17
イブロが去った後、ベッドに入るとそのまま眠ってしまった。
夜明け前にライレが起こしに来て、温かいお茶と軽食を出してくれる。
私は動きやすい服装に着替え、指定された場所に向かう。
レイが指定の場所まで先導し、ライレがついてくる。
城から少し離れた丘の上、街が見渡せる場所に私が着く頃には9貴族全員とヴォルフとその横には見たことない美人な女性が立っていた。
その女性が現国王コルネ様だとライレが耳打ちしてくれた。
ヴォルフの母親にしては若すぎる気もするが、今はそれどころではない。チラリとその女性を見ると、目が合った女性はとても穏やかに微笑んだ。
(ヴォルフの不機嫌顔は父親譲りね)
そう思っているとサーティが私より遅れてやってきた。
その手には真剣ではないが両手剣が握られている。
「丸腰か?」
「あなたこそ、両手が塞がっているのにどうやって勝利を掴むの?」
サーティはフン、と鼻を鳴らして所定の位置に着く。
いちいち喧嘩を売ってくる感じが演技のようで、昨日のサーティの方がよっぽど自然に感じた。
私も所定の位置に着くと、徐々に太陽が登ってきたのか建物の間から太陽のほんの先だけ見える。
「ではこれより、古来の風習に従い決闘を行う。なお、真剣の使用は禁止とし、どちらかが膝をついた時点で決着とする。それ以上の深追いは9貴族と現国王の名において禁止とする」
ヴォルフがそう宣言し、両者それを承諾する。
私とサーティはある程度距離をとって立ち止まる。
ヴォルフはそれを見て開始を宣言した。
サーティが勢いよく地面を蹴り、一気に距離を詰めてくる。
想定より圧倒的な速さに息を呑む。最初のあれは本当に私を甘く見ていただけだと痛感させられる。
すんでのところで避けるが、次の一手が早い、避けきれず左腕にサーティの攻撃が直撃する。
あまりの攻撃の重さに思わず声が出るが、続いて攻撃を受けるのを避けるため痛みを堪えて距離をとった。
「さすがに、中に何か仕込んでやがるか」
両手剣を構えるサーティはさらりと何事でもないようにそう呟く。
確かに攻撃を受けやすい箇所には対策がしてあるが、それでも攻撃を受けた左腕には感じたことない鈍い痛みが続いている。
感覚的に折れてはいなそうだが、酷い痣にはなっているだろうことが容易に想像つく。
「早くくたばったほうが身の為だぞ」
そう忠告されるも、私は聞こえていないかのように身構えた。
サーティは舌打ちして、次の攻撃を仕掛けてくる。
(何? まるでやりたくないみたいな)
「考え事か?」
そういったサーティは剣ではなく、拳で殴りかかってくる。
想定外の攻撃に防御が遅れ、私はその攻撃を鳩尾にもろに受ける。
ゲホゲホを咳き込む私にサーティは私と距離をとり再度剣を向ける。
(畳み掛ければ良いところをいちいち距離を置いて、何を考えているの?)
苦しさに酸素が回らない頭で考えるも、考えがすっきりしない。
わしゃわしゃと自分の髪をかきあげると、ふとサーティに髪を掴まれた時のことを思い出す。
(そういえば、あの時もそのまま後ろから切りつければよかったはず)
サーティが身構えて、次の攻撃がくることを察する。
(賭けてみるか)
ギリギリまでサーティの攻撃を引き付け、当たることを確信したサーティが大きく剣を振りかざす。
その一瞬の隙にサーティの懐まで一気に距離を詰める
「本当は両手剣、苦手なんでしょ」
そう小さくサーティにだけ聞こえるように囁く、サーティの動揺を感じ取り、その一瞬の隙に無防備な顔面に思いっきり拳を打ち込んだ。
もろに顔に攻撃を受け、ふらつくサーティにもう一発蹴りを入れ込む。
「なぜそう思う」
サーティは口元を拭いながらそう尋ねる。
「利点を活かしきれず、欠点を補えきれてない。苦手な証拠」
両手剣特有の攻撃と攻撃の間の隙を彼は補完できていない。逆に距離を詰める必要がないところで距離を詰め、両手剣をあえて窮屈に使う癖がある。
「本当は普通の片手剣の方が得意なんでしょ」
そういうと、そうだな、とサーティは答えてぽいと両手剣を放り投げる。
「だからリーチは短い方が得意なんだ」
今までのとは比べ物にならない速さでサーティは距離を詰める。
目で追いきれないそれを視認した瞬間何とか体を逸らすも、自身の左脇腹が熱くなるのを感じた。
言葉にできない痛みが走り、痛みの元を見ると服が自身の血で赤く染まっている。
生暖かいそれが腹をつたい、足に流れるのが気持ち悪く、痛みに思わず目を閉じる。
その瞬間瞼の裏に地球の自室が映る。
自分の祖父が心配そうにこちらを見ている。
おじいちゃん、と声をあげそうになった瞬間、目を開けるとそこはユグヌムで今のは幻覚だったと知る。
「まだ耐えるか」
そういうサーティの手には短剣が握られている。
私とサーティの間に隠れて見えないであろうそれをサーティは再度構え直す。
視界がぼやけて、脇腹の熱を強く感じる。
勝利を確信したサーティが構える短剣の柄をつかむ。
「リーチが短いのが得意なのは私もなのよ」
そういうと、勢いよくその手を引きサーティの体を引きつける、肩口を掴みサーティの両足の間に右足を差し入れる、自分の反転させながら自分の体を折り、内股を跳ね上げる。
バランスを崩し倒れ込んでくるサーティの体を地面に叩きつけた。
「膝をついた方が負けなんだっけ?」
荒い呼吸のままそうだずねると、9貴族たちのざわつきが聞こえる。
いち早くサーティが掴んでいる短剣を見つけたヴォルフが声をあげる。
近くに控えていたであろう兵士たちがこちらに走ってくる。
レイが携えていた剣を抜き、私とサーティの間に入ろうとするも私のサーティの足元に浮かび上がった大きな魔法陣に阻まれてそれは叶わない。
「全く、何やってんだ」
そうだれかの声がしたと同時にパチンと音がし、私は意識を失った。
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