【クリスマス特別企画】番外編 しあわせのかたち
これは私の話…。
ちっぽけな私が…
大きな人達と出会い…
そして小さな私が…
小さな成長を遂げる…
小さな物語。
私の名前はネオンディアナ・キングスター。
お父さんは魔人の純血種、魔王と呼ばれている。
私はそんなお父さんの二番目の娘。
周りの純血種の人からは子女って呼ばれてる。
私にはお兄さんが一人いる。
凄く優しくて、強くて、でもたまーに意地悪で、でも私はお兄さんが大好き。
お父さんにはお嫁さんが沢山いるけど、お父さんの子供は私達2人だけ。
いつもお兄さんと2人でいっぱい遊んだ。
狩りをしたり、お料理したり、本を読んだり、お父さんにイタズラしたり、いつも一緒に遊んでくれた優しいお兄さん。
私の大好きな本を寝る前に読んでくれる。
私はその本の話が大好き。毎日、毎晩、お兄さんは読んでくれる。
『力を奪われた姫は、誰も近づけない地で独り寂しく過ごす。そこへ突如現れた勇者が姫の日常を変える。やがて2人はその地を離れ様々な冒険の末に結ばれる。』
私にもいつか勇者がやってきて日常を変えてくれるのかなぁ?
そんな事を考えながら、お兄さんの読んでくれる本に夢中になっていた。
本のように、いつも通りの日常はなかなか変わらない。
いつも同じだけど、私はそれも大好きだ。
この暮らしが大好きだ。
私がまだ小さかった頃から、お城には純血種の偉い人がやって来ていた、いっぱい来てた。
何人も連れて、お父さんと難しい話をしているみたいだ。
私は、お父さんの眷属の一人に連れられて、皆とお話しは出来なかったけど、お父さんは哀しそうな顔をしていたとおもう。
お父さんには眷属がいっぱいいる。
私も大きくなったら眷属を増やしてお父さんみたくなれたらいいなーっておもう。
お兄さんにその事を言ったら
「ネオンディアナにはまだまだ早いよ。」
と頭をポンと叩かれてしまった。
むうーっ。
お父さんも、お兄さんも私をいつも子供扱いするんだから。これでももう直ぐ8歳になるのに。
8歳というのは子供なのか、大人なのかまだまだ分からないけど、お兄さんはもう100年程生きてるらしい。
そんなお兄さんからしたら私は子供かも知れないけど、背だって伸びてきたし、足だって速くなってきたもん。
町の大人達だって私の事褒めてくれるし、立派な子女のはずだ。
魔人の年齢は眷属の継承権を得た時に急に長くなるらしい、私はまだ誰からも継承権を貰ってないから、普通の亜人種の子供とおんなじだ。
私が住む魔大陸にはいっぱいの種族が住んでいる。
竜人のカエラと海人のライナスと亜人のシャルル、まだまだ仲良しな同年代の子はいっぱいだ。
お兄さんが忙しく構ってくれないときはお城の外に出て町で皆と遊ぶ事が多い。
虫を追いかけたり、おままごとしたり、この前は破れたスカートを針と糸で直した。
私はこの生活が大好きだ。
でも今は戦争の最中らしく、嫌な話もいっぱい聞く。
町の誰かが死んじゃったとか、戦争に行って帰ってこないとか、私には戦争がどんなものか分からないけど、怖くて、嫌な感じがする。
戦争は私が産まれる前からずーっと続いてるみたいで、お父さんは戦争を終わらせるために色んなところへ行ってるみたいだ。
もし、お父さんが帰ってこないことがあったら私はどうすればいいのだろう。
そんなことを考えてたら急に悲しくなって泣いてしまった。
泣きながらお城に帰ったあと、お父さんが怒って町に行こうとしていたから慌てて止めた。
私の話を聞いてくれたお父さんは頭を撫でながら優しく微笑みながら私に言った
「ネオンディアナ。ネオンディアナにはお父さんだけじゃなくお兄さんも居るんだ、お城の皆も居る。お父さんが居なくても寂しくないよ?それにお父さんがネオンディアナを残して何処かに行くわけないだろ?」
その言葉を聞いて私は笑顔になる。
そうだ、寂しくないんだ。
私にはお父さんも、お兄さんも、お城の皆も居るんだ。
町には友達だっている。
私はみんな、みんな大好きだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから暫くの時が過ぎて私は15歳、今日は私の眷属継承権授与の為、お城で催し物がある。
催し物が開かれる会場はお城で一番大きな広間、着慣れないドレスを見に纏い、大広間の扉を開ける、そこに待つお父さんは普段着ることのない様な立派な服装で、私を迎えてくれる。
その横には、これまた普段着ることのない様な服装のお兄さん。
そんな2人を囲む様に眷属の人達が何人も大広間に並んで私を迎える。
一歩、また一歩、お父さんとお兄さんの待つところまで足を運ぶ、思わず2人の格好を見て笑ってしまう。
お父さんもお兄さんも同じように笑う。
家族3人並んで大広間の一番奥の玉座まで歩く、お父さんが先に玉座に座り、私とお兄さんはその前で跪く。
「えー…っん!んーっ!」
いつもと違うお父さん、お兄さんをチラッと見ると笑いを堪えてるようだ、私もつられて笑いそうになってしまう。
「では、これより我が娘ネオンディアナキングスターに眷属継承権を授与する。」
パチパチパチパチ
と大広間に集まってくれた、眷属の人から拍手が起こる。
「では、ネオンディアナここへ。」
「はい。」
スッと立ち上がりお父さんの前に立つ。
お父さんも私の前に立ち上がり、右腕を大きく振り上げる。
同じように私もお父さんと同じ右腕を大きく振り上げる。
(大丈夫だよ、ネオンディアナ、気持ちを落ち着かせて。)ボソッとお兄さんが横で呟く。
優しいお兄さん…ありがとう私は大丈夫。
眷属の人が大きな盃と剣を持ってくる。
腕を上げたままの私とお父さんに手の平を向ける。
フワッと身体の力が抜けていく感覚…
そんな私とお父さんの右腕を、持ってきた剣でお兄さんが切り落とす。
目の前の光景は衝撃的だが痛みは全く無い。
眷属の人が術で痛みを無くしてくれているのだ。
盃に切り落とされた2本の腕を入れ血が溜まるまで待つ、もう一人違う眷属の人が切り落とされた腕を元の切り口に付け結合する。ちょっと違和感があるが元通りだ。
お父さんが血の入った盃を一口…
そしてその後、私が同じように一口…
その瞬間身体の中に熱いモノが流れ込む感覚に思わず声をあげる。
「あっ!あぁぁぁぁっ!!!!」
一瞬身体全体が光りに包まれたが、すぐに私の身体はいつもの様に戻った気がする。
そんな私を見て眷属の人が口を開く…
「これにて眷属継承権授与が完了致しました。皆様もう一度盛大な拍手を!」
ワーッと歓声が上がり拍手が巻き起こる
こうして私は15歳に眷属継承権を授与されたのだった。
「ねぇ、なんでわざわざ腕を切り落としたの?」
私はちょっとした疑問をお父さんとお兄さんに問いかけた。
「うーん。まぁ、アレだよ実際の意味は無いんだけど、昔からの、しきたりみたいなものだ。」
お父さんが説明してくれるけどよく分からない…。
「えっとなネオンディアナ、眷属っていうのは、自分の力を分け与える存在なんだ、お父さんは魔王だから、その眷属が増えるのは凄い事なんだよ。だから、形だけでもああいう催し物をしないといけないんだ。」
お兄さんは頭が良い、適当なお父さんと違い分かりやすく説明してくれる。
「お父さん、お兄さん、ありがとう、分かったよ。これで私も立派な魔王の眷属になったんだよね?」
「はっはっは。そうだぞ?ネオンディアナ、お父さんとお兄さんに何かあったら眷属第2位のネオンディアナが魔王になるんだからな!」
笑いながら私の頭をクシャッと撫でるお父さん。
むぅー!せっかく催し物の為に綺麗にしたのに崩れてしまった。
「お父さんとお兄さんはずっと一緒だから、私が魔王になる日は来ないもん!」
「そうだねネオンディアナ、それが1番幸せだよ」
お兄さんが優しい目で私を見る。
私はその顔がその眼が大好きだ。
「という訳で、すまんな皆。またお前達の眷属位が下がってしまったな…。」
と、お父さんは近くにいた眷属の人達に声をかけた。
そうか、今まで順位が上だった人達の間に、私が勝手に割り込んでしまったのか…
「あの!ごめんなさい!」
なんて言ったら良いか分からず咄嗟に謝ってしまう私を見ていた眷属の人達が口を開く…
「おお、勿体なきお言葉。お顔をお上げ下さいネオンディアナ様!」
「ネオンディアナ様、顔を上げて下さい、我ら魔王様の眷属になれただけでも身に余る光栄なのですから!」
「そうですぞ!未来の魔王様が我らに頭を下げるなど、お止め下さい!」
口々に私を気遣ってくれる皆。
そんな優しさが私は嬉しい。
「ネオンディアナ、難しく考えることは無いんだよ、僕もお父さんもまだまだまだまだまーだまだ死んだりしない、ネオンディアナが魔王になるなんて、ここにいる誰も想像出来ないよ。」
と笑いながら私に言ってくるお兄さん。
それを聞いて皆の顔に笑みがこぼれる。
あぁ…やっぱり私は幸せだ。
こんなに優しい家族と暖かい皆に囲まれて、私は幸せだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
私が眷属位を授与してから様々な変化があった。
街に遊びに出掛けると、皆が頭を下げたり手を振ってくれたり、なんか恥ずかしいな。
どうやらこの大陸では眷属位っていうのは凄い事らしく、私は偉い人になってしまったらしい…。
おかげでいつも一緒に遊んでた友達とは、なかなか遊べなくなってしまい、街に出ても退屈になってきた。
「あーあ。眷属位授与なんてしなきゃ良かったなー。」
なんて独り言をいいながら道端の石を蹴飛ばす。
コロコロ転がっていった石の先に見覚えのある顔が2人。
私は思わずその2人の元へ駆け寄る。
「ライナス、シャルル、久しぶりだね。」
「ネ、ネオンディアナっ!?」
幼なじみの2人だ。
シャルルが驚いたように口を開く、久しぶりに会った友達に私の沈んだ気持も少し浮かばれてきた。
ライナスとシャルルは辺りをキョロキョロと確認して、少し奥張ったところへ私を連れ込んだ。
「ネオンディアナ…様…。お久しぶりです。」
「ちょっとー!やめてよライナス、私達友達でしょ?あれ?今日はカエラは?どこか行ってるの?」
堅苦しい言葉を私にかけるライナス。いつも一緒に遊んでた3人の内1人カエラの姿が見えない…。
「ネオンディアナ…カエラは竜人の部隊へ徴兵したよ。俺も、もうすぐ東聖大陸の戦地へ行く」
「え?」
「ネオンディアナ…私達は貴方と違って一般人なの。この先普通に年を取るし15歳はもう大人なのよ?戦争へ行くのは仕方ないの。」
「シャルル?」
2人とも私と同じ15歳なのに…戦争…?
「ネオンディアナ…もう昔の様に遊べないの。分かって?本来ならこうやって話していることすら出来ないのよ。」
「なんで!?、嫌だよシャルル!皆が戦争なんて行く必要ないよ!」
咄嗟に大声を上げてしまう。
嫌だ!友達が戦争なんて、そんなの嫌だ!
「ネオンディアナ…俺たちが昔遊んでた頃から戦争は続いてるんだ、大人達が子供達に心配かけないようにこの大陸を守ってくれていたから安心して遊んでいられたんだ。」
「でも、ライナス…。」
「そうやって守られてきた俺は、今度は守る側に立つ、ただそれだけだよ。」
「でもっ、ライナスやシャルルが行かなきゃいけない事はないよ!私がお父さんに戦争なんて止めるように言ってくる!」
「ネオンディアナッ!」
シャルルが私に大声を上げる。
思わずビクッとしてしまう。
「ごめんなさい大声上げて…。でもね、いつか戦争が終わると信じて戦って死んでいった人達の為にも、そういう事はあまり言わないでほしいの…。」
「シャルル…」
「貴方と過ごした日々は一生忘れないわ…私達はこれからこの街や国、大陸の為に戦争へ行くけど、いつまでも友達よ。それだけは忘れないで。」
「シャルル、そろそろ誰か来てしまう。こんなところ見られたら…。」
スッと私の手を取り優しく包むように両手で握るシャルル…懐かしい感じ。
昔は皆で手を繋いで色んな事したのに、その繋いだ手もいつからこんなに違うものになってしまったのだろう。
「じゃぁ私達そろそろ行くわね、ネオンディアナ…貴方とまた話が出来て私嬉しかったわ…。」
涙を浮かべながら私の手を振りほどき、去っていく2人。
私は幸せだ…
そうだったはずだ。
でも…今の幸せは誰かの犠牲の上にあった。
これからも誰かの犠牲の上で、私は過ごしていくのだろうか…。
私は自分の無力を思い知らされた。
そんな私は、その日から街へ出掛けることが少なくなっていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから幾月過ぎたある日の事。
この日の事は今でも忘れない。
私にとって忘れられない日。
いつもの様に部屋から街を見下ろしながら本を読んでいた、街には滅多に行かなくなったけど、お城の中では毎日の様にウロウロしている。
書庫から本を自室に持ち込み、読み終わったらまた書庫へ…そんな日々を繰り返していた。
「あーあ。面白い本も無くなってきたなー。」
と腕を大きく伸ばして固くなった身体をストレッチ。
今日はお城の中がバタバタと慌ただしい気がするけど何かあったのかな?
バン!
っという音と共に部屋の扉が開かれる。
「わっ!」
思わず驚いて声をあげる
「ネオンディアナ様!緊急時につき無礼を…」
と眷属の人が肩で息をしながら部屋にやってきた、ただ事じゃないのは見れば分かる、なんだか嫌な予感がする。
「説明は移動しながら…いえ、まずは広間へお連れ致します。此方へ…」
「うん。今行くね、ちょっと待ってて。」
……
眷属の人と一緒に広間へ行く。
広間の扉を開けた時、私は目を丸くした、そこには私の見たこと無い光景が広がっていた。
物々しく武装した人達が何人も居て、眷属位の高い上位魔族の人達と何やら話し込んでいるみたいだ。
お兄さんは一角で皆の指揮を取っている、お父さんは玉座で眷属の人達と険しい顔で話をしている。
私はお兄さんに顔を出した後、すぐにお父さんのところへ駆け寄った。
「お父さん!いったい何があったの?」
「おお、ネオンディアナ。少し厄介な事があってな、国の北側の侵入者と小競り合いというか、なんというか。」
小競り合い?魔大陸で?戦争…なの。
そんな中広間の扉が開き、ボロボロの格好の兵士さんがやってきて声をあげる。
「報告します!前線部隊壊滅、指揮官グレイ様も意識不明!中央突破も時間の問題かと思われます!何卒!指示を!」
「馬鹿な!グレイは眷属位6位の上位魔族だぞ!?先遣隊が負傷によりこちらが送った兵は合わせ4万の軍勢だ!相手の軍勢はそんなに多いのか!」
兵士さんの報告にお兄さんが驚いたように問い返す。
「はっ!私も実際目にした訳ではないのですが…その…監視の報告によると、敵は…敵は!さっ!3人です!」
「3人?だと?」
広間が騒がしくなる。
「ふざけるなっ!たった3人に4万の兵が負けるはずが無い!」
「たった3人ならば前線部隊すら突破出来るはずがない!」
「たった3人に何が出来るというのだ!いったい何がどうなってる!」
広間は混乱する。
たった3人が魔大陸最高の軍を突破して、そしてお父さんの居るこの城へ向かっていること。
いったい何者なんだろう。
戦場にはライナスやシャルルも居るのだろうか?
私は怖くてお父さんの裾を掴みながら震えていた。
「ほっ報告しますっ!!」
混乱の広間にまた違う兵士さんがやってきた。
「敵は、水聖!獣神!竜王の3名です!」
広間に静寂が訪れた。
誰も言葉を発さない。
いや発する事が出来ない。
私にだってわかる、どれほど危機的な状況なのか。
「中央と東聖が手を組んだ…ということなのか?」
「ありえん!」
「しかし獣神は魔大陸不可侵条約が!」
「馬鹿な!有り得ないぞ!何故今になって!」
眷属の人達がそれぞれに口を開く、静寂は消え去りまたもや広間は混乱の渦に巻き込まれる。
頭を抱える人や、今すぐに戦場へ出ようとする人、皆が皆どうすれば良いのか分からないみたいだ、そんな混乱を止めたのは、やっぱりお父さんだ。
「しずまれぇぇぇぇぇ!!!!!!」
キーンと耳鳴りがする。
思わず手で耳を塞いでしまうくらいの大声で広間の皆を我に返す。
「ふたつ確認しよう。」
指を2本立てて報告に来た兵士さん2人に問いかける。
「ひとつ、本当に3名か?」
「は、はい!間違いなく!辺りの海域まで調べましたが伏兵は確認出来ませんでした!」
「ふむ。では、ふたつ、死傷者はいるか?」
「事細かくは分かりませんが、負傷者はおよそ2万、幸いにも死者は0です!」
よかった。
誰も死んでない…こんな状況なのに私はホッと胸を撫で下ろす。
「なるほどな…。」
顎に手を当てながら何かを考えているお父さん。
広間の人達はそんなお父さんに視線を集中させる。
「3人をここへ通せ。今から一切の交戦を禁ずる。」
「なっ!何を仰るのですか!それではこのまま国が!いえ!大陸が滅ぼされますぞ!王よ!反撃命令を!」
眷属の1人がお父さんに詰め寄る、確かにこのままだと皆死んじゃうかもしれない、私も3人を追い返す方が良いと思う。
広間の人達も大きく声は出さないが、殆どの人が同じ考えだ。お父さんは一言告げた後は黙り込んでしまう。
そんな広間の空気を変えたのは男が放った一言だった。
「さすが魔王!話分かるじゃん!」
その声のする方に皆一斉に振り返る。
広間の入り口に3人の影。
その3人。
この世界に生きている者なら誰もが知っている。
身の丈3メートルはあろう巨体。
黒髪、青眼、人より裂けた口からはみ出る牙。
全身を朱の短毛で覆い、武器を持たないその豪腕は歴戦の傷を隠すこと無く胸の辺りでしっかり組まれている。
獣人種純血種、東聖大陸の破壊の神と呼ばれた男。
獣神アイザック。
目を奪われる程の美しい桃色混じりの金髪
鋭い金眼、帯刀されている剣に添えられた綺麗な指。
中央大陸、東聖大陸、魔大陸、世界最強の剣士、亜人種人族、中東魔の恐怖と呼ばれた女。
水聖ルビィ。
黒いフードを頭から足まで被り、隙間から覗かせる白い肌、緑色の長い髪の毛、一目で心を奪われる様な容姿。
トローンとした赤い瞳、高い鼻、プルンと潤った唇。
この世の全ての術を司る、竜人種純血種中央大陸最強の女術士。
竜王メルカイザー。
「貴様ら!いつ城内に!」
と困惑する広間、口火を切った眷属の1人が水聖ルビィに斬りかかる。
「…。」
水聖ルビィは何事も無いようにお父さんの居る此方を見つめながら、振り上げられた剣を躱すこと無く真正面から受ける。
ガィン!
っと音を立てて剣は天井に突き刺さる。
何が起こったのか、斬りかかった人も、広間の人達も理解出来ない。
「な!?これでもくらえぇぇぇ!」
遠くに居た眷属の人が、3人に向かって風玉を放つ、咄嗟にその風玉の進行方向に居る人達が離れる。
3人は動かない。
このまま風玉が当たれば風に巻き込まれて大怪我は勿論、下手したら命も危ない。
なのに避けない。
ただこっちをずっと見据えている。
「あら?貴方左利きなのね?」
竜王メルカイザーは、そう言って黒いフードから生えて出た様な細く白い腕で風玉に触れた。
広間全体に柔らかい風が吹いたかと思うと、眷属の人が放った風玉は消えて無くなっていた。
「馬鹿な!何の干渉も無く術を消したのか!?」
「んふふ。違うわよ、貴方の風玉は左回りだったから、同じ威力で右回りの風玉をぶつけて相殺しただけよ。」
丁寧に説明してくれる竜王メルカイザー。
だけど、とんでもない事を言っている、放ったばかりの風ならまだしも、距離を稼いだ風玉は辺りを巻き込む真空の刃だ、それを至近距離で、同じ威力をぶつけた。
それがどのくらいの戦力差なのかくらい、術を囓った私でもわかる。
正直規格外だとしか言えない。
「とりあえずさー、話したいから、攻撃止めてくれっと助かるんだけどなーおれ。」
と組んでいた手を上げ、大きな声でそう言う獣神アイザック。
戦闘意思は無いと言わんばかりで大手を上げている。
それに同調するかの様に、水聖ルビィと竜王メルカイザーも両手を高々と上げる。
「話を聞こう。皆武装解除だ!良いですね?お父さん。」
そんな3人の姿にお兄さんが口を開く。
渋々と剣を収める剣士の人達。
手を後ろに組む術士の人達。
勿論私も手を後ろに組んでお父さんと2人玉座で、3人を見つめる。
「あら?可愛いお姫様。ありがとう、少しお父さんとお話させてもらうわね。」
と私に竜王メルカイザーが話しかける。
「言っておくけど、お父さんや皆に何かしたら許さないから!」
何故だか好戦的な返答をしてしまった。
「ははっ。嫌われたな!メル!」
「ふふ残念ねぇ。では魔王様、少しばかりお時間をよろしいですか?」
「いや、こちらからまず非礼を詫びよう。わざわざ足を運んで頂いたのに、対応がなっていなかった。」
と深々と頭をさげる。
そんなお父さんの反応に広間の眷属達が声を上げる。
「魔王様!何を言っておられるのです!」
「一王が頭を下げるなど!」
「魔王様!」
ガヤガヤと広間全体はまたしても混乱の渦だ。
「よい皆。この3人に敵意は無い。むしろ、話をしに来ただけなのに我等が過剰に反応してしまっただけだ。改めて謝罪を、そして死者を出さずしてくれたことに感謝を…」
「な!言ったろルビィ?魔王さんなら話分かってくれんだって!」
「アイザック、少し黙ってろ。メル、話の続きだ。」
「んふふ。では魔王様、お話をさせていただきますわね。」
どうなってるの?
お父さんは納得してるみたいだけど、結局3人は話に来ただけなの?
「魔王様…単刀直入に言わせていただきます。私達3人と共に世界大戦を終わらせる為、手を汚していただきたい。」
「…!?」
思わずお父さんの方を見る私。
いや、私だけじゃない、広間の皆がお父さんと3人を見ている。世界大戦を、終わらせる?出来るの?
「あの、それ本当に出来るの?」
思わず声に出る私に3人は答える。
「あったり前ぇよ!そうじゃなきゃ、おれはこんな奴らと連んで魔大陸まで来ねぇよ!」
「私も同意だな。世界大戦終結。それ以外お前ら2人とは行動を共にする理由が無い」
「んふふ。2人ともこう言ってますけどねぇ、結構仲良しなんですよ?」
「メル!余計な事言ってんじゃねぇ!」
「メル!余計な事言ってると斬るぞ!」
「ね?仲良しでしょぅ?」
3人共本当に戦争を終わらせる為に…
世界中で有名なこの人達は、私が思ってるよりも優しい人達なのかもしれない。
戦争を終わらせる。
その一言は私の中のなにかを動かした。
もちろん私だけじゃないはずだ、広間の皆や、国の皆、大陸全ての亜人種達が戦争を終わらせて欲しいと願ってる。
「世界大戦終結か…となると中央と東聖には血が流れるが、良いのだな?」
「魔王さんよぉ、血が流れるのが嫌で各国に攻め込まない平和主義ってのは、おれは嫌いじゃねぇよ。けどな、その事が大戦を終わらせない理由になるなら。おれは血を流してでも大戦を終わらせようって考えちまうね。」
「んふふ。私も血が流れるのは嫌だけど、戦争が終わらないのは、もっと嫌なの。」
「私は私の剣が戦争を終わらせられるのなら、その為に振るうだけだ。」
広間全体が静かに3人の話に耳を傾ける。
「だからよぉ!差別云々で戦争するくらいなら、差別の無いこの大陸みたいに世界を変えちまおうぜ!」
「んふふ。アイザックの言うことは端的ですが分かりやすくて好きですよ?」
「けっ!メルに言われると素直に喜べねぇな!」
「差別派を斬れば共和派が残る。簡単な話だ。」
「んふふ。ルビィは少し好戦的なので、もう少し考えて下さいね?」
「ってことだ!魔王さん!事が上手く行っても、おれ達ぁ大量殺戮者として名前を残す事になる。それでも世界大戦終結したいってんなら、おれ達と来ねえか!?」
お父さんが人殺しになる…
歴史に名前を残す大量殺戮者として…
そんな事しなきゃこの戦争は終わらないの?
嫌だよ…嫌だけど…だけど
「分かった。世界大戦終結、その目的の為に私も力を貸そう。いや、私もお前達と共に戦わせてくれ。」
そう言いながら3人の元へ歩み寄り手を差し伸べるお父さん。
パチパチと拍手がどこからか聞こえる。
その拍手に反応したかの様にどこからか
ウォー-!!!と歓声が上がる。
静けさから一変して、広間の魔族達は声を上げ4人の同盟を祝福した。
何故だか分からないけど、私は泣いた。
大戦が終わるかもしれない喜びなのか。
お父さんが大量殺戮者となってしまう悲しみなのか。
分からないが涙がこぼれ落ちた。
この4人の同盟から約3年後。
世界大戦は終結を迎える。
早いもので後1週間で今年も終わりです。
特別企画は今後も適当に入れて行きますので、お楽しみに。
皆様良いクリスマスを…




