25話 行く末に待つのは
突如港街カリキに襲撃を仕掛けてきた、魔族の過激派と東聖大陸北部の国シグマ。
強力な破壊光線をなんとかかいくぐり、俺達はシグマ軍艦3隻を目指す。
途中船が転覆し俺は道連れになりそうになったが、行方を眩ませていたカレンが俺の窮地に駆けつけ一命を取り留める。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「でね、そのときー、頭にきたからスパッとやったら死んじゃったんだー!」
「カレンよ!無闇に人を殺めてはならん!その者にもカレンの様な麗しい妻が居たのかもしれん…」
「そっかー…カレンすぐカーッとなっちゃうから…」
「過ぎた事を悔やむな!これから学んでいけ!マガミと共に幸せになるのだ!」
「うーん、よく分かんないけどカレンはユウちゃんとルビィちゃんと幸せになるよ!」
オルタナとカレンが何やら話しているようだが聞こえない…俺は何も聞いてない!
「マガミ!カレンは長寿種の血を引いておるからな!子供は出来にくいぞ!精々励め!はっはっはー!」
「見た目14才の少女の前で堂々とセクハラすんな!!」
まったく!合法ロリうっひょー!ってなるかよ!俺にそんな趣味は無ぇ!
「オルタナ様!そろそろ連合国軍艦に到着します!」
「よし!船に誰か気付いてる者は居るか?」
「はっ!先ほどこちらに向けて合図がありました故に、そろそろ迎えが来るかと思われます!」
「そうか…。しかし妙だな。」
「あぁ、アレは誰が見てもおかしいぜ。」
もうすぐ見方の船、連合国軍艦に迫っている俺達だが、目の前の光景は明らかにおかしい。
シグマ軍艦3隻へと向かった連合国軍艦は既にシグマ軍艦の一隻へと渡り橋を架け、乗り込んでいる様だが…
「しずかだねー?」
「うむ。静かすぎるな…。」
「俺ももっと、こう煙とか歓声とかなんかあると思ってたんだけどな…」
見るからに何の変化も無いシグマ軍艦、中に乗り込んで行った兵達の姿も見えない…。
「何か嫌な感じだな…。」
「先にみてくる?」
「いや、まずは連合国軍艦へ乗り込み、状況確認が先だ!マガミ、カレン!先走った行動は控えよ!」
「分かった…カレンも頼むぞ!」
「はいはーい!」
そうこう話していると連合国軍艦から迎えの船がやってくる…
「お!来たな!」
「よし、この小舟ごと引き上げさせるぞ!支度を済ませておけ!」
「「はっ!」」
俺達の乗っている小舟より少し大きめな船が、目の前にやってくる、中には兵士が2人乗っていて直ぐさま俺達を回収してくれた。
「オルタナ様!ご無事で何より!」
「苦労をかけたな!船の引き上げまでに状況を確認させてもらおうか?」
「はっ!僭越ながら失礼をば…。」
ゆっくりと連合国軍艦へ近づき、船の両端に縄をくくりつけ連合国軍艦へ引き上げる。
「先程、シグマ軍艦へ接触し、まずは敵の出方を伺ったのですが…波を打ったかの様に静かでした。我々は十分に警戒しながら渡り橋を架けたのですが、それでも相手に反応はありません。」
「ほう。反応無しとな。」
「はっ!そして元第三部隊を始めとする主力を先頭にシグマ軍艦へと潜入致しましたところ…」
なんか嫌な予感しかしねぇな…
「元第三部隊ビシャスの報告によると、船内は無人でした!」
「何を馬鹿な!いったいどういうことだ!?」
「そうだよ!それは無いだろ!だってさっき俺達に撃ってきただろ!あの黒い光線をよ!」
誰も乗ってない?そんな馬鹿な!じゃぁ、どうやって俺達に攻撃したんだよ!
「いえ、更にその光線を撃ったであろう装置も何もありませんでした!」
「な!ふざけんなっ!ちゃんと調べろよ!あれだけの攻撃だぞ!」
「そ、そう言われましても!」
「マガミ!落ち着け!その者を責めても始まらん!後ほど我等も内部を確認するぞ!」
「あ、ああそうだな!すまない、ちょっと気が立ってて、ホントごめん!」
「いえ!お気になさらず…我等も事実を知って驚きましたから…」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか小舟は船体へ引き上げられ終わっていた。
直ぐさまシグマ軍艦へと向かうオルタナに、兵達が声を掛ける、オルタナも兵を労いながら歩みをすすめる。
誰も居ない?攻撃方法も分からない?そんな馬鹿な事があるかよ!急に消えたってのか?急に消えた…って、そういえばあの時も…
まだカリキに到着する前にロレース率いる魔族に襲撃を受けた時だ…
クラリスが情報を引き出そうとロレースを捕らえていると、光る清石と共に魔族全員姿を消した…生きてる者も死んでる者も全て消えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シグマ軍艦の船体へと橋を渡り、降り立つ俺達は、その光景を見て驚いた…。
「なんだよ!こりゃ!」
「なんとも、奇っ怪な…」
兵達の言う通り、軍艦はもぬけの殻だ…人の姿は見方の兵達のみ。
そして一番驚いたのは、その船の有り様だった…渡り橋を降りてすぐに見渡すが、その船体はまるで造りかけの船の様だ…。
立っている床板もところどころ貼られていなく舟底まで丸見え、船の内部も骨格が丸出しで砲台はおろか、人の使用する物品は何一つ見当たらない…。
「ねー?このふね動いてたのー?」
「俺も怪しく思えてきたよ、こんな状態で船が浮いてること自体不思議だ…。」
「確かに造りかけ…いや違うな…これは…。」
シグマ軍艦は船として機能出来る状態には見えない…けど、実際この船からあの黒い光線は飛んできた、どうなってんだ?
「あ、ちょっと!他の二隻にはまだ向かってないのか!?」
通りすがりの兵を引き留め話を聞く…
「あん?見りゃ分かるだろが?まだここの調査を…っ!?オルタナ様っ!!」
「よい!それより今マガミが言った様に、他の二隻の様子はわからんのか?」
「はっ!ただいま、ビシャス殿が単身乗り込み内部調査を始めたところです!」
「ビシャスが?」
「はっ!この艦も同じように、ビシャス殿が単身で乗り込み、安全を確保してから渡り橋を架けました!」
すげぇなビシャスさん…敵地に単身乗り込みとか格好いいぜ、さすがイケメン。
「して、ビシャスからの報告はあるのか?」
「はっ!未だ合図は無いのですが、あちらにて兵はいつでも向かえる様に待機しております!」
「よし!マガミ!カレン!向かうぞ!」
「ああ、大丈夫だと思うけど少し心配だな…。」
兵は俺達を艦の反対側へ連れて行く…
横並びになったシグマ軍艦3隻は簡単に縄をかけられ、いつでも隣の艦へ行ける状態となっていた…
ワイワイと隣の船を見遣る兵達の中に、一際目立つ2人が見える。
「おーい!オヤジ、スネ夫!」
「おぉ!ガキ!生きてたか?」
「いよぅ!ボンズ!お?カレンも一緒か?」
直ぐさま俺達に気付く2人、事情を聞くため2人の元へ向かう。
「んでビシャスさんが単身乗り込み無双なのは聞いたけど、次の船はどうなってんだ?」
「ああ、こっからじゃよく見えないけど、やっぱり静かだな…」
「まぁ、ウチの元小隊長なら1人でもなんとかなるだろうよ?なんにせよ敵が居ねぇんじゃどうしようもねぇけどな?」
「確かによく見えないけど…。」
「ねー?」
「ん?どした?カレン?」
「ひまだから向こう行きたい。」
「は?いや、今ビシャスさんが確認してるからさ、もう少し待とうぜ?」
「やだー!ひーまーなーのー!」
いきなりワガママなカレン、オルタナや2人の方を見るが、すぐに目を逸らされる…。
「仕方ないな…いいよ、行ってこいよ!」
「やった!ユウちゃんも一緒ね!」
「は?」
そう言ってカレンが俺の後ろに回り込み、腰から手を回す…。
端から見れば抱き付かれてる様にも見えるが、その瞬間俺は理解した。
飛ぶのだと…。
目の前に居たオルタナ、オヤジ、スネ夫、兵達の姿が一瞬にして視界から消えたかと思うと、訪れる浮遊感…
俺の腰を後ろからギュっと抱きしめながら宙を舞うカレン。
「ぽぎゃー!!!!!」
スタッ!
っと相変わらず安定感のある着地で船に飛び移った俺達。
「お前は!毎度言ってるけど前もって言ってくれよ!」
「説明がめんどーなの!」
「飛ぶから覚悟して、とか言ってくれよ!」
「んじゃ次からきをつけー……!?」
俺と話している最中にカレンの顔付きが変わる、それと同時に手から放たれる紫色のエナ。
「どうした!?」
「誰かいるよ!」
「カレンが警戒するって事は敵?だよな?」
「たぶんね…」
一気に警戒態勢になる俺達。
カレンは身を低く構えいつでも攻撃出来る状態で辺りを警戒している。
俺は魔眼でエナの流れを探す…物陰や、床下、全てに眼を配らせる。
「がはっ!」
っと背後から声が聞こえ、振り向いた時には首を落とされた死体が転がっていた…その死体の傍らに立つカレン。
速過ぎるだろ…
「カレン!ソイツは?」
「たぶんシグマかな?見たことある服だよ」
転がる死体を見ると兵士の様な格好をしている…
まだこの船に敵が居た。
って事はビシャスさんが危ない!
「カレン!船内に行くぞ!ビシャスさんが心配だ!」
「りょーかい!」
目に見えるところだけでも警戒しないとな…
さっきもカレンが気付いてくれて助かった…
「マガミー!!」
「お、オルタナ!?」
後ろから大声でこちらへ歩いてくるオルタナ、兵を10人くらい連れて物々しい雰囲気だ。
「いつまで経っても合図が無いので此方から来てしまったぞ!しかし、あの死体…敵が潜伏しているのか?」
「ああ、今カレンが倒してくれたけど、シグマの人間か?」
「うむ。格好を見る限りシグマ兵に間違いない!ビシャスはどこだ?」
「今から探しに行くとこだよ!早くしねぇと、いくらビシャスさんでもマズいぜ!」
「よし!者共!残りの兵をこちらに寄こし、艦の横に船を付けろ!あちらの艦とこちらの艦両方同時に攻め落とすぞ!」
「「はっ!」」
バタバタと動く兵達、俺達2人とオルタナ、そして兵の数名は船上にて隣の艦を見る…。
現在立っている船に敵が1人現れたということは、船内にまだ敵が残っている可能性が高い…。
隣の艦は目に見えるところには人影は無いが、やはり船内には残っていると予想する。
「オルタナ…悪いんだけど、作戦開始まで待ってられねぇ!ビシャスさんが心配なんだ。」
「そうだな…いくらビシャスでも、敵は未知数、1人では難しい局面もあろう!」
船が横に並ぶまで時間が掛かりそうと見るなり別行動をオルタナに提案する。
「よし!ではクラリスの隊員全員は船内の捜索へ向かえ!ファルコ!ザンザス!こっちに来い!」
「「はっ!ここに!」」
「今からお前達4人でビシャスの捜索を任せる、そして船内の敵情報などあればすぐに一度こちらに戻ってこい!わかったか!」
「「ハッ!」」
「悪ぃな!オルタナ!んじゃちょっとばかし探索してくるぁ!」
「じゃーねー!」
「おまえら2人共!オルタナ様に向かってなんて口の利き方だよ!」
「やめとけファル、そいつらに言っても無駄だ…」
どこか緊張感に欠けた空気で、俺達4人は船内入り口へと足を運ぶ…
「しっかしよー!ビシャスの旦那も水臭えよな!1人で行っちまうなんてよ!」
「まぁ、北にいた頃はよく居なくなっては、手柄あげてたし、いつもの事だ。」
そっか、こいつら第三部隊って北のシグマ国境線でドンパチやってたんだよな…
「なぁ、ビシャスさんて何であんなに強いのに小隊長なんだ?」
「さぁな?おれがビシャスの小隊に入ったのは大戦が終わった後だからな…」
「ビシャスの旦那は色々引き受け過ぎなんだよな!デカい山だけ片付けてりゃ、中隊長くらいなっててもおかしくねぇや!
まぁ、貧乏クジ引いては、今回みたいに真っ先に1人で片付けるのが殆どだけどな!」
「ほーん?カレンはビシャスさんと長いのか?」
「うんにゃ?カレンのことは知ってたみたいだけど、逢ったのはマルティアが初めてだよ?」
「あれ?お前いつ頃から第三部隊なんだ?」
「ボンズ、カレンはビシャスの旦那にも負けないくらい、単独行動起こしてたんだよ。」
「ああ、なるほど…納得だ。」
そりゃオヤジもスネ夫もカレンの事知らなかった訳だ…。
「カレンがウチの部隊に入ってたって知ったの最近だしな。」
「勝手な新人かと思ってりゃ、噂の首斬りだもんな!?腕斬られ損だったぜ!」
ああ、懐かしいな。
そういやそんな事もあったな…。
「おい!ボンズ!あそこが入り口くさいな…」
「お、おお。よし!んじゃお前等!俺は戦えないからしっかり守ってくれよ!」
「ガキ何しに来たんだよ…。」
「カレンがいるからだいじょぶだよー!」
「ったく!行くぜ!」
スネ夫を先頭に、カレン、俺、オヤジの順で船内入り口の扉をくぐる。
明かりが無いので薄暗いが、下手にこちらから明かりを灯すのは危険なのでこのまま進むことにする。
…
このフロアは誰も居ないな…
「よし…とりあえず大丈夫だろ。」
と最後尾を歩いていたオヤジが安全を確認する。
俺は目の前のカレンが無防備に歩いているのを見て全く警戒していないが…
「なぁスネ夫、あっちの艦に乗り込んだ時ってビシャスさん1人だったんだよな?」
「さっきも言ったが、旦那はいつも単独行動起こすんだよ。まぁ、ああ見えてかなりの、やり手だ今頃安全を確認して帰って来る最中かもな!」
「そうだよな…さっき港で魔族と戦ってるの見たけど凄かったぜ、あの剣技…」
「あ?」
スネ夫が急に立ち止まり、後ろを振り返る。
「おいガキ、何言ってんだ?」
「え?何って?」
「ビシャスの旦那は術士だ…剣技なんて使えないぞ?」
「そうだぜ?腰にぶら下げてるのを使ったのなんか見たことねぇや。」
「は?いやいや、すれ違い様に敵を剣でバラバラにして…ってそんな術だったのか?」
「バラバラに?そんな術聞いたことねぇな?ファル、お前知ってるか?」
「いや?俺も聞いたことねぇよ、てか旦那が剣使ってたのはマジかよ?ボンズの見間違いじゃねぇのか!?」
「いや確かに斬ってだぜ?腰を落として鞘に納めたまま敵とすれ違ったと思ったら、バラバラって!」
なんだ?何かおかしいぞ?ビシャスさんが剣を使えない?あんな凄い腕前なのに、それを部下が知らないって、どういうことだ?
「ユウちゃんみたのは剣技だよー!」
「カレン?何か知ってるのか?」
「うん、たしかねー、えっとねー、なんだっけ?わすれた!」
駄目だ、コイツに聞いた俺が馬鹿だった…。
そんなビシャスさんの謎も増えて、少し立ち止まり考え込む俺達4人。
オヤジとスネ夫は難しい顔をしながら何か考えてる様だ、カレンは相変わらずポケーッとしている、天井を見ながらキョロキョロと辺りを見渡している姿が、なんだか可愛らしい…
そんなカレンを見ていると、急に両手から紫色のエナが溢れ出す。
さっきまでの緊張感の無い表情は消え、目つきが鋭くなるカレン。
「2人…3人かなー?」
ふいに放ったカレンの一言で警戒するスネ夫とオヤジ…。
俺を含めた4人は背中合わせに周囲を警戒する。
「クフフ。これはこれは!また逢いましたねぇ。」
どこからともなく聞こえてくる男の声。
覚えのある独特な笑い方、姿は見えなくても俺には分かる。
「ロレースだっけか?相変わらず隠れながら話し掛けるのが好きなんだな!」
「これは手厳しい…では、失礼しますねぇ…」
俺の言葉に素直に反応を示すロレースは姿を現す。
「お久しぶりですね?魔眼使い。そしてそちらのお嬢さんは首斬りでしたか?そちらの2人はお初ですね…ワタシ準眷属継承権第9位ロレースと申します。クフフ。」
「ユウちゃんアレだれー?」
「お前忘れっぽいにも程があるだろ!ほらあの笑い方がキモい奴だよ!」
「あー!あのキモいひとかー!」
「おい、ボンズあれってまさか、この前話してた…」
「ああ、過激派?だっけかな?」
「アレが…準眷属9位の…」
スネ夫の顔が少し強ばっているように見える、同じ魔族だ何か感じるものが有るのかもしれない…。
「クフフ。さて魔眼使い、アナタどうやって牢から出てきたのですか?」
「やっぱりお前等の仕業かよ…こちとら人畜無害善良な健康男子で通ってんだ!話したら解放してくれたよ!」
「ユウちゃん何話してんのー?」
「今はどうでも良い話だ、とりあえずこの場を何とかしないとな…。」
魔族がシグマの艦に潜んでたって事は…ビシャスさんマジで大丈夫かよ。
「おれの名はザンザス・カメリア!ちょっと前ここに男前の術士が来たはずだが!どこに居る!?」
「クフフ。はて?何を言ってるのでしょうか?」
「くそ!話が通じてるのか?おい!ファル!あの男何て言ってるんだ!?」
「オッサンの亜人語でも通じてるよ…。
なぁ!ロレースさんよ、惚けてないで教えてくれ!」
と魔人語で話し掛けるスネ夫。
「おや?魔族の方もいらっしゃるとは?クフフさてね?どうでしたか…。」
「ちっ!ビシャスの旦那無事なんだろうな!もう一ついいかい?ロレースさん。」
「なんでしょうか?」
「魔人語じゃなくて、亜人語で話してくれよ!喋れるんだろ?どうせ魔人語で仲間とやりとりしようとか思ってたんだろうが、俺とボンズにはアンタの言ってる事は分かるんだしな…」
「クフフ。これはこれは、失礼致しました。では亜人語で話すと致しますか…。」
「ねーもういい?」
未だに姿を見せているのはロレース1人、後2人どこかに居る。
カレンはいつでも動けるが、どうする?
俺を抜けば3対3か…。
「さて、こんな事で時間を掛けてしまってはいけませんねぇ…」
パチッと指を鳴らすロレース…
すると暗がりから隠れていた2名が姿を現す。
シグマの兵服を着た2人の男、その1人の顔は見覚えがある、一度だけだが逢って会話もした。
「おいおいベルンさん。生きてるじゃねぇかよ!」
「久しぶりだな、マガミユウ。」
焼け死んだとされていた、護衛部隊副長ベルンとその部下がシグマの兵服を身に纏い、現れる。
「アンタのおかげで俺は牢屋送りだ、身の潔白を証明したいから少し外に出てくれないかな?」
「バカな事を…我等が姿を現した。これが何を意味するか分かるだろう?」
「ですよねー?カレンっ!やるぞ!準備は良いか?」
ガィーンッッ!!!
と激しい音がする方向を見ると、カレンが既にロレースへと斬り込んでいた。
しかし、カレンの手から放たれるエナは、ロレースの身体に触れる寸前で、何かに弾き飛ばされた様だ…。
「けっかい?」
首を傾げながら、一瞬にして俺の横に戻って来るカレン。
「相変わらず、手が早いな…。」
「へへ、ありがと。でもなんか堅いのに弾かれちった…」
「アイツ前回クラリスにボコられてるからな、多少なり警戒してきたんだろ…。」
「そっか!じゃぁちょっと色々試して来るね。」
と言い残し音も無く姿を消すカレンはロレースの前に立つ。
「ク…フフフ…相変わらずのスピードですねぇ…しかしワタシの結界をどうにかできますかね?クフフ。」
「うん、多分どうにかできるよ?」
少し驚いた表情で、精いっぱいの余裕を見せるロレースと、と和やかに言葉を返すカレン。
あっちは任せて大丈夫だろ…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、こっちの2人はどうかね?
「スネ夫!オヤジ!残りの2人任せて大丈夫か!?」
「当たり前よ!さっさとビシャスを見つけて来い!」
「なめんなよー、ボンズ!護衛隊みてぇな、ぬるま湯浸かってた奴等に負ける気がしねぇぜ!」
「ふん、聞き捨てならんな!」
とオヤジに剣を叩き込むベルン、オヤジは難なくそれを躱し、軽く腕を振るう。
「へっ!遅ぇよ!ベルン!」
「ザンザス!くっ!カメリア家の面汚しがっ!」
「けっ!カメリア家は汚す程、綺麗じゃねぇけどなっ!」
横薙ぎに払われた剣を、ハンマーで防ぎ、それをそのままベルンへと振るうオヤジ…
なんだか知り合いっぽいけど…。
「おれが面汚しってんなら、シグマの兵服着てるてめぇも相当だぜ?ベルンさんよっ!」
振るったハンマーがベルンの身体を、くの字に曲げる…。
「ごはぁっ!!」
「立てよ、従兄弟だからって容赦しねぇ、キッチリけじめは付けるぜ!」
「え?従兄弟!?」
「ああ、コイツは現カメリア家党首だ!で連合国護衛部隊副長。まぁ色々あって俺は第三部隊だけどな…」
「ぐっ…獣人混じりがっ!」
「おい、ベルン…おれをあんまり怒らせんなやっ!」
と片手でベルンを持ち上げ、そのまま壁に叩きつけるオヤジ…
相変わらずの怪力だぜ、俺も前に一度飛ばされた事もあるしな。
「がっはぁ…!」
「ベルン…お袋の家系は関係ねぇ!おれが勝手に家を出ただけだ!」
「はぁっ…はぁっ…勝手に…か!ふははっ!追い出されたの間違いだろうがっ!」
と手を床に置きながらエナをオヤジの足下へとゆっくり伸ばしていくベルン…
「オヤジ!足下だ!ベルンから術が来るぞっ!」
「おお!?助かるぜ!」
「ちいっ!魔眼か!?こざかしいっ!」
オヤジは横に一歩ズレ、そのまま床に手を付いているベルンの肩へとハンマーを振り下ろす。
ゴシャッ!
鈍い音と共に、鎧ごとベルンの左肩を砕くオヤジの一撃。
「はごぉっ!!」
堪らず砕かれた肩を右手で抑えるが、オヤジの追撃は止まらない、振り上げられた重量のあるハンマーが無事な右肩を狙う。
グシャッ!
「ぐはっ!まさか私がザンザス如きにっ!」
両肩を砕かれ、地面にうつ伏せのベルン、オヤジはそれ以上の追撃を行わず、持っていた縄でベルンの足と身体を縛り上げた…。
「その腕じゃ術もうまく使えないだろ…ちょっと大人しくしてろ!」
「はぁっ…!はぁっ…!ザンザス!ここで、我等を…シグマを叩いても無駄だ!」
「あん?」
「もう…始まっているの…だ!再び世界は…大戦によって…造り替えられるのだ!!」
「なに、訳分かんねえ事言ってんだ!ベルン!おい!」
胸ぐらを掴み無理やり立たせる、ベルンは不敵な笑みを浮かべたまま、何も喋らない。
砕かれた肩からの出血が足元を濡らすが、ベルンは焦点の合っていない目でオヤジより遠くを見つめている。
「オヤジ…今は放っとけよ。」
「…ああ。」
持ち上げたベルンを壁に投げ捨てるオヤジ、投げられたベルンは勢いよく壁に激突し、横倒れになりながらも目は見開いたまま、口をモゴモゴと動かしている。
アレは正気じゃねぇよ…いったい何が…。
「おいガキ…」
「どうしたオヤジ?」
「いや、早くビシャスを探しに行かねえとな。」
「ああ、敵がこいつらだけって事は無いだろうからな。」
「だが、ガキ独りじゃ死ぬかもしれねぇ、安全を選ぶなら、カレンを連れて行け!」
「いや、ほら見てみろよ、カレンはまだ戦闘中だろ?」
何やら向こうの方で、ロレースとカレンが戦ってるというか、言い合っている…。
何してんだ?あいつら?
「しゃーねぇ!んじゃ、少し待ってろ!」
とオヤジはスネ夫の方へ駆け出して行った。
シグマ軍艦内部の戦闘はまだ続いていく。




