23話 非人道的
シグマと魔族の襲撃にあったカリキの街。
急遽前線に駆け付けた俺はクラリスとオルタナと一緒に港区画の魔族を無力化するため奔走していた、沖合からの謎の黒い光線により、クラリスはエナを使い切り、その後襲い掛かかってきた魔族2人をオルタナが足留めする。
俺はクラリスを連れて宿舎で応援を待とうとするが、道中魔族の襲撃に遭い瀕死の重傷を負う。
絶体絶命のピンチに現れたのはマルティア城跡から共に旅をしてきた親衛隊の3人だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「マガミ!大丈夫かっ!何があった!」
「俺は大丈夫。とは言えないけど、まずはクラリスだ…エナを使い切っちまって…。」
「なんだと!?クラリス様がエナを使い切るなんて!?」
「あと、向こうでオルタナがまだ戦ってる、加勢してきてくれ!」
「お、オルタナ様がっ!?おい!ザンザス!ファルコ!お前達はオルタナ様の元へ急げ!」
「「了解!!」」
直ぐさま的確な指示を出して2人を向かわせるイケメン。
「マガミ、立てるか?」
「いや、無理くさいな。そういやビシャスさん、カレン見なかったか?」
「まだ見つかってないのか?すまないが私は見ていない。」
「そっか…」
アイツ何してるんだよ…
「まずは、クラリス様を安全な場所へ、そしてマガミの治療だ………いや…マガミ!そこを動くな…。」
話の途中で急に警戒するビシャスさん、視線は頭から地面にめり込んだアラスの方へ…
「ふふ…は…ふはは!」
頭を地面にめり込ませたまま身体を震わせ不気味な笑い声を上げるアラス…
マジかよ、オヤジのアレくらって無事なのか!?
「ふはは!って!ゴラァ!ぶっ殺すぞゴミ共がぁっ!!」
「うぉっ!キレた!」
「マガミ!出来るだけで良い、クラリス様と自身を守れ!」
そう言いながら剣を抜き警戒態勢をとるビシャスさん…。
「殺す!殺す!殺す!殺す!」
「我が名はクラリス様直轄親衛隊ビシャス・コングリーフ!!
カリキを襲う魔族よ!これ以上やると言うのなら容赦はしない!」
おお。まさに騎士っぽいなビシャスさん…。
アラスは聞いちゃいないようだけど…
「殺す殺す!ぶっ殺す!!!!!」
「仕方ない…来いっ!!」
「ぶっ殺す!ぶっ殺す!ぶっ殺す!」
近くに落ちていた剣を拾い、あからさまに怒りながら突進してくるアラス…
ビシャスさんは剣を構えたまま動かない、ジッと相手の動きを見ている様だ。
「だらぁっ!!」
アラスが持っていた剣をビシャスさんに投げ付ける…。
シューッっと風を切る音と共に、剣は高速でビシャスさんに迫る……
がビシャスさんは顔を少し傾け、難なくそれを躱す。
最初から当てる気が無かったのか、避けられるのを想定していたのか、剣を投げ付けたアラスは迷わず両手を広げビシャスさんに術を放とうと…
その刹那
剣を構えていたビシャスさんの姿が消えた…
「あれ?えっ?」
気がついた時には、両手を広げたアラスの後ろに剣を振り抜いたビシャスさんの姿があった…
「ば…かな…。その動きは………ま…」
「終わりだ。」
キンッ
と剣を納めると同時にアラスの身体がバラバラに崩れ落ちる…。
直ぐさま石の様な物をバラバラになった死体へ投げ付けるビシャスさん。
ボンッ!
と小規模な爆発と共にアラスの姿は木っ端みじんに吹き飛んだ。
「凄ぇ…。こんなに強いのかよビシャスさん」
何事もなかったように俺とクラリスの元へやってくるビシャスさん…
「マガミ!怪我は無いか?」
「今の戦闘で負った怪我は無いぜ?」
「ふっ!皮肉交じりとはマガミらしいな。私は先にクラリス様を宿舎へ寝かせてくる、少し待っていれば、オルタナ様の所へ行った2人も戻ってくるだろう。しばらくの間一人だが大丈夫か?」
「まぁ…少し不安だけど、クラリス優先で頼む。最悪死んだふりしてるから、俺の事は気にすんな!」
「分かった!では!すぐ戻ってくる!ふりは良いけども本当に死ぬなよマガミ!」
「ビシャスさんの冗談は笑えねぇよ…」
と笑いながらビシャスさんを見送る、クラリスを片手で肩に担ぎ上げ、物凄いスピードで宿舎へ走って行った…。
「さて、俺は死んだふりでもして、誰か人が来るのを待ちますかな…」
と仰向けに寝転ぶ。
先程までの喧騒が嘘の様に静かだ。
風に舞う木の葉や小石の音と、港の方から聞こえる波の音だけ…。
オルタナは大丈夫だろう…なんだかんだ言ってもオヤジとスネ夫も強いはずだし…
クラリスもビシャスさんが付いてる、問題ない。
カレンは何してるんだ、こんだけ非常事態だ、てっきり居ると思ってたのに…
そんな事を考えながら空を見上げる…
「おーい!」
港の方から声が聞こえる、あの声はスネ夫か…無事オルタナと合流出来たのか?
「おい!オッサン!ボンズが死んでる!?」
「なにぃ!ビシャスは何してるんだ!?」
違うって、死んだふりだ!生きてるよ!
と声に出すのも面倒くさいので片手を上げて生きてるアピールをする事に…
「おい!生きてるぞ!?」
「まったく、おいガキ!大丈夫かっ!?」
仰向けに見上げた空の景色に、むさ苦しい男2人が顔を覗かせる。
「おかえり、生きてるよ!クラリスはビシャスさんが宿舎まで連れて行ったぜ、オルタナと合流出来たのか?」
2人の声と顔は確認したが、オルタナの声が聞こえなかったような?
「マガミ!」
「うぉっ!ビックリした!」
いきなり視界に現れる元気な王様。
「無事か!こちらは片付いた!後は沖合のシグマの阿呆をどうにかせねば!寝ている場合ではない起きろ!マガミ!」
「無茶言うなよ、見て分かるだろ?満身創痍ってやつだよ、お前等みたく強靭に出来てないの!」
「ボンズ!オルタナ様に向かって何て口の利き方だ!このタコ!」
「おい!ガキ!あんだけ作法教えたのに何で口の利き方がなってないんだよ!このイカ!」
「2人の漫才はいいからよ、早く俺も宿舎で休ませてくれ…ホント身体がボロボロなんだよ…。」
「ふん!案ずるなマガミ!」
スッと俺の胸に手を乗せるオルタナ、桃色の淡い光が身体を包みその光がオルタナの腕を伝って俺に流れ込む…。
「おぉ…治癒術か…助かったぜ…」
「この程度の怪我で離脱されてはかなわんからな!」
「そりゃ手厳しい事で…。」
ゆっくりと痛みが消えていく…擦り切れた傷もゆっくり塞がる光景は、まるで映像の逆再生の様だ。
「よし!これで動けるな!」
「ありがとう、オルタナ!疲れは残ってるけど、痛みは何も感じないぜ!」
「では一度宿舎へ戻るぞ!沖合の動きも気になるしな!」
「「はっ!」」
「了解!」
オヤジとスネ夫がヒソヒソと俺に、王様への口の利き方がーとか、態度がーとか言ってくるが、今はそんな場合じゃない。
さっきの黒い光線がまた来たら、幾らオルタナの張った結界でも持たないんじゃないか?
俺達は急いで宿舎へ向かう…。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おお!!オルタナ様!御無事でなにより!」
と入り口の兵が俺達を迎え入れる。
扉を抜け中に入ると、先程の兵とは違う装いの兵士が俺達を待っていた。
「おそいぞ!貴様ら!何の護衛隊だ!馬鹿者共がっ!!!」
いきなり理不尽な発言のオルタナに、兵達は何も言わずその場に膝を付き頭を下げる。
「大変申し訳ございません!このカステル一生の不覚!しかし!この後の事はお任せ下さい王よ!」
「ふん!連合国軍は既に出ておる!さっさと準備を済ませろ!」
「はっ!我等護衛隊いつでも出陣可能であります!」
「なんか、すげぇな?」
「ああ、おれ護衛隊揃うのなんて初めて見たぜ…」
ヒソヒソと話すオヤジとスネ夫。
宿舎内は出陣準備が完了しているみたいで、兵達の士気も上がっている、カステルとオルタナは作戦計画を厳密に練っているみたいなので、その間俺は、クラリスとビシャスさんを探す。
少し奥へ進むとカーテンで仕切られた部屋が幾つかあり、その一画に人の気配があった…
あ、いたいた!
「おーい、ビシャスさん…クラリスは大丈夫か?」
とクラリスが寝かされている簡易式のベッドへ近付く。
枕元の椅子に腰掛けるビシャスさんと、容態を看てくれている女兵士が俺に気付く。
「マガミ!そちらに顔を出さず、すまない。オルタナ様も無事だった様だな…クラリス様は怪我は無いがエナ切れの為しばらくは動けないであろう。」
「そのエナ切れってのが分からないんだが、そんなに辛いもんなのか?」
近くに居た女兵士が直ぐさま俺に答える…
「エナ切れとは、人によっては死に至るものです…常人を遥かに凌駕したクラリス様だから、この程度で済んでいるのであって、他の者ならどうなっていたか…エナ切れを甘く見ない方が良いですよ?」
「そういう事だマガミ。しかしクラリス様がエナを使い切る程の事態だ、ここでゆっくりしている訳にもいかない!」
そう言って作戦会議へと足を運ぶビシャスさん…
マジかよクラリス…エナ切れってそんなに危ないものだったのかよ。
俺は正直エナ切れで普通に動いてた奴を一人知ってるのを思い出して驚きだよ。
もうルビィを基本で考えるのを止めよう…
……
「マガミ、クラリスはどうだ!?」
「お、オルタナ様!」
「おう!とりあえず大丈夫みたいだ。んでどうする?もう出るのか?」
突然俺達の居るところに現れたオルタナに、女兵士は慌てているが気にしない…。
「マガミよ、魔族達はお前を魔眼使いと呼んでいたな…」
「ああ、俺は術の発動前からエナの色が見える、本物の魔眼ってのはよく分からないけどな…」
「なるほど…魔族達はマガミの持っている魔眼を勘違いしているのか…。」
「まぁ多分そうだろうな…んで、どう思うよ?これからあの軍艦沈めに行くんだろ?」
「あぁ、準備は整った!そして、すまぬがマガミよ危険だが付いてきてくれるか?」
「へっ!今更だな…王様。
最後まで付き合うぜ!それに俺が居ると向こうに不都合が起きるみたいだしな!」
魔族達は俺を、いや魔眼持ちを戦地へ出したくなかったみたいだしな…。
「む?マガミ貴様はなかなか頭が回るようだな…。」
「まぁな、偽物でもハッタリで多少なり有利なるだろ?」
「ふはは、そうかそうか!ではマガミよ、先程の黒い光線なのだが…何か策はあるか?」
「乱発してねぇとこを見ると、そうそう何回も撃てないって考えるべきだな…」
「その考えは余も思うところはあるな…なにせクラリス一人持って行かれたのだ、何度も撃たれては堪らんな…。」
確かに…あれはマズい。
次もいつ撃ってくるか分からないし、早めに決着を付けないとなんだよな。
「船は出るのか?さっきの1隻以外襲撃されたんだろ?」
「心配ない!護衛隊の艦を出す!」
「了解!んじゃ、ちゃっちゃとシグマ追っ払いに出掛けますか!」
女兵士にクラリスを任せ、オルタナと宿舎を、後にする。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うおっほぅ!やっぱり目の前で見るとデカいなー!」
港に付けた護衛隊の船には次々と兵士が乗り込んで行く…。
宿舎の中にざっと50人は居たけど、この船のデカさならもっと乗れそうだな…
「オルタナ、一応聞くけど海の上での闘いってどんな感じなんだ?」
パコンッ!
と後頭部を叩かれる。
「痛って!」
「おい!ガキ!いい加減口の利き方に気を付けろ!相手は王様だぞ!」
「まったくだ!マガミ!大変失礼をオルタナ様!」
ビシャスさんとオヤジが何故かオルタナに謝っている…。
「そう目くじらを立てんでも良い!マガミよ、気にするな、余と対等に話せる相手も久しいのでな。」
「だってよ?ほら叩いた事謝れよ!」
「ちっ、おれぁ納得いかねぇな!」
「ザンザス、マガミ、もう止めろ!オルタナ様、ここからは我が小隊はオルタナ様の指揮下に入ります!存分に命令を!」
「ビシャスよ!貴様等には期待しておる!しっかり励め!」
「「はっ!」」
まったく叩かれ損したぜ、さてそろそろ俺達も乗り込まないとな…。
……
船への架け橋の前でスネ夫と合流し、事の詳細をすり合わせながら、船へと歩みを進める…。
「んで、3人共カレンは結局見なかったんだよな?」
「ああ…ここには来ていないと思うぞ?」
「あんのチビ助は何してるんだよ!」
「どうせボンズが何かやらかしたんだろ?」
「うっ!否定はしねぇけどよ…。そうか、カレンが居れば戦力アップなんだけどな…」
船に乗り込みながらカレンの情報を集めるが、やはりここには来ていない様だ…。
無事……なんだよな?
アイツに限って大丈夫だと思うけど、姿が見えないと不安になるじゃねぇかよ!
…
そして船はゆっくりと動き出した。
遥か沖合に停泊している黒い3石の軍艦へ向けて帆を張る兵達。
オルタナは船全体に結界を張ったり、カステル隊長と話し込んだり忙しそうだ。
正直、先遣隊の船と合流するまで、ちょっとした船旅気分の俺は、海を眺めながら考え事をしていた。
…
まず、俺が何故殺人容疑で捕らえられていたか…
これは多分だが魔族絡みと考える。
先程、宿舎でベルン副長と一緒に居た兵達を探したが誰一人見つからなかった、今ここには殆どの護衛隊が集まって居るはずなのに、俺がベルンさん殺害容疑を掛けられてる事すら知らない人達ばかりだったのだ。
要するに護衛隊に内通者が数名居て、ベルンさんを殺した奴等が俺の動きを封じ込めようと適当な容疑を掛けた?
なんか変なんだよな?
そもそも何で俺の動きを封じる必要がある?都合が悪いならこんな回りくどい事をせず襲撃すれば良かったのに…
あの時、道具屋では確かに俺一人だけで無防備だった。
ベルンさんを殺す程の相手だ、素人の俺なんてすぐに殺せたはずだ…
俺を生かして戦線には出さない事…か…?
さっきの魔族達も俺は生かしておかなきゃって言ってたよな…
やっぱり俺が魔眼を持ってる…と勘違いしてる魔族やシグマが俺に容疑を被せ動きを封じた…
港での魔族達は、クラリスとオルタナの陽動作戦みたいな事も言ってたし…
だぁ!くそっ!訳分かんねえ!
頭をガシガシと掻きながら、今日の事件を纏めていくが今一つ決め手に欠ける…
そんな中…
「ボンズ!大変だ!来てくれ!」
とスネ夫が俺を呼んでいる、なんだか焦っている様にも見える…
「なんだ?まだ着かないだろ?」
「いや!そうじゃねぇんだ見て欲しいモンがあるんだよっ!」
見て欲しいモン?
何とも曖昧な言い草で俺を連れて行くスネ夫…船の船尾から右舷の甲板に出る。
わらわらと人だかりが海面を指さしながら何かを見ている様だ…
「んで?なんだよ?何を見せるって?」
「あ、ああ…確認なんだが…アレってどう思う?」
と海面を指さすスネ夫。
スネ夫の指さす方向へ視線を送る…。
「うっ!これっ……は!?」
俺の目に映ったソレは海面に漂う死体。
ただの死体ではなく真っ黒に焦がされた焼死体だった…ソレが幾つも沖合から流れて来ているように見える。
「マガミ!来たか!?」
「ビシャスさん!これってあの時と同じ…。」
「ああ…私もそう思っていた…。」
そう、カリキへ着く数日前。あの夜襲撃があった後に見つけた焼死体と同じように見える。
この世界では炎の術を使える者が限られている。
全ての術を網羅していると言われる三榮傑の1人、メルカイザー。
「まさか!メルカイザーって奴がやったのか…?」
「ふん、それは無いな!マガミ!」
「お、オルタナ様!」
俺とビシャスさんの後ろから、低く響く声で話し掛けるオルタナ。
「無いって?実際消し炭みたいに焼かれてるじゃねぇか?」
「この焼け方は術ではない…」
「は?んじゃ普通に火を点けられたって事か?」
「それも違うな…シグマめ!厄介な物を引っ張り出してきおったわ!」
「おい!勝手に話し進めるなよ!説明しろ説明!」
「ギャーギャー喚くな!この死体は魔力不足による焼死だ!」
ザワ…ザワ…
周りの兵達もオルタナの大声に気付いた様で、こちらに耳を傾ける…
なんだ?魔力?エナじゃなく魔力?
「何で魔力ってのが無くなると焼け死ぬんだ?」
「ボンズ!俺が後で説明してやるから、オルタナ様の話を聞こうぜ。」
「ん?ああ、まぁそんな空気だよな…。」
「ファルコとか言ったな!助かる、その馬鹿を黙らせておいてくれ!」
「はっ!有難きお言葉!命に代えてもボンズを黙らせましょう!」
「おい…それだと俺が亡き者にされる未来しか見えねぇよ。」
「うるせぇ黙ってろ!」
パコンッ!
「痛ぇっ!!」
頭を小突かれて、思わず声を出してしまう、そんな俺とスネ夫のやり取りを、煩わしく見ている兵達…
「んんっ!!話を続けるぞ!この焼け方は魔力枯渇による空気焼けだな…」
「オルタナ様!一言宜しいでしょうか!?」
カステル隊長がオルタナに手を挙げる
「どうした?カステル?」
「はっ!現在浮かんでいる死体ですが、これは北方地域の連合国軍の服装によく似ています故に…なので魔族とは思えないのですが?」
「カステルよ、いや、全員良く聞け!この死体の群れは、シグマに居る純血の魔人種が、眷属にした兵達である!」
「なっ!?王よ!しかし!そのような事が!」
「眷属継承権を持つ上位魔族なら可能よ…そして、そうやって増やした魔族達から魔力のみを集めクリスタルに蓄える術式…シグマは恐らくアレを持ってきているぞ!」
「まさかっ!!先の戦争で使用不能にしたはずでは!?」
おいおいなんか分からないけど、話が進んでるぞ…こりゃ後でゆっくり説明してもらわなきゃだな。
「ビシャス!貴様ら第三出身だったな!」
「「はっ!」」
「国境都市のミスマは行方不明者が多いと聞くが、流れて来てる者共に心当たりはないか?」
海面の死体をじっくり観察する3人…もし本当に連合国軍の兵だとしたら、無理矢理魔族にさせられ、魔力ってのを奪われ、そして海に捨てられたってことなのか?そんな酷い事を…
目を伏せながらビシャスさんが何かを感じとったみたいだ。
オヤジとスネ夫も海面の死体を見て、何か気付いた様な素振りを見せる…。
「オルタナ様…間違いなく、第三の者達です…。」
歯を食いしばりながら、重く言葉を口にするビシャスさん…
「やはりそうか…先程の黒い光線は圧縮された魔力。」
「では!本当にシグマはアレを!?」
「うむ。聖真水晶体だ。」
ザワ…ザワ…
「馬鹿な!」
「ロストアイテムをシグマが!?」
「同胞が魔族に…。」
「ネオクリスタルが本当に!?」
船上に混乱にも似た声が幾つも上がる…。
「落ち着け!我等の成すべき事を忘れるな!王が仰った通りだとすれば、これは好機!シグマから聖真水晶体を回収出来る好機なのだ!」
カステル隊長が場を静める…ザワついていた兵達も少しずつ落ち着きを取り戻していく
「カステルの言った通りだ!今から先遣隊と合流!その後シグマの船に乗り込み聖真水晶体の回収に入る!敵の戦力は未知数!だが!貴様達護衛隊の敵では無い!気を引き締めろ!」
「「オーーーー!!!!!!!」」
振動波にも似た声が船上に響き渡る、カステル隊長とオルタナにより、士気が爆発的に向上したこの船は臨戦態勢のまま先遣隊と合流する…
俺はその間、オルタナとビシャスさん達3人と事情の説明に入る事に…
……
「んで?魔力っての説明してくれないか?」
「だから!なんでボンズはそんな偉そうなんだよっ!」
「マガミ…もう少し礼儀をだな…。」
椅子にふんぞり返りながら、口を開く俺を注意するスネ夫とビシャスさん…
訳分かんない流れで臨戦態勢になっちまって、置いて行かれた気分だ…
「へいへい、で?魔力が無くなるとなんであんな風になるんだ?」
「仕方ない…余が説明するか。」
「忙しいとこ悪いな、オルタナ。」
「おい!ガキ!言った傍から!」
「よいザンザス。マガミ…コレは先の賢者達が解明した事柄なのだがな、この世には目には見えない力の源が空気中に漂っておるのだ。」
「空気中に?」
「我々亜人種は様々な力の源を吸収出来るが、純血種はそうはいかない…特に魔人種と海人種だな…」
「ほうほう…海人種ってのは初めて聞いたけど…まぁ続けてくれ。」
「魔人種は魔大陸にある魔素を吸収し魔力に変換する、これは我々がエナを体内に宿すことと同じだと思え。」
出たエナ、俺の一番分からないヤツだよ…。
「そして魔力切れを起こした際、魔族達は魔力を吸収しなければ身体が焼ける様に滅びていくのだ。」
「そしてさっきの焼死体の出来上がりって訳か?」
「概ね間違いでは無い…が!焼けるまで魔族達の魔力が切れるということは、まず有り得ないのだ」
「そうだろな…そんな頻繁に魔力切れなんて起こしてたら、魔族達は魔大陸から出られないって事になるもんな…。」
「しかし、現実に焼けるまで魔力を失った魔族達が海に捨てられている。」
「それが聖真水晶体の仕業って事か…。」
「相変わらず頭がキレるなマガミ…話が早い。そうだ、シグマは我が連合国軍の兵達を捕らえ魔族化し、魔力を絞り、そして海に捨てた。」
「許せんな!」
「シグマのクソ共が!」
「アイツらぶっ潰す!」
オルタナの話を聞いて3人が怒りを露わにする
「んじゃスネ夫も魔力切れたら焼けるのか?」
「おい…あんまり怖いこと言うなよボンズ!まぁ一応はそうだけど、一気に使い切らない限りは無くならねえよ?東聖大陸にも薄ら魔素は在るしな。」
「んじゃぁ、無理矢理魔族にされた兵達が生きてたら、まだ救えるんだな?」
「もちろんだぜボンズ!今から俺がするのはソレだよ!許せねえ、眷属ってのはそんなに簡単なもんじゃねえんだ!どこの何奴が…」
「ファルコよ…余はその事について1つ気掛かりがあってな…。」
「はい!なんでしょうか!?」
「シグマの持つネオクリスタルに溜め込める魔力の量の限度は分からんが、流れて来た死体の数、あれだけ眷属を増やせる者など限られてはこないか?」
「確かに…。いえ、でも王!純血種が数人いる可能性も考えられます!」
「そこなのだ数人いる。ならば良し!しかし数人で無かった場合…この戦、一筋縄では行かなくなるぞ…。」
「なぁ…。スネ夫ちょっといいか?」
「どうした?ボンズ!」
「眷属ってのは簡単じゃねぇって言ってたけど、そうなのか?」
「はぁ…。ボンズに一つ一つ説明してたら日が暮れちまうぜ。本当常識知らずだよな……」
「しゃーねーだろ!それに後で説明する、って言ってたじゃねぇかよ!」
「わーったよ!あのな、眷属ってのは簡単なもんじゃねえ、コレはさっきも言ったがな…。
まずそうだな、眷属ってのは、例外はあるけど、純血種の持つ力を分けてもらえる事が出来るんだ、だからといってポンポン増えても大元の魔力が無くなっちゃ話にならねぇ。
だから眷属になるには、力を分けてやりたいとか、この人の力になりたいとか、そういう信頼関係が必要なんだよ。」
「んじゃぁシグマのとこに居る純血種は何なんだ?」
「相当な力の持ち主、又は複数人ってのが俺の予想だけどな、にしちゃぁ流れてくる兵の数が多すぎだぜ…。」
「マガミ…あれは多分洗脳か、なにかの術だろうな…」
「せ、洗脳ですか?」
「おいオルタナとスネ夫。聞きたいんだけど、今の魔王って眷属何人くらい居るんだ?」
「お前ホント口が悪ぃな!えっと正当継承権持ちが50人くらいだっけな?継承権無しなら3万くらいじゃないか?」
「ふむ、余はもう少し多いと聞いていたが…。」
「では、オルタナ様の情報が正しいかと…なにぶん俺の頭は適当なもので…。」
「どっちもスケールデカいよ!なんだよ3万とか!スネ夫の話何の意味も無いわ!」
「いやマガミよ!フェンネルが異常なのだぞ?他の純血種だと増やせて100くらいだ。」
「んじゃ最悪純血種1人に対して100人の魔族がアレに乗ってるって事か…。」
「うむ。端的だがその通りだ」
俺は沖合の軍艦を見つめる、クラリスが喰らったあの黒い光線はまだ発射されていない。
もしかしたらさっきの一撃でクラリスもといオルタナがやられたと思っているのか…それとも他の理由があるのか…
「胸騒ぎがするのぅ…」
オルタナが呟いた言葉が俺達を不安にさせるが、船は着々と、シグマ軍艦を迎え打つ先遣隊へと向かって行った…。




