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愛をわかつまで  作者: 秋夜


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第13話 反省会(side:橘薫子)

「ん〜〜〜……頭が痛い……っ」

激しい頭痛と全身のこわばりに顔を歪めながら、重い瞼を開ける。

……ん? ちょっと待って、ここどこ……!?

見覚えのない天井に慌てて跳ね起きる。私、なんで家で寝てないのよ。昨日……そうよ、夜留と居酒屋で飲んで……。

(えっ……嘘でしょ? ってことは、まさか……!?)

パニックになりながら部屋を見渡していると、キッチンからパタパタと足音が近づいてきた。

「あ、起きた! お姉ちゃん、おはよう!」

エプロン姿の夜留が、温かいお茶の乗ったお盆を手に、満面の笑みで立っていた。

(……やばい、ビンゴ。大失態だわ……! くぅぅぅ……っ!)

「……お、おはよう……星野……」

動揺を隠して絞り出した挨拶に、目の前の美少女はあからさまに不満気な顔で頬を膨らませた。

「あれ……? お姉ちゃん、昨日は私のこと『夜留』って呼んでくれたのに……」

……え? 待って待って、脳の処理能力が追いつかないわ。今、この子なんて言ったの?

「お……ねえ……ちゃん……!?」

「えっ? うん……」

当たり前でしょと言わんばかりに頷く夜留。混乱した頭のまま、私は喉を鳴らして問い詰めていた。

「あ、あなた……私のこと、覚えてたの……!?」

「うん……昨日、確信した……」

「(……やっぱり、夢じゃなかったのね……!)」

昨日、居酒屋で突伏していた時に頭を優しく撫でられた感触が蘇り、一気に顔が熱くなる。

あの時、あまりにも嬉しすぎて叫びそうになるのを必死で耐えていたのだけれど……そのまま寝落ちしてしまうなんて!

『何があっても私が陰から守る!』なんて心の中で意気込んでいた癖に、介抱された挙げ句に部屋まで送らせるなんて……恥ずかしすぎて穴があったら入りたいわ!

――じゃなくて! まずは大人として、上司として謝らなきゃ!

「あの……星野……介抱させてごめんなさい……っ」

謝罪した私に対し、夜留は無言でじっとこちらを見つめてくる。

沈黙が怖すぎる。背後にメラメラと青い炎が見えるような気すらして、私は冷や汗を流しながら言葉を重ねた。

「えっ……あ、ごめんなさい! 怒ってる……よね……!?」

「……お姉ちゃんって思ってるのは、私だけなんだ。……『夜留』って呼んでくれないんだ……」

しゅんとした表情で俯く姿に、私はハッと息を呑んだ。

「あ、やっぱり怒って――えっ!? あ、ごめんね……夜留、ちゃん……」

途中で『星野』と呼ぶのをギリギリで踏みとどまった自分を褒めてあげたいわ。

……って、正直に言わせてもらうけれど、心臓が爆発するかと思ったわよ! 名前を呼んでくれなかったから拗ねてただなんて、反省会の前に反則でしょ!

お姉ちゃん、可愛すぎて呼吸するのを忘れるところだったわ。

追撃するように、夜留は「ふふっ、ん! よろしいです!」なんて嬉しそうに微笑む。心臓にダイレクトに矢が刺さったわ。もう可愛いすぎて語彙力が消失しそう。

「ただ……怒っているのは、間違いではありません」

一転して低くなった声に、一気に背筋が凍りついた。

「えっ……そりゃそうだよね。介抱するどころか、お家に泊めさせてしまってごめんなさい……!」

やっぱり大迷惑をかけてしまったのだと頭を下げると、なぜか夜留はふっと可憐に笑った。

「あのね……お姉ちゃん、それはどうでもいいの!」

「……え?」

意味が分からなくて固まっている私に、夜留は腕組みをして真剣な眼差しを向けてきた。

「わたしが言いたいのはね……隙がありすぎだよ! 危ないよ……!」

「す、隙……!?」

「そう! 隙がありすぎです! 普段からあんな危険な飲み方をしてるの……!?」

真剣に怒る妹の姿に、私は小さくなりながら恐る恐る弁明した。

「い、いつもは……していません……」

だってしょうがないじゃない! ずっと心が死んでいた可愛い妹が、少しずつ光を取り戻して笑ってくれたのよ? お酒が進まないわけがないじゃない!

「そっか……でもね、ダメだよ。お姉ちゃんは綺麗で、カッコよくて、可愛いんだから……襲われちゃうよ!? とっても危ないんだよ!? わかってる……? いくら私の前だからって……お姉ちゃんが綺麗だから、私だってドキドキしちゃうところだったんだからね……!?」

「………………っ〜〜〜〜!?」

言葉にならなかったわよ……!

あまりにも私を褒めちぎってきたかと思えば、仕舞いには『ドキドキしちゃうところだった』ですって!? 誑かすにも程があるでしょ……!

可愛いあなたにそんなことを言われたら、お姉ちゃんの方が動悸どころか心肺停止を起こしちゃうわよ!

「飲みすぎたこと、顔が紅くなるくらい反省してくれたんだね! よし……! それじゃ、ご飯にしよっか……ね?」

「えっ……あ、ありがとう……」

「うん!」

許してくれたみたいだけれど、顔が真っ赤なのを見破られていたなんて恥ずかしすぎるわ。それにしても……『ご飯にしよっか』なんて、なんてできた妹なのかしら。お姉ちゃん感無量よ!

だけど……おかしいわね。

『陰からあの子を守るカッコいいお姉ちゃん』になるはずだったのに、完全に立場が逆転しているというか、手のひらの上で転がされている気がするわ……。

私、もっと頑張らないといけないわね……!

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