16話 異端者
カリキを目指して砂漠の旅を続ける俺とクラリスは結界を越えるため、海岸線から東にある、マルティア城跡へと足を運んだ。
マルティア城跡ではクラリスを崇拝する兵士達が陣を張り、俺達2人を迎え入れる。
そこで俺を待っていたのはルビィへの侮辱。
我慢できず物申すも、返り討ちに遭ってしまう。
今にも気を失うところに現れた少女。
「首斬りカレン」
クラリスが俺に気を付けろと言っていた、問題児だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ぐぁあああ!!?おれの!おれの腕があぁぁあぁぁ!!!!」
片腕を、切り落とされた筋肉オヤジが叫ぶ。
手首と肘の間を音も無く切り落とすカレン…
目の前に転がる切り落とした片腕を兵士の居る方へ蹴飛ばす。
「ひぃっ!」
「うわぁ!」
と蹴飛ばされた腕に驚く人達…。
「お兄ちゃんにはコレね。」
そう言いながら少女は俺の肩に手を触れる。
目の前の少女の身体が淡い桃色の光に包まれる、その光は少女の腕を伝って俺の身体に流れ込む。
「なんだ、これ?身体が…痛くない?」
「え?治療の術だよ?もうちょっとで終わるからじっとしててよ?」
「こりゃ凄ぇな…」
「ねぇーっ!そっちの下っ端の腕も誰かくっつけてよねー。
まだ繋がると思うから…。」
ハッと我に返ったように周りの連中が、バタバタと筋肉オヤジの治療を始める…
「おい!新入り!てめぇ!何をした!?」
茶髪スネ夫がこちらに向かって来る、片手に持っていた剣を構え、やる気満々だ。
「あははー。ちょっと邪魔だったから?かな?どうしてだろうね?」
「ふざけやがって!」
「お兄ちゃん、ちょっとごめんねぇ…。」
そう言って治療の力が消えると、少女の全身に紫色のエナが湧き出る…
「丸腰で、どうやったって聞いてんだよぉぉぉー!!」
茶髪スネ夫は持っている剣を振りかぶり、目の前の少女にソレを振り下ろす…
ギィンッ!
と剣が空中で止まる、いや少女の手まで流れたエナが振り下ろされた剣を止めている…
エナで造った剣?なのか?
「なっ!?剣が動かないっ!だと!?」
「えへへー。面白いでしょ?これ?」
茶髪スネ夫には剣を止めたエナが見えていないのか?だとすると、まだ発動していない術ってことになるんだが…
発動前のエナが物質に干渉出来るなんて考えもしなかった…
「みんなにも見える様にしてあげるね。」
ザワザワ……と辺りの人達が視線を少女に向ける…。
少女の身体に流れていたエナは腕へ流れて行き、手の先へどんどん凝縮していくようだ…徐々にその手の先へ流れたエナは、透き通った石のような、紫色の美しい剣を形作っていく。
「かんせーい!これでさっきの大きな下っ端をきったんだよ?」
「ばか…な!」
「えー?前居たとこでは、みんなしってるよー?カレンの術」
その光景に誰も動く事が出来なかった…。
それは少女の術に対してのものなのか、首斬りカレンへの恐怖なのか…
「カレン!止めるんだ!!」
と今まで空気だった小隊長ビシャスさんが少女に詰め寄る。
「ええー?せっかく面白くなってきたのにー。」
ほっぺを膨らましプンプンと怒った表情で、茶髪スネ夫をなぎ払う…。
「ぐはぁ!」
ガラガラ、ドシャン、
と音を立てながら吹っ飛ばされる茶髪スネ夫。
少女の細腕からは想像も出来ないような一閃に、周囲の人間も息を飲む。
「あ、ありがとう、えっとカレン?で名前あってるのか?」
身体の痛みが引いたせいもあって、俺の緊張感は一気に解ける。
こんな小さい女の子が問題児とまで呼ばれている「首斬りカレン」か…
突如現れ、男2人を簡単に鎮圧してしまう実力の持ち主。
緑色の髪の毛は2つ縛りでサイドに下ろし
その幼さの残る顔には鋭く輝く真紅の瞳
全体的に小柄な少女
武器を持たないそのスタイルは先程見せたエナの剣化の能力に絶対の自信があるからなのか…
俺には元の世界で有名なバーチャルアイドルの某カロイドにしか見えないんだけどな…
「どういたしましてだよ。それで?ビシャス小隊長さんはどうするの?責任とるの?」
「どうするも何も…。」
「カレンも第三部隊来たばっかりだけどさ、皆ちょっと情報不足じゃないかな?」
「何の事…だ?」
「だぁかぁらぁ…ルビィちゃんの事。」
カレンの口調が鋭さを増していく…
「そこまでだっっっ!」
と遠くから声が聞こえる。
皆声のする方に視線を向ける…
そこに立つ副長ゴーダとその側近数名の兵士、そして声の主クラリスだ。
「カレン、ビシャスから離れろ。」
とクラリスが口を開く…
なんの事だ?と皆ビシャスさんの方を向くと、いつの間にかビシャスさんの喉に剣を当てているカレンの姿があった。
当の本人ビシャスさんも、それに気付いていた様子で手を上げている。
「クラちゃーん、話聞いてよー。こいつらが悪いんだよー?」
「理由は何であれ、仲間を傷つける事は許さんと何度も言ったはずだ。今すぐ術の発動を止めろ。」
「つまんなーい。絶対クラちゃんも怒ると思うんだけどなー。」
「いくら私が怒っても仲間に危害を加えたりはしない!」
プンプンとほっぺを膨らましながら、剣の術を解くカレン。
ビシャスさんは、ほっとしたようにその場から離れる。
「とりあえず状況の確認だ、何があったのか説明しろ!」
とゴーダ副長が一声をあげると、腕の治療が終わった筋肉オヤジが手を挙げ答える。
「……クラリス様、そこのガキがビシャス小隊長に食って掛かってたんで、少し教育をしてたんですわ、そしたらその新人がいきなり、おれの腕を切り落とし…で、今に至るって訳ですわ。」
「ユウ、カレン、本当か?」
「あぁ…概ね間違った事は言ってねぇ…ビシャスさんに食って掛かったのは事実だ。」
「まったく!何をしているのだお前は!目的を忘れるな!馬鹿者が!」
「だけどよ…クラリス…。」
「言い訳するな!見苦しい!貴様らも仲間同士で争うなど、兵士に在るまじき行為だ!」
くそっ!悔しいがクラリスの言う通りだ。今回の件は完全に俺が独りで、余計な事しただけだもんな。
「でもクラちゃん、こいつらルビィちゃんの事悪く言ってたよ?それでお兄ちゃんが怒ってさー」
「なに!?ならば全員殺せ!」
「はーい!りょーかーい。」
「ちょっ!ちょい待て-!!!!」
クラリスの変わり身の早さに、慌てて口を挟む俺。
仲間同士で争うなど……とか言っていたばかりで何言い出すこのアホは…。
ほら、皆ビックリしてるって!
「お、お待ち下さいクラリス様!!!!」
とゴーダ副長も慌ててクラリスを止める、顔が真っ青だ、多分本当に全員殺られると分かってるんだろうな…
周りの連中も皆ポカンとしてるわ…
「今回の件は私が皆への説明不足でして!その、カレンの事やクラリス様の真意も伝えていなかった私の責任です!何卒!兵の皆に寛大な処置をっ!」
「んじゃゴーダちゃんが責任取るってことでいいのー?」
ニコニコしながらゴーダ副長に歩み寄るカレン…全身から紫色のエナが湧き出る。
「待て、カレン。ゴーダどういうことだ?説明しろ!」
「はっ!ここ第三部隊の皆にはクラリス様の前では水聖ルビィの名を出すことを禁じていました。勿論このような事態を防ぐ目的であります!」
なるほどね、兵の皆に良く思われてないルビィ、そんなことをクラリスの前で話したら斬られちまうもんな…。
んで部下達はルビィ大好きクラリスなんて想像もしないから影でルビィの事を悪く言ってたってことか…。
んで?カレンは何なんだ?新人とか呼ばれてたし…
「ゴーダ。だいたい分かった、後程処分について考えよう。皆の者!良く聞け!」
シーン…
とクラリスの一声で一斉に静まる。
「我が名はクラリス!元イグザ王国軍隊長、現在は連合国軍副長だ!そして、ルビィ様親衛隊の隊長だ!ルビィ様への各々の考えを、とやかく言うつもりは無い!だが!今後ルビィ様への冒涜、侮辱を、親衛隊の前でしてみろ!命は無いと思え!分かったな!」
ザワザワ…
「クラリス様が?」
「そんなまさか!?」
「聞き間違いじゃないよな?」
周りからは動揺が隠せず思わず様々な声が漏れる、未だに信じてないみたいだ…。
「貴様ら!聞こえたのか!」
そんなざわめいた空気の中、クラリスの一声が響き渡る…
我に返ったように周りの人達は姿勢を正しながら頭を下げる。
「「「はっ!クラリス様!」」」
とその場にいた兵士全員が、頭を下げながら膝をつき、目の前のクラリスに忠誠を誓う。
……
「カレン、ユウを救ってくれた事感謝する。」
「いいよーカレンとかクラちゃんと一緒で、ルビィちゃんの事良く思ってる異端者仲間だからねー」
「ふん。異端者か…誰が言ったか知らんが、まったく下らん。何故あの方の素晴らしさが分からんのだ!」
と2人で話を進める、周りの皆がドン引きしてるわ…
そりゃ悪魔だの恐怖だの仕事しないだの、ボロクソ言ってたルビィが、自分らの崇拝する女神さまの憧れなんて知ったらな…
「あ、えっと改めてありがとうな。俺はユウ。真上悠宜しくなカレン。」
「ユウちゃんね。よろしくー」
「んんっ!それでだなカレン。私もユウもカレンと同じ異端者仲間ということで少し相談があるのだが…」
「なにー?なんでも言ってクラちゃん。」
「ユウを殺さないでくれるか?」
クラリス何言ってんだ?
そもそも前情報とカレンと全然違うじゃねぇか?
こんな少女が問題児ってのも眉唾だぜ、確かに手は早いかもしれないけどさ…
「時と場合にもよるけど、なんで?」
「どうせ後々分かることだ、正直に言おう。ユウは封印の地からルビィ様の命により連れてきたのだ。」
「えー?じゃぁダメだよ、ユウちゃんは後でゆっくり殺すよ?」
ほらな?
こんな少女が俺を殺すって言ってんだからクラリスも…
「はい?カレンさん?今なんと?」
「んー?後でゆっくり殺すよ?」
「ちなみに理由を聞いても?」
「ルビィちゃんに近寄るゴミはカレンが殺すんだよ?」
首を傾げながら俺に殺人予告する少女。
「マジかよ…本当にクラリスの言った通りか。」
「カレン、そうやってルビィ様を案ずるのも分かる、現に私もユウを斬りそうになった、だがルビィ様の命だ!今はそちらを優先しないか?」
「ええー?どうせ殺すんだから早い方がいいよー。」
「すんません、俺が死ぬの前提で話進めないでもらえますか?」
どうする?
今死ぬか、後で死ぬかみたいな2択。
ルビィが言ってたっけ、カレンには話が通じないって。
分かる、今なら分かるよ、この娘にカリキまで連れてけ言っても無理だわ。
「では、こういうのはどうだ?カレン。ユウをカリキまで連れて行くのにお前も同行しろ、その間に殺す必要ないと判断すれば殺さない、カリキまで連れて行きカレンの考えが変わらなければ好きにすれば良い。」
「まてまて、ちょっと待て」
「んー?でもカレン早くルビィちゃんとこ行きたいし、カリキまで行ってたら次の物資運ぶの、カレンじゃなく誰か他の人行っちゃうよ-。」
「それなら心配いらない、カレンが戻って来るまで物資の搬入を止めておこう。ユウ!ルビィ様は、物資が多少遅れても大丈夫だな?」
「食材の心配ないと思うぞ?メインの食材は狩ってたし、保存食もまだ半年は大丈夫だ。
んじゃなくて、俺の生死をもう少しだな…」
仕込んできた保存食はそこそこあったはず、調味料関係が心配だけど半年はいけるだろう。そもそもルビィが料理しなけりゃもっと長持ちするんだよ!
「でもルビィちゃん料理出来ないから心配だよ?」
「あぁ、料理なら多少出来る様になった(ネオンがやっている)し、大丈夫だと思うぞ?」
「は?ユウちゃん、ルビィちゃんに料理とか教えたりしてたの?そんなに仲良くしてたのかな?ちょっとムカムカするんだけど…」
声のトーンが下がりるカレン、機嫌を悪くしたのが丸分かりだ…。
カレンの感情に同調するかの如く、紫色のエナがジワジワ身体から出てくるのが見える。
「いや仲良くとかじゃなくて、ほら、半年くらい一緒に生活してただけだし…」
「やっぱゴミはゴミだね。クラちゃんにはわるいけどー、どうでも良くなってきちゃった-!」
っと全身にエナを纏うカレン。
マズい!さっきの剣が来る!
どうする!ガード間に合う?首か!?首狙いで良いんだよね?
「ゴミは処分だね…」
気付くと目の前にカレンが居た。
手を振り上げ、その手の先にはエナの塊が見える。
そう俺だけには見える。
シュンッ
っとカレンは腕で空間を切る様な動きを見せる、カレンの手の先から伸びたエナの塊は迷わず俺の首を狙ってくるが、これをなんとか躱す。
「あっぶ!ねっ!」
「あれ?」
見えない剣擊を躱され、驚いた表情で俺を見るカレン、エナの剣を逆手に持ち替えもう一度俺の首目掛けて腕を振るう。
「ふん!がっ!」
首筋に少しだけ剣擊が触れるが、なんとかバックステップで身体を後ろに逃がす。
「んん??おかしいな?見えてないよね?カレンの腕の動きから予想してるのかな?」
見えてます、実は見えてますよ。なんて言っても状況変わんないしな…あとはクラリス次第かな…。
「んじゃ、これならどうかな?」
とカレンの手からユラユラッと物干し竿くらいの長さまでに伸びた剣。
ヤベェ!長え!これ見えてなかったら回避不可能だぞ!洒落にならねぇよ!
重さが無いのか、エナの剣を簡単に俺に振るうカレン…距離を取っても真っ二つに斬られる長さの剣、なんとかその場に伏せる様に躱す。
「ぐぁあ!!」
「きゃあ!!!」
俺の背後から巻き添えを食った兵士達の声が聞こえるが今はそれどころじゃない…。
「おかしいな?なんで躱せるの?」
不思議そうな顔で俺を見るカレン…
無邪気そうな見た目とは裏腹に相当危険だ。
「よし、カレン終わりだ。」
とクラリスがカレンの前に立つ。
「遅ぇよ!クラリス!死ぬかと思ったじょねぇか!」
「うるさい!まったく、話で纏まるところを貴様が脱線させたのだぞ!?」
「え!?嘘?俺死ぬ事でまとめないでもらえますか?」
そんな俺達の会話に入ってくるカレン…
どうしても俺を斬りたいのか、少し不機嫌そうだ…。
「どいてよクラちゃん。」
「やめておけ、このまま続けても負傷者が増えるだけだ、ユウを斬りたいならば誰も居ない所でやれ!」
「じゃぁ今クラちゃんを斬っちゃえば、カレンに誰も文句言えないよね?」
「はぁ…。結局こうなるのか。」
額に手を当てながら、ため息をつくクラリス。
「久しぶりにクラちゃんと殺りあえるなんて、カレン楽しみだよ!」
そんなクラリスとは正反対に少し嬉しそうなカレン…
クラリスの剣を持つ手にエナの光が灯る。
「カレン、私はお前と殺りあうつもりはないので即座に終わらせる!」
「えっ?」
とクリスタルを手に取り発動する。
クリスタルをカレンに放り投げ、消える様にその場から姿を消すクラリス…。
カレンはいきなりのクリスタル発動に何か嫌な予感でもしたのか、迷わず目の前のクリスタルに斬りかかる。
キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!
と剣のぶつかり合う音がカレンのエナとクリスタルの間で鳴り響く…
「わっ!わわっ!」
クリスタルに斬り込んでいるカレンの背後からクラリスが姿を現し、一撃を浴びせようと斬りかかる…
ズゥゥゥン!!!!
と鈍い音と共にクラリスの一撃がカレンに叩きつけられる…
が、カレンは右手で目の前のクリスタル、左手でクラリスの一撃を受け止める。
カレンの両手から溢れるエナは視認出来る剣となり、クラリスの剣と目の前のクリスタルを難なく止める。
「ふぇ…クラちゃん、今のは危なかったよ。」
「ふん。クリスタル1つ使っても傷1つ無しか…相変わらず化け物染みているな…。」
「まさかクリスタルにクラちゃんの剣擊が撃ち込まれてるなんてね、ルビィちゃんやカレンじゃなきゃ止められなかったよ。」
周りの皆が2人の戦いを見て呆然としている。
「分かったよクラちゃん、1回休戦。ユウちゃん殺すのはいつでも出来るし。」
そう言って剣の術を解くカレン。
それを見たクラリスも剣を納め、クリスタルを回収する。
俺はひとまず助かったってことか?
「ふう…。まったく、ユウがクリスタルを使えれば私がこんな事をしなくても済んだのに。」
「しゃーねぇだろ!何でか知らないけど俺にはエナ関係がサッパリなんだからよ…。」
「は?ユウちゃんクリスタルを使えないの?」
「そうなのだカレン、私も初めて聞いた時は驚いたがな、まさかこの世にエナの流れを、クリスタルを使えない者がいるとは…」
まぁな…元の世界で電化製品を使えないって言ってる様なものだしな。
「ふーん。なんかおもしろい人なんだねっ、ユウちゃんは。」
「ま、面白いかどうかは分からんが、今殺さないでくれるのは助かるな…」
とその場に座り込む。
「さぁ、貴様らも持ち場に戻れ!負傷者は治癒術を受け、無事な者は後片付けだ!」
とゴーダ副長が場の空気を一変させる、その声で呆然としていた兵士達はワタワタと動き始める。
なんにせよ、これで今日死ぬって事は無さそうだな…。
にしてもドッと疲れたぜ…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「そういえばクラリス!」
「なんだ?」
「カレンは何で第三部隊で新人なんだ?クラリスやルビィとは昔から仲良さそうだと思ったんたが…。」
「ああ、前にも言ったがコイツは問題児なのだよ。」
「えへへ、前に居たとこの小隊長さん斬ったら第三部隊まで飛ばされちゃったんだ。」
「笑いながら言うことじゃねえよ?それ。」
「カレンは元々私と同じイグザ王国軍だったのだがな、連合国軍になってからは意見の食い違いやら何やらで揉め事ばかり起こしてな。私の権限で恩情を掛けるも、また問題を起こしての繰り返しだ。」
「んで結局、前線部隊に移動って訳か。」
「だってー、ルビィちゃんとこ行きたいって言ったら、ダメだー!って言われて-、むかーってなってー。」
子供かよ!なまじ実力あるからタチが悪いな…。
「でも、クラちゃんさっき親衛隊とか言ってたよね?カレンもそこに入るよ!」
「本気かカレン?隊長は私だ、お前は一般兵として入隊なのだから命令は絶対だぞ?以前いた特隊でも規律を守れなかったお前が命令を聞けるのか?」
「だーかーらー特隊に居たときは、あのオヤジがムカついてただけなのー!」
「あのー、クラリスさん?親衛隊ってマジな話だったの?」
「何を言っている当たり前だ!ルビィ様直属の部隊を作り上げ御守りするのだ!」
「で?カレンもいいの?親衛隊!」
「仕方ない、お前も入れてやろう。おい、ゴーダ副長!」
「はっ!」
「カレンは本日この時を持って第三部隊より親衛隊へ編入するが、何か異論はあるか?」
「はっ!問題ありません!」
ゴーダさんからすれば、厄介者が居なくなるんだから、ありがとうだよね…
「やったー!じゃぁカレンも親衛隊ね!」
「ああ、共に励もうではないか!
それで…ゴーダ副長、今後の話なんだが…」
と、またもや会議を始めるクラリス…ゴーダ副長達を連れて奥へと引っ込んで行く。
多分色々と忙しいんだろうな。
さてと、明日にはここを出発するって言ってたし、今の内に色々と済ませたい事はあるんだが…さっきのゴタゴタで居心地悪いな…
「ねぇ!ユウちゃん!聞いてもいい?」
「ん?」
「カレンの剣て見えてたの?」
「ああ。俺さ、人のエナを見ること出来るんだよ、『魔眼』って呼んでるんだけど…カレンのエナは紫色だろ?」
「へえー!凄いね!ホントに見えてたんだ!」
「いや、見ることしか出来ないんだよな。だから戦闘に関しちゃ素人同然だし、術が来るの分かってて避けるのも俺の運動神経次第だな…」
「そっかー、じゃぁ今度は普通の剣で殺しにいくね。」
「はうっ!しまった!自ら首を絞めちまった!」
「えへへ冗談だよ、しばらくは何もしないつもりだから大丈夫。」
「でも、『しばらくは』なのね。」
「あ、そうそう傷はだいじょーぶ?」
「あ?え?あぁそういえば?」
「治療術はね、傷は治るけど体力とか失った血とかは元に戻らないからね?」
「ん、大丈夫だ!こっちに来てからスタミナ向上してるし、傷さえ塞がりゃ問題ないぜ!」
「こっち?」
「ん?あぁこっちの事だ…」
そんなこんなでカレンと雑談を交わす、とりあえず今はまだ俺の命の心配は無さそうだ…。
しかし、ルビィの周りはホントに危険な人物ばかりだな…正直俺が1番まともで次にネオンって感じだな、残りは変人だ。
……
「ユウ!カレン!喜べ!」
クラリスが腕を組みながら、俺達の方へ帰ってきた、何やら御満悦な様子だが…
ん?後ろに居るのは…?
後ろには、ビシャスさんと、筋肉オヤジと、茶髪スネ夫の3人が居る…なんか3人共落ち込んでいる様にも見えるけど…。
「さぁ、3人共挨拶をしろ!」
「はっ!我が名はビシャス・コングリーフ本日この時より、ルビィ様親衛隊へ入隊致しました!宜しくお願い申し上げます!」
ほえ!?どういうこと?
「我が名はザンザス・カメリア本日この時より、親衛隊へ入隊致しました!宜しくお願い申し上げます!」
筋肉オヤジってザンザスって名前なのか…じゃなくて!え!?どういうこと?
「我が名はファルコ・レグリア本日この時より親衛隊へ入隊致しました!宜しくお願い申し上げます!」
「貴様ら!『ルビィ様』を付けろ!ただの親衛隊とは違うのだぞ!」
「「失礼しました!クラリス様!」」
オヤジとスネ夫が入隊!?ビシャスさんも?
「わーい、新人いっぱいだねユウちゃん。」
「おい!クラリス…これはどういう事?」
「あぁ今回の騒動の責任を取るとビシャスが言い出してな、部下2人を連れ、我が親衛隊に流れる運びとなったのだ。」
そりゃ何かしらの罰みたいのは有ると思ってたけど、俺達のとこに来るの?
「マガミ、先ほどはすまなかったな…クラリス様から叱咤を受けた我々は、第一か第二に飛ばされるか、ここで雑用だ。
それならクラリス様の近くで励みたいと思ってな、志願してみたら採用されたのだよ。」
ヒソヒソとビシャスさんが俺に詳細を話す。
「いやいや、ビシャスさんもそうだけど後ろの2人も親衛隊なんてホントにやるの?」
先ほどまで、あんな口叩いてた2人だ、性根は変わってないだろうし、何より俺はまだコイツらが気に食わねえんだよな…
そんな事を考えていると後ろの2人もこちらへやってくる。
「よぉ…そのさっきは悪かった…まぁ、クラリス様に嫌われるくらいなら、親衛隊でも何でもやってた方がマシだからな…やってやんよ、宜しくなガキ!」
ドンッと肩を叩くオヤジ…
挨拶代わりなんだろうけど、馬鹿力なのか相当痛い…。
「よっ!オッサンとは理由が違うけど、クラリス様直属の部隊だろ?第三よりこっちの方が割が良いからな…宜しくなボンズ。それとさっきはすまねぇな!」
ポンッと肩を叩いて去っていくスネ夫。
3人共動機が不純だな、まぁクラリス相手なら簡単に騙せるだろうけど、バレた時が怖いな…。
「なにヒソヒソ話してんのー?」
「か、か、カレン!!いや、マガミに挨拶を…なっ!マガミ!」
「ああ、まあ、そんな感じだ。」
「ふーん、まぁいっか。」
頭の後ろに手を組みながら歩き去って行くカレン。
ふーっ。と3人とも安堵した様子だ。
しかし、ルビィ様親衛隊には爆弾娘が2人居ることを忘れてはいけないぜ?
この男3人は簡単に導火線に火を付けそうで安心出来ないんだけどな…。
まぁ少人数だけど俺の護衛が増えたって考えれば良いか。
こうして俺の旅のお供が4人も増えたのだった。
ルビィ様親衛隊
隊長 クラリス
副長 俺
他 カレン ビシャス 筋肉オヤジ 茶髪スネ夫




