ご飯を堪能男装女子。
ベルキスさんに案内された食堂はものすごく広い石造りの建物だった。
窓もいくつもあって、テーブルや椅子の数も半端ない。
宴会場って言っても差し支えないなぁ〜。
キョロキョロと周囲を見渡しつつ、ベルキスさんの後を付いていく。
カウンターの横にあるカトラリーを見て、私の世界と同じで驚いたけど、ひとまず神と仏に感謝した。ありがとうございます、おかげで安心して食べられそうです。
カウンターからトレイを持って食べたい物を適当に取れって言われたけど、異世界初日なんだ‥。どれがどんな味がするか分からない‥。でも後ろから人はドンドン来るし、とりあえず食べ切れそうな量をトレイに乗せてベルキスさんと同じテーブルに座る。
「‥そんな量で足りるのか?」
「‥逆にそんなに食べるんですか?」
お互いトレイに乗った料理の数を見て驚いた。
騎士さんだし、確かにその筋肉を維持するにはそれだけ食べないと足りないんだろう。私はベルキスさんのトレイから落っこちちゃうじゃないかと思うくらいのおかずをまじまじと見つつ、自分の適当に取ったおかずを恐る恐る口に入れる。
「美味しい!!!」
「‥それは良かった」
いや、本当に美味しくて良かったよ‥。
食べたら味がないとか、しょっぱいとか、甘い‥なんてなったら、私は泣く。絶対泣く。ただでさえ一気に環境が変わったのに食事まで不味かったら、私は泣くって。
美味しいと言いつつ、食べている私の皿にベルキスさんはそっと肉を一切れ置いた。
「いや、そんな食べられませんって」
「だがそんな細くて仕事できるのか?」
「‥ベルキスさん、本来の私は‥」
「あ、そうだったな‥」
忘れてくれるな。
私はこれでも19歳の乙女なんだ。断じて男ではない。
乙女心がそろそろやさぐれモードになって「肉でもなんでも食ったらあぁ!!!」って言ってるけど、抑えてくれ。太るのは勘弁して欲しい。そこは大事にしようぜ、私の乙女心。
と、ベルキスさんが今度は小さな丸いオレンジの球体をお皿に乗せた。ミニトマトか何かなのか?
「えーと、これは?」
「果実だ。甘いぞ」
「はぁ‥」
これはもしや女の子なら果実かな?って思ったのか?
フォークを刺して口に入れると、ジュワッと甘い果汁が口一杯に広がる。あ、これ美味しい!!甘い!!
「これ美味しいですね!!」
「そうか?じゃあもう一つ‥」
「いや、それはベルキスさん自分で食べて下さいよ‥」
うん、やっぱりこの人自分よりも他人を優先しちゃう感じかも?そう思っていると、私の横にトレイがガシャッと置かれて、驚いて顔を上げるとラスカさんが睨むように見ている。
「‥隣、座っていいか?」
「あ、ど、どうぞ‥」
そんな睨むんなら、ベルキスさんの隣に座ってくれよ‥そう思うけど、怖いので黙って横に体をずらす。
「‥なんだラスカ」
「なんだじゃないっすよ!本当にこんな男と結婚するんすか?」
周囲に聞こえないよう小声で話すラスカさん。
ありがとう、その辺の配慮できる人で良かったよ‥。私も目立つのは勘弁だ。ベルキスさんはしれっとした顔でお肉を食べつつ、
「正しくはもう結婚したんだ。これで周囲は静かになる」
「‥1ヶ月後にある皇家のパーティーの招待状来ましたけど‥」
ベルキスさんの手がピタッと止まって、私をチラッと見る。
「‥ミヒロは留守番だ」
「そのミヒロにも招待状がレイノル様から来ました」
「っへ??」
私??
レイノル様って、あのさっき会ったレイノル様?
驚いて目を見開いていると、ラスカさんは私をジロッと睨む。
「お前、パーティーに出た事あるのか?」
「‥そもそもこの世界、私、初めて」
思わず片言で話す私をラスカさんがは〜〜〜〜〜っと大きなため息を吐く。
「どーすんすか、パーティーのルールもマナーも分からないのを連れてって、絶対貴族の連中が黙ってないっすよ!」
「‥どうにかする」
これは、もしかしなくてもマズイ感じなのかな?
竜の世話をするだけって思ったのに‥。
それとも、まさかの側室にされるのか?そう思ったら、もう意識が遠のきそうになる。神様、仏様、私はもう倒れてもいいでしょうか?
ラスカさんの好物は魔鳥のローストチキン。
塩気とニンニクがパンチが効いてて非常に美味しい。
お酒の提供はないので皆食べつつ「酒飲みて〜〜」って思ってます。




