第4話 真夜の過去
私は、罪人だ。
世界で一番大切だったはずの娘を、この手で殺そうとした。
鬱病を患っていたからといって、幼い娘を巻き込んで死のうとするなんて……本当に最低な母親だ。
シングルマザーとして育て、親は私しかいなかったのに。
娘は幸いにも一命を取り留めた。けれど加害者である私が二度とあの子に会うことは許されない。私は永遠に贖罪の念を背負って生きると決めた。
娘は元夫に引き取られたという。どうか幸せになってほしい……私にそんなことを祈る資格すらないけれど。
それ以来、すべての感情を捨てて生きてきた。
自分で言うのも愚かだが、私には整った容姿があり、それ目当てで近づいてくる人間は絶えなかった。
求められれば、望まれるままに身体を開き、玩具のように扱わせた。自分には大切にする価値などない、ただの人形なのだから。
女たちにセフレとして都合よく利用される日々。こんな女が社長だなんて笑えてくる。いつか全てを失ったとしても、あの日犯した過ちに比べれば痛くも痒くもない。私には、幸せになる権利なんて最初からないのだ。
性行為に溺れるのも、ただ罪の意識から逃げたいだけの惨めな逃避行為に過ぎない。
「真夜〜! 今夜もシて! ホテルで待ってるから!」
昨日バーを出た後も、いつものように女から連絡が入り、ホテルへ向かった。
「真夜って何に対しても興味ないよね! ま、ヤれればなんでもいいけど! じゃ、始めるね!」
機械的に相手の求める反応を返し、行為に応じる。
「あっ……アンっ……ハァ、ハァッ……っ」
「真夜、綺麗だったわ。ありがと」
これが私の日常。何も感じない、ただの肉塊。
……けれど。
あのバーで会った子と再会した瞬間、私の心臓は確かに音を立てた。
理性を超えて、本能があの子を求めてしまっている。
あの光を失った瞳の奥にある痛みを、知りたいと願ってしまったのだ。




