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「急にあれだけの魔力を使ったんだ、座った方がいい」
イブー族の青年は私の手を引いて空いているベットに座らせる。
「陛下、私、なんとお礼を言っていいか」
ライレはポロポロと大粒の涙を流しながら、私の足元にひざまづいた。
そっと彼女の涙を拭うと、ヴォルフガングが決闘の件は私が受けよう、と怒りを含んだ声でいった。
「だが、申し入れたのは陛下の方だ。代理人の申し立ては受理されないぞ」
イブー族の族長がそういうと、ヴォルフガングは彼を睨み返し答えた。
「だが、ライレを傷つけられて黙ってはいられない」
私はライレの件で忘れていたが、何がどうなって私が決闘を申し入れたことになっているのか。
一人ついていけない私に、イブー族の青年がそっと教えてくれる。
どうやらワインをかけるということは貴族間の古い慣習で決闘の申し入れになるらしい。
「私がライレにされた分をやり返したから」
「そういうことだ」
私たちがやりとりしている間も、ヴォルフガングたちは何やら話し合いを続けている。
あの時、決闘を申し受けるといった男は確かに私がここに来た時殺しに来た男だ。
「ねぇ、あの男は誰なの?」
私がみんなにそう尋ねると、少し具合が悪そうにレイが答えた。
「あの男はリベ・サーティと言って、ソラの前の次期王位継承権を持っていたやつです」
(だからあの時、私を殺して継承権を取り返そうとしたわけね)
「私でるよ、決闘とかってやつ」
私がそう答えると、真っ先に反対したのはローリエだった。
「そんなのダメです! あいつは腕の立つ元軍人です。陛下の命を奪うことだって……!」
「うん、知ってるよ」
必死に私を止めるローリエにそう返すと、知っているって…とローリエは言葉に詰まる。
私はこの世界に来た時、サーティに襲われたことを話した。
ローリエとライレは絶句し、ヴォルフガングはレイを睨む。
「どうして報告しなかった、シュナーベル」
そう問われたレイは小さくため息をつく。
「まだ来たばかりの陛下が貴族に襲われたなんて聞いていったい誰が信じるっていうんだ」
レイの回答に納得いったのか、ヴォルフガングはそれ以上は問い詰めなかった。
「私、売られたケンカはきっちり買うタイプなの」
私は再度みんなを見てそういうと、私の意思の強さを感じ取ったのか、それ以上みんなは何も言わなかった。
足元でライレ啜り泣く声が聞こえる。
ライレのミルクティーのようなベージュ色の髪を撫でると、泣き声が少し大きくなる。
「今日はもう遅い、陛下もお休みになられた方がいい」
イブー族長の一言でその場は解散となる。
ローリエに先導され、自室に戻ろうとすると、まだ医務室に残っているヴォルフガングに呼び止められた。
「陛下、あなたをこんなところで死なせるつもりはありませんから」
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「そうはいってもどうするつもりだ」
ソラがいなくなった医務室では残った男たちが話していた。
族長の問いにヴォルフは答えられない。
「その立会人、私に任せていただけますこと?」
医務室の入り口から誰も予想していなかった人物の声がした。
ヴォルフ以外のみながその場にひざまづき、ヴォルフは小さく母上、と呟いた。
その女性は楽にしてちょうだい、というと、自身も近くにいった椅子に座った。
「私にもソラをこの世界に呼びつけた責任があります、それに国王としても、王位継承権を持った二人が決闘なんてして共倒れなんてことになったら困りますもの」
そうねぇ、と女性はほおに手をあて少し悩むようなポーズをとる。
「どちらかが膝をついたら、というのはどうかしら」
「そんなルールを守るとは思えませんがね」
ヴォルフは嘲笑うように鼻で笑うと、その女性はため息をつく。
「私が決めたルールですのよ」
その場に凍てつくような空気が漂う。
医務室の窓からは月の光が差し込む。
「守らないものをどう扱うかは、あなたたちに任せますわ」
女性はの目がギラリと光る。女性は言うべきことは言い終わったのかさっさと医務室を退室した。
医務室の窓からは綺麗な満月がくっきりと夜空浮かんでいた。
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