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異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~  作者: 虎柄トラ


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49-4 迷宮跡地

 朝食やら諸々の準備を済ませたのち、起床組であるミーナと天津谷に一声かけて外出する。青く澄み渡った空と涼やかな朝風が何とも心地良い。早朝ということもあってか、人と出くわすこともなく目的地に到着した。


 到着早々、武具を取り出し素振りを開始する。


 日課の修行をする場所、今では聳え立つ塔(バベル)が大半を占領しているダンジョン跡地。俺達以外にはあの石塔は視認できない。能力を失った御伽適応者(フェアリーテラー)や町民にはただの空き地にしか見えないらしい。

 だだっ広い空き地で朝っぱらから真剣を振り回す学生。傍からみればそういう風に見えるわけなのだが、今まで一度たりとも注意や通報をされたことはない。それもそのはず、この空き地全体には男爵屋敷(離れ)を隠蔽していた蜃気楼ルフトシュピーゲルングがかけられている。なので、どれだけ騒ごうが一切気づかれることはない。


 素振りを開始して一時間ほど経過した頃、遠方のほうで土煙が舞っているのに気づいた。

 納刀しタオルで汗を拭いながらよくよく観察していると、土煙の中が人影が見えた。


「……あ……おこ……じゃ……」


 近所迷惑も甚だしいレベルで叫んでいるのは明白なのだが、ここからでは何を言っているのか全くもって聞き取れない。それでも走者が誰なのかは何となく予想はついている。だからこそ、信じることができずにいた。


「……あいつが一人で起きたのか? 朝6時に? 誰の手も借りずに……冗談だろ……!?」


 頭に浮かんだ人物が、休みの日に午前中に起床することも、ましてや外出することなど天地がひっくり返ってもあり得ない。視認できる距離まで近寄ってきてもなお、すぐには理解できなかった。


 現実は小説より奇なり――生涯に一度起こるかどうかの出来事が、いま俺の目の前で発生している。


 そこには旅行にでも行くのかってぐらい巨大な鞄を肩にかけた金髪ギャルの姿があった。髪はボサボサで上下ジャージという身なりではあったが、化粧だけはバッチリと決まっていた。どんな時でも化粧だけは怠らないというギャルの気概を感じた。


 彼女は空き地に着くや否や上体を傾け鞄を降ろすと、親の仇の見るような目で一瞥してきた。


「……あ、た……ねぇ……」


 両手を膝に置き苦悶の表情を浮かべ何か言いたげな様子。ただ罵ろうにも息切れによりそれもできず、苛立っているのが見て取れる。

 男爵屋敷(離れ)からここまで50メートル走ばりの速度で駆けてきたのは間違いない。だけど、その程度で肩で息をするほど消耗するなんて思いもしなかった。ダンジョンが存在していた時は、階層を端から端まで駆け抜けても息切れ一つしなかった、あの狂戦士(バーサーカー)の面影は1ミリも残っていない。


 まあ空き地(ここ)に来るまで走るどころかカメのごとき歩行速度だった俺がいえた義理じゃないけど……。


 心の中で自身に嘆息しつつお手軽収納術ディメンションストレージを発動する。そこからスポーツドリンクを取り出し鋭い眼光を向ける彼女に差し出す。

 俺の手から奪うように受け取ると、風呂上がりヨロシクな感じで腰に手を当て飲みだした。驚きの吸引力、片手で数えられるほどのわずかな時間でペットボトルは空になっていた。


「……ぷはぁ~、生き返るぅ~! コーヒー牛乳もいいけど、運動後はやっぱこれよね!」


 手渡されたペットボトル(ゴミ)お手軽収納術ディメンションストレージに収納し、穏やかになった莉緒に話しかける。


「やっぱこれよね! じゃなくてだな、お前……何かあったのか? お前がこんな時間に起きるなんて……はっ!? まさか寝てないのか……ダメだぞ。美容には睡眠が不可欠だって、前にお前言ってただろ?」

「……凪あんた結構ひどいこと言ってるの自覚してる? ちゃんと寝ましたけど? それで起きて来ましたけど?」

「そうか、疑って悪かった。で……どうして今日はこんなに早いんだよ。それにあの荷物といい何かあったのか?」

「う~ん、別に理由……いや特にないわよ。強いて言うなら……きり……よ……」


 急に歯切れが悪くなった。後半に至っては、もにょもにょしすぎて何を言っているのか分からない。土煙の時と違っていまは近くにいるというのに全くもって聞き取れない。

 読唇術で読み取ろうともしたが、口元を両手で隠すという隙の生じぬ二段構えにより阻止された。何が言いたかったのかを聞き返そうと思ったが、先に莉緒が話し出したので止めておいた。


「早速なんだけどさ凪。あたしの相手になってくんない?」

「ああそれは別に構わないけど、ストレッチはしなくても……あんだけ走ってたら十分か」

「そゆこと。じゃ用意するわね」


 満面の笑みで返すと莉緒は背を向けて鞄を開ける。立ち上がり振り向いた彼女の手にはカラドボルグ(愛剣)が握られていた。外界で振っていいものかと訊ねられたら間違いなくダメな代物。ただこの場所に限っていえば問題ない。ミーナによる隠蔽と天津谷による結界により、空き地の外に出ない限りは何ら問題なく振り回せる。


(ほんと二人には足を向けて眠れないな。妹様様、魔王様様ですわ。おや……?)


 ここで問いかけず素直に手合わせを始めていればよかった。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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