第3話 出会い再び
「仕事に行かなきゃ……」
二日酔いの重い体を無理やり動かす。
会社に着き「おはようございます」と挨拶をしてデスクにつくと、上司の橘さんに声をかけられた。
「星野さん、この資料を取引先の『櫻さん』に届けて頂戴」
指定された会社へ向かい、受付で櫻さんを呼び出してもらう。ロビーで待っていると、奥から一人の女性が近づいてきた。
その顔を見た瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
ドクン……ドクン……っ。
息を呑む。目の前に立っていたのは、昨夜バーで会った「あの人に似た女性」だった。
「あっ、失礼いたしました! 初めまして、星野夜留と申します……!」
固まっていた自分を誤魔化すように急いで頭を下げる。
目があった瞬間、彼女も目を見開き、どこか儚げな表情で驚いていた。
「初めまして……櫻真夜と申します」
挨拶を交わし打ち合わせを終える。彼女は取引先の社長だったのだ。
用件が済み、背を向けて立ち去ろうとしたその時、ガバッと手首を掴まれた。
「あの……どうかしましたか……?」
声をかけると、彼女はハッとしたように手を離す。
「ご、ごめんなさい……つい。えっと……昨夜、バーでお会いしましたよね……?」
「あ……はい」
「もしよろしければ、仕事終わりに飲みに行きませんか……?」
遠慮がちに、けれどどこか縋るように誘われ、私は魅惑的なその雰囲気に飲まれて「はい……!」と即答していた。
あの日から心が死に、何事にも興味を持てずに生きてきたはずなのに。
櫻さんに会うと、止まっていた心が波打つ。この衝動は一体何なのだろう。
◇ ◇ ◇
side:真夜
まさか、またあの子に会えるなんて。
無意識のうちに、引き止めてしまっていた。
あの日、罪を犯して生き残ってから、感情を殺して生きると決めたはずだった。感じてはいけないのだと。
それなのに、どうしてこんなにもあの子に惹かれてしまうのだろう。
冷え切っていた心が動き出し、気づけば飲みに行こうと誘っていた。
……どこか自分と同質の、壊れた匂いがしたからかもしれない。
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