立冬side
「分かったか小僧」
嬉しそうに机に並んであるご馳走を見ている二人を俺はボーと見ていたのを俺が最も憎んでいるワーウルフの長、白露が声を掛けた。
「カラン様の事を」
「……」
「私だってお前と一緒だった。忠誠を誓った理由は他にあるが、私以外は敵だと思っていた。まあ、ワーウルフは基本的に孤高を愛する種族で、群れを作る事があまりないせいかもしれんが。
その上私は族長だ。周りは恐れか嫌悪が羨望しか見てくれず、けして『私』個人を見てくれなかった。
しかしカラン様は違った。私個人を見てくれるだけではなく、『家族』として愛し生きていく事を誓ってくれた。家族の為なら命を掛けてくれた事も幾度もあった。……お前も覚えがあるだろう」
俺は昼間の出来事を思い出した。襲ってきた俺に名前を付ける処か『血の契約』までやろうとしてくれた。
「……カラン様はああやって笑っているが時折、なにも感じない無感情な顔をする。私はどうしてもその顔を無くしたい。お前もそうだろう?」
俺は黙って頷いた。そりゃあ俺だって主人の笑った顔をずっと見てみたい。
「私の事は嫌いで良い。ただ、せめてカラン様と吹雪様の前では仲良くするふりをしてくれ。お願いだ」
俺は信じられなかった。あの誇り高きワーウルフの王が下等な合成獣に頼み事をしたのだ。たった一人の少女の為に。
王が忠誠を違った理由は定かではないが、それは何かしらの出来事があっただろう。本人達にしか分からない出来事があるだろう。それについて聞くのは野暮な気がした。
「……アンタは気に食わないが、姐さんが望むなら仲良くしてやる」
「…………フッ。早くご飯にするぞ」
あ、こいつ鼻で笑いやがった。ムカついたが姐さんと坊っちゃんがいるから喧嘩はしないでやる。
俺はニヤニヤと笑う王をほっといて姐さん達の傍による事にした。
今日は俺にとって忘れなれない日になった。




