↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/11

第4話 バランス型パーティー

第4話 バランス型パーティー


『現在保有魔力:2』


 ライムとラックが仕留めた二匹を、還元した分だ。


 ライム一匹だった頃とは違う。


 ラックが外縁で獲物を狩る。


 俺が死体を還元する。


 ただ、問題もある。


 ラックは傷を作って戻ってくる。


 黒い体の端が裂けていても、平然と影に沈む。


 ライムが小石を転がして近づくと、べちゃりと押し返す。


 平気だと言っているようだった。


 だが、俺は平気ではない。


 せめて、ステータス表示でもあればなぁ。


 俺はスライム観察記録を開いた。


『観察記録の蓄積を確認』

『スライム観察記録を更新』

『追加機能:個体情報表示』


 個体情報表示。


『登録個体』

『ライム』

『ラック』


 ラック。


『個体名:ラック』

『状態:軽傷』

『総合評価:E』

『確認特性:隠密性B/核隠蔽A』

『確認行動:黒い触手/拘束/呼吸阻害』


 やっぱり怪我しているじゃん。


 なんとかしてあげたいなぁ……。


『周辺魔素の吸収を確認』

『魔力+1』

『現在保有魔力:3』


 そのお知らせを待ってたよ。


 簡易生成ガチャ一回分。


『簡易生成ガチャ』

『生成可能魔物:スライムのみ』

『必要魔力:3』

『実行しますか?』


 実行。


『魔力3を消費します』

『現在保有魔力:0』


 床に白い光が落ちた。


 黒い影から生まれたラックとは違う。


 柔らかく、静かな光。


 それが丸く膨らみ、もちり、と床に乗った。


 乳白色のスライムだった。


 中央には、雫を囲むような核紋が浮かんでいる。


『生成結果:スライム』

『個体色:乳白』

『核紋:雫輪』

『修復粘液:B』

『傷口封鎖:B』

『総合評価:E』


 修復粘液。


 傷口封鎖。


 俺を悩ませていた傷を、塞いでくれる。


 名前はすぐに決まった。


 ラン。


『個体名:ラン』


 ランは小さく体を沈めた。


 ぺこり。


 お辞儀に見えた。


 清楚系お嬢様。


 そんな言葉が浮かぶ。


 その直後、ラックが入口側から戻ってきた。


 また獲物を引きずっている。


 黒い体の端に、浅い傷。


 ランが動いた。


 速かった。


 乳白色の体がラックの横へ滑る。


 ラックは逃げようとする。


 だが、ランの白い粘液がぺたりと傷口に張りついた。


 ラックが嫌がる。


 けれども、ランは離さない。


 塞ぐまで。


『スライム観察記録:ラン』

『傷口封鎖:成功』

『対象個体の拒否反応:確認』


 見た目は清楚。


 やっていることは強行治療。


 ラックがじたばたしている横で、ライムが触手を振っている。


 たぶん応援している。


 その一匹を含め、ラックは三度、獲物を運んできた。


 傷を作って戻るたび、ランが塞ぎ、俺が死体を還元する。


 その小さな循環で、魔力は再び三まで戻った。


『現在保有魔力:3』


 俺はもう一度ガチャを開いた。


 ここまできたら、もうバランス型パーティーの定番。


 主人公、戦士、僧侶。


 斥候? 魔法使い? 盗賊?


 期待だけではない。


 問題もある。


 入口偽装はある。だが、完璧ではない。


 先に気づく目は欲しいところ。


 目ではないかもしれないが。


『簡易生成ガチャ』

『生成可能魔物:スライムのみ』

『必要魔力:3』

『実行しますか?』


 二度目の実行。


『魔力3を消費します』

『現在保有魔力:0』


 床に明るい光が落ちた。


 小さな陽だまりのような光。


 それがぷくりと膨らみ、ぽよん、と跳ねる。


 陽黄のスライム。


 中央には、花びらのように広がる核紋。


 向日葵みたいだった。


『生成結果:スライム』

『個体色:陽黄』

『核紋:陽花紋』

『魔素感応:B』

『外部警戒適性:B』

『総合評価:E』


 来た。


 警戒適性B。


 名前は、レイユ。


 太陽みたいな色だから。


『個体名:レイユ』


 レイユは高く跳ねた。


 ぽよん。


 もう一度。


 ぽよん。


 止まらない。


 陽花紋が、入口、天井、ライム、ラック、ラン、俺の台座へと忙しく動く。


 元気がまぶしい。


 ライムが近づく。


 レイユも跳ねて近づく。


 二匹で小石を挟んで、ぽよんぽよんと跳ね合う。


 洞窟が少しだけ明るくなった気がした。


 ラックは即座に背を向け、影へ沈む。


 ランは静かに揺れている。


 微笑んでいるように見えた。


 顔はないが。


『スライム観察記録:レイユ』

『周辺魔素反応:高』

『外部警戒反応:確認』

『活動反応:過多』


 四匹になった。


 ライム。


 ラック。


 ラン。


 レイユ。


 透き通る翡翠。

 艶のある漆黒。

 もちりとした乳白。

 跳ねる陽黄。


 俺のダンジョンには、四匹のスライムがいる。


 勇者ライム。なんちゃって。

 影の戦士。

 強引な僧侶。

 元気な斥候。


 その時、レイユの動きがぴたりと止まった。


 陽花紋が入口側を向く。


 さっきまでの遊びとは違う。


『魔素感応:レイユ』

『周辺魔素の乱れ:微弱』

『距離:遠』

『原因:不明』


 今? 俺は何も感知できなかった。


 だが、レイユは感知した。


 俺たちの誰も気づかなかった外の気配を。


『登録個体数が規定値に到達』

『ダンジョンカスタムを更新』

『区画拡張を解放』


 区画拡張。


 その文字に、洞窟の空気が少し変わった気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。