口にすることは無かったと思う、いや、口にしていなかったな…。



 トントン…



 と背中を指で突かれる…



「ネオンか…。ん?なに…いつもの独り言だ。」


 そう言いながら少女の額に指を当て、頭の中で会話を始める。




 …




「最近ホント多いよね独り言。」


 そうか?まぁ自覚はあるがな…


「ユウ、無事かな。」


 大丈夫だろう、引率のクラリスはしっかり者だ。

 いや…待てよ?ユウの事だからクラリスを怒らせて何か事故が…


「クラリスって人大丈夫なの?」


 あ、あぁ…大丈夫だ、と、思うが…


「なんか心配になってきたんだけど…」


 ふふっ、まぁユウの事だ何とかしているさ。

 さて、そろそろ食事にしようか?ネオン、下ごしらえは終わっているのか?


「もちろん!今日はちゃんと再現出来たと思うよ?」


 ふふっ…毎日ユウの料理を再現するために頑張っているしな。


「んふふ、本家には敵わないけどね。」


 そうだな、では一度家に…


 ん?


 なんだ?この感じ…


「どうかしたの?」


 あぁ…少しな…ネオン、先に家の中に入っていてくれ。



 そう言って少女の額から指を離す…


 北の砂漠…いや、東の山の方か?

 妙な感じだ…


 直接的では無いが、私の感覚に触れる様な、そんな違和感を遠くの方で感じる…

 目を閉じ違和感を探るように意識を集中させる…。


 小さな風の乱れ…

 エナの動き…

 そしてこれは…



 人の気配!?



 物資の受け渡しにはまだ早い…。


 まさかユウ…

 違う!ユウが旅立ってまだ一月程度、帰ってくるには早過ぎる…


 ではいったい誰だ?純血種の入ることが出来ないこの封印の地…私を知る者…



 妙な感覚と、人の気配…

 すぐさま私は家の中に入りネオンに事の顛末を話す…。





 …





「どういうこと?いったい誰が…」


 さすがに、ここからだと遠くて分からないな…一応様子を見に行くが、ネオンどうする?


「もちろん行くよ!」


 そう言うと思ったが…危険かもしれないぞ…


「大丈夫よ!ルビィが守ってくれるんでしょ?」


 あぁ…それだけは安心しろ、私はお前を守る。




 クシャッとネオンの頭を撫でながら誓いにも似たような言葉を投げかける。

 ニッコリと笑う目の前の少女の信頼を裏切らぬように全力を尽くす、今の私にピッタリだな。


「念のため一応結界を張っておく、もし危険があってもネオンの姿だけは見えないようにしないとな…」


「…。」

 無言で肯くネオン。



 予感…いや、妙な感覚だ。

 ここ最近は何かと騒がしい、これもユウが来てからか…


 ふふっと小さく笑いながら、愛刀を持ちネオンと家を出る…。






 ……





 ……





「ふむ、動きが無い…か…」


 家を出て山へ向かいしばらく歩くが、感じた感覚はそのまま、何も変化が無い。

 徐々に言い得ぬ違和感との距離が縮まるにつれ身体に程よい緊張が走る…


 ネオンもキョロキョロと辺りを見渡しているが、特に変化は無いみたいだ…。


 そもそもこの封印の地を訪れるということは、並大抵の事ではない、大砂漠を越えるか山脈坑道を抜けるかの2つ、それ以外は砂漠の結界が抜ける事を許さない、もしも2つのどちらかを抜けても待っているのは変わらない大砂漠…


 旅人という線は無いな…

 敵?いや、連合国軍の管轄地域を簡単に突破出来るとも思えない…

 では味方が?緊急事態か何かか?

 それならクラリスとユウが途中で引き返して来てる可能性もあるが…

 唯一考えられるのは魔族の転移術だが、アレも使える者は純血種の一部の人間だけ…

 そして転移術にも条件があったはず…


 頭の中をグルグルと色んな考えが巡るが、答えは出ない…







 …







 ネオンと黙々と変わりの無い大草原をただ歩く…距離が縮まるにつれ視界に大きくなる山脈の始まりの1つ山…結界柱が顔を出すようにそびえ立つ。



 いつもの物資の受け渡し現場付近に立ち、辺りを確認する…

 目には見えないが、もう少し先からは封印の地に張られている巨大な結界外…

 以前ユウとネオンと3人で予測した結果だが恐らく大体合っているだろう。


 もしも純血種の者が封印の地に来たのなら、ここまでは入って来られない、薄ら感じた人の気配に動きが無いのは、相手が純血種だからだろう。



「ネオン…出来るだけ動くな。」

 ボソッと姿を消しているネオンに話しかける。


 キュッと背中の裾を掴みながら動きを止めるネオン…


 ふふっ可愛らしいが、そのままでは私が動けないぞ?

 さて…



 持っていた剣を高々と掲げ、水の術を剣に纏わせる。


「これくらいだな…」







 適度な量のエナを流し込み、空に向けて剣を一振り…



 ヒュゥゥ…グォォォォ…






 と轟音を立てながら私の放った一閃は青白い光と共に空へ飛んでいった…



「我が名は水聖ルビィ・パンダイヤ!私に何か用があるなら姿を現すが良い!」



 大声を上げ辺りを確認する、右手には山への入り口、前方からには草原が広がり左手には薄ら砂漠の始まりが目に映る…





「反応無し…か?」



 これだけ目立つ動きをしたのだ、もし人が来ているのなら何かしらの動きがあるはず…


 先程から感じていた違和感を調べるために眼を伏せ意識を集中させる…


 風の流れ…

 エナの動き…






 ……






 ……







 居た!

 人!?

 なんだ?この違和感…生命力が…殆ど残っていない様にも感じる…



「ネオン、人を見つけた…が、ほぼ生命力が尽きかけている…危険は無いと思うがネオンは封印の地の結界外に出ると、他の魔族に察知される恐れがある、ここで待っていろ。」


「……。」

 大人しく裾を離すネオン…。


 ネオンの頭にポンと手を置き、人の気配のする方へ歩みを進める…。






 純血種…




 いったい誰が?アイザックやメル達なら、もう少し分かりやすく合図を送ってくる…

 私の見知った者だろうが、この生命力低下具合はただごとじゃないな…。





 警戒は解かず、少し急ぎ足で人の居るであろうところへ向かう…。




 見渡す限りの大草原と大砂漠の境界線…

 そこにポツンと違和感…




 私はその違和感に眼を凝らす…

 確認出来る範囲へと、徐々に近づく…







「……っ!!?」







 私は言葉を失った、彼のその姿は私の知っている人物とはかけ離れた姿だった…


 今にも倒れそうな痩せ細った身体なのに、大地に根を張る様にしっかり立ち続ける威圧感は王族の権威を失ってはいない証拠。


 以前魔大陸へ足を運んでいた時に何度も目にした魔族特有の服を身に纏い、穢れ無き純白の髪を優しい風になびかせながら彼は私の方を向きながら立っている。








「プレーリーッ!!!」





 色んな感情が高まり声を上げ、私は一気にプレーリーの元へ距離を詰める…




「プレーリー!お前!無事だったのか!何故ここに!一人なのか!それにその身体!」





 まくしたてる様に次々と言葉を投げかける私に、微笑みながらプレーリーは口を開く…



「お久しぶりです、ルビィ様…色々と話したい事はありますが…時間がありません…。

 ネオンをここへ呼んで頂けますでしょうか?」


「…ッ!自分でも察しが良くて嫌になるよプレーリー…待っていろ、今呼んで来る。」

「ありがとうごさいます。」



 そう、優しく一言発するプレーリーの声からも生命力の低下を感じられる…


 いったい何があった!?

 いや、それよりもネオン…唯一の兄でもあるプレーリーがここに居る、ずっと行方不明だったプレーリー、何故どうしての感情もあるが、それを突き詰める時間が無い…


 そう、アイツはもう…



 これだ…妙な感覚の正体。


 見知った人物の気配では無かった、プレーリーは私の知っている人物とはかけ離れた姿だった…






 …






 全身にエナを巡らせ身体能力を上げる、踏み込む一歩に力を込め一瞬にしてネオンの居る所まで走り抜ける…









「ネオン!!来いッ!!!プレーリーが来ている!!」

「……ッッッ!!」


 嵐の様に突然戻って来た私に驚いたのか、兄の来訪に驚いたのか分からないが、眼を丸くしながら私の手を握るネオン。


「行くぞ!しっかり捕まっていろ!」

「…。」






 瞬時に方向を変え、プレーリーの元へまた走り抜ける…





「ネオン…何があったかは、まだ何も聞いてないのだが……プレーリーを見ても驚かないでやってくれ。」

「……。」




 ネオンにそれだけ告げ、私はプレーリーの元へ戻った……。









 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 





「……」


 プレーリーを目の前にネオンの結界を解く。



 ネオンはゆっくりとプレーリーの元へ歩き出す…一歩、ゆっくり一歩。




 そんなネオンに微笑みながら両手を広げるプレーリー…。


 プレーリーの変わり果てた姿に最初は警戒していたネオン、次第に踏み出す一歩も速くなり、気付けば駆け足でプレーリーへ身体ごと飛び込む…


 そんなネオンを優しく包み込むように抱きしめるプレーリー、兄妹の再会に胸の奥が熱くなる。




「ネオンディアナ…久しぶりだね、元気そうでなによりだ。」

「……ッ!……ッ!」

 涙をボロボロこぼしながら、プレーリーの胸の中で何度も頷くネオン…



「いつまでたってもネオンディアナは変わらないなぁ…」


 傷付けないように優しくネオンの頭を撫でるプレーリー、その表情は親愛そのものだ…心から逢いたかった家族への優しすぎる抱擁…。



 グズグズと鼻をならしながら、プレーリーの身体にしがみつくネオン…

 優しい表情でネオンをゆっくり引き剥がすと、此方を見据えてプレーリーは口を開く…






「では、ルビィ様…お話し致します。」


「あぁ…」


「……。」

 不安そうな顔で兄を見つめるネオン…。




「まず、魔大陸よりシグマへ渡った後の話なのですが…」


 早速この大戦の火種とも言える重要な事件の話か…シグマへ冤罪を調べにプレーリー達はシグマへ渡ったんだったな…。


「私達の独自の調査の元、導き出された答えは…

 魔族は聖人など殺害してはいませんでした。」


「やはりそうか…確認すらさせないやり方で一方的に処刑に追いやるとは…。」

「いえ、話には続きがあります…処刑されたと言われている魔族の一人、私の眷属の関係者だったのですが生存していました。」

「な!?」

「…!?」


「その事実をすぐに魔大陸へ持ち帰るべきでした、しかし事の真相を調べている最中、迂闊にも私達はシグマの者に見つかり捕らえられてしまったのです。」


 処刑されていなかった?だと?

 では何が目的で…


「シグマの流した情報は中央大陸や魔大陸、東聖大陸にも伝わり…いえ、これはご存知かと思いますので省きます…。」

「プレーリーよ、奴等はいったい何を!?」

「新世界の創造…」

「新世界…」


「彼等は口を揃えて言っていました、新世界の創造…と、そこにどういう意図があるのかまでは調べる事は出来ませんでしたが、私達魔大陸から渡った魔族達は日に日に数を減らされていきました…。」


 くっ!

 言い方は優しいプレーリーだが、事実一人ずつ何かしらの口実に殺されていったというわけか…


「細かい情報は、オルタナ様や叔父様に全てお話ししています。」

「オルタナに?叔父ということはヨラムか!?」

「えぇ…私を救ってくれたのがオルタナ様やクラリスの隊員達です、そしてその隊員の中に一人不思議な男が居ましてね…」


 クラリスと一緒にプレーリーを救った不思議な男…

 私は瞬時に理解した、ユウが関与していることを…。


「ふふっ、そうか…ユウが。」

「やはりご存知でしたか、ルビィ様とネオンディアナと共に生活をしていたと聞いた時は驚きましたが、ルビィ様のその表情を見る限り本当だったようですね。」

「あぁ…アイツは私とネオンの心の拠り所になってしまったからな。」

「……!?それは、また、何とも凄いお方ですね…やはり彼に託して正解でした…」



 寂しそうな目をしながらプレーリーが呟く…




「プレーリーよ、お前はどうやってここへ?いや、ヨラム…アイツの術を…」

「流石ルビィ様…そうです、コレをユウから譲り受けましてね、おかげでここまで来ることが出来ました。」


 そう言いながら黒く輝くクリスタルを見せるプレーリー…

 おそらくヨラムの転移術式を、ユウに持たせた空のクリスタルに組み込んだのだろう…



「さて、ルビィ様…そしてネオンディアナ…私が今ここに来た理由を話したいと思います。」

「……。」

「あぁ…そうだな。」




「見ての通り私はもう生きているのが不思議なくらい全てを失った状態です。」


 そんなプレーリーをもう一度見る…

 以前は溢れ出る魔力に身を包み、並みの戦士では前に立つことも出来なかった男の威圧感とも言えるオーラは見る影も無い…


「自分でも分かっています、もうすぐ私は終わる事を…そしてその前に我が親愛なる妹ネオンディアナへ渡したいものがあります。」

「…!?」

「やはり、その身体…どうにもならないのか?」

「ええ…叔父様の力を持ってしても、ここまでです、、

 ルビィ様…ネオンディアナの制約を解除してもらえますか?」

「ネオンの!?それは…」


 ネオンの制約を解く、他の魔族や種族に見つからない為に抑え付けていたネオンの力…

 私の結界1つで抑える事が出来なかった為にネオンの言葉を制約に組み込み、何とか力を抑え隠した状態。

 その制約を解くということは、ネオンの存在が全世界へ公開されるに等しい…。




「私に残された最後の力をネオンディアナへ渡したいのです…どうかご了承下さい。」


 深々と頭を下げるプレーリー…

 私は戸惑っている、この後の展開が想像出来てしまうからだ…。

 私がネオンの結界を解くと、その後プレーリーはおそらく残された全てをネオンに託して…




 ネオンの方を見る、真っ直ぐプレーリーを見つめる瞳には今にもこぼれ落ちそうな涙を溜めている。

 彼女も理解しているのだろう、プレーリーのしたいこと、そしてその後に待つ結末も…。





「私には…何も出来ないのか…何か…」


 目の前の男の覚悟は本物…

 全てを受け入れここまで来た、何かしてやりたい…。


「ふふっありがとうごさいますルビィ様。

 では2つ…このプレーリー最後の願い聞き入れて頂けるのならば悔いはありません。」


 笑顔でそう言うプレーリー…


「なんだ?私に出来る事なら必ず果たそう。」

「ありがとうごさいます…

 本日より2日後首都ケアルランドにて評議会が開かれます、そこへネオンディアナを連れて行き魔大陸との親和条約を結び直して欲しいのです。」


「2日でケアルランドまでだと!?

 あぁ…そうか、そのクリスタルがあれば可能だな…分かった親和条約を結び直そう、人族と魔族の確執をなんとしても無くさなければな!」

「ありがとうごさいます…彼も、ユウもそこに出席します…既にカリキを経って首都へ向かっているはずです。」


 ユウが!?ケアルランドへ?

 そうか、目的のメンテナンスを調べる為に首都へ向かっているのか…。


「ユウに逢えるのは楽しみだな…ありがとうプレーリー、必ず子女の解放を宣言し、過激派を黙らせる、そして連合国と魔大陸の調停に全力を尽くそう。」


「はい、そしてもう1つ…。

 ネオンディアナをこれからも守って下さいませんか?叔父様が言うには私が居ない間ネオンディアナに危害が及ばないように保護していたと聞きます…それを、今後も続けてお願い出来ないでしょうか?」


 その言葉を聞き、胸が苦しくなる…。



「プレーリー…本当にそれが魔王正統眷属継承権第一位の言葉なのか?」






 最後の願いが、世界平和と妹の安否…

 なんという男だ…







「……。いえ…違います、ルビィ様…。」





 ゆっくり眼を閉じ1つ深呼吸するプレーリー…

 そのまま優しい表情をネオン、そして私に見せる…





「私のもう1つの願いは、ネオンディアナの兄としての言葉です。」







 その時、体温にも等しい液体が、私の頬を伝う…


 気付けば私は泣いていた…。

 ネオンも泣いていた…。

 私もネオンも声を出さず涙を流した…。





「ありがとうプレーリー…お前の願い聞き届けた、水聖ルビィの名に誓おう!必ずネオンを守り抜く!」


 溢れ出る涙を拭う事無く、ボロボロの顔のままプレーリーへ誓いを立てる…


「こちらこそ感謝では足りませぬ…水聖ルビィ様、どうかネオンディアナを宜しくお願いします…。」





 グッと手に力を込め、体内のエナを巡らせる、頭に残っている情報にエナを干渉させ、制約の一部を手のひらの光へ変える…


「ネオンディアナ・キングスター!今この時を持って水聖ルビィの制約を解く!失われた力が一気に押し寄せる!覚悟は良いな!」


「……。」

 狩りの時すら見せない真剣な眼差しで私を見据えるネオン。


 ゆっくり手のひらのエナを拡大させ、ネオンを包み込むように術を展開させる…




 眩い光がネオンを中心に広がり辺りを白く染め上げる…





 やがて真っ白な光はネオンの元へ帰っていく様に収束を始め、辺りの空気やエナもネオンの元へ向かって行く…。


「これで…制約の一部は解いた、『混血の魔女』の解放だ…」


 ネオンに集まった光は、風となり勢いよく私を突き抜ける…


 魔族の持つ魔力やエナ、地表に舞う砂塵が私の衣服や髪を激しく揺らす…。




「ありがとうルビィ…」


 頭の中の声ではなく、久しぶりに聞くネオンの肉声に少し感動を覚える。







 ゆっくりとプレーリーの元へ向かうネオン、その声は今にもはち切れそうな想いを、そのまま声に乗せていた…。





「お兄…さん…」





「ネオンディアナ…」


 プレーリーの優しい声に感情が決壊するネオン…





「お兄ちゃん!お兄ちゃぁぁぁん!」



「おいで、可愛いネオンディアナ…」




「あぁぁぁっ!!嫌だよ!いやだよぉぉぉ!!!お兄ちゃぁぁん!!!」







 今の今まで言えなかった言葉がプレーリーへ降り注ぐ…

 涙をこぼしながらプレーリーはネオンを優しく抱き寄せる。




「やっとネオンディアナの声を聴けた…兄さんは満足だ…」



「嘘だよっ!お兄ちゃん!まだやりたいことあるでしょ!私!いっぱい勉強したし!たくさん術も覚えた!お兄ちゃんに見て欲しいよ!もっと話したいよ!私は全然足りないよ!お兄ちゃんもそうなんでしょ!満足なんて言わないでよ!」


 感情が爆発したように泣きながらプレーリーにしがみつくネオン…

 優しく頭を撫でながら静かに頷くプレーリー…




「そうだな、兄さんは嘘つきだな…ネオンディアナともっと一緒に居たいのが本音だ。」



「うぅっ!お兄ちゃ…ぅぅっ!ぃゃぁ…」



「さぁ…ネオンディアナ…兄さんから最後の贈り物だ、しっかり受け取ってくれ。」 




 そう言いながら眼を閉じ、ネオンの手を取りブツブツと詠唱を始めるプレーリー…

 足下から既に崩壊の合図でもある、魔族特有の黒い炎がゆっくりとプレーリーを焼き始める…。




「ぉにぃ…ちゃ…ダメ…。」 






「ありがとうネオンディアナ、愛してるよ。」



 その言葉を最後にプレーリーは黒い炎に包まれた…黒く漆黒の炎に…









「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!」









 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※








 辺りはすっかり夜…。





 家に帰った私とネオンは、どこかやるせない想いのまま、ただテーブルを挟んで座っていた…。


「私…」


 ボソッとネオンが呟く…


「私…絶対戦争なんて起こさせない!」

「あぁ…私も同じ想いだ!」


 少女の瞳は燃える真紅の眼と、深い海の様な、兄と同じ紺色の眼…


 プレーリーの仇討ちよりも、戦争勃発を防ぐという強い意志…か…。

 ふふっ、まったく、頭が上がらないな。



「ネオン!一杯付き合え、プレーリーも好きだった酒だ!」


 ドンっ!とテーブルに酒瓶を立てる。


「今夜は飲もうかな…お兄さんへ」

「あぁ…共に偲ぼう…」




 チンッと、お互いグラスを合わせ1口。





「うぇ…やっぱり苦いや…」

「そうだな…今夜の酒は少し苦いな…。」





「それも、慣れてくるのかな…」

「そうだな…慣れてくる。しかし苦さは忘れないがな…」





「うん…忘れない。」

「あぁ…私もだ…。」






 …





 2日後、2人で首都へ向かおう。


 今回の事件の詳細も知りたい、プレーリーとの約束でもある親和条約を結び直す…



 そして…ユウに逢いたい…


 こんな寂しい気分の2人を放っておいて、まったく、けしからん奴だ…





いつも読んで頂きありがとうごさいます。

第二章これにて終了です。


第三章開始は1月末を予定しています。

ようやく長い前振りが終わったような…そんな気がします。

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