自分に素直になってみろ
「これで、闇のフラットストーンを起動させる条件が揃ったね。」
真那はゲイル達を前にしてムネナシオニキスを見ながら言う。
「そうだね。早速試してみようよ。」
ゲイルは期待を込めて言う。
「わかった、始めるね。」
真那はムネナシオニキスに念を込めると、ノートパソコンを持ち、寝そべっている和服の男性が現れる。
「ったく、誰だよ!今丁度いいシーンだったのに、台無しじゃねぇか!」
寝そべっていた男は胡座をかき、真那を見る。
「で、あんたが貧乳超人に選ばれた美人ちゃんね。確かに、えらいべっぴんさんだな。名前は?」
男はニヤけながら真那に聞く。
「板野真那です。あなたは?」
真那は名前を言い、男に名前を聞く。
「おっ、よくぞ聞いた!俺は尾張の武将、織田信長!今はオダノムネナシって名乗らせてもらっている。」
ムネナシは笑いながら自己紹介をする。
「言われてみれば、確かにこの人ほど闇に相応しい人はいませんでしたね、第六天魔王。」
テッパンは呆れながら言う。
「なんだ、お前も俺を魔王って言うのか?あ~あ、俺も現代に生まれたかったな~。そうすりゃあ、宗教の自由ってのがあったんだし。第一、その第六天魔王って言葉自体、仏教用語だろ。あれのせいで俺、冷酷無比な残虐人みたいに見られて恥ずかしいんだけど。」
ムネナシはテッパンの言葉にしょぼくれるように返す。
「それよりも信長氏、お主が持っているそれはなんだ?」
ネデスはムネナシの持つノートパソコンに興味を持つ。
「これか?これは俺が『みきしんぐ』?した『のーとぱそこん』だ!超絶大容量でいろんなげーむが出来る!今はこの高校生が戦国時代にたいむすりっぷして美少女になった俺達と天下を目指すげーむをしているんだ!」
ムネナシはそう言うとノートパソコンを真那達の方に向ける。画面には信長とは似ても似つかぬ少女の濡れ場が映されている。
「って、エロゲの方かよ!」
ゲイルは呆れながらツッコミを入れる。
「このげーむはいいぞ?真名ってしすてむのおかげで、俺の名前は濡れ場で呼ばれないからな。他にもほら、この『そしゃげ』?なんかいいぞ!」
ムネナシは目を輝かせながら言う。
「はぁ…史実に違わぬ大虚けとは。よくフラットストーンに選ばれましたね…」
テッパンは呆れるように言う。
「何言っているんだ!確かに天下統一こそ果たせなかったが、日本の名だたる武将を討ち取り、明智や羽柴の馬鹿猿の裏切りに遭い、それらが死後、真那ちゃん達の時代で教科書に載っているんだ。どっかの売れないで妻に全部持っていかれた歌人とは大違いだ。」
ムネナシはあからさまにテッパンを馬鹿にする。
「ちょっと、さすがに言い過ぎです。テッパンさんも凄い悲しそうにしていますよ!」
真那は怒る。その隣には体育座りをして俯いているテッパンがいるからだ。
「そうですよ、どうせ僕なんて、古く懐かしい詩を書いていて、時代のニーズに合わなくて、晶子に時代の風を持っていかれた哀れな男ですよ。」
「あちゃー、テッパンのネガティブ思考がフルスロットルだ。これはおっぱい魔人が来た時にテッパンの力を借りるのは無理だね。」
ゲイルはテッパンの状態を見て呆れてしまう。
「そんなことより真那ちゃん、『ぶいあーる』ってやつはあるか?俺はそれで遊んでみたい!」
「どうせ、その官能遊戯を仮想現実で愉しみたいだけだろう。」
「そうだよ!それの何が悪い!生きていた頃は男の相手もしていたけど、やっぱり女が一番だ!だから、早く頂戴。」
ムネナシはネデスの言葉に反論すると、真那に向かって手を出す。
「すみません、フラットストーンの中にいたなら知っていると思いますけど、この国はムネトピア帝国の攻撃を受けて、VRの販売会社や運送業者も崩壊してしまっています。」
真那はムネナシに実情を話す。
「マジ!?ずっとゲームに夢中で知らなかった。ゲームはヘッドホン派だから…」
ムネナシは気づいていなかったことを話す。
「真那さん、この方のお話しは少々疲れますわ。少しの間お休みさせていただきますね。」
マリーは実体化を解除する。
「そっかぁ…じゃあ仕方が無い。自分で作るか!」
そんなことはつゆ知らず、ムネナシは突拍子もないことを言う。
「信長氏、本気で言っておるのか!」
ネデスは驚く。
「当たり前じゃないか!必要な材料や作り方はいんたーねっととかいうのを使えばわかること。大丈夫、のーとぱそこんも自分でみきしんぐしてゲーム用、検索用、音楽用を作ったんだ。おっさんもクラシックとか聴くか?」
「そういう話では無い!その電子機器もそうだが、どうやって材料を集めた!」
「決まっているだろ。このフラットストーンの中はある程度の物ならこの空間に物を送り込むことが出来る。武蔵…じゃなかったな。東京のある地域の電気街の跡地にあるものをある程度取り寄せた。そのおかげで、このゲーム用ののーとぱそこんは5つまでなら同時にいんすとーると起動が行える。まあ、結構熱を放つからそこまではやらないけどな。とにかく、ぶいあーるは市販品を買えばいいと思っていたが、無いなら材料を集めて自分で作る。それじゃ!」
ムネナシはそう言うと実体化を解除してしまう。
「真那氏よ、あの傍若無人な阿呆とこの先上手くやっていけると思うか?」
ネデスは真那に質問する。
「やっていけるか、ではなく上手くやっていくしかないでしょう。」
真那は呆れるように言う。
「真那、私あの人恐い。」
ダルクはムネナシの存在に怯えている。
「大丈夫だよ、ダルク。私が一緒にいてあげるから。」
真那は怯えるダルクを宥める。
「ありがとう、真那。」
ダルクは真那に感謝する。すると、
〝真那さん、おっぱい魔人の反応だ!相手は真那さんのことを名指しで指名しているらしい。気を付けるんだ!〟
奏から連絡が入る。
「私を名指しで?わかりました。ダルク、ネデスさん、ゲイル、行こう!」
真那はゲイル達を連れてウィンドレイダーに乗り、目的地に向かう。
「ようやく来たのね、真那。」
真那が目的地に着くと、おっぱい魔人は真那を見ながら言う。
「どうして私を呼んだ。仲間の仇?」
真那はゲイルエメラルドを手に取る。
「そっか。この姿じゃ何のことか分からないよね。」
おっぱい魔人は変身を解除して人間態に戻る。
「どういうこと…どうして凜乃が?」
「久しぶり、高校以来だね、真那。で、あんたが死んで今日が永遠にお別れの日。」
真那の高校時代の同級生、凜乃は真那に憎しみにも見える笑顔を見せる。
「どうして!なんで凜乃が、おっぱい魔人に?だって」
「だってじゃ無い!覚えている?卒業式のあの日、私が純平君に告白した日のこと。」
凜乃は真那の言葉を遮り質問する。
「知らない…一体どうしたの?」
真那は記憶に無いため困惑する。
「しらばっくれる気?それとも強者の余裕?あの日私は純平に告白した。だけど純平は『真那みたいな子の方が好み』って言って私をフッたのよ!まさか知らないなんて言わないでしょうね!」
「そんなこと言われても、その話は誰からも聞いていないから知らないよ。」
「嘘を言うな!」
「嘘じゃない。だって、卒業後は都内のデザイナー学科に入学するために上京していて、交友関係も減っていたから。」
「そんな言い訳聞きたくない!」
凜乃は再びおっぱい魔人の姿になる。
「だから私はムネトピア帝国に忠誠を誓った!真那達みたいな貧乳女を滅ぼして、それが好きな男達も消し去って!私達のための世界を作る!」
「だからって、人であること捨てるなんて間違っている!」
「綺麗事を言うな!私ね、今は惨めじゃないの。私と同じようにムネトピア帝国で改造手術を受けた仲間が沢山いるの。みんな私のことを綺麗だって言ってくれるの。あんたと違って、沢山の人に愛されているの!だから死になさい!この私、麗惨姫の手で!」
麗惨姫は拳を放つが、真那は紙一重で避ける。
「凜乃、目を覚まして!ゲイル、行くよ。エメラルド・ラピッド!」
真那はナイチチゲイルに変身し、ラピッドスティンガーを召喚する。
「あんたさえいなければ、今頃私は!」
麗惨姫は力任せに拳を振るうが、ナイチチゲイルは軽々と避け続ける。
「真那、どうしたの?」
ゲイルは一切攻撃をしないナイチチゲイルに疑問を持つ。
「やっぱり、誤解が原因でおっぱい魔人になった凜乃を攻撃することなんて出来ないよ。」
「真那、相手は真那を殺す気だよ。そんなこと言っていられないよ。」
ゲイルはナイチチゲイルを説得しようとする。
「ごちゃごちゃ煩い!」
麗惨姫は問答無用と言わんばかりに渾身の蹴りを放ち、ナイチチゲイルは怯む。
「どうした!その程度の力で私の仲間を倒していたのか!」
怯んだナイチチゲイルに麗惨姫は追撃の拳の連打を浴びせる。
「ダルク、力を貸して!ダイヤモンド・シャイン!」
ナイチチゲイルは光に包まれる。
「うぅ…やっぱり恐い…」
ダルクはフラットストーンの中で怯えている。
『まったく、また怯えておられるのですか、我らが聖乙女ジャンヌ。』
ダルクはジル・ド・レェの幻影を見る。
「ジル…」
『ジャンヌ、あなたは苦しむ民の希望。そのあなたが怯えていてどうするのですか。行きますよ。』
「はい…わかった…」
ダルクはジルの言葉を受けて涙を拭い、変身の準備を進め、光が晴れナイチチゲイルはヒンヌーダルクに変身し、シャインフラッグを構える。
「いくら姿を変えても、私には勝てないよ!」
麗惨姫はシャインフラッグを爪で引き裂き、ヒンヌーダルクは力強い拳をその腹部に受ける。
「真那、あの魔人を倒すには、私の力じゃ限界がある。」
「だとしたら?」
「あの恐い人の力ならきっと…」
「信長さん?わかった。今は一旦退こう。シャインマジック!」
ヒンヌーダルクは眩い光を放ち撤退する。
「ちっ、逃がしたか!」
麗惨姫は地団駄を踏む。
自室に逃げたヒンヌーダルクは変身を解除する。
「まったく、情けない。」
ムネナシはそんな真那を見て一言言う。
「情けないって何!?部下にあっさり裏切られて、自殺したあんたに何がわかるの!?」
ゲイルは怒りをぶつける。
「あの時代を何も知らない小娘が騒ぐな。あの時代は自分が勝ち残る為なら敵の下に着くなど当たり前の話。俺も、下に着かれた男の一人、それだけ恐れられていたんだ。日本中敵だらけでも仕方ない。もちろん、友とて明日には敵になる時代だ。そんな時代を生き抜いた俺からしてみれば、戦士のくせになんて軟弱な考えなんだ、としか言えん。」
ムネナシは自身の価値観を語る。
「真那ちゃん、何故奴に対して手加減した?敵は明らかに殺意を剥き出しにしていた。奴に対話は不可能だ。もっと自分に素直になってみろ。そうすれば、答えが見えるはずだ。」
ムネナシの言葉に真那は黙ることしか出来なかった。




