第27話 朝の光
眩しい朝の光がカーテンの隙間から差し込み、真夜はゆっくりと目を開けた。
「……ん……っ」
驚くほど頭が軽い。身体の芯にずっとこびりついていた重苦しい疲労感が消え去り、脳裏を満たしているのは澄み切った清涼感だった。
(こんなに……一度も目を覚まさないで深く眠れたなんて……何年ぶりかしら……)
ふと腕の中に目をやると、自分を優しく抱きしめたまま静かな寝息を立てている薫子の姿があった。その温もりと心地よい体温に包まれ、真夜の胸に愛おしさと安らぎがじんわりと広がる。
(本当に……温かい人……)
真夜がそっと身を起こすと、その気配で薫子もパチッと目を覚ました。
「ふぁ……あ、真夜さん……おはようございます。……あの、よく眠れましたか……?」
「ええ……信じられないくらい、ぐっすり眠れたわ。ありがとう、薫子さん」
「よかったぁ……!」
心からホッとしたようにふにゃりと微笑む薫子。けれど次の瞬間、昨夜交わした会話や出来事をふと思い出したのか、薫子の顔が急激に赤くなった。
「あ……えっと! 昨夜は……その、変なこと聞いちゃってすみませんでした……っ!」
「ふふ、気にしなくていいのよ? ……私の方こそ、楽しかったわ」
真夜が少し意地悪く微笑むと、薫子は真っ赤な顔のままパタパタとベッドを抜け出し、「あ、朝ご飯作ってきますね!」と逃げるように寝室を飛び出していった。
◇ ◇ ◇
「ふぁぁ……お姉ちゃん、真夜さん……おはよう……」
キッチンで薫子がトーストと温かいスープを準備していると、パジャマ姿の夜留が目を擦りながらリビングへやってきた。
「おはよう、夜留! 引っ越しの疲れは取れた?」
「うん、ぐっすり眠れたよ。……真夜さんは、眠れた……?」
少し心配そうに覗き込んでくる夜留に、真夜は優しく頭を撫でた。
「ええ、夜留ちゃんのおかげで、昨夜はとてもよく眠れたわ。ありがとうね」
「よかった……! お姉ちゃんが変なことしなくて本当に安心したよ」
「ちょっと夜留! 私をなんだと思っているのよー!」
プンプンと頬を膨らませて怒る薫子と、「だって~」とくすくす笑う夜留。
そんな姉妹のような二人のやり取りを、真夜はスープの湯気越しに愛おしそうに見つめていた。
「真夜さん、お口に合いますか? 温かいコンソメスープなんですけど……」
「ええ、すごく美味しいわ。心が温まるわね」
「本当!? よかった~!」
パッと顔を輝かせる薫子の横顔を見ながら、真夜は静かに心を撫で下ろす。
(こんなに穏やかで幸せな朝……いつ以来かしら。……ずっと、こんな時間が続けばいいのに)
昨夜の出来事をそっと胸に秘めたまま、今はただ、3人の間に穏やかで温かい家族のような時間が流れていた。
「さ、お二人さん! 朝ご飯を食べたら、今日も張り切って会社に行きましょう!」
「「はーい!」」
澄み渡る秋空のような、どこまでも平和で優しい朝が過ぎていくのだった。
第26話をお読みいただきありがとうございました!
昨夜のドタバタから一転、今朝は3人で平和な朝食タイムでしたね(薫子の料理が美味しそう……!)
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