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あの日、言えなかったありがとう  作者: 二晴


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12/13

祖父が私に会うたび「きれいだな」と言う

祖母が癌で亡くなってから、祖父の認知症が急激に進んで

毎日介護をしている母のことすら分からなくなっていた。


それなのに、私に会うたび、少し照れたように笑って


「今日もきれいだな」


と言う。


祖父は典型的な昭和の人で、照れ屋で無口。

基本的に何を言っても「おう」しか言わない人だったから

最初は家族全員衝撃だった。


でも会うたびに言われるようになってからは


「若い頃のおばあちゃんに似てるからだろうね」


と親戚中で笑い話になった。


そんな祖父も昨年亡くなり、部屋を片付けていたとき

祖母の日記が見つかった。


癌が見つかってからも震えた字で

治療がつらい事、嬉しかった事、いろいろ書いてあった。


その中に


『お父さんの無口で男らしいところが好きだけど

一度くらい綺麗だって言ってくれてもよかったわね。』


という言葉と、舌を出して笑っている顔が書かれていた。


祖父は私を祖母だと思っていたのか、

それとも若い頃の面影を重ねていたのかは分からない。


でも確かにそこには、祖母に対する後悔と愛があったんだと思う。



2人は今、再会できているだろうか。

祖父はちゃんと「綺麗だな」と伝えられているだろうか。

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