21話 東聖大陸イグザ連合国5王オルタナ
「ユウ……。」
「おおルビィ!久しぶり!」
「ユウ!」
「あれ?ネオン?いつから喋れるように?」
っておかしいな、こりゃ夢か?
「ルビィ、ネオン、俺まだ夢見てるみたいだから、なんかこう…目覚めの良いやつ頼むよ。」
「ふふふ、ではネオン水の術でも掛けてやればどうだ?」
「あはは、ルビィ良い考えだね、じゃぁ行くよ?」
……
……
バシャ!!!
「うわっぷ!!!冷てえ!!」
なんだ!?ホントに水掛けられたのか!?
「起きたか?出ろ!」
は?何言ってんだコイツ?
ルビィとネオンは?
って夢だよなぁ…
って?出るっていったいどこから……って!?え!?
いきなり水を掛けら、混乱状態の俺に言葉を投げかける兵士みたいな男。
理解の追いつかない俺は自身の状況を確認する。
手は後ろで縛られ首に鉄の輪の様な冷たい感触がある。
そして俺が目覚めた所は石造りの密閉された空間、目の前の兵士が格子の扉を開け、向こうから俺を見下ろす。
牢屋?なのか?
「ぐずぐずするな!出ろ!」
「ちょっ!なんだよ!?これ!?」
「さっさと出ろと言っているんだっ!!」
ガンッ!
「痛って!!」
額を鉄の棒で突かれる。
痛みと同時にタラリと生温かい液体が鼻の横を通り口から顎へ流れ落ちる。
「おいっ!ここはどこだっ!」
「貴様?バカなのか?」
ガンッ!
「痛って!」
続け様に頭部を殴る兵士、ガードしたくても手が後ろで縛られている為うずくまり頭を抱える様に丸くなる…
「もう一度言う!さっさと出ろ!」
「くっ……そ…。」
ズキズキと痛む頭、理解できない状況、暗がりの通路を兵士に連れられ歩く…
先ほどいた場所とは違う空間だ…
しかし、解放じゃない事はなんとなくで分かる…。
「入れ…」
そう言いながら、重苦しい木製の扉を開く兵士。
中の様子を覗おうと、少し立ち止まると即座に首輪に繋がった鎖を引き俺を部屋の中へ押し込む…
「グズグズするな!」
「ぐぇっ!」
たまらず体制を崩しながら部屋の中へ倒れ込む…
「ってぇな!」
と振り向いた時には扉は閉ざされ、澱んだ部屋の中の空気だけが俺を包む。
薄暗い石造りの部屋の中、ひんやりとした空気と嫌な臭い…扉の上部に開いている監視穴から漏れる光だけが、部屋を暗闇から救う。
「いよぉ…新入り。」
ビクッ!
いきなり光の届かないところから男の声が聞こえる…
「あ…。えっと。」
驚きのあまり、言葉が出てこない。
「聞こえたのか?」
「き、聞こえ、てる…。」
「ヘヘヘっ。そう固くなるなよ、俺ぁライデンってもんだ…宜しくな」
ズキンと頭が痛む…。
先ほど殴られたところか?くっそマジ痛ぇし。
「ユウ…だ。宜しくライデン、因みにだが、ここはどこだ?」
影から姿を見せるように俺の方へ近づいてくるライデン…
ボロボロの衣服に身を包み、薄暗い部屋でも分かる漆黒の髪を後ろに一括り、口の周りを髭で覆われたその姿は年齢不詳そのものだ…。
「……へっ、俺の姿が見えるかいユウ?」
「あぁ、薄暗いからハッキリとは見えないけどな…」
「……そうかい、んでここがどこかって?牢屋だよ、カリキ名物マナミ屋敷さ。」
「マナミ屋敷?牢屋?ここはカリキの街の中なのか?」
「おいおい、まさかとは思うが自分が何でこんなとこに居るのか分からねえって話じゃねぇだろうな?」
「えっと、そのまさかなんだが…ライデンは何でマナミ屋敷に居るんだ?」
キョトンとした顔で固まるライデン…
「へっ、へへっ、はははは!お前マジかよ!はははは!どこの田舎者かは知らねぇけど!ははははっ!」
急にスイッチが入ったように笑い出すライデン…
何だ!?なんか変なこと言ったか?
「はぁー、ひっさびさに笑ったぜ、そうか……。
なぁユウ…こんな昔話は聞いた事ねぇか?世界大戦の真っ只中に三榮傑と共に戦った兵士達の話だ…」
「悪ぃ、聞いた事ねぇ。」
「そう、その昔話……って、え?」
「俺こっちの人間じゃねぇから昔話とか分からねえんだよ…それより、現状がイマイチ理解出来てないことの方が俺にとっては重要なんだ。」
「ちょっ!ちょっと待て!ここはカリキ名物マナミ屋敷だぞ?収監、拷問、処刑、裁判、なんでも有りの犯罪者の墓場だ。」
え?何だって?今凄いこと言ってなかった?
「んじゃ何でそんな危ねえとこに俺が放り込まれてるんだよ……」
「そりゃ、こっちが聞きたいねー。何かしらのデカい罪を犯した記憶は無いのか?」
「人畜無害が売りの俺に何言ってるんだよ、ライデンこそ何で墓場なんて呼ばれてるところに居るんだ?」
またもや的外れな質問をしてしまった俺に、深いため息をひとつ…ライデンが口を開く。
「はぁぁぁぁ。どうやら、本気で言ってるみたいだな…。」
「最初から冗談なんて言ってねぇよ、俺は気付いたらここに居たんだ。」
「けっ、そのパターンかよ…ユウ、多分だがお前、嵌められたんだな…」
「は?俺が誰にだよ?」
「そんなの、俺は分からねえ!だけどな、自分の胸に手を当てて考えてみろよ?恨みとか買ったんじゃねぇのか?」
嵌められただって?
俺が誰かに恨みでも買ったか?
クラリス…
は大丈夫…いや、ルビィの件を未だ根に持ってるのか?
カレン…
は大丈夫…いや、ルビィの件もあるし、さっきのやり取りもそうだな…
ビシャスさん達…
は大丈夫…いや、親衛隊に入れられた事を未だ根に持ってるのか…
「…っい、おい!聞いてるのか!?」
「ん?あ、悪いライデン、ちっと考え事してたわ。」
「はぁ…こりゃ新しいタイプの新人さんだぜ、んで?心当たりはあったかい?ユウ。」
「んー。色々あるけどさ…」
「あるのかよっ!?」
「でもクラリスやカレンなら、いちいち嵌めるようなマネしないしなーって……」
ズザザッ!
俺が話している最中にライデンが物凄いリアクションで後ろに下がる、俗に言うドン引きってやつだ。
「ちょ!ユウ!今クラリスやカレンが…って言ったのか?」
「え?そうだけど、知り合いか?」
「一応念のために確認するが、連合国軍副長兼、特別隊司令のクラリスか?」
「ん、まぁそうだけど、アイツが副長ってマジなの??」
「ってぇと、もう一人のカレン…ってのは、特別隊の首斬りの事だよな?」
「そうそう、最近じゃすっかり忘れてたけど、アイツ首斬りとか呼ばれてるんだよなぁ…ってどうかしたのか?」
ライデンが影の方へ下がってしまい、姿が確認出来ない、かろうじて居場所くらいは分かるが……
「おい、ユウ、お前は何者だ!どうしてここに来た…。」
先程までの陽気な声と打って変わり、急に真剣な声色で俺を呼ぶライデン。
「だから、俺はこっちの人間じゃなくて、ここに来た理由も分からねえの!それに、今ライデンが言ったじゃねぇかよ、俺は嵌められたって…」
「冗談やめな、誰がクラリスの仲間を嵌めようってんだ、しかも首斬りも一緒に居る?馬鹿言うなよ、ユウが嵌められてここに来た?んな訳ねぇよな?そんな大層な奴等と一緒に居てよ!」
ん、まぁ確かにそうだよな…
「あぁ…まぁ、警戒させて悪かったわ、とにかく俺はアイツ達と離れて行動してた時…に…って、待てよ?」
「お?どうしたよ?」
「いや、そうだよなライデンの言うとおりだ、連合国軍副長のクラリスと一緒にカリキに来たんだ、それを知ってか知らないかで話は変わってくるよな!な?」
「お、おぉそりゃそうだ、現に俺が警戒しているのが答えだろが…」
そうだよ、仮にもクラリスは兵士の間では崇拝されていたし、街の入り口で俺とカレンとクラリスの3人が一緒に居るところは目撃されているはず……
「なぁ、ライデン!」
「なんだよ?」
「どうやったらここから出られるんだ?」
「…っ!………はっ!知らねえなぁ、処刑される日には出られるぜ?それに知ってるなら俺はここから出てるさ!そうだろ?」
「そうか?俺の予想ではライデンは出られないんじゃなくて、自ら出ないって思ってんだが?」
「……。そりゃぁ、どういう意味だ?」
相変わらず真剣な声色のままだが、どこか、たどたどしい口調で俺に話し掛けるライデン…
「いやな、俺自分の事いっぱいいっぱいでライデンが口にした話スルーしてたわ。
昔話、聞かせてくれよ?そしたら俺の言ってた意味も分かると思うぜ?」
「……ってめ!………ちっ!昔話聞いてどうすんだ!何が目的だ!?あぁん??」
何やら歯切れの悪い回答をするライデン…
さっきの会話を思い出すと、昔三榮傑と一緒に戦っていた兵士の話、俺の予想だと…
「ライデン…お前は昔三榮傑と一緒に戦ってた兵士の一人なのか?」
「……。」
「さっきまで、俺に何か自慢気に話そうとしてたのに、クラリスやカレンの名前が出た途端にだんまりかよ!?」
「けっ、苛つく新人だぜ…。
あぁそうだよ、「滅剣」って言えば通じるか?それが俺だ……」
ゆっくりこちらに近づいきながら口を開く…影から出てきたライデンは、どこか苛ついた表情だ…。
「聞いたことねぇ、とりあえずここから出る方法を教えてくれ!」
「そうだよな、さすがに「滅剣」のライデンを知らな……って知らねえのかよっ!?」
このやり取りも疲れてきたな……
ルビィみたくアッサリ納得しないもんかね?
そもそも「滅剣」ってなんぞや?
「そんなことは、どうでも良いから早く出られる方法だ!教えてくれよ!」
「どうでもっ!って!おい!」
ライデンは多分戦犯か何かで隔離されてるんだろうと思う…
元々コイツも特別隊に居たんじゃないのか?だとすると、実力は相当なはず、出られない訳ねぇよ。
そもそもカレンみたいのが外に居るのに、ここに収監されてるライデンは、いったいどれくらいの危険人物なんだよって話だ。
「はぁ…ホントお前と話してると、こっちが疲れて来るぜ…。」
額に手を当てながらため息をつくライデン…
「おぅ、よく言われる!んで脱出方法だ!教えてくれ、むしろライデンなら、こんなとこ簡単に抜け出せるんだろ?」
「おい、ユウ…お前は無実だって言ってんだよな?」
「あぁ、間違いない、身に覚えがねぇしな。」
「んじゃ、俺とここを出たら犯罪者として生きて行く事になるが良いのか?」
「え?なんで?」
唐突に俺を犯罪者にするライデンの発言に、普通に疑問しか浮かばない……
「ユウの言ったとおり、俺は元々特別隊の一人だ、三榮傑や魔王、もちろんクラリスやカレンとも面識あるぜ?」
「だからなんで、俺が犯罪者扱いになるんだよ!」
「ちょっと黙って俺の話を聞きな!
いいか、ユウ。お前がどれ程世間知らずか知らないが、この世界広しといえど「滅剣」の称号を持つライデンを知らないなんて考えられないぜ?」
はー、称号ねぇ…
「水聖」とか「闘女王」とか「首斬り」みたいなもんか?
「そんな俺がここから出る事は造作もない、そしてこれもユウが言ったとおり出られないんじゃない、訳あって出ないんだ。」
「ほう…まぁその訳とやらは、どうでも良いから俺を外に出してくれよ。」
「おっ…お前本当に凄えな…まぁ、話を端折って言うとだな…」
「おう。」
「ここを出るのに俺の力を使う。」
「おぉ!!」
「すると、由緒正しきマナミ屋敷は吹き飛ぶ。」
「へ?」
「そんな俺とここを出たお前も犯罪者ってことよ?分かる?」
え?秘密の抜け道とかじゃなくて、この建物自体吹き飛ばすって…何規格外な事言ってんだ?
「ちょ!全然分かんねえよ!俺はただ、こう屋敷の連中に口利きとかして穏便に出してもらえると思ったんだが!?」
「馬鹿言うなよ、そんなんで出られる訳ねぇだろが、さっきも言ったがここは有名な犯罪者の墓場だぜ?」
「んじゃなんでライデンはここに居るんだよ!」
「はぁ…また話が振り出しじゃねぇか…
あのな…?」
そうライデンが語り出そうとした時…廊下の方から物々しい音が聞こえてくる。
ガチャガチャっと部屋の扉の鍵が外される音がすると、重たく閉ざされた木の扉が音を立ててゆっくりと開かれる…
「おい、そこの…出ろ。」
「あ?俺の事かよ?」
なんだ?
牢屋から出ろって事は解放か?
いや、解放する人間を殴ったり、こんな部屋に入れたりしないよな…。
多分これから、色々聞かれるのか?
そもそもなんだ?この状況…意味分かんねえよ。
「よぉ!新入りはこれから拷問か?」
縁起でも無い事をサラッと兵士に聞くライデン…
「……。」
そんなライデンの言葉に微動だにせず、俺が部屋から出るのを待っている兵士の姿に少しだけ違和感を覚える…
「ちっ、相変わらず黙りかよ…つまんねぇなぁ。あ、ユウ!」
「なんだよ?」
「俺…もうしばらくは、この屋敷に居るからよ、もし無事に出られたらで良いから顔出してくれよ!」
「お前、俺が無事に出られると思ってんのかよ?」
「さぁな!でもよ、顔出してくれよな!約束だぜ!」
「いつまで訳の分からん事を話している!さっさと出ろっ!」
痺れを切らした様に俺をまくし立てる兵士…
「はいはいよ、んじゃライデン…えっと、無実証明出来たら、また顔出すわ。」
「はははっ!ホント前向きだな!気に入ったぜ、もし駄目でも俺が出してやんよ!」
「屋敷吹き飛ばすような奴の手は借りねぇよ…じゃぁな!」
そう言いながら部屋を出る。
重い扉が閉まる時…ライデンの眼光が少し鋭くなった気がするが、俺の見間違いだろう……。
……
「はぁ…疲れた。それにしても……ちっ…我ながら下手な演技だったぜ。
しかし、ありゃぁ別人だ…
あぁ…キョウさん…アンタの知ってる男は本当に……」
……
さぁてと、とりあえず状況だけでも確認しないと、話にならねぇ。
兵士に連れられ通路を歩き、階段を上がると、そこには別の兵士が2人俺を待っていた…。
「付いてこい…。」
と兵士の1人が前を歩きもう1人は後ろから付いて来る。
完全に囲みながらの移動…か。
俺はいったい何に巻き込まれたんだ?
確か、道具屋から出て何かにぶつかって…その後目の前が真っ暗…
痛ぅ!
くそ、頭が痛む、さっきの野郎覚えてろよ!
しばらく歩き、また階段を上がる。
階段を上がると先程とは違う空間に出る、まるで中世ヨーロッパの建物の中、城とか屋敷とか、大きな建物の中みたいだ。
そんな豪華な装飾の施された屋内を歩かされ、突き当たりに一際大きな扉がある…。
「罪人をお連れしました!」
と兵士の1人が扉の前で声を上げる。
「……。……。」
扉の向こうから人の声が聞こえたが、俺の位置からでは聴き取れなかった。
「くれぐれも馬鹿な真似はするなよ…」
と兵士の1人が俺にボソボソっと話し掛けたと同時に、目の前の大きな扉が開く…。
扉が開いた先には高級感溢れる空間が広がっていた、扉から真っ直ぐ敷かれた絨毯の先には石の台座が1つ、その横に護衛か従者か左右に1人ずつ立っている、そして煌びやかな台座の奥に丁寧な細工の施された一人掛けの椅子が一脚、そこに座る男。
明らかに他とは違うオーラを放っている、髪の毛が茶色なので若く見えない事も無いが、多分40代くらい…豪華な衣装を身に纏い上から俺を見下ろす眼光は鋭い。
「貴様か、罪人は?」
と腹に響く様な低い声で俺に話し掛ける男。
なんとなくだが、想像出来るぜ、この偉そうな男が誰なのか…。
早々に逢えたみたいだな…王様よ。
「俺は現状が理解出来てない!なんでここにいるのか分からない!説明してくれないか?」
「口を慎めっ!オルタナ・クードシャンス王の御前であるぞっ!」
へっ、大当たり。
やっぱりコイツがオルタナだったか…。
さて、ここからが問題だな、なんで俺が罪人としてこんなところに引っ張りだされたかだな。
「よい。その方、本日昼頃、殺しの罪を働き、我が国の兵によって捕らえられたと聞くが、間違い無いか?」
殺し!?そんな事件が起きてたのか!?
そもそも昼頃なんて、丁度道具屋に居た時間だよな?
「大間違いだせ!こう見えてウサギに殺されるくらいの普通以下人間なんでね、人を殺すなんてもっての他だ。」
「ほう?では貴様は無実を訴えるのか?」
「当たり前だ!分かったら早く解放しろ!それに、昼頃なら護衛隊副長にも道具屋で逢ってるぜ!」
「ふむ…?それは自供と取って良いのか?」
「あん?どういうことだよ!」
自供?何言ってんだ?
「では事件の詳細を再度説明致しましょう。」
ツカツカと黒い修道服を着た男が俺の前に現れ口を開く。
「えー、ではこれより事の顛末を完結にお話し致しますので、皆様ご静聴の程を宜しくお願い申し上げます。」
なーんか、嫌な予感がするんだが…
「本日昼頃カリキ東商業地区、道具のマヌマ前にて殺人事件が発生、被害者は護衛隊副長ベルン。」
なっ!に!?
「はぁ!?何言ってんだよ!そんな訳あるか!」
「道具屋にてベルン氏と一緒に居るところを主人や他の兵も確認しております、更に貴方の先程の言動により事実性も間違いないと。」
ちょっと待てよ?ベルンさんが死ん…だ?
そして、容疑者が俺?そんなバカな…。
「ベルンとは逢ったばかりだ!殺す理由なんて無いだろ!俺は旅をして、さっきここに着いたんだ!馬鹿も休み休み言え!」
チラッと俺の方を見ては、すぐに顔を背ける、まるで俺の発言に興味が無い態度だ。
「ベルン氏殺害に使われたであろう清石が貴方の衣服から発見されたました。もちろんこの清石は連合国では所持は禁じており、持っているだけでも罪です。幾ら旅の者とはいえ、危険な清石を我が街へ持ち込み、更に街の護衛をも手に掛けた……これにより貴方を殺人容疑で収監し、法によって裁かせて頂きます。」
「っざけんなよ!てめぇ!全部状況証拠じゃねぇか!そんなんで冤罪決め込まれて黙ってられっかよっ!」
ガンッ!
「ぐっ!」
背後から兵が俺を殴り付ける。
「お見苦しいところを失礼王よ。」
くそ!どうして俺が!こんなことに…。
「さて、言いたい事があるなら聞くが?」
ちくしょう…
ふっざけんなよ!弁明なら腐る程あるわ!
それより、殺人容疑もそうだが、ホントにベルンさんを殺した奴がこの街にいるって事を早く誰かに伝えなきゃ!
「ひとつ、聞いてくれるか?」
「ふむ、そのひとつで貴様の運命でも変わるのか?申してみよ。」
「クラリスを呼んでくれ…」
ザワザワと広間に驚きと緊張の声があがる…
「ほう?クラリスとは、あのクラリスの事か?」
「イグザ連合国軍副長、闘女王クラリスのことだよ!」
「ふははっ!面白いな貴様!生憎だが、クラリスはカリキを離れ南の封印の地へ行っておる、残念だが呼ぶのは難しいだろうな。」
「クラリスは俺と一緒にカリキに来た。
街にいるはずだ、探してくれ……いや、宿舎に寄るって言ってた…そこに行ってみてくれ。」
俺がそう答えると場の空気が変わる…
驚いた様に顔を見合わせる兵達、目の前のオルタナの表情も明らかに変わっていく…
「なに?クラリスが帰って来ているのか?
おい!その様な報告は聞いておらんぞっ!」
「はっ!此方にも報告は上がっておりません!」
オルタナと兵がクラリスの名前に反応してくれた、後はクラリスが来てくれりゃ一先ずなんとかなりそうか?
「その方、何故クラリスと共におったのだ?」
「訳あって南から、ここまで連れてきてもらったんだよ、それもアンタに逢うためだ。」
「……南…だと?」
「お待ち下さい王よ!罪人の妄言虚言の類かも知れません!」
「そうだと申すなら、さっさと街へと足を運び事実を確認せよ!!」
「はっ!し、失礼しましたぁ!」
オルタナの一喝により、進言した男は急いで広間から出て行く。
「お前達も下がれ。」
「いえ、しかし王よ。」
「下がれと言っているのが分からんかぁっ!!!!!」
「はっ!」
護衛や従者や兵も広間に居た全ての人が、俺とオルタナを残し駆け出して行ってしまった。
シーン…
と、いつの間にか広間は俺とオルタナの2人の空間になる。
「えっと?」
「少し聞きたい、しかし縄は一応付けたままで頼む。」
「まぁ、いいけど」
「クラリスが戻って来ているのは誠か!」
「ああ、本当だ。それに俺はクラリスと封印の地から旅をして来た。」
「な!なんだと!」
「ルビィからの手紙もある。まぁクラリスが持ってるけどな。」
驚いた顔で椅子から立ち上がり俺に近づいてくるオルタナ。
広間には誰も居ないが俺の耳元で小さく呟く…。
「ルビィと逢ったのか?」
「信じないかもしれないが半年間ルビィと生活していたんだ、そこで色々と教えてもらったぜ?」
つられてボソボソと小声で返す
「……ふむ。1つ確認も込めて聞かせてもらえるか?封印の地のどこで生活していた?」
「ログハウスみたいな木造の家だ、離れた場所には結界柱が4本。ついでに言うとルビィの料理は酷い。」
俺の言葉に少し沈黙した後オルタナは辺りを一度見渡してから口を開く。
「そうか…ネオンディアナにも逢ったのか…。」
「知ってるのか?」
「多分イグザ連合国内で知っているのは、余ともう1人くらいだな。」
「そっか、やっとルビィの言ってた信用出来る人間に逢えたぜ。」
「ほう、あの水聖が余を信用とな?」
「あぁ、数少ない信用出来る人物だとよ?あ、クラリスとカレンもそうだったか…」
「カレン?カレンとは首斬りカレンの事か?」
「あぁ、カレンも一緒に来たぞ?」
ピクッと反応したオルタナ
平然を装ってるが、指先がトントン遊び出す。
「そうか…首斬りも一緒か…。」
カレンは王様にも厄介者扱いされてるのか?
「んでオルタナさんよ、ベルンさんが死んだってのはマジかよ?」
「あぁ、先程商業地区で死体が見つかったと報告が上がっている…が何やら変な話になってきたようだな…。」
「時間は昼頃って言ってたよな…俺と別れてすぐか…。」
「そして、貴様が兵に連行され、ここに収容されたのだ。」
兵に連行だって?
「そいつは変だぜ、俺は道具屋を出た瞬間に意識を失ったんだ、で目覚めたらここだ。訳が分かんねぇよ。俺を連行した兵ってのに話を聞きたいぜ。」
「よかろう、何か話がおかしな方向へ流れ始めたな。安心しろ、貴様の身柄は余が預かろう。して貴様、名は何と申す。」
「真上悠だ。こんな形で自己紹介なんてしたくないけどな…。」
「事実確認が取れ次第解放しよう、形式上今はまだそのままで頼む。」
「ま、王様に頼まれちゃ仕方ねぇよな…。」
バン!!!
とオルタナの誤解も少し解けた様な気がしたその時、広間の扉が勢いよく開く…
「失礼致します!!!」
「騒々しいッ!!何事だ!」
全身に響き渡る声を俺の目の前で放つオルタナ…
「み、港に敵襲!!シグマ艦です!」
「なんだとっ!!!!」
バッ!
とその場に立ち上がるオルタナ。
「その他に何故か魔族が数名港を襲っています。」
「シグマと魔族だと!?バカな!あり得ん!敵の数、街の被害はどうなってる!?」
「敵は北の海より進軍中!軍艦3隻を視認しております!被害は港で応戦していた兵が魔族により50人ほど負傷。現在はクラリス副長が場を指揮しています!」
「クラリス?本当に来ていたのか……
よし!マガミよ!一先ず貴様の処置は保留だ、余に付いてこい!」
「は?え?」
「王よ!罪人と行動するなど危険です!」
と駆け付けた兵がオルタナに物申す…
「構わん、余がこの者にどうにかされるとでも思うか?」
「はっ!失礼を!」
「さて、マガミ少し付き合ってもらうぞ?」
「ちょっと待って?俺…ここ小一時間で色々あり過ぎて今結構混乱状態なんだが…。」
「移動しながら頭を冷やせ!時は待ってはくれないぞ!さぁ来い!」
腕の縄を、持っていた剣で斬り、俺を解放するオルタナ。
「おいそこの兵!マガミの首の錠を解け、準備が整い次第、貴様も一緒に来い!」
「はっ!かしこまりました!連合国軍第二部隊員レイモンド!王の護衛を仕ります!」
「では急げ!マガミ!レイモンド!」
そう言って広間から出て行くオルタナを追い掛ける兵士レイモンド、王様とは思えない程の行動力に、あっけにとられるが、なし崩しに俺もオルタナの後を追う。
なんだよ!?どうなってんだ?
殺人?魔族?シグマ?
観光なんてしてる場合じゃねぇよ!
とりあえずクラリス達と合流しねぇとな!
くっそ、少しはゆっくり出来ると思ったのに、カリキに着いて早々こんなトラブルかよ…
はぁー…なんかフラグ立てたっけなぁ…。
っと、ため息をひとつ。
港街カリキにて俺の想像を越える戦いが始まろうとしていた…。




