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「食べれるもの、持ってきたよー」
シャカルが洞窟内に入ってきて、手に持っていた野草と壺を見せる。
「そんな壺どこで見つけてきたの?」
「ん? あぁ、作ったのさ。アタシは土と水と火の精霊と契約していてね、それぞれの力は弱いからうまく利用する方法をいつも考えているんだ」
「そんな器用なこともできるんだね」
私がそう関心していると、シャカルは生きるためにはね、と続けた。
シャカルが作った壺から水を飲み、イブロにも水をあげる。シャカルが持ってきた野草を見ると、それは地球にもある野草にそっくりだった。
「ねぇ、これ火を通さないと食べられないと思うんだけど」
私がそういうとシャカルが驚いたように声をあげる。
サーティも私と同じように野草を確認すると、同意するように大きく頷いた。
「え? でも城の食事によく出てきたやつだよ? これ」
シャカルは不思議そうに野草を手にとる。サーティは呆れたようにため息をついた。
私はふとポーチの中に入っていた干し肉を思い出しそれを出すと、シャカルは嫌そうに顔を歪めた。
「アタシ硬い肉苦手ー」
「お前な、状況がわかって言っているのか?」
「だってアタシこれでも9貴族よ?干し肉なんて無理よー」
考えられない、と言わんばかりの態度にサーティは眉間に皺を寄せる。
私はやれやれと腰からサーティのダガーを取り出すと、水が残っているシャカルが持ってきた壺の中に干し肉を切って入れる。
同様にシャカルがとってきた野草も切って壺に入れ、火にかける。
「そのダガー、お前を刺したやつだぞ」
サーティの顔が焚き火の炎に照らされて揺れる。
「知ってるよ」
私はサーティから視線を壺に戻す。壺からぐつぐつと音がし始める。
「自分を刺したダガーでよく料理ができるな」
サーティは私に聞こえるように大きくため息をついた。
「でももう綺麗でしょ」
私は壺を見つめたままそう続ける。
サーティはそうだな、と返し、私と同じように沸々と沸き始めた壺を見つめた。
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サーティが一晩見張りをかって出てくれたが、正直こんな状況で寝れるわけもなく、私はサーティと並んで焚き火の火を見つめていた。
「あいつ、こんな状況でよく寝られるな」
サーティが視線を向けた方でシャカルは規則正しく寝息を立てている。
9貴族にはこういう図太さも必要なのだろう。
イブロは夜行生物なだけあって、ちっとも眠くないのか洞窟から外を見つめている。
「眠くないの?」
イブロにそう問いかけると、一声鳴かれたがそれはイエスなのかノーなのか私にはわからない。
「外に行ってきてもいいよ」
そうイブロに伝えるが、イブロはサーティをチラリと見ると洞窟の中に入ってしまった。
まだサーティを警戒している素振りに、やれやれとまた焚き火に視線を戻した。
「にしても、よく野草なんて知ってたな、地球人はみんな野営に慣れているのか?」
サーティの質問に思わず笑ってしまう。
「そんなことないよ。私はおじいちゃんがそういうの好きだったから、よく山に行って山菜取ったり、キャンプしたり、楽しかったなぁ」
ふと地球での暮らしを思い出して、大切な祖父の顔を思い出して、心がギュッとなる。
心配そうにイブロが私の手に擦り寄ってきて、私はそっとイブロを膝に乗せた。
「地球に帰りたいか?」
サーティの問いかけに静かに頷く。
「どうしてだ、ここにいれば玉座に座っているだけで死ぬまで裕福な暮らしができるぞ」
サーティは焚き火に薪を追加しながら表情ひとつ変えずにそう続けた。
「そうかな、きて早々全然裕福な暮らしさせてもらえてないけど」
今日なんて野宿だし、と続けながらイブロの羽を優しく撫でる。
さすがのサーティも押し黙り、パチパチと焚き火の音だけが聞こえる。
「俺は、お前が地球に帰る方法を知っている」
私は思わず顔をあげ、隣に座るサーティの横顔を見つめる。
「本当はお前もわかっているんじゃないのか」
私は自分の脇に置いたサーティのダガーを見る。
決闘の時、血を流したあの時見た地球の風景は幻じゃないというのだろうか。
「サーティは私を地球に帰したかったの?」
私はそうサーティに問いかけ、サーティは静かに首を横に振った。
「いや、お前が死のうが地球に帰ろうがどちらでもよかった。俺は、俺が支える王はただ一人だ、そいつ以外が王になるなんてだめだ、だからお前が王にならないなら死のうが地球に帰ろうがどちらでもよかったんだ」
サーティはそういいながら手持ち無沙汰からか、何かを誤魔化すためか、焚き火に薪を追加していく。
「でも」
サーティは一度何かを言いかけて口を開いたが、開いた口を一度閉じて少し唇に力を入れた。
「お前にはやってもらいたいことができた」
サーティは焚き火から視線を私に向け直す。
「だから今は少しでも体を休めた方がいい。眠くなくても横になれ」
サーティはそう言って私の頭を強引に自分の膝に乗せる。イブロも同意するように私のお腹らへんに陣取ると、じわじわとイブロの熱が体に伝わってくる。
サーティはそっと私の目に手をやると、私の瞼の裏が深い闇に覆われる。
「おやすみ、ソラ」
そのサーティの声を聞くと、私はゆっくりと意識を失い眠りについた。
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