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愛をわかつまで  作者: 秋夜


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第46話 友達の暴走と、夜の個室


「……でね? この前なんて、真夜さんが急にお部屋で胸元の開いた服着てて、風邪引かないか心配でブランケットで包んであげたの」

都内の洗練されたカフェ。オシャレなパフェを突つきながら、薫子は楽しそうに友人たちへ近況を話していた。

「……ねえ、薫子」

向かいに座る友人のひとりが、フォークを置いてじっと薫子を見つめた。その目はどこか呆れと、深刻な心配に満ちている。

「な、なに……?」

「あんたさ……本当に好きな人とか、そういう『性的欲求』とかないの? 恋愛感情に疎いにもほどがあるでしょ」

「えっ!? し、好きな人……? 欲求……!?」

唐突すぎるワードに、薫子は顔を真っ赤にしてパフェのフォークを止めた。

「だって話聞いてたら、同居人の真夜さんも妹の夜留ちゃんも、完全にアンタに色気でアピールしてきてんの! なのにアンタが全部無自覚スルーして、お袋みたいにガード固めてどうすんのよ!」

「えぇぇ!? ガードって……私はただ、みんなが寒くないかとか、可愛いな〜って思っただけで……」

「それがダメだって言ってんの! あんた自身が自分の快感とか、女性としての欲望に疎すぎるから、相手のサインにも気づけないのよ!」

熱弁を振るう友人は、突然バッグからスマホを取り出すと、慣れた手つきで画面をタップし始めた。

「よし、決めた。あんた、今日の夜空いてるでしょ」

「え? うん、特に予定はないけど……」

「これ行きなさい。友達が働いてる系列の、完全会員制の『女性専用風俗』。初回無料チケットあげるから」

「ふ、風俗ーーー!????」

カフェの店内に響き渡りそうになった大声を、薫子は必死に手で抑えた。目を丸くして首をぶんぶんと振る。

「む、無理無理無理! なんで私が出張ホストみたいな……!?」

「ホストじゃないわよ! ちゃんとした店舗型の、女の子同士で本気で気持ちよくなれる風俗! 自分の身体がどれだけ感度良くて、女性としてどう愛されるか、一度プロに叩き込まれてきなさい!」

「えっ、女の子同士!? いや、だから無理だって――」

「はい、今日の20時で予約完了! 解散したらそのまま指定のホテル行きなさい! キャンセル不可だからね!」

「嘘でしょーーーー!?」

友人の圧倒的な押しと手際の良さに押され、薫子は断る間もなく、怪しげな会員制風俗の予約を入れられてしまったのだった。

同刻、夜20時。

都内の高級ホテルの客室。

「ど、どうしよう……本当に来ちゃった……」

薄暗い室内、ムードのある間接照明が灯るベッドの上で、薫子はガチガチに緊張しながら正座していた。友人に逃げ道を塞がれ、半ばパニックのまま指定された部屋に入ったものの、心臓は破裂しそうなほどバクバクと鳴り響いている。

(風俗って……本当に、女の人と……そういう、えっちなことをするんだよね……!? 嘘でしょ、私、どうなっちゃうの……!?)

服を脱ぐ勇気もなく、着てきたブラウスのボタンをギュッと握りしめて震えていると、コンコン、と部屋のドアが静かにノックされた。

「……ッ! は、はい!」

「失礼いたします。本日ご指名いただきました、――」

ドアが静かに開き、洗練された大人の色香を纏った女性が入ってくる。

部屋の明かりが彼女の顔を照らした瞬間、薫子の思考は完全にフリーズした。

そこに立っていたのは、この前カフェで連絡先を交換したばかりの玲奈だった。

薄いキャミソールの上にガウンを羽織った、艶やかな玲奈の姿。

そして、ベッドの上でガチガチに固まっている薫子。

二人の視線が室内の空気の中でぶつかり合い、固まる。

「……え?」

「……は?」

静まり返るホテルの個室。

お互いに開いた口が塞がらないまま、奇妙な沈黙だけが部屋を支配していた。

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