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 レイとロザが会議室につくと、そこにはコルネを始めシャカルを除く9貴族とヴォルフが集まっていた。

 レイとロザが最後のようで、二人が入室するなり兵士が会議室の扉を閉める。


「お集まりいただいたのは他でもない、陛下の件だ」

 

 9貴族はヴォルフの言葉にソラが見つからなかったことを察し、各々心を痛めたような表情をする。


「イブー、お前でも見つけられなかったのか」


 赤い髪短髪の女性がそういうと、イブー族族長はすまない、と申し訳なさそうに頭を下げる。


「ルーブ、この雨ではイブーの翼と目を持ってしても陛下を見つけるのは困難だ」


 赤い髪の女性はそう初老の男性に嗜められる。

 

「しかしセルフ、」


 赤髪の女性が反論しようとすると、小さな少年が会話に割って入る。


「これこれ、あまりイブーをいじめるでない。この雨ではイブーの翼だけではなくルーブの鼻もセルフの耳も効かない。陸の領域のものでは太刀打ちできないだろう」


 そう小さな少年いうと、その場の全員が押し黙った。


「でもこれだけ雨が降れば水が領域の我々の方が優位に動ける。もう手は打ってある」


 なぁオルカ、セター、と少年は不敵に笑うと深い海の色を長い髪にもつ女性と、浅瀬のようなエメラルドグリーンの短い髪の女性が静かに頷いた。


「陛下はこの近くには居られません」

「少なくともこの雨の降っている範囲に陛下はいらっしゃりません」


 セターとオルカは静かにそう答える。ふむ、と少年が納得したように頷いた。


「どういう意味だ、セラカーン」


 ヴォルフがそう問いかけると、少年が続ける。


「水の精霊がいないと言っている。彼らの領域にはいないということだ」


 セラカーンは窓際に移動し、外のふり続ける強い雨を見つめる。


「しかしおかしいだろう、あの魔法石で行ける範囲など城の外がやっとのはずだ、それが一体どうやって…」


 ルーブは項垂れ、赤い色の髪が彼女の憂いを帯びた顔を隠す。

 その女性の肩に初老の男性が優しく手を置く。


「確かにあの魔法石で移動できる範囲を裕に超えている」

 

 セルフがそうヴォルフに進言すると、ヴォルフも深く悩むように頭を抱える。

 セルフ隣でイブーが顔を真っ青にして黙っている。

 イブーの異様さに気づいたヴォルフがどうした、と声をかける。

 イブーは何かを言おうとして口を開けるも、声を発する前に口を閉じ下唇を強く噛んだ。

 

「イブー?」

 

 ルーブが不思議そうにイブーの顔を覗き込む。

 ルーブの顔を見たイブーは意を決したように小さく呟いた。


「……倅のせいかもしれない」


 その一言に会議室がざわつく。


「ライレ殿の呪いを解いた時に倅が陛下の力を借りただろう。あれはきっと倅の力ではない、陛下の力だ」


 ヴォルフが目を見開く。


「倅が、陛下の力を目覚めさせてしまった」


 そう言い終わるとイブーは頭を抱える。

 その手が震えているのを見て、セルフとルーブはイブーの肩を抱き大丈夫だと慰める。


「いや、それはない」


 セラカーンの一言に弾かれたようにイブーは顔を上げる。


「確かにイブーのご子息に誘発されて陛下が力を発揮されたことは確かだろう。だが陛下はどの精霊とも契約していない」


 セラカーンの言葉にイブーはホッとしたように胸を撫で下ろす。


「むしろ私が気になっているのはそのライレとかいう侍女に呪いをかけた件だ」


 セラカーンはそういうとヴォルフを見つめる。


「この城、いやこの国一解呪に長けるお前でも破れない呪いをサーティがかけることができるのか? いくら火の精霊が呪いをかけることに優位だとしてもだ」


 ヴォルフはそう問い詰められ、表情に怒りを露わにする。


「私の力は衰えていない、サーティがどんなカラクリを仕込んだか知らないが、あの呪いは確かに私の力より強かった」


 ヴォルフの表情にセラカーンは納得したように黙る。


「陛下の行方もだが、どうしてシャカルがサーティと共に陛下を攫うんだ」


 セルフがそういうと、金色の髪の大人しそうな青年なおずおずと話し出す。


「わ、我々にもわからないんだ、この前会った時も普通だった」


 その青年に同意するかのように、ピンクブラウンの髪の女性が大きく頷く。


「ジラフのいうとおり3人で今年の妖精の様子を見に行った時もいつも通りだったわ。ただ……」


 女性がそう言い淀むと、ジラフという青年がゲパール!と咎めるように声を荒げる。


「ジラフ、もう私たちで隠し通せる状況ではないのよ」


 ゲパールはピンクブラウンの髪をかき揚げ長く息を吐く。


「シャカルはマカの増大を気にしていたわ。もうサブール砂漠のマカは私たちでは対処しきれないの」


 ゲパールの言葉にその場の全員が息を呑む。


「報告と違うぞ、ロザ」


 ヴォルフは強い口調でロザに詰め寄る。


「俺が様子を見に行った時は何てことも……」


 戸惑ったような様子でロザが答える。

 ゲパールは小さくため息をついて続ける。 


「えぇ、あなた達にバレないようにサーティが対処していたもの」


 それを聞いてレイが声を上げる。


「最初からサーティとグルだったということか」

「失礼ね、サーティがこんなことするなんて思っても見なかったわよ」


 ゲパールの態度にレイがゲパールに詰め寄る。

 

「シュナーベル、弁えろ。その方は9貴族の一員だぞ」


 ヴォルフの言葉にレイは震える右手をゆっくりと下す。


「マカの件は後でゆっくりと伺うことにする」


 ヴォルフがそういうと、ゲパールはそうね、と同意を示す。

 

「マカにシャカルに陛下に、問題が山積みね」


 それまで傍観を決め込んでいたコルネが口を開くとドアの向こうからローリエの声がコルネを呼んだ。


「ローリエ、雨は止ませられそう?」


 コルネが立ち上がると、窓の外を見ていたセルカーンがそのようだな、と呟く。

 徐々に雲の隙間から陽が差しだし、窓について水滴がキラキラと光り出す。


「この雨の後だ、もう陛下の匂いは消えているかもしれないが私も出よう」


 ルーブが立ち上がると、セルカーンが窓の外の異変に気づいた。


「あれは、イブーのご子息かな?」


 その声にイブーが立ち上がり窓に駆け寄る。

 窓越しのまだ雲の残る空に大きな翼が一つ浮かんでいる。

 それを見たイブーはあのバカ、と呟いて部屋から飛び出して行った。

 そのあとを追うようにしてルーブとセルフも部屋から出ていった。


「さて、陛下の件は失せ物探しが得意な彼らに任せよう」


 セラカーンがそういうと、セターとオルカが扉をゆっくりと閉める。

 ジラフを守るようにゲパールが前に出る。


「サブール砂漠のマカについて詳しく聞こうじゃないか」


 ヴォルフはそういうとギラリと瞳を光らせた。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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