囁きの継ぎ目
「さ、最新の衝撃吸収素材だと……!? なんじゃ、そりゃ!?」
大きく目を見開く者がいる。
彼は悪魔。
今、明の精神に忍び込んでいる者である。
明は自分の意識で自殺を選んだわけではない。
「日々の充実感がない」と感じていたのは事実。
その心の隙に、この悪魔が侵入したのだ。
優しく、冷たく、根を張るように。
「……君、ま〜たやってるのか?」
悪魔の背後に忍び寄る影。
呆れたような口調で、悪魔に言う。
「てめぇ……!神様、おめぇの仕業か、この野郎!?」
悪魔は背後を振り返り、声を荒げる。
「仕業ってどういう言い回しなのよ……君が、悪さしてるから、僕がその悪さを止めただけです。」
神様は呆れた顔で悪魔を見つめる。
その瞳には、どこか疲れたような、諦めのような光が宿っている。
「悪さなんかじゃねぇよ! これが悪魔の仕事だ! 精神に隙がある人間見つけて、操ってぶっ殺すんだよ!」
悪魔は神様に言い放つ。
声に、苛立ちと、どこか必死な響きが混じる。
「……いや、それ完全な悪さじゃん。な〜んで、そんな事するの? それして、悪魔の君に何の得があるの?」
神様は淡々と続ける。
言葉は静かで、しかし確かだ。
「じゃあ、お前がアイツ助ける事にも、意味あるのか!? 答えてみろよ!?」
悪魔は神様に怒鳴りながら問いかける。
その声に熱が籠る。
「僕が彼を助けると、彼の自分の意思を尊重する事になるね。彼が死ぬのは、悪魔の君の意思でだろ? それは彼の意思じゃないじゃん?それは、僕、違うと思うよ」
神様は表情を変えずに言う。
言葉の一つ一つが、静かな水面に落ちる石のように、重く沈む。
「ううっ……ぐっ……」
悪魔は歯を食い縛る。
その姿は、まるで追い詰められた獣のようだ。
「……反論あるなら聞くけど?」
神様は続ける。
声に、優しさはない。
ただ、事実だけがある。
「うるせぇ! それなら次の手だ! 悪魔の精神を操る力を舐めんじゃねぇぞ! てめぇは、その自分の意思だのなんだので、精神操作は使わねぇからな!? 縛りプレイなんてやってりゃ、悪魔は止められねぇよ!?」
悪魔は次の策に取り掛かる。
その瞳に、再び暗い炎が灯る。
「……も〜う」
神様は呆れた表情でそれを見る。
昼の光の下で、二つの影は、静かに交錯し続けている。




