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異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~  作者: 虎柄トラ


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49-5 真剣鍛練

「なに躱してんのよ凪いぃ! あたしの剣の糧になりなさいよぉ!!」

「無茶苦茶なこと言ってんぞお前!」

「うるさい! うるさい! うるさーい!!」


 ただの手合わせとは到底思えないほど迷いなき殺意のこもった連撃。その一撃一撃がどれも致命となり得る見事な剣筋。第三者から見たら試合ではなく死合だと誤認されてもおかしくない。先の狂戦士(バーサーカー)の面影がないと言ったのを撤回するべきか。集中力が少しでも欠けたら終わる。いまはただひたすらに回避に専念しないと、マジで死ねる。


(……やっぱあれが原因か?)


 初撃、俺を一刀両断せんがため刃が振り下ろされたタイミング。つまるところ虎の尾を踏んだ瞬間ならおおよそ推測できるけど、あれほど怒り狂うほどのことか。


 手合わせの開始前に『……もうちょい休んでからにしないか?』と良かれと思って口にした。マラソンから回復し切れていないと踏んだ俺は、いつもの調子で莉緒を案じたつもりだった。それがいけなったらしい。


 莉緒の頬は赤らみ目は潤み呼吸も荒かった。ペットボトルを渡すのはいいのに、なぜにこっちはダメなのか理解に苦しむ。原因究明が急がれる。とはいっても乙女心は深海よりも深いため、俺の生涯を賭しても明かせそうにはない。せめて上澄みぐらいは汲み取れるようになれればいいな。


「な~によそ見してんのよ! 去ね凪ぃー!」


 俺の喉元めがけて莉緒は横一閃に薙いできたので、バックステップをして華麗に回避する。


「……おっと危ねぇ」

「その割には余裕綽々じゃない?」


 右から左、上から下へと縦横無尽に刃が襲いかかる。が、その刃もまた俺に届くことはなった。それら全ての攻撃を躱し往なして防ぎ切る。


「な、なんで一個も当たんないのよぉー!」

「そらこんだけ見たらいやでも躱せるようになんだろ?」


 数十分と延々回避し続けたことで目がなれてしまった。それに合わせて自然と身体も動くようになり、いまでは考え事をしながらでも回避できる。始まる前は身体が重かったのがウソみたいに軽快に動ける。この生死を賭けたラジオ体操、身体を目覚めさせるという点においては、存外悪くはないのかもしれない。今後やるかどうかは別にして……。


「……ああそう……じゃ次も躱してみせてよね♪」


 微笑みながら莉緒は嬉しそうに告げる。その可憐な笑みに一瞬見惚れそうになるが、すぐに現実へと引き戻される。嫌な予感がヒシヒシと感じる。全身の細胞一つ一つが危険信号を発している。

 笑っているように見えたのは気のせいであり、俺が抱いた幻想にすぎなかった。血管の浮き出た手の甲にガンギマッタ目、頬は引きつり米神(こめかみ)には青筋が立っている。


 虎の尾を踏むだけではなくて、龍の逆鱗にも触れてしまったようだ。


 莉緒は淡々ととっておき(・・・・・)を放つ準備を整え始めた。深呼吸をして精神統一をはかると、次に手首を返して剣身に触れ精命力(アストラル)》を込めだした。剣身に刻まれたルーン文字が青白く輝き浮かび上がる。駄女神戦ですら見たことがない眩い輝き。


 空気が張り詰め凍りつくような精命力の濃度に身震いしてしまう。


(あっ死ぬかも……)


 直感でそう思わせる、そう感じざるを得ない。にもかかわらず俺の気持ちは昂っている。久方ぶりに味わうこの危機的状況を心の奥底から楽しんでいる。


 あちらの準備が整ったらしく、重心を落とし身体をひねりカラドボルグの切っ先を後方に向けている。あまりの光量で剣身全体が輝いて見える。

 こちらを見据えながら莉緒は「……準備はいい?」と同意を求めてきた。腰に差した童子切安綱(どうじきりやすつな)に触れたのち、鞘から引き抜き構える。


「いつでもどうぞ……」

「じゃ遠慮なく、属性付与・爆発エンチャント・エクスプロズィオーン!!!」

「……はっえっ?」


 振り抜いた刃から衝撃波が放たれたと思った刹那、耳をつんざく爆音と目も眩むような閃光、皮膚の焦げた匂いが鼻を刺激する。


 森羅万象を焼き尽くし灰燼に帰す、無常の爆炎。広範囲高威力の最上位に位置する呪文(スペル)。その呪文を衝撃波にのせて放ったきた。こう言っては何だけど味方に向けて放っていいものでは決してない。それだけは断言できる。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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