第2話 クルア
白の森から流れ出る水の恩恵を受け、農業を主産業とした村があった。ごく弱い魔力をおびた水は村人たちを健康にし、作物を健やかに育てていた。
「おーい、クルア。これをばあちゃんに持って行ってくれ」と大きな声で言うのは、村で農家をしている父親のシアン。
「えー。今、絵を描いてるのにー」と地面にしゃがみこんだまま頬を膨らませているのがクルアと呼ばれた少女。あどけなさが残る10歳で父親の農業と母親のリーナが営んでいる雑貨屋の手伝いをしていた。
絵を描くのが好きで、時間を見つけては地面に石や木の枝で絵を描いている。
シアンはちらっとその絵を見て「ほほぉ、今日はトマトか?葉っぱも細かく描いていて上手いぞ」とクルアの頭を撫でる。
褒められてまんざらでもないクルア「へへぇ」と頬を緩ませて笑う。
「で、行ってくれるな」と野菜とイノシシの燻製肉が入った籠を渡され、「もぉ」と緩んだ頬を膨らませながらも「行ってきます」と腰を上げる。
「白の森だから大丈夫だと思うが、気をつけてな。ばあちゃんによろしく言ってくれ」というシアンに「はーい。行ってきます」と返事をして森に向かう。
クルアの家は森の入り口辺りにあるので、白の森は庭のようなものだ。今日のように天気が良い日は森の中に日が差し込み、木々の葉も嬉しそうに緑を輝かせている。枝葉の間からもれる光に案内されるように祖母の家に着く。
扉をたたくと同時に「クルアかい?」と中から声がして扉が開く。
「おばあちゃん、元気だった?今日はお父さんの野菜とイノシシ肉を持ってきたよ。今年の野菜はいい出来なんだって」と野菜が入った籠を渡す。
「ありがとう。これはまた、いい色艶だねぇ。今年も気候に恵まれたようで安心したよ」と籠の野菜を見るおばあちゃん。足元のカーバンクルがイノシシ肉を見つけて鼻をフンフン鳴らしている。
「へへっ。途中喉が渇いてトマトを一つ食べちゃった。とっても美味しかったよ」と笑いながら言うクルアに、『まぁ』と目を丸くしながら「ありがとね」とおばあちゃん。




