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神と悪魔の小さな戦争  作者: 星狼


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5/12

途切れた指

だが――


そのとき、階段の照明が、突然チカチカと点滅し始めた。

古い蛍光灯が、寿命の最期に痙攣するように、光を断続的に吐き出し、踊り場を不規則に明滅させる。

そして、一瞬の暗闇が訪れた後、階段の上から、重い金属の軋みが響いた。


非常階段の鉄扉が、強風に煽られて勢いよく閉じ、その反動で、扉に固定されていた古い消火器が、金具から外れて落下した。

消火器は階段を転がり落ち、ちょうど遥の足元に、鈍く、重く、ぶつかった。


衝撃が遥の体をわずかに揺らし、首を絞めていた両手が、一瞬、力が抜ける。

明は、反射的に息を吸い込んだ。

肺に空気が流れ込み、焼けるような痛みが一時的に和らぐ。

咳き込みながら、喉の奥に残る圧迫感を押し出す。

遥は、驚いて手を離し、後ずさった。

消火器は、彼女の足を軽く叩いただけだったが、そのタイミングが、完璧すぎた。


「っ……!?」


遥は、慌てて自分の手を見つめる。

指先が、まだ微かに震えている。

何をしていたのか、自分でも理解が追いついていない様子。

怒りの炎が、ゆっくりと混乱に塗り替えられていく。

瞳に宿っていた虚ろな光が、徐々に現実に戻り、

代わりに、深い後悔が浮かび上がる。

彼女の呼吸が、浅く乱れる。


明は、喉を押さえながら、這うようにして壁に背を預けた。

まだ息が荒い。

肺が、ようやく空気を求め、

心臓が、激しく鳴り続ける。


遥の精神を操るのは、確かに悪魔の能力だ。

神様は使わない能力。

だが「元からあった」消火器の落下と、扉の風圧。

ただ、それだけ。

それだけで十分だった。


木村明は、まだ生きている。

喉に残る痛みと、生き残ったことへの虚無が、彼をさらに深く追い詰める。

遥は、今、混乱と後悔で震えている。

昼の光が、二人の間に冷たく差し込み、階段の踊り場を、静かに照らし続けている。

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