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ZAMAA JULY 2026  作者: 真好
Week 2

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9/15

手柄を奪い私を追放した元婚約者。私の価値を知らないあなたの国、冷血公爵様が丸ごと買収しました。特許全回収で国家破産?もう遅いです






「ルシア・ヴァン・アストリア! 貴様との婚約は、今この瞬間をもって破棄する!」




 魔導灯が眩いほどに輝く、王都最大の夜会。




 きっちりと撫でつけられた緑の髪を持つ男――魔導技術ギルド長であり、私の婚約者でもあるギデオンの声が、華やかなホールに響き渡った。




 優雅なワルツの演奏がピタリと止まる。




 着飾った貴族たちの冷ややかな視線が、一斉に私へと突き刺さった。




「……理由を、お聞かせ願えますか?」




 漆黒の長い髪を微かに揺らし、私は静かに問い返した。




 焦る必要はない。




 これは、乙女ゲームの悪役令嬢として転生した私が、いつか迎えると分かっていた「断罪イベント」なのだから。




「しらばっくれるな! 貴様が私の愛するミアをいじめ抜き、さらには私が開発した『次世代型魔力炉』の特許を盗み出そうとしたことは既にバレているんだ!」




 ギデオンの腕の中には、可憐な栗毛をハーフアップにした少女がすがりついている。




 彼女は最近ギルドに入ってきた、庶民出身の助手であるミア。




 肉体関係を武器にしてギデオンに取り入り、今や完全に彼を骨抜きにしている、したたかな泥棒猫だ。




「ギデオン様ぁ……私、怖かったですぅ。ルシア様が、私の研究データを燃やすって……」


「可哀想なミア。もう大丈夫だ。この悪女は私が必ず追放してみせるからね」




 怯えたふりをしてギデオンの胸に顔を埋めるミア。




 その口角が、私にだけ見えるようにニヤリと吊り上がった。




 周囲のモブ貴族たちが、ヒソヒソと遠慮のない声で囁き合う。




『なんて恐ろしい令嬢だ。ギデオン様の手柄を横取りしようとするなんて』


『魔導産業革命を牽引する天才ギルド長に、なんて無礼な』


『あの女がいなくなれば、我が国の魔導産業はさらに発展するだろうな』




 馬鹿馬鹿しい。




 思わずため息が出そうになる。




 私が特許を盗んだ? 逆だ。




 蒸気と魔力が交差するこの魔導産業革命期において、国家の心臓とも言える『次世代型魔力炉』。




 その基礎理論から実用化まで、すべて私一人が開発したものだ。




 超一流の錬金術師である私の技術と日夜の努力を、無能な上司であるギデオンが「ギルド長の権限」という名目で横取りし、自分の手柄として発表したに過ぎない。




 彼は何一つ理解していない。




 魔力炉の複雑な構造も、その運用に伴う致命的なリスクも。




 さらに言えば、私はしがない没落貴族の令嬢などではない。




 隣国の王族であり、伝説の錬金術師の血を引く正当な後継者。




 面倒な王位継承の政争から逃れ、身分を隠してこの国で静かに研究に没頭していただけなのだ。




「才能もない分際で私の足を引っ張り、あろうことかミアの命まで狙うとは。もはや我慢の限界だ!」




 ギデオンは己のプライドで肥大した胸を張り、ホール中に響き渡る声で高らかに宣言した。




「ルシア! お前を魔導ギルドから永久追放とする! さらに、この華やかな王都から立ち去れ! 極寒の地、北部軍事特区への左遷を命じる!」




 北部軍事特区。




 それは強力な魔獣が跋扈し、万年雪に閉ざされた不毛の辺境である。




 魔導列車さえ通っていない、いわゆる「死の冷宮」。




 最下層ダンジョンも隣接する、極寒の隔離エリアだ。




 温室育ちの貴族令嬢なら、一週間と持たずに凍え死ぬか、魔獣の餌食になる場所である。




「ギデオン様、そんな……あんまりですぅ。彼女がいくら悪女でも、北の果てだなんて……」


「ミア、君は優しすぎるんだよ。この自己中心的な女にはそれくらいが相応しい。私の画期的な魔導技術があれば、この国は他国を圧倒し、莫大な利益を生む! この無能な女がいなくなれば、すべては完璧になるんだ!」




 ギデオンの言葉に、周囲の貴族たちから割れんばかりの拍手が巻き起こる。




 誰もが彼の虚構を信じ、私を「手柄を横取りしようとした嫉妬深い悪女」として蔑み、嘲笑っていた。




 自己愛のモンスターと化した元婚約者の姿を冷ややかに見つめながら、私は小さく息を吐いた。




「……そうですか。わかりました」




 私はドレスの裾をつまみ、完璧なカーテシーで頭を下げた。




「魔導ギルドからの追放と、婚約破棄。謹んでお受けいたします。今までお世話になりました」


「ふん、泣いてすがるかと思ったが、少しは往生際が良いようだな。今すぐこの場から消えろ! 二度と私の視界に入るな!」




 私は踵を返し、華やかなホールを後にする。




 背後からは、ギデオンの勝ち誇った高笑いと、ミアの甘ったるい嬌声、そして貴族たちの心無い嘲笑がいつまでも響いていた。




 誰も気づいていない。




 私が手ぶらで去っていくことに。




 魔力炉の稼働には、錬金術師である私の魔力波長を組み込んだ『マスターキー』が不可欠だということに。




 そして、私が定期的に「魔力緩和コード」を入力しなければ、あの炉が莫大な維持費を食い潰し、最悪の場合は暴走してただの鉄屑になるということに。




「せいぜい、今のうちに勝利の美酒に酔いしれているといいわ」




 冷たい夜風に漆黒の髪をなびかせながら、私は孤高の夜鳥のように微かに口角を上げた。




 彼らは知らないのだ。




 私がこの国に残してきた全特許権も、魔力炉の心臓部の稼働権限も、すべて私の指先一つで遠隔停止できるということを。




 私の価値を全く理解せずに追い出した彼らの国が、魔力炉の停止によってインフラを絶たれ、たった数日で天文学的な負債を抱えることになるという事実を。




 私はただ、遅効性の猛毒を仕掛けただけ。




 じわじわと破滅に向かう彼らの滑稽な姿を特等席で見られないのだけは少し残念だが、私には新しい赴任先がある。




 極寒の地、北部軍事特区。




 そこには、やがて私の「本当の力」を見出し、この狂った国ごと買収してくれることになる、冷酷で不器用な人物が待っているはずなのだから。




 私は魔導列車の三等客室の切符を握りしめ、北の空へと向かって歩き出した。




 間もなく崩壊する愚か者たちの宴に、もう未練はなかった。






***




 吹き荒れる吹雪の中、北部軍事特区の巨大な鋼鉄の門が重々しい音を立てて開いた。




「死の冷宮」と呼ばれるこの最前線基地は、文字通り凍てつく地獄だ。


しかし、到着した私を出迎えたのは、粗野な兵士ではなく予想外の人物だった。


「――到着を心待ちにしていたよ。ルシア・ヴァン・アストリア嬢。いや……隣国の至宝たる、王女殿下」




 雪の照り返しよりも眩い、淡い青髪。




 冷たくも美しいエメラルドの瞳が、私を真っ直ぐに射抜いていた。




 帝国最強の防衛機構を束ねる男。




 若き鉄血の冷徹公爵、ノア・オルディス。




 同時に、彼は絶大な魔力と引き換えに不治の『呪い』をその身に宿した、孤高の天才大魔術師でもあった。




「私の正体を、ご存知だったのですね」


「当然だ。君ほどの超一流の錬金術師を、ただの没落貴族として扱うほど我が国の情報網は腐っていない。それに……」




 ノア公爵は皮手袋を外し、どす黒く変色した自身の右腕を晒した。




 過剰な魔力による侵蝕現象。




 このままでは命に関わる重篤な呪いだ。




「私には、君の力が必要だった。だが、まさかあの愚か者たちが、自ら君を手放すとはな」




 私は小さく微笑み、鞄から取り出した小瓶の霊薬エリクサーに私の魔力を注ぎ込み、彼の右腕に振りかけた。




 一瞬にしてまばゆい光が弾け、彼を長年苦しめていた呪いの侵蝕が、嘘のように引いていく。




「……っ、これは」


「私特製の処方ですわ。でも、これで痛みは消えるはずです」


「……驚いた。宮廷魔術師が何百人束になっても治せなかったものを、一瞬で」




 エメラルドの瞳が、驚愕から、やがて熱を帯びた執着へと変わっていく。




 冷徹公爵と呼ばれた男の顔に、隠しきれない歓喜と強烈な独占欲が浮かんだ。




「素晴らしい。君は私が生涯をかけて守り抜くべき唯一の至宝だ。ルシア、私の妻になってくれ」


「……はい?」




 出会って数分での求婚。




 あまりの極端さに私が瞬きをしていると、彼は私の冷え切った手をそっと両手で包み込み、温かい息を吹きかけた。




「君を追放したあの愚鈍な男と、あの国……。君を傷つけた代償は、万死に値する」


「ノア様?」


「心配はいらない。君はここで、私の庇護下で好きなだけ研究をすればいい。外のゴミ掃除は、私の『財力』に任せなさい」




 そう言って微笑む公爵の瞳は、底知れぬ暗い愉悦に満ちていた。




 私は促されるまま暖炉のある豪奢な執務室へと通され、彼が淹れた極上の紅茶を一口飲んだ。




 そして、手元の小型魔導端末を操作し、ひとつのボタンを軽く押下した。




『特許権限・全面凍結』




 私が仕掛けた遅効性の毒が、今、静かに牙を剥く。






***




 その頃。




 王都の魔導技術ギルドは、未曾有の大パニックに陥っていた。




「ギ、ギデオン様! 第一から第五までの『次世代型魔力炉』が、すべて一斉に停止しました!」


「なんだと!? 馬鹿な、マスターキーを再入力しろ!」


「ダメです! エラーコードが弾かれます! さらに、魔力炉の根幹システムから『特許権の失効』を知らせる警告文が……ッ!」




 ギデオンはきっちり固めた緑髪を振り乱し、信じられないものを見るように魔導モニターを凝視した。




 モニターには無慈悲な赤い文字が点滅している。




『設計者:ルシア・ヴァン・アストリアの権限により、全特許の使用を凍結します』


「なっ……あ、あの女の特許だと!? 開発したのは私だぞ! 権限はギルド長たる私にあるはずだ!」


「そ、それが……特許庁の登録はすべて、ルシア様個人の魔力波長と紐付いておりまして……我々ではどうやっても解除不可能です!」




 魔力炉が停止すれば、王都の魔導列車の運行、工場の稼働、さらには防衛結界までもが機能を停止する。




「ふざけるな! いますぐ強制起動しろ!」


「不可能です! 炉内に蓄積された未処理の魔力が暴走を始めています! このままではメルトダウンを起こします!」


「な、なら冷却システムを……!」


「冷却システムの維持費だけで、1時間につき国家予算の1パーセントが飛びます! さらに、特許の不正使用に対する違約金が秒単位で加算されており……すでに、ギルドの年間収益の百倍を超えました!!」


「ひゃ、ひゃくばい……!?」




 ギデオンの顔から、一気に血の気が引いた。




 ルシアが毎日ひそかに行っていた「魔力緩和コード」の入力。




 それが途絶えたことで、魔力炉はただの金食い虫……いや、国家を食い破る巨大な時限爆弾と化していたのだ。




「ギデオン様ぁ……どうしたんですかぁ? 明日のショッピング、約束してくれましたよねぇ?」




 能天気な声でミアがすり寄ってくるが、ギデオンはそれどころではない。




「黙れ! お前みたいな役立たずのせいで……いや、違う、私の……私のせいじゃない!!」




 パニックに陥り、ミアを突き飛ばすギデオン。




 そこに、さらに追い打ちをかけるような絶望的な報告が飛び込んできた。




「ほ、報告します! 当ギルドが発行していた国債および全債務が……たった今、何者かによって『買い叩かれ』ました!」


「買い叩かれただと……!? 誰がそんな莫大な資金を……!」


「帝国最強の資本家にして軍部トップ……ノア・オルディス公爵です!!」




 その名を聞いた瞬間、ギデオンは完全に膝から崩れ落ちた。




「公爵は……当ギルドおよび国に対し、『即時の一括返済』を要求しております。


払えなければ……ギルドの全資産、魔導技術、および関連する国家予算をまるごと差し押さえると……ッ!」




 遅効性の毒は、完全に彼らの五臓六腑に回りきっていた。




 特許の剥奪によるインフラの完全停止。




 天文学的な違約金と、雪だるま式に膨れ上がる維持費。




 そして、圧倒的な資本力による国家規模の買収劇。




「お、終わりだ……。私達は、一体誰の逆鱗に触れてしまったんだ……?」




 ルシアの価値を全く理解していなかった代償は、国家レベルの即時財政破綻という、最も残酷な形で彼らに突きつけられたのだ。




 冷や汗にまみれたギデオンの震える呟きは、警報音が鳴り響くギルドの地下室に虚しく吸い込まれていった。






***




 王都の中心部、巨大な時計塔に設置された『全域投影装置』が突如として眩い光を放った。




 普段は王族のパレードや重要な国家発表にのみ使われる生放送の魔法カメラ。




 その映像が、王都中の上空に巨大なスクリーンとなって映し出される。




 そこに大写しになったのは、かつての威厳を完全に失い、床に這いつくばるギデオンと、化粧が剥げ落ちて泣き喚くミアの無様な姿だった。




『王都の愚民ども、よく聞け』




 映像の背景から響き渡ったのは、底冷えするような絶対者の声――ノア・オルディス公爵の冷徹な美声だ。




『貴様らが天才と称え、我が愛しの婚約者を追放したその男は、他人の特許を盗み、その構造すら理解できずに国家を破綻させた稀代の詐欺師だ』




 公爵の無慈悲な宣言と共に、次々と決定的な証拠が空に投影されていく。




 私が記した特許申請書の原本。




 ギデオンが署名を偽造し、成果を横取りした証拠となる魔導記録映像。




 そして、ギデオンの不正によって生じた天文学的な国家負債の総額と、ノア公爵による「国家及びギルドの全権買収」の完了通知。




「ち、違う! 私は騙されたんだ! あの女が、ルシアが私を罠に……!」


『見苦しいな。己の無能を露呈する暇があるなら、その腐った脳髄で計算してみるがいい。貴様らが私に支払うべき莫大な違約金は、貴様らの一族郎党をひっくるめて奴隷として売り飛ばしても、数百年は返済不可能な額だ』




 画面越しに公爵が冷笑した瞬間、王都中の広場から地鳴りのような怒号が巻き起こった。




「ふざけるな、ギデオン! お前のせいで税金が百倍になるだと!?」


「国がまるごと売り払われたってどういうことよ!?」


「この恥知らずの泥棒野郎!!」




 断罪パーティーでギデオンを称賛し、私を嘲笑っていた貴族たちも、今や血走った目で彼を一斉に糾弾していた。




 彼ら自身も、ギルドの連帯保証人として全資産を差し押さえられたからだ。




 まさに自業自得。




 一族郎党、取り巻きのモブに至るまで、美しい連座の完成である。




「嘘よ、こんなの嘘よぉ! 私は関係ありません! 全部この男が勝手にやったんですぅ!」




 ミアは手のひらを返し、画面の向こうの公爵に向かって媚びるように胸の谷間を強調した。




「こ、公爵様ぁ! 私、なんでもします! 若くて可愛い私を拾ってくだされば、絶対に損は――」


『吐き気がする。その汚物には、私設軍の駐屯地の便所掃除でもさせておけ』


「ひぃっ!?」




 容赦のない公爵の一瞥に、ミアは白目を剥いてその場に卒倒した。




 計算高き淫婦の武器など、本物の絶対者の前では一文の価値もない。




 ギデオンの実家である侯爵家は即日取り潰しとなり、全ての財産と地位は公爵家に没収された。




 プライド肥大の自己愛モンスターは、己の無能と虚栄心の代償を、すべてを失うことで支払うことになったのだ。






***




 数週間後。




 王都の地下深く、有毒な魔力瘴気が漂う最下層ダンジョン。




「ひぃぃっ、重い、手が、手が千切れる……ッ!」




 ツルハシを握りしめ、ボロ布を纏って魔石を掘り続ける男の姿があった。




 きっちり固められていた緑髪は見る影もなく泥と汚物に塗れ、その瞳にはもはや正気の色はない。




「どうしてこんなことに……私は天才ギルド長なんだぞ……私の価値を、なぜ誰も分からないんだぁぁっ!」


「うるさいわよこの甲斐性なし! あんたのせいで私の人生台無しよ! 早く掘りなさいよ、今日のノルマが終わらないと夕飯は泥水だけなのよぉぉっ!」




 かつての可憐な面影など微塵もない、薄汚れた顔のミアがヒステリックに叫びながらギデオンを蹴り飛ばす。




 永遠に終わらない過酷な肉体労働。




 一日に稼げる額など銅貨一枚にも満たないのに、彼らの首には秒単位で利子が増殖する「借金首輪」が嵌められている。




 二人は絶望のどん底で、互いを罵倒し合いながら、一生暗い泥にまみれて這いずるしかなかった。






***




 そんな彼らの惨状など、今の私には一切関係のないことだ。




 極寒のはずの北部軍事特区は、私にとって世界で一番温かく、甘い場所となっていた。




「ルシア。新しい魔力炉の調整で疲れただろう。今日はもう休むといい」


「ノア様……。でも、まだこの数式の確認が……」


「いけない子だ。夫の言うことが聞けないなら、直接ベッドまで運ぶしかないな」


「きゃっ!?」




 ふわりと体が浮き上がり、鉄血の冷徹公爵――今は私にだけ甘すぎる過保護な夫の、逞しい腕の中に抱き上げられる。




 温かい暖炉の火が燃える豪奢な部屋。




 テーブルには、彼が私のために世界中から取り寄せた最高級のスイーツが並んでいる。




 呪いから解放され、全盛期の圧倒的な力を取り戻した公爵は、文字通り私を溺愛していた。




「私の愛しいルシア。君の天才的な才能も、そして君の存在そのものも……私の全てだ」




 淡い青髪を揺らし、エメラルドの瞳で熱を帯びた視線を注ぎながら、ノアは私の漆黒の髪に優しく口付けを落とす。




「ふふっ……ありがとうございます、ノア様」




 私は安心しきって、彼の広い胸に顔を埋めた。




 私の価値を知らず、手柄を奪い、私を追放した愚か者たちは、今頃冷たい泥水の中で這いつくばって泣いていることだろう。




 彼らが自ら手放した「本当の価値」は、もう二度と彼らの手には戻らない。




 私を正しく評価し、狂った国ごと丸ごと買い上げてくれたこの最愛の人の腕の中で、私は永遠に続く至上の幸福を噛み締めていた。





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