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目を覚ますと、そこは見慣れないベッドの上だった。
ぼんやりと記憶を辿ると、昨日医務室から自室に戻るなりあまりの疲労に倒れるように眠ったことを思い出す。
カーテンの隙間からは光が漏れていて、もう随分日が登った後のようだった。
枕元に置いてあるコップから水を飲んでゆっくりと立ち上がる。
カーテンをあけて思いっきり伸びると、ドアが開いてライレが入ってきた。
「おはようございます、陛下」
そう頭を下げるライレの目元は少し腫れており、あの後も泣いていたのであろうことがわかる。
ライレの無理したような笑顔に心が痛む。
着替えて朝食を終えると、ローリエとレイが私の部屋に来てサーティとの決闘内容について説明してくれた。
今回は二人が王位継承候補であることから、現国王コルネ様の申し入れによりどちらかが膝をついた時点で決着とすることが決められており、時間も明日の日の出と指定がされたそうだ。
万一に備え、9貴族の立ち合いのもと真剣の使用は不可だと決まった。
「だいぶ安全な決闘になったね」
私が呑気に答えると、レイの表情は険しくなる。
「油断は大敵です。サーティは強いですよ」
そうだね、とレイに返事をする。
(でもさ、サーティの言うようにどこの馬の骨ともわからないようなやつより、ちゃんとこの国で生まれ育った人の方が国王に向いているんじゃない?)
窓から外を見ると、訓練だろうか、兵士たちが並んで走っている。
(彼らの命を預かるだけの価値が私にあるのだろうか)
そこまで考えて視線を外から室内に移す。
今はあまり深く考えるのは得策ではないような気がして、レイにサーティに関する話題を振った。
「サーティは大剣使いなんだっけ」
「そうです、あいつは炎の精霊と契約していて魔法も得意です、それに」
レイがそこまで言うとドアノックが数回聞こえ、ライレがドアを開けると入ってきたのはヴォルフだった。
「何を呑気にお茶しているのだ」
ヴォルフは朝食後のティータイム中の私を見るなり眉間の皺をより深く刻む。
「いくら真剣不使用とはいえ、寝巻きのまま挑むつもりか?」
私の目の前で腕を組み仁王立ちする姿は私よりよっぽど国王に向いている。
その姿をライレが失礼ですよ、と諭すと小さく咳払いし姿勢を正した。
惚れた女の前では素直なところが出立ちに似合わず面白い。
「防具ぐらい揃えたほうがいい、元より剣の腕前は求めていない。地球では剣なんて握らないだろう」
「重たい防具は動きが制御されるからいらない、武器もいらないかな」
私がそう答えると、ヴォルフの表情が歪む。
「我々におとなしくお前が負けるのを見ていろと?」
怒りというより悲しみに近い表情は、この男が見た目よりもっと優しい心の持ち主であることを教えてくれる。
「こう見えて私護身術は一通り身につけているつもり」
そういって軽く両手をひらひらとふる。
その瞬間ヴォルフの横で不自然に空間が歪み、私の顔面を目掛けて男の腕が伸びてくる。
私は顔を逸らし飛んできた男の腕を掴む。
「おぉ、確かにおっしゃる通り」
その声と腕の主はロザだった。
どうやってこの部屋に入ってきたのか謎だが、ライレとローリエの反応からして大層無礼な行為のようだ。
二人からの説教が始まったロザを横目に、レイがヴォルフの肩を叩く。
「陛下は一度サーティを退けていらっしゃる。そう悲観的になるな」
誰が悲観的になど、というヴォルフの顔からは悲しみの色が窺える。
「で、女性の部屋に転移魔法仕掛けるほどの急ぎのようはなんだったんだ?ロザ」
レイがロザに話をふると、ローリエとライレはお説教をやめ、ロザは私の足元にひざまづき頭を下げた。
私はギョッとして一瞬怯んだ間にロザは話始めた。
「許可なく入室した件をお許しください。いそぎ陛下にお伝えしたいことがあります」
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