第13話『急襲』④
「行くぞ」
「はいっ」
カイゼルが発光し、ダッシュする。優もそれに続きながらサッと周囲を見渡す。天井は研究室から落下したのと同等程度の高さがあるだろう。奥までは一般的なグラウンド程のスペースが広がっている。こんな秘密のアジトをよく築いたものだ。
奥から向かってきたのは黒い怪物の群れだった。カイゼルが剣を抜き、優もレーザーブレードを構える。敵がスピードに乗り切らない内にカイゼルの剣が一閃し、一気に数体を斬り倒した。黒い鮮血が飛び散る。優も後に続き、カイゼルの斬っていない相手を後ろから切り伏せる。しかし、敵はさらに湧いてくる。
「待ち構えていたのかどうかは知らんが、結構な数だな」
「幾らでも斬って斬って斬りまくってやる」
優は気合を入れるが、それをカイゼルが制した。
「いや、ここは俺に任せろ」
カイゼルは両手にエネルギーを集中し、身体を発光させる。銀色の輝きが増していき、目も眩まんばかりだ。
「シャイニングバーストッ!」
叫びと共に光のエネルギーが黒い怪物の群れ目掛けて放出された。沢山の黒い影が光の中に搔き消されていく。出現した怪物共はほぼ一掃したようだ。しかし、あるところで光の放射が遮られた。何者かが手でエネルギー波を止めたのだ。
「乱暴はやめてもらいたいな、カイゼルさんよ」
出てきたのはサングラスをかけた長身の男だった。少しやさぐれた風貌で、今の行為といい、普通でない雰囲気が漂っている。
「こいつ……、きっとこの前のゴリラと同じタイプの怪物ですよ」
優の指摘にカイゼルが頷く。どう考えても人間の成せる所業ではない。
「怪物とは人聞きの悪い……。お前らだって、同じようなもんだろうぅぅぅ!」
男は叫ぶと、獣に姿を変貌し、甲高い吠え声を響かせる。
「狼男か」
敵の風貌は、牙を剥き出したオオカミの顔に、全身ふさふさの黒い毛を纏い、手足に鋭い爪を備えたものに変わっていた。
「なるほど、強そうじゃないか。だが、こちらも引く訳にはいかん。行くぞ」
「はいっ」
二人は身構えた。しかし、それよりも速くオオカミの爪が二人を切り裂いた。
「速いっ……」
その威力と殺傷力もかなりのもので、優はスーツに守られている胸の皮膚まで少し切られていた。カイゼルも胸を押さえている事から、相応のダメージがあったようだ。
「お前らに、オレは捕らえられん!」
狼男はまた一吠えすると、瞬く間に二人の間を駆け抜けた。そして、先程同様、爪で両者を切り裂いて行ったのだった。
「今の二回はほんのお遊びよ。次、どちらかの喉笛を嚙み砕くっ!」
狼男は呟くと、唸りを上げる。
「オイ、どうする?」
「どっちが行きますかねえ?」
カイゼルの問いに、優も呑気に答える。二人とも全く切迫した様子はない。
「この後ウォーグが控えてんだ。俺がいきますよ」
優が一歩前に進み出る。
「わざわざ死にに来るとはいい度胸だぜぇ~っ。ガルルルルッ」
狼男が唸って前傾姿勢を取った瞬間、もう優の懐に飛び込んでいた。しかし、そこに待っていたのは優の膝だった。しっかり右側頭部に命中し、狼男は床に転がりのたうち回った。
「二回もお遊びをしたのが失敗だったな。最初にやられたら死んでたかもな」
優はマスクの機能で狼男の動きを分析したのだった。確かに速いが、二度やられた経験は活きており、スーツ性能と連動して対応に成功したのだ。
「ガルルルルッ」
狼男のダメージはさほどでもないようで、こちらを睨んで吠えている。
「代わろう、一気にケリを付けるぞ」
今度はカイゼルが一歩前に出た。狼男はなおもいきり立って「嚙み千切ってくれるっ」と叫ぶ。優の眼前から奴の姿が消えた次の瞬間、その身体は宙に浮いていた。優のマスクでもかろうじて捉えられたのだが、突っ込んできた狼男にカイゼルがアッパーカットを食らわせたのだった。カイゼルが強烈な一撃で浮かせられた狼男を指差す。
「今だ、行くぞ」
「はいっ」
「ライトニングマッハダブルクロス!」
二人が一斉に飛び上がり、銀色に発光したカイゼルのライトニングキックと優のマッハキックが、交差しながら落下してくる狼の身体に命中した。優は自分が光の槍となって狼男の身体を貫いたような感覚を覚えた。敵は吠える間もなく宙で爆散し、二人は綺麗に地に降り立った。




