第4話 バランス型パーティー
第4話 バランス型パーティー
『現在保有魔力:2』
ライムとラックが仕留めた二匹を、還元した分だ。
ライム一匹だった頃とは違う。
ラックが外縁で獲物を狩る。
俺が死体を還元する。
ただ、問題もある。
ラックは傷を作って戻ってくる。
黒い体の端が裂けていても、平然と影に沈む。
ライムが小石を転がして近づくと、べちゃりと押し返す。
平気だと言っているようだった。
だが、俺は平気ではない。
せめて、ステータス表示でもあればなぁ。
俺はスライム観察記録を開いた。
『観察記録の蓄積を確認』
『スライム観察記録を更新』
『追加機能:個体情報表示』
個体情報表示。
『登録個体』
『ライム』
『ラック』
ラック。
『個体名:ラック』
『状態:軽傷』
『総合評価:E』
『確認特性:隠密性B/核隠蔽A』
『確認行動:黒い触手/拘束/呼吸阻害』
やっぱり怪我しているじゃん。
なんとかしてあげたいなぁ……。
『周辺魔素の吸収を確認』
『魔力+1』
『現在保有魔力:3』
そのお知らせを待ってたよ。
簡易生成ガチャ一回分。
『簡易生成ガチャ』
『生成可能魔物:スライムのみ』
『必要魔力:3』
『実行しますか?』
実行。
『魔力3を消費します』
『現在保有魔力:0』
床に白い光が落ちた。
黒い影から生まれたラックとは違う。
柔らかく、静かな光。
それが丸く膨らみ、もちり、と床に乗った。
乳白色のスライムだった。
中央には、雫を囲むような核紋が浮かんでいる。
『生成結果:スライム』
『個体色:乳白』
『核紋:雫輪』
『修復粘液:B』
『傷口封鎖:B』
『総合評価:E』
修復粘液。
傷口封鎖。
俺を悩ませていた傷を、塞いでくれる。
名前はすぐに決まった。
ラン。
『個体名:ラン』
ランは小さく体を沈めた。
ぺこり。
お辞儀に見えた。
清楚系お嬢様。
そんな言葉が浮かぶ。
その直後、ラックが入口側から戻ってきた。
また獲物を引きずっている。
黒い体の端に、浅い傷。
ランが動いた。
速かった。
乳白色の体がラックの横へ滑る。
ラックは逃げようとする。
だが、ランの白い粘液がぺたりと傷口に張りついた。
ラックが嫌がる。
けれども、ランは離さない。
塞ぐまで。
『スライム観察記録:ラン』
『傷口封鎖:成功』
『対象個体の拒否反応:確認』
見た目は清楚。
やっていることは強行治療。
ラックがじたばたしている横で、ライムが触手を振っている。
たぶん応援している。
その一匹を含め、ラックは三度、獲物を運んできた。
傷を作って戻るたび、ランが塞ぎ、俺が死体を還元する。
その小さな循環で、魔力は再び三まで戻った。
『現在保有魔力:3』
俺はもう一度ガチャを開いた。
ここまできたら、もうバランス型パーティーの定番。
主人公、戦士、僧侶。
斥候? 魔法使い? 盗賊?
期待だけではない。
問題もある。
入口偽装はある。だが、完璧ではない。
先に気づく目は欲しいところ。
目ではないかもしれないが。
『簡易生成ガチャ』
『生成可能魔物:スライムのみ』
『必要魔力:3』
『実行しますか?』
二度目の実行。
『魔力3を消費します』
『現在保有魔力:0』
床に明るい光が落ちた。
小さな陽だまりのような光。
それがぷくりと膨らみ、ぽよん、と跳ねる。
陽黄のスライム。
中央には、花びらのように広がる核紋。
向日葵みたいだった。
『生成結果:スライム』
『個体色:陽黄』
『核紋:陽花紋』
『魔素感応:B』
『外部警戒適性:B』
『総合評価:E』
来た。
警戒適性B。
名前は、レイユ。
太陽みたいな色だから。
『個体名:レイユ』
レイユは高く跳ねた。
ぽよん。
もう一度。
ぽよん。
止まらない。
陽花紋が、入口、天井、ライム、ラック、ラン、俺の台座へと忙しく動く。
元気がまぶしい。
ライムが近づく。
レイユも跳ねて近づく。
二匹で小石を挟んで、ぽよんぽよんと跳ね合う。
洞窟が少しだけ明るくなった気がした。
ラックは即座に背を向け、影へ沈む。
ランは静かに揺れている。
微笑んでいるように見えた。
顔はないが。
『スライム観察記録:レイユ』
『周辺魔素反応:高』
『外部警戒反応:確認』
『活動反応:過多』
四匹になった。
ライム。
ラック。
ラン。
レイユ。
透き通る翡翠。
艶のある漆黒。
もちりとした乳白。
跳ねる陽黄。
俺のダンジョンには、四匹のスライムがいる。
勇者ライム。なんちゃって。
影の戦士。
強引な僧侶。
元気な斥候。
その時、レイユの動きがぴたりと止まった。
陽花紋が入口側を向く。
さっきまでの遊びとは違う。
『魔素感応:レイユ』
『周辺魔素の乱れ:微弱』
『距離:遠』
『原因:不明』
今? 俺は何も感知できなかった。
だが、レイユは感知した。
俺たちの誰も気づかなかった外の気配を。
『登録個体数が規定値に到達』
『ダンジョンカスタムを更新』
『区画拡張を解放』
区画拡張。
その文字に、洞窟の空気が少し変わった気がした。




