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祖父が私に会うたび「きれいだな」と言う
祖母が癌で亡くなってから、祖父の認知症が急激に進んで
毎日介護をしている母のことすら分からなくなっていた。
それなのに、私に会うたび、少し照れたように笑って
「今日もきれいだな」
と言う。
祖父は典型的な昭和の人で、照れ屋で無口。
基本的に何を言っても「おう」しか言わない人だったから
最初は家族全員衝撃だった。
でも会うたびに言われるようになってからは
「若い頃のおばあちゃんに似てるからだろうね」
と親戚中で笑い話になった。
そんな祖父も昨年亡くなり、部屋を片付けていたとき
祖母の日記が見つかった。
癌が見つかってからも震えた字で
治療がつらい事、嬉しかった事、いろいろ書いてあった。
その中に
『お父さんの無口で男らしいところが好きだけど
一度くらい綺麗だって言ってくれてもよかったわね。』
という言葉と、舌を出して笑っている顔が書かれていた。
祖父は私を祖母だと思っていたのか、
それとも若い頃の面影を重ねていたのかは分からない。
でも確かにそこには、祖母に対する後悔と愛があったんだと思う。
2人は今、再会できているだろうか。
祖父はちゃんと「綺麗だな」と伝えられているだろうか。




