死神が出ました
「な、何?」
「後ろからか聞こえたっ」
私達は急いで後ろの方を見ると、そこには禍々しいオーラを放つ黒いナニカがいた。十メートルは余裕にある。そして肩に担いでいる鎌は背丈の二倍はありそうだ。
「な、何あれ……」
レーフェルさんは震えながら呟く。
「ま・・・・・・まさか死神!?」
そこで私は、少しの間過去に飛んだ。
『何事もルールは大切』
その昔、あの人が言ってた。
『ルールがなければ世の中は成立しない。けど、人と言うものは余りルールを守りきれない。まあ、全部守れと言われても破りたくなるのが人の性。責めはきれない。
カランも人に迷惑かけたり、自分の品格を落とさない限りのルール違反はしていいよ。けど、線引きを越えてはいけない』
『線引き?』
『言わば暗黙の了解のようなものだよ。線引きを越えたらそれはもう人ではない。魔獣でも魔物でも神族でも魔族でもない、ただ、生きているナニカ。これは警察とか騎士団もどうしようもできない』
『例えば何が線引きされてるの?』
『そうだね。良い例がホムンクルスだね。他にも死者蘇生とかカニバリズム他に沢山あるけど、ボクが絶対してはいけないと思っているのは死神の召還ね』
『? 死神は神族か魔族の人じゃないの?』
『この世界にいる魔族や神族は、もともと本家から離れた分家のような人達たよ。今では分家の分家とかが多いから本家の存在が知らない人がいるみたいだよ』
『へえ~』
『ただし死神は本家も分家もない。あれは唯一、生物の『死』を扱える存在だから多かったり少なかったりしていけないんだ。アレは神様のなかでも異質扱いされる存在なんだ』
『なんかさびしいね』
『そうだね。だから死神達の結束は強い。その結束は家族よりも恋人より親友より強いんだ』
『大体死神について分かったけどさ、何で死神を召還してはいけないのは? 本家の神様も召還できた話もあるじゃん』
『・・・・・・昔ね、ある人物が死神を呼んだんだ。そいつはほんとろくでなしで、死神を使って人を殺し続けた挙げ句、死神は一日に一回冥界に帰らなければいけないのにそれすらしなくてね。しかも扱いも酷かった』
『その死神は?』
『・・・・・・消えてしまった。それからはホントに酷かった。残された死神達は召還者を生き地獄をしたあと、男のいた世界を滅ぼしてね。これには神様達は大慌て。そして死神は召還してはいけないと全世界共通の決め事になったんだ』
『・・・・・・』
『カランもけして死神だけは呼んだらいけないよ』
そう言ってあの人は私の頭を優しく撫でた。
そんな昔の事を思い出して現実逃避していたが、スカートを誰かに引っ張られ現実に戻った。
見ると、スカートを引っ張たのはレーフェルさんだった。
「あああ、あれ、し、死神・・・・・・だよね?」
「それしか該当しないでしょ」
黒いロープに骸骨の仮面に肩に鎌を背負っている。これだけ揃って死神じゃないと言うのは馬鹿としか言いようがない。
「な、何で巨人のような大きさなの?」
確かにレーフェルさんの言うとおり、死神と結構な距離があるのにその全貌が伺える。先程は十メートルと言ったがもしかして桁が一つ分か二つ分足りないかも。
「恐らくは魔力を大量に注いだが、奪ったかで一時的にあんな大きさになったんだろうね。まあ効果はすぐに消えるけど」
「で、でもあんな大きさになる程てっ・・・・・・」
「大方、召還した奴は死んだでしょうね」
「っ・・・・・・!」
「自業自得。自分の力を自覚しないでやるからお陰であの死神、無関係の人間まで襲う気満々だよ」
私の言うとおりに、死神は鎌を振り始めた。幸い周りの人間はおらず、近い人間はみな逃げていた。
「ど・・・・・・どうしたら!」
「今すぐ校舎に戻って他の先生達にこの事を話して援護を頼んで来て。呼んだら貴女は直ぐに先生の指示に従って避難して」
「ア、アンソニーさんは?」
「取り合えず級友達の避難の手助けをする。特待生だしそれ位はしなくっちゃ」
「し、死んじゃうよ!」
レーフェルさんは泣きそうな声で止める。私はレーフェルさんと視線に合う様に身体を屈めて手を握り返した。
「大丈夫。戦闘に参加する訳じゃないから。それに」
ここで私は一回切った。
「一回死んだ人間は死ぬのは恐くないわよ」
・・・・・・レーフェルさんは何か言いたげそうにしたが、直ぐに黙った。
「・・・・・・・・・・・・わかった。無茶しないでね」
「分かってる」
そのままレーフェルさんは校舎に、私は死神の所に走った。




