第1話 一人のエルフ
満月の光に包まれた白の森。淡い光に包まれた泉。そこに一人エルフの姿があった。
満ちた月の魔力で実る木の実を一つ一つ丁寧に収穫していく。
・・・・・やがて月は地に沈み太陽が目覚める。
日の光を受けて草花の上でまるで精霊が踊っているようにキラキラと輝く雫。
エルフはその雫も静かに集めていく。
「精霊の力が宿りしモノたちよ。その力を私に貸しておくれ」
エルフはそう呟いて去っていった。
エルフは白の森にひっそりと暮らしていた。
かつて大賢者と呼ばれ、国王の側近として大戦に力を貸したことがあった。
しかし、多くの血が流れたことを悔やみ、一人ひっそりと白の森に居をかまえ政に加わることはなかった。
「さぁ、今日は久しぶりに良いものができそうだねぇ」とつぶやき傍らに座るカーバンクルの頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細めながら『キュー』と鳴くカーバンクル。
「よし、力があるうちにやってしまおうかね」と腕まくりをして、古びた大きな机に向かう。
月の魔力が満ちた木の実をすり潰して油を漉しとる。
様々な木の実や薬草、鉱物の粉を倉庫の棚から出してくる。
「これでいいかねぇ。あっでもこっちの方がいいかねぇ」とブツブツ言いながらいくつかを大鍋に入れる。
油を注ぎながら混ぜ合わせ、最後に雫を垂らす。
呪文を唱え混ぜ合わせていると鍋肌に魔法陣が浮かび上がる。額に汗を浮かべながら木のヘラで混ぜ続ける。
魔法陣の光が弱くなったかと思えば七色に光を放ち静かになる。
「ふぅ、久しぶりにこんなに魔力を使ったねぇ」と腰をトントン叩きながら鍋の中を見るエルフ。
そこには精霊の力が宿りし『精霊のクレヨン』が並んでいた。
「さて、これに選ばれるのはどんな人かねぇ」と大事そうにクレヨンを木箱に収める。
「皆が穏やかに過ごせる世になるといいんだがねぇ」と窓の外を眺めながらつぶやく。




