説得成功。代償の説教
そういえばミリア先生、さっき合成獣ていってたな。
合成獣。同一個体内に異なった遺伝子情報を持つ生物の事を指す。
簡単に言えば複数の生き物を合成した一つの生き物なのだが、ここオルフェリアでは二つの意味を指す。
一つ目は先程説明した通り。二つ目は他の生き物同士交配して生まれた生き物、例えば父がライオン母がトラであるライガーの様なものと考えて良いだろう。つまりハーフの事である。
しかし、このハーフは結構酷い目に遭いやすい。基本魔獣は純血主義が多い。その為ハーフは迫害に合うのだ。
そうゆう差別的なとこは人間だけではないんだな。
ああ、確か前、白露が『ワーウルフの毛の色は単一色で他の色と混ざるのは純血には有り得ないのです』て、言ってたな。
つまり、この人は
「貴方、ご自分の姿が嫌いなんですね。同族達から余程蔑まれたんですね」
金色のワーウルフさんはその事を思い出したんだろう。苦しそうな顔になった。
『・・・・・・貴様に何がわかる』
「ええ、わかりませんよ」
私の言葉に金色のワーウルフさんは驚いた顔になった。チラリと横に向いたら先生達も驚いた顔になっていた。
「当事者ではないからわかりませんよ。わかってもその人が味わった苦しみは自分と同じじゃないし。それに、私が『わかる』て言ったら殺すつもりでしょ?」
図星なのか金色のワーウルフさんは顔を歪ませた。
「私の尊敬する人に言われました。『殺人以外の犯罪者になっても構わないが、偽善者にだけはなるな』」
法を司る人達が何て事を言うんだと当時は思ったけど。いくら自分達が裁くからと言ったけど、本当にやらかしたら間違いなく重罪にする気だろう。
「『だけど』」
私は彼の顔を触れようとした。彼は身体をビクッと振るわして顔を避けた。
「『泣いたり、辛い思いをしている人がいたらそばにいてあげなさい。何もしなくてもいいから、ただ、そばにいてあげなさい。それが家族なら尚更一緒にいてあげなさい』と」
『・・・・・・私は家族ではない』
「何を言っているですか」
私はもう一度、彼の顔を触った。今度は逃げなかった。
「貴方は私の使い魔ですよ?そんなの、私にとって家族当然ですよ」
力が弱まったので身体を起き上がらせた。彼はよろめいたが、すくに身体を立て直した。
『・・・・・・嘘だ、そんなの嘘だ』
「貴方はホント分からず屋ですね」
私は正座をして右手を差し出した。
「私の家族になって下さい」
『・・・・・・う、嘘だ。そう言ってホントは裏切るだろう。私の姿が醜いと心で思っているだろう』
「ホント貴方は強情張りですね。・・・・・・分かりました」
私はワイシャツの第一ボタンを外した。
「ならば『魂の契約』でもしましょうか。もちろん主はあなたで」
『なっ・・・・・・!』
「アンソニーお前は何て事を!!」
「正気か!?」
「アンソニー、あんまりとち狂った事言うなよー」
「とち狂ってませんよイチノミヤ先生。私は本気です」
魂の契約―――
それは最高の契約でもあり、呪いの契約である。
これは主が魔獣でも出来るのだ。この契約をしたものは生涯、その主しか慕える事が出来ない。主の命令は絶対。けしてそれを背く事は出来ない。もし、背いたりしたら、契約した者は死あるのみである。
もちろん主が死ねと命じれば、死ななければならない。
近年、この『血の契約』について政府ではあまりにも非人権的として、禁術とすべきか議論をしている。
『な、何故そんな事を?』
「そんなの貴方を信頼しているからですよ」
そう言えば。
「貴方お名前は?」
『な・ま・え?』
「そうですよ。ちなみに私はカラン・アンソニーと申します」
『わ、私は・・・・・・オレは名前なんてない』
「そうなのですか」
確か魔獣は名前が無くても生きていけっるて白露から聞いていたな。
「それじゃあ貴方の誕生日は?」
『あっ、え、・・・・・・十月一日』
「そうですか・・・・・・ならば貴方の名前は立冬です」
『え?』
「旧暦の九月後半から十月前半までの事を『立冬』と言うんですよ。『りっとう』じゃ、ちょっと変だから『りっと』にしました。ちなみに『立冬』の特徴は、『初めて冬の気配が現れてくる日』。春の暖かさを感じさせる大切な季節です。そして冬は春に生まれる命のための大切な試練。弱肉強食の自然界で寒さに負けないよう、生き物は知恵を付けて春まで頑張るのです」
『オ、オレにそんな名前を付けてくれるのか?』
「当たり前ですよ。家族になる人にきちんとした名前を付けないと」
立冬が何度も何度も『オレの名前は立冬、大切な、家族』と呟いていた。
「改めて聞きます」
私は立冬の顔を真正面から見た。立冬は顔をそらさなかった。
「私の使い魔に・・・・・・私の家族になって下さい」
『・・・・・・・・・・・・ホントに良いのか?』
「はい」
『・・・・・・』
立冬はそのまま立ち上がり、私の右手の甲にそっとキスをした。
使い魔の契約成立だ。
『オレに・・・・・・家族になったくれたあなたをどうか守らせてください』
「なら、君が悲しい時は近くにいさせてね」
それだけ言うとそのまま立冬の姿が薄くなって消えていった。
右手の甲には紋章が刻まれていた。
ガヅンッ!!!!!!
「いって!!」
ほっと息つく暇もなくいきなり頭を後ろから打たれた。
後ろを見ると物凄い形相のミリア先生とハンデッド先生と二人のちょっと後ろにのほほんとしたイチノミヤ先生が立っていた。(ミリア先生の手が拳を作ってたから殴ったのはこの人だろう)
「あ・・・・・・迷惑かけてすみませんでした。いや、成功したから結果オーライに・・・・・・」
「そんな訳あるか!!!!!!!!」
ミリア先生の怒声に思わず身を竦めた。マジで恐い。
「しかも『魂の契約』なんて、何を考えているんだ!しなかったから良かったものの契約したらどうするんだ!!」
「そのときはそのときで・・・・・・」
「「考えなしにやるな!!!!」」
「はいっっ!!」
「アンソニーとイチノミヤ先生は今から説教ですから付いてきなさい」
「え、俺も?」
「当たり前です!!授業中での喫煙、それに生徒が大変な時にその態度は何事ですか!」
「あ、いや、俺は生徒を信じて」
「お黙りなさい!どうせめんどくさから行動しなかっただけでしょう!!」
「あ、バレました?」
「先生、最低ー」
このあとイチノミヤ先生と二人でミリア先生からたっっっっっぷりと怒られた。




