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ここではないどこかへ  作者: ししまる
第二章 異世界 ~砂漠の旅~
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18話 蠢く陰謀

 砂漠の結界を抜ける為、マルティア城跡へ着いた俺達を待っていたのは、ルビィをこよなく愛する殺人狂、首斬りカレン。ルビィをよく思ってない小隊長ビシャス、下っ端オヤジ、スネ夫の3人。

 なぜか4人共ルビィ様親衛隊に入り俺と一緒にカリキへ向かう事に…。

 砂漠の旅はまだまだ続く…


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 マルティア城跡を出てから4日、ひたすら砂漠を走る馬車に揺られる俺達。


 ビシャスさん達が乗っている馬車は最速馬車じゃないみたいで馬がすぐに疲れてしまうので、多少こちらもペースを落としながら砂漠を進む。


「カレン、起きろ!飯だぞ。」

「だっ…だめだよぉ…。も、もう…う…ぁっ」


 なんの夢を見てるか知らんが、ここまで寝言をハッキリ言うヤツは初めて見るな…


「おい!飯だぞ!」

「んん?あれ?ユウ…ちゃん?」

「寝ぼけてないで、起きろ。」

「ふあぁぁぁぁ。よくねたー!」


 大きな欠伸をしながら身体を起こすカレン。荷台から身軽に飛び降り、先に水浴びしているクラリスが居る裏手に回り込む。


「さて、ビシャスさん達はまだ到着してないのかな?おーい、クラリス!ビシャスさん達って、ここ分かるのか?」

「ん?ああ問題ないだろう。いくら砂漠地帯とはいえ、私達以外に通った跡も無いしな。」


 俺達は北西のカリキに向け旅をしている、マルティア城跡を抜けてから、チラホラと集落みたいなものが目につくようになってきた…クラリスに聞くと殆ど人が住んでないので、今は廃れてるみたいだ…。

 そして、今夜野営する場所も廃れた集落の一つだ。道中クラリスがトイレに行きたいと言いだしビシャスさん達を置いて先にこの集落へと到着したのだった。


「ふぃーさっぱりしたー!」


 荷台の裏から水浴びを終えたカレンとクラリスが戻ってくる。


 よくよく考えたら、ルビィに物資を届ける為に、こんな長期的な旅を何度も繰り返してるんだよな…。


「ん?なーに?」

「あ、いや、カレンもクラリスも凄ぇなって思ってな…。」

「うん?よく分かんないけど、褒められてるのかな?」

「カレン気を付けろ、ユウはそうやってお前を手籠めにするつもりだ!」

「するかよ!お前!俺の感動した心返せよ!」


 まったくけしからん!誰がこんな危ない女狙うかよ!


「しかし、あの3人遅いな…。先に食っちまおうか?」

「さんせーい!」

「うむ。仕方ないな、まぁ3人共連合国の兵士だ。放っておいても大丈夫だろう。」

「う、うん、自分から言いだしたけど、なんか可哀想になってきたな…。でもあいつらの馬車来ないと明日からの食料がな…。」

「こっちに積んであるの無くなったの?」

「まだあるけど、今日も殆どがこっちの材料で作ってるからな…あっちには重い物ばっかり積んであるんだけど。さすがにこっちの食料だけだと飽きるのもあるな…。」

「私はユウの料理は旨いと思うぞ?向こうの食料など気にする必要は無いと思うがな…。」

「カレンも飽きないよ?」

「ありがとよ、でも俺が飽きるんだ。」


 さすがに毎日同じ味付けだと飽きる。

 向こうの食料には野菜や調味料が乗っているから味の変化を求めるには向こうの食料が必要不可欠だ。


 そうこうしながら3人を待たず俺達は飯を済ます…。


 ……



「ぷぁー!お腹いっぱいだよ!苦しい…動けない-。」

「うむ。私も少し食べ過ぎたかな…。」

「いや6人分作ったのに、なんで無くなるんだよ。俺全然食ってないぞ?」


 この2人は食いすぎだ、特にカレン。ルビィも馬鹿みたいに食ってたし、やっぱり長寿種の血が関係しているとしか思えない。

 カレンはその場に仰向けになってお腹を押さえている、体型が変わるほど腹が出てるぞ…


 こんな少女が首斬りとか恐れられてんだから、凄い世界だよな…

 クラリスも黙々と飯を食べてる姿なんて、ただの大食い女にしか見えないしな…


 夕飯を終えてリラックスモードの3人。

 焚き火を囲む様に座っているので、目の前のクラリスの顔が炎の動きに寄ってユラユラと幻想的な色を映している、いつもは俺を睨む様に見てるんだが、飯の後はなんだか穏やかな顔付きだ。

 そんな俺に気付いたのか、こっちを見ながら、急に目の鋭さを増していく。



「ユウ!カレン!」


 クラリスがいきなり真剣な声で俺とカレンを呼ぶ。

 座ったまま辺りを警戒している様だ…。


「囲まれてるねー。」


 寝転がりながらクラリスに同意するカレン。


「え?何?ビシャスさん達じゃねぇの?」


「数が多いな…カレン行けるか?」

「まだお腹苦しいからむりー!これくらいならクラちゃん1人でいけそうじゃない?」


 ちょ、なんか話が進んでるけどマジで囲まれてるのか?


「数だけなら私1人で問題ないな…。ただ1人でも手練が居ると厄介だ。カレン一応警戒しろ!」

「りょーかい!」


 と寝っ転がったままカレンの両手にエナの剣が伸びる…

 クラリスが立ち上がり声を上げる…


「隠れてないで出て来い!」


 いつもなら緊張が走るんだが、この2人が居ると安心というか、なんというか。

 てか、カレンは寝っ転がったままだしな…緊張感ねぇよコイツ。




「さすが連合国軍副長…ですね。」



 と暗がりの中から現れた1つの影…

 ボヤッと全貌は見えないが、人の形をしたようにも見える。


「ねえ、クラちゃーん。なんて言ってるのー?」

「え?カレン魔人語分からないのか?」

「え?ユウちゃん魔人語分かるのー?」


「カレン!警戒しろ!コイツ私を副長と知っていての狼藉だ!」

「えー?じゃぁカレンも動かなきゃだめ-?」



 魔人語を話したって事は魔族なのか?でも連合国は中立地帯なんじゃなかったっけ?


「私を連合国軍副長と知っていての行動。何が目的だ!」


 ユラユラと揺れる影が再び声を出す。


「目的ですか…そうですね、人探しに協力願いたいと思いまして…。」

「ただの人探しにしては、物騒な現れ方だな…。」

「クフ。これは失礼。しかし我等魔族は人族を警戒していましてね…」

「貴様ら魔族とはここイグザにおいて、敵対関係では無い。出来る限りの協力はするが、まずは連合国に話を通して、それから正式に私が軍を動かそうではないか。」


「クフフフフ。さすが!さすが連合国副長は話が分かる!ですがそれだと遅いのですよ…。早急に手を打って頂きたい。」


 なんだ?人探しだって?まさかとは思うけど…


「ねぇー!なんて言ってるの?」

「なんか人探しだとよ?」

「ふーん、でも後ろの人達凄い殺気だよ?」


「探しているのは魔族なのか?お前達の中に純血種はいないのか?魔人種の特性で、魔族同士ならすぐに見つけられるはずだろう?」

「良くご存知で、バトルクイーンクラリス副長…。私は純血種です、そして探しているのも魔族ですが、それでも見つけられないのでお願いに来ているのです。」

「ふん。まずはこの場にいる全員姿を現すんだな。話はそれからだ。」


「クフ。分かりました。」


 そう言った瞬間、目の前の影が実体を持つように姿を変える。


 紫色の肌、背中には一対の羽根。切れ長の眼に、裂けた口、尖った耳。服は魔族特有の物なのか、ネオンが着ていた着物によく似ている。


 気が付くと周りからも同じ様な格好の魔族が何人も姿を現す。服装は一緒だが緑色の肌の色や青白い肌の色の者もチラホラ見える。

 武器は持って居ないけど、その数パッと見ただけでも10人以上。


「おいおい、ずいぶん多いな…」

「なんにんくらいー?」

「10人以上は居ると思うけど…って、お前は身体を起こせ!」


「さて…副長。改めまして、ワタシ魔人種、準眷属継承権第9位、ロレースと申します。

 話をさせてもらっても宜しいですかな?クフフ。」

「人探しと言っていたな、ロレース。魔族の能力でも見つけられないということは結界が関係している可能性がある…」

「そうなのですよ!結界のおかげでワタシもずいぶんと探し回りましてね。クフ。」


 姿を現した魔族に歩み寄り、話を始めるクラリス…


 なんかロレースとかいうヤツ笑い方が気持ち悪いな、俺的に好きになれそうにない。


「なんか今喋ってる人笑い方キモイよね?」

「お前はエスパーか!まぁ同意見だがな…」


 とカレンと緊張感の無い話をしていると、魔族の人が俺達2人を囲むように立つ。



「おい!貴様ら!その2人に手を出すな!」

「ご安心を、少し交渉を進めるのに協力を願うだけですので。」



 ロレースはそう言ってるけど、明らかな人質状態だな…仰向けのカレンは動く気が無いのか?まったく。

 てかエナの剣伸ばしたままだから、このまま振り上げたら近くの2人くらいは真っ二つじゃないのか?


「交渉だと?卑怯者め!」

「クフフ。これは手厳しい、さて結界の話に戻りましょうか、副長は封印の地は存じていますね?」

「もちろんだ、イグザ連合国全ての民が知っている。」

「では、そこに住む三榮傑の1人も勿論ご存知で?」

「貴様…何が言いたい。」

「単刀直入に申します、水聖ルビィを結界の外へおびき出してもらいたい。」


「ほう?また大物の名前が出たな。理由は話してもらえるのか?」


 きな臭い話になってきたな…

 そもそもコイツらは何が目的なんだ?もし俺の予想通りの人物を探してるんだとしても、その後に待っているのは戦争じゃないのか?


「簡単な事!世界屈指の結界術の使い手!水聖ルビィならば、我が魔人種眷属継承権第2位のネオンディアナ姫を隠した結界の秘密を曝けるでしょう!」


 曝けるも何も、そのルビィが保護してるって事は俺しか知らないしな。

 予想通りだな。狙いはネオンか…。


「その事を貴様らのボス、いや魔王フェンネル・キングスターは知っているのか?」

「クフフ。貴方にそこまで説明する必要は無いですね、ワタシ達は姫を保護する目的なのです。」

「そうか…やはり貴様らは過激派か…。」

「クフフ。そんな事はどうでも良い事ですよ?副長?」


 過激派って事は?

 戦争起こして人族潰すぜ!ヒャッハー!

 って奴等か?俺のイメージ通りの魔族って感じだな。

 そもそもルビィにネオンの保護をお願いしたのが魔王なんだから、コイツらは魔王と関係なくネオンを探してるって事か…。


「最後に1つ、おびき出した水聖ルビィが、お前らの提案を断ろうとすればどうなる?」

「クフ。そんな事は聞かなくても想像出来るでしょう?貴方はそこまで頭は悪くないはずですよ?」


「ふん。なるほどな……さて、丁寧に魔人語まで使って話した結果がこれとはな…。」

「ええ、さすが連合国副長、世界を股に掛ける者となると、魔人語すらも容易く話せてしまうのですね。さぁて、もう良いでしょう副長、返事を聞かせてもらいましょうか!?クフフ。」




「ふふっ!はははははは!」

「何が可笑しいのですか?」


 突然笑い出したクラリスに魔族も驚いている。


 いや、俺には分かるよ。この後の展開が…

 一応怪我しないように身を守っておかなきゃだな…。


「ふふっ。何が可笑しいだと?貴様らの作戦があまりにもバカバカしくてな…ふふっ。」


「クフフ、副長?取り消すなら今の内ですよ?」

「おびき出した水聖ルビィを貴様ら如きが、どうにか出来ると思っているのか?バカも休み休み言え!そして良く聞け!ロレース!私は私の全てを賭けて誓おう、ルビィ様を裏切る事は無い!!」



 誰がどう見ても分かるくらいに魔族達の機嫌が悪くなってるな…殺気丸出しじゃねぇかよ…。これじゃ言葉分からないカレンも警戒するわ。


「残念ですね、素直に協力してもらえると思っていましたが、どうやら副長は魔族の恐ろしさを知らないとみえる。お連れの方々には少し痛い目を見ていただきましょう。クフフ。」


 と片手を上げこちらの魔族全員に合図を送るローレス。




 ほら来たよ…。


 俺はとりあえず周りの魔族の攻撃をなんとか無傷でやり過ごす事に専念だな…。

 んでこの寝っ転がったままのカレンを…


 あれ?どこ行った?



 今の今まで仰向けだったカレンが姿を消していた。

 カレンが消えた状況に俺を囲んでいた魔族も気付いたか否かの瞬間、目の前にカレンが立ち、俺の襟を後から引っ張る…



「うげっあっ!!」


 突然のカレンの行動により首が締まり、体制を崩して地面に座り込んでしまう…


「ちょっ!お前っ…」


 いきなり何すんだ!


 と言い掛けたが、目の前の光景を見て声が出なくなる。




 ジュォンッ!





 と音と共に長さ5メートルくらいまで伸ばしたカレンのエナの剣…それを目の前の魔族の首に突き刺す……

 一瞬の内に首を貫かれた魔族の一人は声を出す事も出来ず、その場で動けずにいる…エナの流れが見えない、他の魔族達は何が起こってるのか分からない様な顔をしている。


 そこからカレンは自身の身体をを1回転させる…


 まるで踊るかの様に…軸足1つで綺麗に1回転…


 スカートの裾を持って一礼でもしてくれたら拍手してしまうくらいに見とれてしまったぜ…。


 俺達2人を囲んでいた魔族達は皆ポカンとした顔のまま固まっている…。


「はい!おしまい。」


 パン!

 っとカレンが手を叩くと、固まっていた魔族達の首と胴体が徐々にズレていく…。


 ボトッ


 ドサッ


 生々しい音を立てながら、砂に頭部が幾つも落ちていく…。


 俺達2人を囲んでいた魔族全員がカレンの一閃によって首を落とされた。


 その落とされた首の表情は、自身が何をされたか理解していない表情だ…



 俺はそんな光景にたまらず吐き気をもよおしてしまう。


「うっぷ…!」


 死体…、初めて見る死体。


「ぉえっ…ゲェェェ!」


 気持ち悪い…首を失った身体も、転がる首の表情も、溢れ流れる血液も、臭いも全て気持ち悪い…


「ゲッホ、ゲホ……はぁっ…!はぁっ!」


「ユウちゃんだいじょうぶ?」

「すまねぇ…慣れてなくてな…」



「そっか…それも良いんじゃないかな。」

「ん?」

「なんでもないよー!」


 何か言ってた様な気がするけど…


「はぁ…はぁ…っ…悪いな、助かったよカレン。」

「うん。クラちゃーん!こっちは6人片付けたよ?そっちはどう?」


 とクラリスに声を掛けるカレン、俺もクラリスの方に目をやる。



「他愛も無い。」


 と軽く返答するクラリスの足下にはローレスの部下が倒れながら頭を踏みつけられていた。

 その後ろの方に倒れたまま動かない魔族の姿が数人見える…。


 こっちのカレンの早業も凄かったけど、クラリスも、いつの間に制圧してたんだよ…



「ま、まさか、バトルクイーンが、ここまでの実力とは!」


 予想以上の力量差に驚きを隠せない魔族ロレース…


「部下に働かせ自身は高みの見物とは良い身分だな…。」


 スタスタとロレースの方へ歩き出すクラリス、その威圧感にロレースは思わず後ずさる…。


「こ、これは一度作戦の練り直しが必要ですね…」

「何を言っている?貴様。」

「なっ!」


 正面から歩いて来たクラリスが突然姿を消す、驚きの声を上げるロレースの背後にクラリスが現れ口を開く…


「この程度の速さも見えない様で、ルビィ様をどうにか出来ると思っていたのか?」

「ぐぬぬ。」


 あまりの速さに付いて行けないロレース、悔しそうに拳を握る。

 その握っていた拳にエナの光が集まる。


「クラリス!右手だ!気を付けろ!」



「な!?気付かれただと!?だが遅い!!死ねぇ!!!」


 ロレースは右手をクラリスめがけて広げる、その広げた掌から放たれる光、光は爆発音と共にクラリスの全身を包む…。


「おいおい、大丈夫かよ?」

「うーん、あれくらいなら大丈夫だけど、ちょっと怒ったんじゃないかな?クラちゃん。」


 余裕そうにカレンが答える。

 朦々と上がる煙を見ながらロレースは勝ち誇った顔だ。


「クフフフフフ!油断しましたね!さすがの高速移動もコレだけ至近距離からの一撃、例え水聖ルビィすらも躱せるはずが無いっ!」


 うわー、典型的なやられ役の台詞だよそれ…。

 フラグ立てるの上手いなロレース。



「反省しよう…」


 と煙の中からクラリスの声が響く…。


「バカなっ!」


「情報を聞きたかった故にルビィ様を侮辱する輩の口を開かせた…。」

「なっならばもう一擊!!」


 とロレースが手を開いた時にはクラリスの姿は無かった。


「終わりだロレース。」


 とロレースの真横に立つクラリス、剣を鞘に納め、両手にエナを纏う…




 ズンッ



 と鈍い音を立ててクラリスの拳がロレースの腹にめり込む…

 足は地面から浮き上がり胴体はくの字に折れ曲がる…。



「おごぉぇぁっ!!!」



 クラリスの一撃により、膝は崩れ落ちその場にうずくまるロレース。


「立て…」

「ひぃっ!!!」


 苦しみながらも必至で這いずりながら、その場を離れようとするロレース…


「ふんっ!!」

 だが、クラリスの拳は這いつくばるロレースの背中にめり込む。



「げぼぉあっ!!!」



 うっわー!アレはキツいだろうな…

 クラリス恐ぇーよ、戦ってるの初めて見たけど、あんなに強いのか…。



「さて?少し聞きたい事がある。」


 グリっと頭を踏みつけるクラリス


「はぁっ…はぁ…人族の分際で、我等魔族にこんな事をして、ただで済むと思うなよ…」


「ふん。先に手を出そうとしたのは貴様らだろうが!まぁ私の質問に答えてもらえるのなら、これ以上手荒な真似はしないと約束しよう。」

「信じられるかっ!お前達人族はクズだっ!水聖ルビィも連合国も全て滅びてしまえっ!」


「…ッ!…貴様…。」


 クラリスの声が鋭くなる…


「ユウちゃん、クラちゃんキレちゃったよ?」

「へ?」



「ルビィ様が滅びるだと?」


 と言い放つなり踏み込みに力が入るクラリス。


「な!?へ?おごぉっ!」


「このクソムシがっ!ゴミがっ!ルビィ様にっ!何をっ!させるっ!気だったか知らんがっ!」


 ドシャッ!グシャッ!

 と鈍い音を立てながら、何度もロレースの頭を踏みつける暴君クラリス…


 おいおい、あれ死ぬって。


「お、おい、クラリス、落ち着け!情報聞く前に死んじゃうって!」


「このっ!私?ん?ああ!?いかん!つい!」


 うぇぇ…顔が潰れてピクピクしてるよ…



 ルビィもそうだけど、コイツらの「つい」はマジで危険だな。


 俺の声で我に返ったように見えるが、一応油断は出来ない、コイツは危険な女だ。



「ふうー。カレン、治癒を頼めるか?」


 落ち着いたのか冷静な顔でカレンに治療をお願いするクラリス。


「全快?」

「全快、半…。いや、どっちでも良いな。」


 どっちでも良いのかよ!?

 まぁ、また暴れたら抑えれば良いだけか…。



 トコトコとクラリスの元へ歩いて行きロレースに治癒術を掛けるカレン…。


 フワっと柔らかい桃色の光がロレースを包み込むと、ロレースの意識が次第に戻ってくる


「がっ!ぐはっ!」

「気が付いたか?ロレース。」

「はぁっ…はぁ…いったい…何が!?」


 自身が気絶していた事すら理解する前に、クラリスの尋問が始まる。


「しかし、舐められたものだな。高々この程度で連合国軍の最強部隊の2人、闘女王バトルクイーンクラリスと首斬りカレンをどうにか出来ると思ったのか?」

「カレンもう最強部隊じゃないけどねー!」


 ()最強部隊な。まぁ十分強いよカレンちゃんは…


「ああそうか、まぁ良い。さてロレース、貴様ら生きている者は全員連合国の法廷へ叩き出す予定だが、何か言っておきたい事はあるか?」

「クフ。どう頑張ってもワタシから情報は出ませんよ?」

「水聖ルビィ様が法廷で貴様らを裁くとしてもか?」

「なっ!?馬鹿な!?」

「魔大陸でも有名であろうな?水聖ルビィ様の意識通信術は…。」


 やっぱりアレは反則だよなー。

 法廷でルビィが仁王立ちしてたら、探られる前に自首するわ。


「はぁっ、はっ、それは!!はぁっ、はっ。どうすれば!ワタシはどうすれば良い!」

「どっちにしろ、貴様の情報は全てルビィ様を通して伝わるのだ。今言おうが後で言おうが変わりは無い。」

「頼む!助けてくれ!」

「そうだな、貴様らの目的さえ分かれば私個人はどうでも良い、それを企んだ黒幕は法廷でルビィ様に暴かれるだけなのだからな!」


 うーわっ!クラリスが悪党に見えるぜ…

 そもそもルビィを法廷まで引っ張るなんて出来る訳ないだろうに…

 ロレースも冷静さを失ってるからそこまで頭は回らないのか…なんというか、ご愁傷様です。


「ね……ネオンディアナ姫を見つけ出すのがワタシ達の仕事なのだ、それだけだ!」

「それだけか?なら貴様に用は無いな。大人しく法廷まで連行させてもらうとするか…。」

「まっ!待て!話せば法廷まで連行しないのか!?」

「さてな?貴様の情報次第ではあるが…。」


「ねえユウちゃん。何話してるの?」

「なんかクラリスが情報を引っ張ろうとしてるみたいだな…。」

「ふーん。」


 戦闘の時は少し活き活きしてる様に見えたけど、カレンは尋問には興味ないのか、どこかつまらなそうに、辺りを見渡している…。


「では聞こうか?貴様らは何故ここに現れた?私達の行動が伝わっていた様に思えるが?誰から聞いたのだ?」

「そ、それ、それは…。」


 言葉を濁すロレース。


 ま、態度でバレバレだな、誰かから情報を貰ってここで俺達を待ち伏せしてたって訳か…。


 さて、ここからクラリスの追い込みが始まるのかね?



 とそんな事を考えていると…



「クラちゃん!よけてっ!」


 突然カレンが大声を上げる


「なっ!」


 っとクラリスがカレンの声に反応すると同時に、目の前が真っ白な光に包まれる…


「うぉっ!!眩しっ!!」

「しまった!」


 その光は目を開けることも不可能な程の眩しさだ、薄目で視界を確認するも、横に立っているはずのカレンすら確認出来ない程の光だ。


「やー!まぶしー!2人とも伏せてー!」


 とカレンの声が聞こえたと同時に地面に身体を倒す。


 バシュンッ!


 っとカレンの一閃が光を切り裂く…

 目を開けることも出来なかった光は切り裂かれたことにより、徐々にその力を失っていく。



 く、なんとか視界が…。



「ちっ!油断した!」


 とクラリスが言い放つ。

 ゆっくり辺りを確認すると、先ほどまで散乱していた死体やロレースの姿が、1つ残らず消えていた。


「逃げられちゃったねー。」

「おい、何があったんだ?いきなり眩しくて…。」

「多分遠方に待機していた仲間がクリスタルを投げつけたか、術か何かだろうな…。」

「清石だったよ?カレンの後から投げられたと思うんだけど、気付いたらクラちゃんまで飛んでて驚いたよ。」

「攻撃が通じないと分かったところで、逃げに徹するとはな…手強い相手だ。」

「にしても、ずいぶん手際良いな…死体まで綺麗サッパリだぜ…。」


 今の今までそこに在った魔族達の死体まで、全て無くなっている。


 薄ら血痕が残っているので、夢では無さそうだな…


「とりあえず、今夜は様子見するか?」


「いや、これだけ力の差を見せ付けて挑んで来る程バカではあるまい。」

「でもこっちの戦力もわからないバカだったんでしょー?」

「そう言われるとそうだな。しかし先程のロレースの態度からして、今夜中に再襲撃はあるまい。」



 …とりあえずこのバタバタは終いなのか?

 なんにせよ、俺達が無事で良かったぜ。

 まぁ…心配な要素は俺なんたがな…。


 なんだかスッキリしない感じで俺達は、その場に留まる事を決めた…






 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





 その後、空気の読めない3人が交流して、事の顛末を説明した。


「そいつは驚いたな、さすがクラリス様だぜ!」

「なぁ、マガミ!その魔族達は何か言ってなかったのか!?他の仲間や、目的は!?」

「うーん、特にめぼしい情報は落としてなかったな…。」

「私が聞き出す前に逃げられてしまってな、不覚だった。」

「なっ!何を仰いますか!クラリス様!むしろ、少人数で族を撃退出来ただけでも素晴らしいです!」


 オヤジもビシャスさんもクラリス様持ち上げるねぇ…


「んで、スネ夫は第9位についてなんか知ってんのか?」

「上位魔族達の事は分からねえ…。だが過激派と穏健派と分かれてるのは、魔族じゃなくても知ってる事だぜ。

 …そうか動き出したのか…。」

「なんか言ったか?」

「いやぁ何でもないぜ、ボンズも無事で驚きだ、真っ先に死にそうなのにな!ヒャハハ!」

「笑うなよ、ぶっちゃけクラリスもカレンが居なきゃ死んでたと思うしな…。」

「そうだな、今回はカレンが一番の功労者だな。」

「でしょー?」


 腕を組みながら、えっへん

 とドヤ顔のカレン。


 改めてコイツの恐ろしさを知った…

 本人は既に忘れてるだろうけど、カレンは俺の事殺すって言ってたんだよね…


「さて、多分今夜は大丈夫だと思うが、一応警戒体制を取って休むとするか…」

「クラリス様!このザンザスが見張りの番に立つので安心して下さい!」

「お、オヤジいいね!」

「すまないな、ザンザス。辛くなったら言ってくれ、いつでもユウと交代させる。」

「俺を戦力に数えんなや!見張りしてる間に死んでしまうわ!」

「そりゃそうだ!ヒャハハハハ!」



 ドッと皆笑う。



 まったく…。



 でも確かに今後もこういう事態があるのかもしれないし警戒はしておいて損は無いな。


 魔族達…か。

 ルビィとネオン元気かな…。









 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※














 その夜、夢を見た。


 いつか見たような。


 そんな懐かしいような。


 何とも言えない夢を…。



 真っ白な空間で誰かの声がしている。











「ショウヘイさん!これでなんとかなるよ!」


「ヒデ、本当にマザーに意思を持たせたのか?」


「コレが一番皆を救う方法になるはずだよ。」


「そうか、早く皆元に戻してやらないとな…」


「世界は順調に発展してるし、後は俺達が…。」








 そんな夢の内容も覚えてなく、俺は目が覚めるのだった…。



 …


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