ウサギ男に殺された
生配信(怪談師阿尼、殺害)の直後、
京都府警に犯人を知っていると情報提供があった。
電話を架けてきたのは女。
石川メグミと名乗った。
「俺と薰がアニーを殺したと?……なんでそうなるの?」
誰がとは、聞かない。
あの時の3人の……残っている一人だと分かった。
「茶髪の……パールやな」
薰も、見当はついていた。
「あんな、包丁を握った犯人の手がな、写ってたんや。……それは水色の手、やねん。モフモフした水色の素材が腕全体を覆ってる感じや」
「まさか……ウサギ男なのか?」
「パールも、そう思ったんやろな。犯人がウサギ男の格好してたんやったら、事前に話を聞いていた、いうことになるやろ」
また、聖の頭にウサギ男が浮かんでくる。
ピエロのような分厚い真っ赤な鼻。
黄色すぎる白目が、ありありと……。
「パールはな、ウサギ男は知人の創作やと説明したらしいで。女3人で温泉旅行に行った時の、コーヒータイムの一興やったと」
そのとき、隣の席に怪しい2人の男がいた。
終始無言。
こちらの会話を盗み聞いていた。
その夜、ウサギ男の話をした知人が病死。
翌日には、
怪談師阿尼が<人に喋れば死ぬ話>を動画配信するとSNSで予告。
怪談師の命を狙う殺し屋達には<ウサギ男>の話だとわかった筈。
そして、
あたかも、<人に喋れば死ぬ話>を喋った呪いのように見せかけ、
捜査攪乱を企てたのではないか。
「パールは、怪談師阿尼は人に恨まれ、殺し屋を雇われても不思議で無い、とも言うてたらしい」
「へ?……あのオバサン、なんかしでかしたの?」
「配信している<実話怪談語り>の中に、実際の事故や事件を扱い、尚且つ被害者や遺族を貶める内容があるんや」
「へ?……まじで?」
優しそうな雰囲気から想像もつかない。
「例えばな、トイレで殺された女の子はな、爺さんが公園のトイレで女児を殺した因果応報や、とか。……ガセやねんで。殺人犯と、名字が同じなだけや」
「……感じ悪いね」
「プールで溺れて死んだ子は水子霊の祟りやとか。母親が結婚前に2回中絶してると。ホンマでも嘘でも、言うたらアカンやろ」
「すっげえ、感じ悪い」
「しやろ?……恨みによる犯行の可能性はあるんや。パールの推理はあながち外れとは言えない」
「けどさ、パールとアニーの他に<ウサギ男>の話を聞いたのが、俺たちだけとは限らないだろ?」
「うん。アニーは身近な人間には喋ったかもな。作り話やと思ってるから。動画では喋ったからエスターは死んだ、自分も死ぬ覚悟やと、大げさに身体を震わせたり涙流したりしてたけどな」
……演出、だった。
怖がる演技の下には、微塵の恐れも不安も無かった。
それが、<ウサギ男>に刺し殺された。
「カオル、犯人は<人に喋れば死ぬ話>が、<ウサギ男>の話だと、知ってた奴には違いないね」
「しやな。本人がSNSで予告したのは、配信時間とタイトル<人に喋れば死ぬ話>だけや。内容には触れていない」
どうして知り得たか?
アニーから聞いたとしか考えられない。
「犯人はアニーの知り合い、だよね」
「それか本物の『ウサギ男』やな」
「へっ?」
「セイが教えてくれたから、エスターの話を検証したで。えらい面倒臭かったで。……団地の窓から転落死したキミ子は存在してたな。ほんでな、同時期に同じ団地で一家4人惨殺や。無理心中か否か未解決の……ウサギ男は殺人鬼かもしれんで」
「し、調べてくれたんだ」
それには感謝。
でもなんで、ウサギ男がアニー殺しの犯人なんだ?
「フフフ」
薰は気味悪く笑う。
「もうちょっと調べてから、話、しに行くで」
ごくりごくりと
ビールが喉を通る音
ぷつんと電話は切れた。




