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 正直に言おう、砂漠を舐めていた。


 太陽は真上から少し傾いてはいるが、強い日差しを砂漠の砂が反射し、目が痛い。

 サーティが用意してくれたローブと進行方向のおかげで直接太陽の日が当たることはないが、反射する光を見ているだけでも目の奥から痛みを感じる。

 砂漠を出てすぐは肩に乗っていたイブロも今は私のローブの下で休んでいる。

 あまりの眩しさに目をつぶって目を休ませる。

 ふと疑問が湧き、顔をあげサーティの顔を下から見上げる。


「おい、太陽を直接見るな、目が潰れるぞ」


 サーティは進行方向から目を逸らすことなくそうそっけなく言い放つ。


「もしかして、私を前に座らせたのって自分が日陰になるため?」

「後ろで騒がれたくないからだ」


 下からではサーティの表情は読み取れない。

 

「ま、事実なんてどうでもいいか」


 私はそう言って視線を前に戻し、サーティにもたれかかる。

 後ろからおい、と小さく声がするが聞こえないふりをして姿勢を直すことはしなかった。


「まさか、文字通り自分の背中を預けることになるなんて思いもしなかったな」

 

 なにも反応がないサーティを無視して話続ける。


「決闘してたの、昨日だよ? びっくり」


 膝の上でモゾモゾとイブロが動くのを感じる。


「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? どうして私を殺さないの」


 なにもリアクションのないサーティの言葉を私はじっと待つ。

 暑さのせいか、重ねている衣類が多いからか、背中越しに彼の体温を感じることはない。

 待ち続けていると、ようやくサーティは口を開いた。


「もしかしたら忘れているだけかもしれないと思ったんだ」


 言葉の意味がわからず、聞き返そうとするもなぜかサーティの言葉に胸がざわつくのを感じる。

 

「全てを忘れて、姿を変えているだけじゃないかって」

「それは、サーティが待っている人のこと?」


 そうサーティに問いかける。


「俺はずっと彼女を待っている。でも、全てを忘れて幸せなら、それが彼女の望みではなくとも、それが彼女の意思ではなくても、それが彼女の幸せなら」


 心臓が強く脈打ち、全身の血が騒ぐのを感じる。

 このざわつきの意味がわからず脳はパニックに陥る。


「どうか忘れたままでいて欲しいんだ」


 全身の耐えきれないざわめきに思わず目を強く瞑ると、脳裏になぜか一匹の黒猫が映り込む。

 首には小さなピンク色の石のついた首輪をしている。

 それは確かに私が地球で最後に手にした石のはずで、


「シエル」


 サーティの声でそう呼ばれると、心臓を鷲づかみされたように心臓に痛みを感じた。

 ドクン、ドクン、と人生で感じたことないほど強く心臓が脈打つのを感じる。

 その衝撃に耐えきれず目を開けると、ぐにゃりと視界が歪む。

 

『おはよう、主』


 サーティではない、聞きなれない懐かしい声が脳に響くと、私は意識を失った。




 ーーーーーーーー

「ソラ!」


 急に前に座っているソラが意識を失い、ズルズルと馬から落ちそうになるのを右手で支える。

 いきなりの出来事で脳の処理が追いつかない。

 さっきまで喋っていたソラがなんの前触れもなく意識を失い、今は俺の声に反応すらしない。


 俺は馬を止め、ソラの様子を確認しようとした時だった。

 

「サーティ! あれ!」


 シャカルの焦ったような声が聞こえ、シャカルを見ると血相を変えて何かを指さしている。

 シャカルが指差す方向を見ると、ゲパールのオアシスを抜けた先にあるはずのマカがゲパールを超え、すぐそこまで広がっていた。


 ドロドロと赤黒いマカは少しずつ、でも着実にこちら側へと広がっている。

 まるでヘドロのような粘着質なそれはマグマのように地中から湧き出ている。


 周囲には異臭がし、砂漠に生えているわずかな植物もマカが近づくと一瞬にして腐り果てる。

 動物はすでに逃げ出したあとなのか、静かにただ淡々とマカだけが広がってこちらに魔の手を伸ばしている。


「どうしてこんなところまで! つい数日前まで抑え込めていたはずだ!」


 俺がそう叫ぶと、シャカルははっと何かに気づく。


「ゲパール族は!? まだあの街にはゲパールの種族が、」


 シャカルがそこまで言うと目も開けられないほどの強い風が吹く。

 思わず閉じてしまった目を開けると、人型に戻ったイブロがゲパールの街の方向に強い風を吹かせていた。

 イブロが風を吹かせるとマカが後退し、なんとか馬が一頭通れるほどの道が開かれる。


「まだ民が残されているなら行かないと!」


 イブロはそう叫ぶとさらに強い風を吹かせ、さらに長い距離の道が開かれる。


「行こうサーティ! ゲパールの民を助けないと」

 

 シャカルにそう急かされるが、右手で支えるソラの温もりに意思が揺らぐ。


「いけ、サーティ! 俺が援護する!」


 上の方からそうイブロの声がする。俺はソラが持っていた紐を自分に括り付け、ソラのポーチから自分のダガーを取り出す。


「行くぞ!」


 俺はそう叫ぶとマカの方へ走り出した。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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