前世を思い出しました
突然ながら前世の両親について話をしよう。
今の産みの親は私としては少々酷い親なのだが|(あの子達には優しい親かもしれないが)前世の親については正直言って良き親とは言い難い。
前世の父は検事、母は弁護士と法律関係の仕事をしていた。|(ふとした疑問なのだが、夫婦で同じ事件を担当できるのかな?)その為仕事は忙しく、家にいる日が正直一年で数えるぐらいだった。
両親に親兄弟、親戚がいなかった。両親は天涯孤独で、同じ児童養護施設で出会った。つまり幼馴染なのである。
小学生の時は流石に|(それでもいない日が多かった)必ずお父さんかお母さんのどちらか家にいた。が、殆ど住み込みの家政婦さんである氷室 雪絵|(六十代の暖かく優しい笑顔が似合う人だった)さんがお世話をしてくれた。中学からは家に一人でいても大丈夫なためか両親は家にいない日が小学校より多くなった為、雪絵さんが育ての親と言っても過言ではなかった。
余談だが、小学校から雪絵さんのお手伝いをしてたからある程度の家事が出来た。そのお陰で今の世界での生活にあまり困らなかった。
勿論、運動会や授業参観などの学校行事にはこなかった。二人共生粋の仕事人間だったから普通の家庭生活なんて無理だったかもしれない。
寂しくないと言えば嘘になるけど正直恨む事はなかった。
両親は本当に仕事に真剣だった。どんな小さな依頼でもどんなに利益が少ない仕事でも真面目に仕事をしていた。年賀状やお中元にはお父さん達にお世話になった人が毎年送ってくるのがその証拠だった。
昔、二人に『もし自分の仕事でお互いが対陣するときどうする』と聞いたら二人声揃えて。
『自分の仕事に専念するだけ』
二人共覚悟を決めた笑顔だった。そして、そんな野暮な質問はやめなさいとお母さんに怒られてしまった。
両親は相思相愛で私が生きている間、喧嘩らしい喧嘩をしなかった。ただ、仕事が中心の生活だっただけでそれ以外は他の家庭と同じだっただけかもしれない。
私にとって両親は良い親とは言えないけど、尊敬する両親だった。
何故こんな話をするかと言えば今朝前世の両親の夢を見たのだ。
小学校に入学する前の夜の日だった。
『×××ちょっとこっち来なさい』
自室に寝ようとする私を珍しく二人一緒にいた両親が引き留めた。|(×××は私の前世の名前。名前は思い出せない。唯一覚えているのは三文字で呼んばれてたぐらい)
『なーにお母さん』
『いいから座りなさい』
お母さんが|(いつもの事なのだが)無表情に言うから、私は何か悪い事でもしたのかと心臓をドキドキさせて自分の席に座った。雪絵さんは机の隅に立っていた。
最初に話したのはお父さんだった。
『×××も明日から小学生だね』
私はコクリと首を縦に降った。
『まあ、お父さん達はこれまで以上に仕事が忙しくなる』
『知ってる』
そんな事分かり切っていたし、何時もと変わらないと思っていた。
『そこで普段より家に帰らない日が多くなる。勿論雪絵さんもいるし、お父さん達も早く帰ろうとする努力をするけど、絶対に深夜になる』
『別にいいよ。私、雪絵さんがいれば何とかするし、夜は鍵かけるし』
『そうだね。それでお父さんもお母さんも忙しくなったら×××と会話したいけど、それは叶わないからどうすればいいか話し合ってね』
お母さんの鞄からあるものを取り出した。
『これ』
無口な母の手には可愛らしいピンクのノートがあった。
『? どうしたのこれ』
『これにその日にあった事を書きなさい。行はいくらでもいいから。それこそ一日でノートを書き終わってもいいから』
『そんなに書ききれないよお母さん』
『まぁまぁ。要は×××がその日にどんな気持ちだったのか書くんだよ。どんな事で嬉しかったのか悲しかったのかを書くんだ。それにお父さん達はちゃんと読んでお父さん達の言葉で書くから』
お母さんから手渡されたノートをしげしげと見た。
ノートには、くたーとしている熊のキャラクターと黄色の鳥が一緒に描かれていた。私の好きなキャラクターだった。
私は大好きなキャラクターのノートを手に入れた事より、多忙な両親が私の大好きなキャラクターをちゃんと知ってる事や|(多分雪絵さんに教えて貰っただろう)、ちゃんと私の事を考えている事が何よりも嬉しくって毎日書こうと心の中で誓った。
雪絵さんは私達の姿を暖かな眼差しで見てくれた。
私の書いたのを両親がきちんと見なくても何も書いてくれなくても毎日書こうとあの時は心からそう思たんだ。
そこで私は夢から覚めた。小鳥のさえずりが聞こえている。
寝ぼけ眼を擦って身体をおきあげた。
「・・・・・・夢か」
まだ寝ぼけていてまだ夢現な状態だったが、今見たのは夢だったと確信した。
「コッチに来てから初めてだな・・・・・・前世の夢は」
何となくベットから出るのが億劫で、身体を起き上がったまま色々と思い出した。
あのあと私は毎日書いたけ。ほんの数行だったり、一ページ全部書いていたっけ
期待しなかったけど、毎日お父さんとお母さんが交代で何か書いてくれて、それがとても嬉しくって嬉しくって、毎日毎日書き続けていた。ノートが無くなったらまた新しいのに買って貰って、また書いてそれにお父さん達が何か書いてくれて・・・・・・
「結局私が死ぬ時まで書き続けたんだな」
お父さん達仕事で忙しいはずなのに毎日書いてくれた事は、少しでも私に情が合ったんだなと今になって思う。
「お母さ~ん」
吹雪が部屋に入ってきた。
「あ、起きてた。おはよー」
「おはよ。朝ごはん?」
「うん!」
「じゃ今から行くわ」
ベットから起きてパジャマのまま、吹雪と手を繋いでリビングに向かった。
よく考えたら私の『平凡思考』て、家にいない両親の影響があるのよね。私が寂しい思いを自分の子供にはしたくないから、普通の人生を望んでたかもしれない。一種のトラウマかもしれないな。
「どうしたの難しい顔をして?」
吹雪が私の顔を覗き込んだ。
「あ~ちょと考え事。吹雪には関係ない事だから心配しなくても大丈夫」
ポンポンと頭を叩いたら「うぅ~痛いよ~」と文句を言ったが涙目が可愛いから無視した。
「おはようございます。朝から元気ですね」
白露が朝食を皿に盛り付けているようだ。
「ああ、おはよ」
「おはよ~」
私は自分の席に座った。
机にはシュガートースト、オムレツにサラダ、ヨーグルトにオレンジジュースとフルーツがあった。
「それじゃ手を合わせて」
白露が音頭をとって皆で手を合わせた。
「「「いただきます」」」
これが我が家の朝の風景である。
前世の夢を見見たのはあいつを見つけたせいだろうな。
「カラン様どうぞ」
「ん。ありがとう」
白露から手渡されたのは黒のフチフレームのメガネだ。私はそれを掛けた。
「しかしカラン様、普段はコンタクトレンズをしているのにわざわざメガネにする理由は?」
「あ~フラグを最小限にするための策?」
「?」
「分からなくていーよ」
その日は白露に学校の一つ前の町まで乗せてもらった。
「ところでどうして学校近くじゃないの?」
「白露はワーウルフの王。見つかったら目立ってしまうでしょ?」
「そっか~」




