エピローグ
今回の騒動で聖都の住民が大勢が亡くなり、教皇の名のもと合同葬儀が執り行われた。魔王の器となっていた二代前の聖女の骨はあらためて丁重に聖墓に埋葬された。
聖都は少しずつ日常を取り戻していく――。
皇帝騎士団を先に返し、数名の護衛だけを残して聖都に滞在していたアルベールもそろそろドルレアン帝国に戻るときがやってきた。
ミシェルとマリオンは、教会の前までアルベールを見送りにきた。そんな二人を旅の支度をしたアルベールは振り返った。
「マリオンはまだ聖都にいるんだろう?」
「うん、マスターから今回の件を詳しく調査してくるようにってお達しがあったからね」
二人は握手を交わした。それから、アルベールはミシェルに向き合った。ミシェルは別れを惜しみながらも笑みを浮かべた。
「あらためてお礼を言わせて。アルが私を信用してくれたから、こうして聖都を救うことができた。ありがとう」
「ミシェが最後まであきらめなかったからだよ」
アルベールも穏やかな笑みを浮かべてそう言った。しばらく二人は見つめ合い、ミシェルは緑の瞳に涙をたたえた。
「さよならだね、アル」
「……また会おう、ミシェ」
二人も握手を交わし、アルベールは聖都を去っていった。ミシェルはその後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
それから数か月後。
穏やかな日々を過ごしていたミシェルは教皇に呼び出された。教皇の執務室のドアをノックし、返答が聞こえたので入室した。
「失礼いたします。お呼びでしょうか、教皇様」
教皇は執務机の椅子に座っていた。
「聖女ミシェルよ、帝国からの手紙だ」
教皇はその手紙をミシェルへと差し出した。ミシェルはわずかに首を横に傾げながら内容を読み、緑の瞳を大きく見開いた。
教皇は白い髭に触れながら、しみじみと言った。
「聖女ミシェルがこの教会にきたのは六歳のころだったか。早いものだな。もう十八。そろそろ考えなければならないと思っていた」
ミシェルは戸惑った顔で教皇を見た。それに教皇は微笑みを返した。
「わしはいい話だと思う。だが、決めるのは聖女ミシェル、君自身だ」
ミシェルはふたたび手紙に視線を落とす。そこに書かれていたのはアルベールとの婚約の提案だった。最後まで読んで、ミシェルは涙をこぼした。
手紙の最後に、アルベールからの言葉が綴られていた。
『ずっとミシェと共に。愛している』
ミシェルは瞳を閉じて、ゆっくりと開いた。
「お受けしたいです。私もアルと一緒にいたい」
それを聞いた教皇はうなずいた。
「では、さっそく返信を書かねばな」
そう言って、教皇は嬉しそうに返信を書きだした。
一か月後。
聖都はお祝いの雰囲気に包まれ、飾りつけられていた。人々は沿道に駆けつけ、今か今かと待っていた。
西門から馬に乗った三人の姿が現れた。そのうちの一人はアルベールだ。人々は手に持った色とりどりの花びらを投げて、それが風に舞っている。
教会の前ではミシェルが待っていた。アルベールが馬から降りると、ミシェルは駆け寄った。アルベールは両手を広げ、ミシェルを受け止める。
「アル、会いたかった……!」
「俺もだよ、ミシェ」
二人は離れていた間を埋めるかのように抱きしめ合った。
街中から祝福の言葉が飛び交っていた――。
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