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会場がざわつき、私も決闘という単語に冷や汗を感じる。
「陛下はこの国の習慣をご存知ない、これは無効だ」
族長が慌てて会話に入るが、銀髪の男は楽しそうに笑った。
「何をそんなに慌てているのだ、イブーの族長殿。何も命までとろうというわけではないのだから」
そういう男の目はギラリと光る。
「ならば俺が代理になる」
後ろからレイが割り込んで、私の横に立つ。
男は大きな笑い声を立てた後、前髪をかきあげながらレイを睨みつけた。
「おいおい、レイラー殿はこの国の生まれだろう。忘れたのか?決闘は申し入れた側は代理を立てられない、常識だろう」
レイが隣で強く拳を握りしめた。
「私が元凶です! 私が罰を受けますので」
ライレが床に座ったまま叫ぶ。
「うるさい、コラ属の分際で俺に話しかけるな」
その男がライレを睨みつけると、ライレはそのまま俯いてしまう。
私が口を開こうとした時、
「これはなんの騒ぎだ」
聞いたことない低音の声がして、振り返るとそこには長身の男が立っていた。
周りより頭一つ分背の高い男が歩くと周りの貴族は自ら道をあける。
私よりよっぽど国王のように見える。
その男はチラリとライレをみると、すぐに私に視線を移した。
「陛下はお疲れのようだ、ローリエ、お連れしろ。サーティ殿、詳しいことは追って知らせる」
まだ言いたいことも言えていない私が反論しようとすると、その男はすごい眼圧で私を睨みつける。
黙ってろ、と言わんばかりの圧に思わず怯むと、ローリエはその隙を見逃すことなく私の腕を掴み私を誘導した。
その場に座り込むライレが心配で後ろを振り返ると、私を止めた男は優しくライレを抱き上げているのが見えた。
少し安心した私は抵抗することなく、ローリエについて自室に戻ることにした。
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自室に戻ると、ライレの代わりにローリエが温かいお茶を淹れてくれた。
ライレは大丈夫だろうか、心配でお茶に手をつけずにいると、ローリエが私の肩にそっと手を乗せた。
「大丈夫です、ヴォルはライレにひどいことはしませんよ」
(ヴォル、というのはあの長身の男だろうか)
着替えましょう、とローリエに言われて、私はなすがままドレスを着替えてラフな洋服に身を包む。
しばらくするとドアがノックされるのが聞こえ、ローリエが扉を開けるとヴォルと言われていた男とレイ、ロザが部屋に入ってくる。
「全く、初日から問題行動とは」
ヴォルと言われた男は名乗る前に開口一番私を睨みつけてそういった。
「私はリヒター・ヴォルフガング。前国王、リヒター・コルネの息子だ」
通りで私より国王らしいわけだ。
私は続く批判に身構えると、ヴォルフガングはその場にひざまづいて頭をさげた。
「ライレを庇ってくれて礼をいう」
想像とは違う行動に驚き、ワンテンポ遅れて頭を上げるよう彼にいう。
しかし、頑なに彼は頭をあげなかった。
ヴォルフガングはそのままこの国のことを説明してくれた。
「この国には9貴族で統治する9つ民族の他に、人間を3つの属性に分ける風習があるのです。1つ目はノマティと呼ばれる魔力を持たないものです。2つ目はプリネティ、7精霊のうち一つと契約できる程度の魔力を持つもの。3つ目は複数の精霊と契約できるほど強い魔力を持つものです。
個人の魔力の量は生まれによるところが強く、ライレのようなコラ属は昔からノマティが多く、迫害の対象になってしまうのです」
説明しているヴォルフガングの声からは悔しさが滲む。
「ライレが大切なんだね」
私がそういうがヴォルフガングは何の反応も示さない。
しかし、迫害される種族であると説明することにも悔しさを滲ませるほどである、その行動が何よりも肯定の証だった。
ドアがノックされ、小さく扉が開く。扉向こうの兵士とレイは少し話をする。
「ライレが落ち着いたようです、医務室で休んでいますが、会いますか?」
私は大きく頷き、レイ達と医務室へ向かった。
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