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 ローリエとライレに着替えさせられ、私は紺色のロングドレスに身を包む。

 裾にはまるで星空のようにキラキラとした石が縫い込まれており、私が動くたびに裾が輝いてとても華やかだ。

 胸元がレースになっておりガッツリ透ける素材になっていて、齢17歳にはちょっと刺激が強すぎるが、ローリエに手渡されたボレロを羽織ればまぁ多少は気休めにはなった。

 

(どうせ私が何を言っても拒否権はないのだし)


 ボレロの肩の部分にはマントが縫い付けられており、黒色のそれは全体をシックにまとめ上げる。

 胸元にはいくつかの宝石がはめられた大きなネックレスをつけられ、頭にはティアラを乗せられた。


「今度ちゃんと陛下の体にあったドレスをいくつか仕立てないといけませんね」


 ライレはドレスやその他諸々の調整をしながらため息をついた。

 私も悔しいことに、胸元の余裕が気になってしまう。


「こういう細かい調整は手作業なんだね」


 手に持った針と糸でドレスに微調整を加えるライレにそういうと、こういうのは手作業の方が綺麗なんです、と返された。

 そういうものか、と納得してるとドアが数回ノックされた。

 手が離せないライレの代わりにローリエが扉を開けると入ってきたのはレイだった。


「そろそろ準備できたかい?」

「後ここを調整したら……、できました」


 私の腰あたりで作業していたライレがふぅ、と息を抜いて立ち上がる。

 

「よくお似合いです、陛下」


 そうにこやかにお世辞をいうレイも正装に着替えたのか、真っ白の軍服に服装が変わっていた。

 ちゃんとヘアセットもしたのだろう、前髪を上げたスタイルはよりレイの端正な顔立ちを引き立てる。


「レイも素敵だね」


 そう返すと、少し照れたようにレイは頬をかいた。

 そろそろお時間です、と扉の向こうから声がして私はみんなに促されるまま廊下に出る。


 レイにエスコートされながら廊下を歩くと、すれ違う兵士やメイドの息を呑むのを感じる。

 チラリとレイの顔を盗み見ると、横顔もしっかり整っている。私は思わず背筋を伸ばした。


 大きな扉の前で立ち止まり、レイは扉の前の兵士に目配せする。

 ゆっくりと扉が開くと、扉の向こうで盛大に音楽が流れ始める。大きな拍手が始まり、扉が完全に開くとそこには着飾った多くの人間がいた。


 正直9貴族といわれその数から9人しかいないと予想に反した人数に思わず尻込みしていると、小声で陛下、とレイが呟き私は覚悟を決めたように、唾液を飲み込んだ。



ーーーーーーー

「陛下、大丈夫ですか」


 レッドカーペットを歩きレイに誘導されるまま椅子に座ったが、大変なのはそこからだった。9貴族に続き王都に居を構える貴族達からの挨拶を全て受けてやっと落ち着いた時には体力はそこをついていた。


「人生で予想していなかった経験が1日に詰まりすぎて」

 

 本来はもう椅子の上でもぐったりしたいところではある。

 はぁ、と肺の中の空気全てを追い出すような大きなため息をつくと、レイが横で幸せが逃げますよ、と苦笑いする。


「ここはあなたの城です。ここにあるのもは全てあなたのものですよ、人もものも、もちろん俺も」


 だからそんなに気負わないでください、ニコリと笑うレイの髪がシャンデリアの光を受けてキラキラと光る。

 

「気負うなっていわれても……」


 そうボソリと呟きパーティーに目を向けると、そこには眩しいばかりの美男美女。レイも整った顔だと感じていたが、それが平均であると感じてしまうぐらいには顔立ちの良い人ばかりである。


「綺麗な人が多いよね」

「俺はあなたの方が素敵に見えますよ」


(相変わらずお世辞が上手いことで)


 そんな他愛のないやり取りをしていると、ぱりんと何かが割れた音がした。


「こんなところにコラ属がいるとは何事だ」

「その手で触れないでちょうだい」


 音の方をみると、そこにはライレが床に座り込んでいるのが見えた。


 考えるよりも先に体が動いてライレの元に足が向かう。後ろでレイが名前を呼ぶのが聞こえたが、足を止める理由にはならなかった。

 どいてちょうだい、と貴族達を退けるとライレは頭からワインをかぶりそばには割れたグラスが散らばっていた。


「陛下、コラ属なんて奴隷を城に置くなんて品がありませんわ」


 私がライレのそばに座り込むと、そう女性は口元を扇子で隠しながら嘲笑うようにいった。

 ライレ、そう小さく私が名前を呼んでも、ライレからの返事はない。

 

(コラ属とか、奴隷とか、この国に来たばかりの私にはよくわからない、けど)


「陛下は地球で生まれ育ったとか……」


 女性はそう続ける。

 私は肯定も否定もせず、ただ女性を見る。


「まだ年もお若いようですし……」


 品定めするようにジロリと視線を向けられるが、私はその場を動かなかった。


「そこまでだ」


 ばさり、と大きな翼の音がした。

 私がその方をみるとイブーの族長が翼を広げていた。

 族長は女性と私の間に割って入るようにたった。


「それ以上陛下を侮辱するようであれば、この私が黙ってはいないぞ」


 その表情は私には見えないが声には明らかな敵意が滲んでいる。

 

「あら、次期王位継承者が自分の領地に降り立ったからってすっかり親鳥のつもりかしら」

「武力だけで思い上がっている貴殿ほどではない」


 ここで族長の立場を危うくするわけにはいかない、私はその綺麗な翼にそっと触れると、族長なチラリと後ろを振り返り私の顔を見た。

 オレンジ色の瞳瞳孔が大きく開かれ、怒りからか少し羽が逆立っているように感じる。

 族長は細く長く息を吐くと、私の後ろにスッと下がった。

 さっきまでの華やかさとは裏腹に殺気立つ会場に、バタバタと音がして視界の端からローリエや複数の軍服を着た人が入ってきたのが見える。

 

「確かに私は地球で生まれ育ったけど、あなた達よりは常識人のつもりよ」


 私はそばのテーブルにあったワイングラスをつかむ。

 そのままグラスをひっくり返しグラスの中身を相手の頭にぶちまけた。

 小さく悲鳴が上り、会場は一瞬で凍ったような空気が漂う。


「こんな侮辱は初めてよ! なんて野蛮なの!」


 しばらくして我に帰った女性がそうかなり声を出すと、近くに立っていた男性が、いい機会じゃないか、と声を出した。


「陛下にはこの国の習慣を学んでいただく良い機会だ」


 ニヤリと笑った口元には覚えがある。

 忘れもしない銀髪と赤色の瞳。


「決闘を申し受けよう」

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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