20話 新天地 港町カリキ
俺の名前は真上悠ある日夜中に目が覚め、買い物に出た帰りに、突如異世界へ飛ばされた。
俺はそこで勇者ルビィと魔王の娘ネオンの2人に出会う。
半年間一緒に生活し世界の事を色々学んだ。元の世界へ帰るための手掛かりを求めるべくルビィとネオンに別れを告げ、砂漠の旅に出た、目指すは北西の街カリキ…。
俺の引率として、ルビィの部下でもある連合国軍副長クラリスと共に旅をする。
道中、連合国軍の問題児カレンと、連合国軍第三部隊小隊長ビシャス、筋肉オヤジことザンザス、茶髪スネ夫ことファルコが旅に加わり、いよいよカリキへの旅も終わりを告げる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
くそっ!どうして俺が!こんなことに…
広い部屋に豪華な装飾、中央には豪勢な椅子が1脚、その横には護衛とも思える人が左右に一人ずつ立って俺を見ている。
そして、その豪勢な椅子に腰掛ける王が俺に問いかける…
「さて、何か言いたい事があるなら聞くが?」
身体全体に響くような低い声で、俺に問いかける人物…
イグザ連合国5王の一人。
オルタナ・クードシャンス
俺は手を後ろで縛られ、首には鉄製の首輪まるで囚人の様な扱いで、オルタナの前で跪きながら、その姿を見上げてる…。
ちくしょう…
遡ること…四時間前。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「見えてきたな…。ふふっ…久しぶりのカリキだ。」
「わー!なんかまた変わってる-!」
「おお!アレがカリキか…。」
封印の地を離れて早くも22日、ようやく俺は目的地の1つカリキに到着する。
なんか色々あったな…特に後半。
砂漠の結界だろ?
マルティア城跡だろ?
ビシャスさん達とカレン…
その後、変な魔族の襲撃っ…
マルティア城跡に寄ってから色々有り過ぎだろ…
風が吹くとほんのり磯の香りがする。
地平線の一部から海が見える、港町だ…
街の入り口から人の出入りが見られるな、こっちに向かって来る人達はいないけど、色んな所へ物資の運搬業者が出て行ってるんだろう。
……
「とーちゃーくっ!」
と、入り口に着いた途端にカレンが荷台から飛び降りる。
「ちょっ!ズルいぞカレン!俺も!」
と慌ててカレンを追い掛ける。
まるでテーマパークに来た子供のようなワクワク感で胸がいっぱいだ。
「おい!2人とも!分かっているな?」
と保護者クラリス隊長様が俺達2人に注意を呼び掛ける…。
「わかってるよー!」
「大丈夫!大丈夫!とりあえず観光してくるから、どこかで待ち合わせるか?」
「あぁ、港の軍の宿舎で落ち合おう、あまり遅くなるなよ!」
「りょーかーい!」
「了解!いくぞ!カレン!」
「はいはーい!んじゃねクラちゃん!」
「まったく…」
……
ひゃほー!
さすが差別無しの共存地帯だ、色んな人種が居るなぁ、いやぁやっぱり異世界はこうじゃなくちゃ!ここまで来るのに苦労したぜ…。
道行くすれ違う人の姿格好に気持ちが昂ぶる。
元の世界のアニメや漫画で見たことある様な人種がたくさん居る。
母体というか、ベースは人型の二足歩行なんだけど、爬虫類みたいな顔の人や、犬猫みたいな顔の人、見た目は人間なのに頭に角が生えてたり、もうね!
テンションだだ上がりだべさ!
「ユウちゃん!これ食べよ?おいしいんだよ?」
と屋台の様な店の前でカレンが立ち止まり俺の裾を引っ張る。
「おっ!いいねぇ!観光なら食に触れなきゃだな!すいませーん!お願いしまーす!」
店員を呼ぶと奥の方から巨大な影が出てきた…
「いらっしゃいませ!ようこそ当店へ!カリキ1番の串焼きは如何でしょうか!?おや?可愛らしい彼女さんですねー?彼氏さんと観光ですかー?」
「うぉおお!?」
あまりの風貌に声を上げる。
身長2メートルくらいの大男は白いエプロン姿で顔がサイだ!しっかり鼻の上に角が生えてる。
なんか獣人のイメージは肉食って感じだったけど、サイは予想外の方向だな…
「これ!ちょーだい!」
と串焼きみたいな物を指さしているカレン
「ありがとうこざいます!袋に入れますか?そのまま持って行きますか?」
「お、おう、面の割に良い接客するじゃねぇかよ。」
「ははは、お兄さん。面白いですね?人の顔をとやかく言っては駄目ですよ?それにお兄さんも、悪そうな目つきですよ?」
「余計なお世話だよ!」
「ねぇ!はやく!はやく!」
と俺の裾から腕を掴みぶんぶん振っている…。
「女の子を焦らすなんて、罪な男ですねぇ。彼氏さんも食べますか?」
「なんか変な誤解があるが、まぁいいや俺も貰うよ。」
「ありがとうこざいます!では2本で鉄銭4枚です。」
え?鉄銭4枚って、お金?だよな…持ってない。
というか、今の今まで金銭感覚無かった!
マズい、一文無しだぜ俺、どうする?
「カレン!幾ら持ってる?とりあえず財布出せよ!」
「おやおや彼氏さん、なかなかの外道っぷりですね。」
「違ぇよ!俺は今まで金を支払う概念ってのが無かったんだよ!」
「おお、素晴らしいくらいのクズ発言ですね、こんな小さな少女にたかるとは…。」
「いいよーカレンが買ってあげるー。はいおじさん、4枚ね。」
「はい、丁度頂きます。ありがとうごさいます!あ、お嬢ちゃん?彼氏は選んだ方が良いですよ?」
「ありがと、おじさん。ユウはこう見えて優しいから大丈夫だよ?」
「そうかい?いつか後悔するんじゃないよ。」
泥沼にハマってるよ…。
って顔で見てる店の店主、まるで俺が悪い大人みたいじゃないか。
完全な誤解だけどな!
ヒモ野郎と化した俺は、カレンと近くにあったベンチに腰掛け串を頬張る。
「美味しいね!」
「むぉう!これは…なかなか。んむ、んまいな!」
焼きたてってのもあって肉汁が堪らんな!
塩胡椒の塩梅も良いし、肉質も申し分ない、何より焼き加減が絶妙だぜ、レア過ぎず、しかし肉の良い意味での臭さを残したミディアムレア、職人技が出てるねぇ…。
「あー、のどかわいた!ユウちゃん!なに飲みたい?」
「ここはビール!と行きたいところだが、発泡酒なんて無いだろうな。」
「びーる?」
「えっとな、シュワシュワってしてて、苦いんたけど、喉越しが最高なんだよ!」
「麦酒のこと?」
「うぇ!?あるのか!飲みたい!是非とも異世界の地ビールを飲みたい!」
トコトコと、近くの屋台へ向かい、木造のコップを、恐る恐る手に持って帰って来るカレン
「おまたー!」
「ありがと-!カレン!愛してるぜ!」
「えへへ。愛されちゃった。」
周りの人達が、クズを見るような目で俺を見ているが…気にしない。
「では!乾杯!」
「かんぱい!」
……んぐんぐ…。
「っぱぁーっ!!!うめぇ!」
「やっぱ串焼きには麦酒だよね!」
「ってカレン!お前酒飲んで大丈夫なのか!?」
「飲むよー、ブドウ酒は好きくないけど、麦酒は美味しいよねー?」
「さすが年上だな…」
見た目は子供、中身は大人…どっかの名探偵みたいだな。
カレンは中身も子供みたいだけど…
「あ、ちょっとコレ持っててー」
「あいよ。」
と麦酒と串焼きを渡されたので、俺の麦酒をベンチに置いて、受け取る…
カレンは何かゴソゴソと探し物をしている…
「あった!」
「お!?なんだソレ綺麗だな…宝石みたいな…」
「これはね清石って言ってね、道具屋さんに売るとお金になるんだよ?」
封印の地にあった柱の入り口のギミックに使われてたやつか…アレは青かったけど、カレンの持っているのは黄色いな…。
「それ何かの効果でもあるのか?」
「これはねー、えっと…あれ?なんだっけ?」
「いいよ、どうせ売るんだろ?それよりほら食えよ。」
と串焼きをカレンの口に進める…
「ひゃい!?」
「冷めたら勿体ないからな…早く食べようぜ。」
「じっ!自分で食べれるもんっ!!」
パシッと串焼きを取られてしまった。
真っ赤な顔をしながらチラチラ俺を見るカレン…どうした?
「ユウちゃん!」
「はいよ?どうした?」
「カレンの事す…す、好き…なの?」
「はぁ?いきなり何言ってんだお前?酔ってるのか?」
「カレンはまだそういうのとか、分かんないし、ルビィちゃんも大事だし…」
指で髪の毛をクルクルさせながら、モジモジしているカレン…
あれ?なんかマズい雰囲気…。
って前にも似たような…
アレはルビィが風邪をひいて、俺が看病……!?
あっ!
「カレン…聞いてくれ!」
「は!はい!」
ガシッ!っとカレンの肩を掴み真剣な顔でカレンに話し掛ける。
カレンも珍しく真面目な感じだ。
「前にも話したが、俺はこっちの世界の人間じゃないんだ…スマン!男が女に食べ物を食べさせる意味を忘れていたんだ!」
目を丸くした後、どこかホッとしたような顔でカレンが笑いながら応える
「なーんだ、カレンびっくりしたよー。」
「さすがの俺も、出会って日が浅い女にプロポーズなんてしねぇよ…」
「あはは、そうだよね。あー!びっくりした。
あれ?でもなんで知ってるの?」
「知ってるって?」
「男のひとが、女の人に食べ物をあげる…って…その…」
「あぁ、ルビィに何回か食わせ…」
バキッと串の折れる音がカレンの方から聞こえた時、俺は悟った……
しまった…やらかした…
「……ルビィちゃん……に?」
「違う!待てっ!カレンッ!落ち着いて話し合おう!なっ!」
ユラリとベンチから立ち上がり身体全体にエナを纏うカレン…。
久々にやっちまった!こんな人がいっぱい居るところで、カレンが暴れたら大変だ!
「ルビィちゃんに……食べさせた……って…」
両手にエナが集まり剣の様に伸びていく…
その剣は地面にめり込み、空高くどんどん長さを増していく…。
死ぬ、絶対死ぬ。
どうする、どうやったら止まる?
俺の力じゃ目の前のモンスターを止められる訳もなく…持っている武器も、練習用の剣とビールと串焼き…
そうだ!串焼き…コレでなんとかイケるか!?
いや…でもカレンが更に怒りそうだしな…
他に何か方法も無い、何より考える時間が無い!
「ルビィちゃんに近づくゴミはカレンが殺す…絶対に…」
「あぁくそっ!!!カレンッ!すまん!」
ズボッ!
咄嗟にカレンの口に串焼きを突っ込んだ。
「んぐぅ!?」
モグモグ……ゴクン…
目を丸くして固まるカレン…。
「こ、これで、ルビィと同じだぞ!って駄目かな?」
「うぅぅっ…!」
下を向いたままプルプル震えながら唸ってるカレン…
突然の事に驚いたのかエナの発動が止まっている。
「カレン…さん?」
「あぅー!」
顔が真っ赤で涙目、周りから見たら完全なる少女を泣かせてる光景だ。
「ばかぁ!!!!!」
ズシン!
と頬に衝撃が走る。
目の前のカレンが放った平手打ちは俺の身体全体を回転させながら吹っ飛ばす。
まるで車に撥ねられた様な映像だろう。
「ほんぎょえええええ!!」
と悲鳴にも似た奇声を発しながら宙を舞う…。
グルグルと回る視界…高く浮いた身体はやがて地面へ落下…
どこから落ちたのか分からないが、勢いは消えること無く俺の身体を転がす…。
そのまま通りのど真ん中まで飛ばされた俺は大の字で空を見上げるしかなかった…
ぐっ…はぁ……効いたぜ…さすが馬鹿力…首がもげるかと思った…ぜ…。
ああ空が青い…
道行く人達が俺を見てる…。
風が気持ち良……
「何をしているのだ?お前は?」
と仰向けの俺に、聞き覚えのある声…。
視界には見慣れた薄紫色の髪の毛が見えた。
「いよう!クラリス。ちょっとカレンを怒らせちまってな…。」
「はぁ…。言った傍から問題を起こすとはな…」
「今回は言い訳無しだ、悪かったよ。」
「で?カレンはどこだ?」
「近くに居ないか?まぁ怒ってるのは俺にだけだから、もう大丈夫だと思うけど…。」
「とにかく立て!こんな通りの真ん中で!邪魔以外の何物でも無い。」
と出された手を取り、身体を起こす。
俺を心配してか、野次馬か、分からないが傍観していた人達も次第にその場から離れていく…。
「あの男クラリス様の手を!」
「さっき女の子を泣かせてたわよ?」
「女の子に食べ物を買わせていたぞ?」
「クラリス様から離れろ!しねっ!」
はい、聞こえてるから、ごめんなさい。
クラリス人気は体験済みだから…
誰か酷い事言ってなかったか?
「さて、私は宿舎へ向かうが、ユウはどうする?」
「観光したかったのもあるけどな…オルタナにはいつ頃逢えそうなんだ?」
「そうだな。宿舎へ向かい、そこでオルタナ様への謁見を従者に求めてみるが、あの方も忙しい身だ、どんなに早くとも今夜、または明日だと思うぞ?」
「そっか、まだ時間はあるのか…」
今は昼前…さてどうしたもんかね?クラリスに付いて行っても良いんだが、コイツも軍のアレコレやること多いだろうしな…。
「ま、いいや。のんびりカレン探してるわ。」
「そうか、港の場所だけ確認しておけ、近くの者に聞けば宿舎は分かるはずだ。」
「はいよ、んじゃな。」
クラリスは馬車を引きながら道を奥へと進んで行く…
では俺はゆっくり観光の続き…って!
「あっ!おーい!クラリス!」
離れていたクラリスに声を掛け、足を止めてもらう、さすがに俺の方へ戻らせるのも悪いので駆け足でクラリスの元に向かう。
「どうした?」
「悪ぃ!金持ってなくてさ、幾らか工面してくれ。」
「まったく仕方の無い奴だ、ほら、銀銭1枚やるから好きにしろ!」
「うっひょー!ありがと!クラリス!」
周りからザワザワと声が聞こえる。
「クズだな。」
「クラリス様から施しを受けたぞ!?」
「あの男クラリス様のなんなんだ!?」
「死ねっ!死ねっ!」
もう、いいよクズで。
クラリス様は俺の保護者です。嘘です。
てかまた誰か酷い事言ってなかったか?
周りの人達の罵詈雑言を聞き流しながら、クラリスを見送る…。
……
「よし!価値が分からんが金も手にしたし、とりあえず道具屋とか?武器屋とか見てみるかなー?カレンも石を売るって言ってたしな…。」
通りを見渡すが、それっぽい店は無いな…ここは飲食店が多いのか…。
まぁ、こういう時はRPGの掟に従って、町民に話を聞いて行くか!
「あっスミマセン、ちょっと良いですか?」
「¢¥¤$¢¤?」
と近くの人に話し掛けると知らない言語が返ってきた。
やべ!いきなり言語の壁来たよ。
見た目人っぽいのにな……どうしよう。
「マガミか?」
そこへ偶然にも現れるイケメンことビシャスさん。
「おお!ビシャスさん!助かった、言葉分かんなくてさ…。」
「亜人語が通じないなら……%‰$¢¥?」
「¥¢££!」
「£¥¥$。¢¤‰?$¢¤¥!」
おお凄い!格好いい!さすがビシャスさん。
俺が話し掛けた人はビシャスさんに手を振りながら、どこかへ行ってしまった。
「獣人語だな。マガミは使えなかったのか…。」
「まぁな、亜人語さえ覚えてれば何とかなるって言われてたんだけどな…。」
「あながち間違いないが、今みたいな例外はあるからな。」
こんな出来る男が、なんでクラリスなんか崇拝してんだろ?
「そうだ、カレン見なかったか?あと、ビシャスさんヒマなら観光付き合って欲しいんだけど。」
「観光か?そうしたいのは山々なんだが、宿舎へ向かい色々と片付けたいからな、どうしても不安なら付いて行くが?あとカレンは見てないな…。」
「あ、いや無理して付き合わせるつもり無いからさ…大丈夫だ。今みたいな事が無けりゃ問題ないぜ!」
「そうか?すまないなマガミ。」
「いいよ、それより道具屋とか武器屋とか探してるんだけど、どこにあるか知ってるか?」
「道具屋なら、そこの突き当たりを左だ。看板は亜人語だから分かると思うぞ?」
「ありがとビシャスさん!夕方には宿舎向かうからクラリスに逢ったら伝えておいてくれ!」
「ああ。わかった。気を付けてな。」
ビシャスさんに見送られながら俺は道具屋へと向かった。
とりあえず異世界の道具事情が知りたいのもあったが、石を売りにカレンが道具屋に居る可能性がありそうなので、急ぎ足で道具屋へ向かう。
逢えたら、しっかり謝らないとな…。
…
…
通りを抜け突き当たりを左へ、立ち並ぶ店は先ほどとは違って、しっかりとした店構えだ。例えるなら市場からショッピングモールって感じだ。
「服屋、靴屋、武器、防具、っと、…お?ここだ、ここだ。」
亜人語でちゃんと「道具のマヌマ」と、書かれた看板が掲げられている。
「マヌマ、魔沼…?まぁ、ネーミングについて考えても仕方ないか。
ちわー!三河屋でーす!」
ふざけながら木の扉を引く、ドアの上部には鈴が付いていて、開いた衝撃で鈴がチリンチリンと心地よい音を鳴らす…。
「いらっしゃい。マヌマへようこそ。おや?見ない格好だね、旅の人かい?」
店内は奥ばった間取りだが結構広い、入り口横のカウンターから、緑色の肌をした老人が俺に声を掛ける。
この見た目…ライトセイバーの1つでも持たせたらSF映画に出れるぜ。
「言葉通じて安心だ、まぁ旅の人って言えばそうだな、ちょっと聞きたいんだけど、緑色の髪の毛をこう2つに縛った女の子来なかったかな?
カレンカレンにしてやんよ!的な感じなんだけど?」
「お客さんが何を言ってるのか分からないけど、そんな女の子は来てないねぇ。」
「そっか…ま、仕方ない。マスター、道具について色々聞きたいんだけど、いいか?」
「ワシで分かる範囲で良いなら何でも聞いとくれ。」
とカウンター横の謎の石を指さしながら主人に話し掛ける、ニコニコしながら俺に応えてくれる、気の良い主人。
「これは?なんなんだ?」
「これはね、主に部屋の灯りに使う物だね。蝋燭よりも明るいから使い勝手は良いんだよ。」
「へぇ、そういや、ルビィんとこでもあったな……んじゃ、こっちのクリスタルは…ってうぇ!?値段が全然違うな。金銭10枚?」
「クリスタルは貴重だからね…ウチにあるのは全部中古だけど、大体これくらいの相場だよ…」
「はぁ…金銭10枚とか価値が分からんが、少なくとも銀銭1枚よりは高いのが分かるわ。」
「はっはっは、ウチのクリスタルなんて買ってくのは、軍関係者か金持ちかのどっちかだよ。」
「ん?これ安いな?銅銭5枚?」
「あぁ水だね。水のクリスタルは数が多いんだ。どこの家にも1つくらいはあると思うよ?」
なるほど、普及率によって値段が変わるのか…。
よくよく考えたら、井戸水が引けない状況下でも生活出来るんだから、クリスタルって凄いな。
「マスター、空のクリスタルって無いのか?」
「お前さん何を言ってる?」
「いや、何も術式が組まれていないクリスタルって置いて無いのか?」
「意味は通じとるわ。そんな貴重な物こんな店に置いておける訳なかろう、直ぐさま強盗に遭ってしまうわ。」
「へぇー?そんなに貴重なのか…ちなみに売ったらどれ位で買い取ってくれるんだ?」
「お前さんは何者じゃ?世間知らずにも程があるぞい。空のクリスタルは取引禁止じゃ、買い取りたくても法に引っかかるわい、それでも手に入れたい輩が居るなら、そうじゃのう……金銭200枚くらいかのう?」
うーん、ピンとこないな。
金銭1枚の価値がどんなもんなんだ?色々と道具を見ても、さっぱりだ。
鉄銭2枚で串焼き1本の相場だろ?
んで、銅銭5枚って書かれてる水のクリスタルがあって、俺の銀銭1枚は結構良い値段なのか?
チリンチリン…
そんなこんなで店の中で主人に色々と教えてもらっていると、入り口からぞろぞろと鎧を着込んだ兵士が数人入って来た…
「おう、オヤジ清石の買い取りをお願いしたいんだが…む?先客か?」
「あ、俺は大丈夫…。」
そう言って一歩後ずさる。
「はい、ありがとうございます。えぇっと、いち、にぃ、さん…っと」
「見掛けない服装だな?旅の者か?」
「へ?俺?」
買い取りが気になって見ていると兵士の一人に話し掛けられた。
「カリキはもうすぐ街から都市への発展があるので最近は賑やかだ、ゆっくりしていくと良い。」
「あ、どうも。」
「私は護衛隊副長ベルンだ、よろしくな。」
「あ、真上悠です。よろしくベルンさん。」
また副長だ。副長ってなんかそこら辺にいっぱい居るな…
「はっは、ベルンで良いぞ?それでマガミユウはカリキから船に乗るのか?」
「あ、いや、俺はオルタナに逢いに来たんだけどな…」
「ん?オルタナとはオルタナ・クードシャンス様の事か?」
「そう、その人!ちょっと話があってな。」
「5王を呼び捨てにするのは不敬だぞ?以後気を付けろ、しかしオルタナ様への謁見は難しいぞ?一兵でもなかなか逢えないお方だからな…。」
「あ、それなら一緒に来たクラリスがなんとかしてくれると思うぜ?」
「なに!?」
何気ない会話で出した、クラリスの名に店内の空気が変わる…
あれ?兵士皆俺の方見て固まってるぞ?
「マガミユウ!クラリスは今カリキに来ているのか?」
「あ、ああ。小一時間程前に到着したけど?」
「そ、そうか……」
「クラリスがどうかしたのか?」
「いや!何でも無い!気にするな、マガミユウお前はクラリスと一緒にカリキに来たのか?」
「そうだよ?」
「ではお前が…」
「ん?」
なんかおかしいな?クラリスって人気者じゃないのか?アレかな…護衛隊副長と連合国軍副長って仲が悪いとかなのかな?
「主人!買い取りはまだか!?」
「はい、今終わりましたよ、全部で金銭1枚銀銭3枚銅銭5枚ってとこですね、宜しいですか?」
「うむ。構わん、マガミユウ!私は少し急用が出来たのでこれで失礼する。」
「あ、ああ…また機会があれば宜しくな、ベルン副長」
「……機会が…あればな。」
少し言葉を濁しながら、そそくさと買い取りを済ませ店を出て行くベルン一行。
なんか、嵐のように現れて…って感じだったな。
……
「んじゃ、俺も一度出ますかねーっと。
マスター!後でまた来るよ!」
「ああ、いつでもおいで。」
そう言って店から一歩踏み出す…
ドン!
と横から何かがぶつかった様な感覚。
「ん?」
ってあれ?
目の前が…暗い…
なんだ?
……こ……れは…
急に意識が堕ちていく…。
気を失う寸前に、誰かの話し声が聞こえた様な気がするが…
俺はその場に倒れ込む……。
「コイツが厄介な人物ですか?」
「ああ、まさか1人でいるとはな…」
「早くこの場から運ぶぞ!」
「この者は如何致しますか?」
「そうだな…」
……。




